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第5 講 糖新生と グリ コ ーゲン合成・
分解
日紫喜 光良
基礎生化学講義
2010.5.18
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概要
• 糖新生
• グリ コ ーゲン代謝
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糖新生
• グルコ ースを新たに作るプロセス
• グルコ ースが栄養源と し て必要な臓器にグル
コ ースを供給するため
– 脳、 赤血球、 腎髄質、 レンズ、 角膜、 精巣、 運動
時の筋肉
• グルコ ースは肝臓にグリ コ ーゲンと し て貯蔵
さ れるが、 炭水化物を摂取し ないと 10-18 時
間後には、 不足するよう になる。
• 糖新生をおこ なう 臓器: 肝臓、 腎臓
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食後時間と 血糖源
イラストレーテッド生化学 図24.10
1 0 0 g のグルコ ースを
摂取し た後、 血糖が
どこ から 来たかを調
べた結果
摂取したグルコース
グリコゲン
糖新生
グリ コ ゲンはおよそ2 4
時間で枯渇する。
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糖新生の原料
• グリ セロール
– 脂肪組織でト リ アシルグリ セロールが分解さ れてできる
– 肝臓に運ばれて糖新生の原料になる
• 乳酸
– 運動時の筋肉、 赤血球など
– 肝臓に運ばれて糖新生の原料になる( Cori サイ ク ル)
• アミ ノ 酸
– 体の組織をつく るタ ンパク 質が分解さ れてできる
– 分解さ れてオキサロ酢酸あるいはα - ケト グルタ ル酸にな
る一部の種類のアミ ノ 酸から 糖新生が可能
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Cori サイ ク ル
筋肉 肝臓
乳酸
グルコース 血液
図10.2
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糖新生の中間代謝物
グルコース6-リン酸 フルクトース6-リン酸
グリセルアルデヒド3-リン酸 フルクトース1,6-ビスリン酸
デヒドロキシアセト ンリン酸
3-ホスホグリセリン酸 2-ホスホグリセリン酸
ホスホエノールピルビン酸
ピルビン酸 乳酸
オキサロ酢酸 CO2
グルコース
①
②
③
④
①∼④は解糖系になく 、
糖新生に特有
1,3-ビスホスホグリセリン酸
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①ピルビン酸のカ ルボキシル化
ピルビン酸
ピルビン酸カルボ
キシラ ーゼ
オキサロ酢酸
C O
2
リ ンゴ酸
NAD+
NADH + H+
ミ ト コ ンド リ ア内 細胞質
リ ンゴ酸
オキサロ酢酸
NADH + H+ NAD+
リンゴ酸デヒドロゲナーゼ リンゴ酸デヒドロゲ ナーゼ(細胞質) ミトコンドリア内膜
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②ホスホエノ ールピルビン酸の生成
オキサロ酢酸
ホスホエノ ールピルビン酸
CO
2
ホスホエノ ールピルビン酸
カルボキシラ ーゼ
GTP
GDP
( P E P )
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①、 ②ピルビン酸→P E P
CO2の活性化と転移 CO2の転移
ピルビン酸
オキサロ酢酸
リンゴ酸の生成、 細胞質へ
ホスホエノール ピルビン酸
ビオチン
図10.3
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③フ ルク ト ース 1,6- ビスリ ン酸の脱リ ン酸化
フ ルク ト ース 1,6- ビスフ ォ スフ ァ タ ーゼ
フルクトース 1,6-ビスリン 酸
フルクトース6-リン酸 図10.4
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③フ ルク ト ース 1,6- ビスフ ォ スフ ァ タ ーゼ
を調節する要因
• エネルギーレベルの高低
– AMP 増加→エネルギーレベル低→フ ルク ト ース
1,6 ビスリ ン酸を阻害→糖新生を阻害
• フ ルク ト ース 2,6- ビスリ ン酸
– フ ルク ト ース 2,6 ビスリ ン酸増加→フ ルク ト ース 1,6
ビスフ ォ スフ ァ タ ーゼを阻害→糖新生を阻害
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③フ ルク ト ース 2,6- ビスリ ン酸による調節
フ ルク ト ースビスホスフ ァ タ ーゼ -2 (FBP-2) の活性低下
→フ ルク ト ース 2,6- ビスリ ン酸の濃度低下
→フ ルク ト ースビスホスフ ァ タ ーゼ -1(FBP-1) の活性上昇
→フ ルク ト ース 1,6 ビスリ ン酸から フ ルク ト ース 6- リ ン酸への反応がすすむ。
フ ルク ト ース 1,6- ビスリ ン酸
フ ルク ト ース 6- リ ン酸
ホスホフ ルク ト
キナーゼ -1
(PFK-1)
フ ルク ト ース
ビスホスフ ァ
タ ーゼ -1
(FBP-1)
PFK-2/FBP-2
複合体
フ ルク ト ース
2,6- ビスリ ン酸
抑制 促進
解糖 糖新生
(図10.5から作成)
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④グルコ ース 6- リ ン酸の脱リ ン酸化
