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高性能光ファイバ

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Academic year: 2018

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(1)

−1−

高 性 能 光 フ ァ イ バ に 関 す る 技 術 動 向 調 査

平成137月 技 術 調 査 課

 インターネットの爆発的な普及に代表される最近の情報通信技術の進歩には目覚ましいも のがある。従来の音声通信から映像を主体とした情報通信へと移行し、近い将来、社会全体 に張り巡らされたネットワークを通じて大量の情報が隅々まで飛び交う、マルチメディア社 会が到来しようとしている。

 この膨大な情報量を瞬時に処理するためには、基幹伝送系でテラ bi t / s 級の通信容量と高 速通信を可能とする高度光通信技術の開発が必須である。光ファイバおよびその周辺技術は、 この高度光通信技術の基幹となる重要な技術であり、その重要性はますます増大すると予想 されている。

 そこで、本調査レポートでは、光ファイバおよび光ファイバを構成要素として含む光通信 用部品等を対象とした調査分析を行った。光ファイバ技術に関する現在までの技術開発動向 を調査して我が国の技術水準を国際的見地から評価するとともに、激しい国際競争の中での 特許活用事例について調査し、今後の技術開発の方向性と取り組むべき課題について検討し た。

1.市場動向

 光ファイバケーブルおよび光増幅器について、日米欧の販売額の推移を下図に示す。  1999 年時点での光ファイバケーブルの日米欧の市場規模は、それぞれ約 1, 700 億円、 2, 100億円、1, 900 億円である。日米の市場の伸びは横ばいまたはやや減少するものと見 られているのに対し、欧州の市場規模は 2005 年には 2, 500 億円にまで拡大すると見られ ている。欧州は日米と比較して幹線系の敷設がやや遅れていたが、最近各国で通信事業に 対する規制が緩和され、敷設計画が積極化していることから、市場の拡大が期待されてい る。

 一方、光増幅器は 3 地域とも販売額を伸ばし、2005 年時点では 1999 年の 2 倍以上にな ると予測されている。

日米欧の販売額

0 1 0 0 2 0 0 3 0 0

光 フ ァ イ ハ ゙ ケ ー フ ゙ ル 光 増 幅 器

1 9 9 5 2 0 0159 9 5 2 0 05 日 本

欧 州 米 国

日 本 米 国

欧 州

0 1 0 0 2 0 0 3 0 0 十 億 円

*1999 年までは実績、2000年は見通し、2001年以降は予測

(2)

−2−

 光ファイバ関連部品の国内生産額の推移を下図に示す。

 石英系光ファイバについては、インターネット、携帯電話の急速な普及により国内需要 は高いものの、すでに敷設しているケーブルで当面はある程度カバーできることから急速 な伸びはないものと見られている。ただし数年後は、通信・放送における情報伝達の大容 量化やFTTHの進展によって需要は大幅に拡大するものと見られている。

 光ファイバケーブルは各地域のドメスティック・ユースになりがちであり、国内メーカー も現地生産化に移行しつつあるのに対し、その他の光部品は国際流通性が高く、好調な輸 出に支えられて生産額も大幅な伸びが見込まれている。今後ケーブルの敷設が幹線系から 利用者系に拡大していくことになれば、この傾向はさらに助長されるものと思われる。

日本国内生産額

2.政策動向

 (1)日米欧の産業政策

 光ファイバ関連の産業政策立案・推進 については、最近は 3 地域の中で日本が 最も活発になってきている。

 米国でもかつては、現在の日本のよう に光ファイバケーブルを用いた国主導で の高速・大容量伝送網の敷設・設備計画 が精力的に進められたが、現在はすでに この段階は過ぎ去り、実需要に基づくビ

ジネスとしての伝送網の敷設・整備が民間主体で進められている。

 欧州連合は 1998 年に情報通信の規制緩和を実施した。これにより、加盟各国では、 国内法の整備や規制機関の設置が行われる一方、旧国営・独占電話会社は民営化される とともに、強い競争力を持つ米国の通信事業者が押し寄せ、これらと提携した多数の事 業者との激しい競争に直面しつつある。また、欧州では、欧州連合 (国)が金を、大学 が知恵を、企業が物を出す産官学の連携体制がうまく運用されている。欧州経済圏を結

光回路部品 光増幅器 光フ ァイ ハ ゙  ケー ブ

光コネ ク タ

光受動部品

光セ ン シ ン ク ゙機器

8 0 0

0 4 0 0

1 9 9 5 1 9 9 7 1 9 9 9 2 0 0 1 年 十 億 円

*1999年までは実績、2000年は見通し、2001年は予測

国主導による高速伝送網敷設 国主導から民間主導へ

  ビジネスとしての伝送網敷設 情報通信の規制緩和

産官学の連携体制

欧州連合が金、大学が知恵、企業が物 日 本日 本

米 国米 国

欧 州欧 州

日米欧の産業政策

(3)

−3−

ぶ大容量の情報ハイウエイを光技術でつくることが開発ターゲットのひとつである。欧 州における課題は、商用化が米国ほど進まないことである。

 (2)標準化の動向

  光 通 信 シ ス テ ム の 国 際 標 準 化 は 、 主 に I T U − T と I E C の 連 携 に よ り 行 わ れ ている。

 国内標準化のうち光通信システムの標準 化には、主として郵政省(現総務省)が行 う強制規格の策定と民間を中心に行われる 任意の標準規格の策定がある。これらの規 格は極力国際標準に準拠して作成される。 一方、ファイバオプティクスの標準化につ いては、( 財) 光産業技術振興協会が 1981 年 度以降、継続して通産省(現経済産業省)、 ( 財) 日本規格協会、 ( 社 ) 電機工業会等の委

託を受けてJIS(日本工業規格)素案の検討、作成などを通じ標準化の推進に寄与して いる。

3.技術動向

 光ファイバに関する技術の俯瞰図を次ページに示す。

 1.で述べたとおり、光ファイバに関連する市場では幹線系に用いられる通信用の 石英系光ファイバの占める割合が非常に大きい。したがって、技術的にも光信号伝送 用の無機ガラス光ファイバは従来から重要視されており、今後もその傾向は続くと考 えられる。一方、一般家庭内や事務所構内のネットワークの光化が有望視されている ことから、短距離光通信網を安価に構築できる全プラスチック光ファイバも注目を集 めている。

 幹線系の通信技術ではWDM (波長分割多重)伝送における多波長化・長距離化と、 波長ルーティングが大きな課題であると考えられている。

 光ファイバは特に前者の課題に深く関係があり、この課題を解決するための研究が 精力的に進められている。これらの特性に対する要求が急速に高度化しているため、 異種ファイバの組み合わせにより要求特性を満足する試みも活発化している。

 光通信用デバイスでは、WDM伝送の多波長化に関してデバイスの多