グルコ ース 6- ホスフ ァ タ ーゼ
グルコース
図10.6
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糖新生に必要なエネルギー
グルコース6-リン酸 フルクトース6-リン酸
グリセルアルデヒド3-リン酸 フルクトース1,6-ビスリン酸
デヒドロキシアセト ンリン酸
3-ホスホグリセリン酸 2-ホスホグリセリン酸
ホスホエノールピルビン酸
ピルビン酸 オキサロ酢酸 CO2
グルコース
②
2 AT P
2 AT P
2 GT P 2 x
2 x 2 x 2 x 2 x
1,3-ビスホスホグリセリン酸 2 x
2 N ADH + 2 H+
図10.7
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糖新生のホルモンによる調節 (1)
インスリンレセプター グルカゴンレセプター
アデニル酸 シクラーゼ
ATP cAMP
プロテイ ンキナーゼ A
を活性化
PFK-2/FBP-2 複合体を
リ ン酸化
( 不活性化)
フ ルク ト ース 2,6- ビス
リ ン酸の濃度低下
フ ルク ト ースビスホスフ ァ
タ ーゼ -1 の活性上昇
糖新生
グルカ ゴン / イ ンスリ ン比の上昇
(図10.5から作成)
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糖新生のホルモンによる調節 (2) ー②ピルビン
酸から ホスホエノ ールピルビン酸へ
解糖での、 ホスホエノ ールピルビン酸から ピルビン酸への反応
を阻害する必要がある
ホスホエノ ールピルビン酸 (PEP)
ピルビン酸
オキサロ酢酸
ピルビン酸
キナーゼ
ピルビン酸カ ルボキシラ ーゼ
PEP カ ルボキシキナーゼ
図10.8から作成
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糖新生のホルモンによる調節 (2) ー②ピルビン
酸から ホスホエノ ールピルビン酸へ
グルカゴンレセプター アデニル酸
シクラーゼ
ATP cAMP
プロテインキナーゼAを活性化
ピルビン酸キナーゼをリン酸化
( 不活性化)
グルカ ゴン値の上昇
糖新生
PEPの濃度増加
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アセチル CoA による糖新生の促進
−ピルビン酸カ ルボキシラ ーゼの活性化
ホスホエノ ールピルビン酸 (PEP)
ピルビン酸
オキサロ酢酸
ピルビン酸
キナーゼ
ピルビン酸カ ルボキシラ ーゼ
PEP カ ルボキシキナーゼ
アセチル CoA
ピルビン酸デヒ ド ロゲナーゼ
−ピルビン酸デヒ ド ロゲナーゼの抑制
絶食時→過剰な 脂肪分解→肝臓で 脂肪酸のβ 酸化亢進
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質問( 1 )
• 糖新生によるピルビン酸から のグルコ ース合
成についての記述で正し いも のはどれか
– A すべて細胞質でおこ る
– B グルカ ゴン濃度が上昇すると 抑制さ れる
– C ビオチンが必要である
– D 乳酸が中間体と なる
– E FAD の酸化・ 還元が必要である
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質問( 2 )
• 糖新生に関する以下の記述のう ち正し いも の
はどれか
– A 筋肉でおこ る
– B フ ルク ト ース2 , 6 −ビスリ ン酸によっ て促進さ
れる
– C アセチル CoA 濃度が上昇すると 抑制さ れる
– D 正常な夜間絶食時に血糖値を保つために重
要である
– E 脂肪酸分解で供給さ れる炭素骨格を用いる
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質問( 3 )
• 以下の反応のう ち、 糖新生に特有な経路は
どれか
– A 乳酸→ピルビン酸
– B ホスホエノ ールピルビン酸→ピルビン酸
– C オキサロ酢酸→ホスホエノ ールピルビン酸
– D グルコ ース6 −リ ン酸→フ ルク ト ース6 −リ ン
酸
– E 1 , 3 −ビスホスホグリ セリ ン酸→3 −ホスホグ
リ セリ ン酸
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グリ コ ーゲン代謝
• 血糖値の維持: グリ コ ーゲンをグルコ ースに
分解し て血中に放出
• グリ コ ーゲン貯蔵場所: 肝と 筋
– 肝: およそ 100g 含有。 血糖になる
– 筋: およそ 400g 含有。 エネルギー源
イラストレーテッド生化学 図11.2
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グリ コ ーゲン代謝パスウェ イ の概要
グリ コ ーゲン
UDP- グルコ ース
グルコ ース 1- リ ン酸
グルコ ース 6- リ ン酸 グルコ ース
図11.1より作成
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グリ コ ーゲンの構造
α (1→6)グリコシド結合 分岐部
直線部
α (1→4)グリコシド結合
図11.3
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グリ コ ーゲンの合成
1. UDP- グルコ ースの合成
ウリジン二リン酸 グルコース
ホスホグルコムターゼによるグ ルコース6-リン酸からグルコー ス1-リン酸の生成
グルコース1-リン酸 グルコース1,6- ビスリン酸
グルコース6-リン酸
グルコース1-リン酸とUTPから、UDP-グ ルコースピロフォスファターゼによって UDP-グルコースを生成
図11.6
図11.4
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①UDP-グルコース生成
①
②
②UDP-グルコースからグルコースを受け取るためのプライマー として、既存のグリコーゲンまたはグリコゲニンタンパクを利用
③グリコゲニン自身によって最初の数分子のグルコース鎖延長がおこなわれる
③
④グリコーゲンシンターゼによるα (1→4)グリコシド結合による鎖の延長
④
⑤
⑤分岐酵素(4:6トランスフェラーゼ)によって鎖の末端が鎖の途中にα (1→6)結合される
④
⑤
図11.5
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グリ コ ーゲンの分解
グリコーゲンフォス フォリラーゼ
グルコース1-リン酸
グリコーゲン鎖
残りのグリコーゲン鎖
α (1→4)結合の切断とグ ルコース1-リン酸の生成
分岐部は分岐切断酵素 (debranching enzyme)に よって切断され、グルコース を生じる
グルコース1-リン酸は フォスフォグルコムターゼ でグルコース6-リン酸に なる。
肝臓では、グルコース6- リン酸はグルコース6- フォスファターゼによって グルコースになり、血中 に放出される
図11.7
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グリ コ ーゲン代謝パスウェ イ の酵素
グリ コ ーゲン
UDP- グルコ ース
グルコ ース 1- リ ン酸
グルコ ース 6- リ ン酸 グルコ ース
図11.1より作成
グリ コ ーゲンホスホ
リ ラ ーゼ
ホスホグルコ ムタ ーゼ
UDP-グルコースピロホスホリラーゼ
グリ コ ーゲンシンタ ーゼなど
グルコース6-ホスファターゼ
ヘキソキナーゼ/グルコキナーゼ
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グリ コ ーゲンの生成・ 分解の調節( 1 )
肝臓 筋
グリコーゲンフォスフォリ ラーゼ(分解酵素)を抑 制:グルコース、ATP、 グルコース6-リン酸 グリコーゲンシンターゼ
(合成酵素)を促進:グル コース6-リン酸
グリコーゲンフォス フォリラーゼ(分解酵 素)を抑制:ATP、グ ルコース6-リン酸
グリコーゲンフォス フォリラーゼ(分解酵 素)を促進:カルシウ ムイオン、AMP
グリコーゲンシンターゼ
(合成酵素)を促進:グル コース6-リン酸
図11.9
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グリ コ ーゲンの生成・ 分解の調節( 2 )
• 筋肉でのカ ルシウムによるグリ コ ーゲン分解
の活性化
– 小胞体から カ ルシウムイ オンが放出
– カ ルモジュ リ ンに結合
– カ ルモジュ リ ン -Ca
2+複合体
– 酵素に結合し て活性化
• ( 例) ホスホリ ラ ーゼキナーゼ
図11.10も参照
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グリ コ ーゲンの生成・ 分解の調節( 3 )
• cAMP 依存性経路によるグリ コ ーゲン分解の
活性化
– グルカ ゴンやアド レナリ ンが細胞膜のレセプタ ー
に結合
– cAMP 依存性プロテイ ンキナーゼの活性化
– ホスホリ ラ ーゼキナーゼの活性化
– グリ コ ーゲンホスホリ ラ ーゼのリ ン酸化→活性化
– グリ コ ーゲンの分解
図11.11も参照
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グリ コ ーゲンの生成・ 分解の調節( 4 )
• cAMP 依存性経路によるグリ コ ーゲン合成の
抑制
– ( 途中まで前スラ イ ド と 同じ )
– グリ コ ーゲンシンタ ーゼのリ ン酸化→不活性化
– グリ コ ーゲン合成の抑制
図11.12も参照
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質問
• アド レナリ ンと グルカ ゴンが肝臓におけるグリ コ ーゲ
ン代謝に及ぼす効果のう ち、 正し いも のはどれか
– A グリ コ ーゲンの正味の産生は増加する
– B グリ コ ーゲンホスホリ ラ ーゼは活性化さ れるが、 グリ
コ ーゲンシンタ ーゼは不活性化さ れる
– C グリ コ ーゲンホスホリ ラ ーゼも グリ コ ーゲンシンタ ーゼ
も 活性化さ れるか、 その程度に大きな開きがある。
– D グリ コ ーゲンホスホリ ラ ーゼは不活性化さ れるが、 グリ
コ ゲンシンタ ーゼは活性化さ れる。
– E cAMP 依存性プロテイ ンキナーゼは活性化さ れるが、
ホスホリ ラ ーゼキナーゼは不活性化さ れる。
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質問
• 収縮し ている筋肉において、 細胞質の Ca2+
濃度の急激な上昇は以下のどの現象をも た
ら すか?
– A cAMP 依存性プロテイ ンキナーゼの活性化
– B c AMP 依存性プロテイ ンキナーゼの触媒サブ
ユニッ ト と 調節サブユニッ ト への解離
– C プロテイ ンホスフ ァ タ ーゼの作用によるホスホ
リ ラ ーゼキナーゼの不活性化
– D ホスホリ ラ ーゼキナーゼの活性化
– E ホスホジエステラ ーゼによる cAMP の AMP へ
の変換
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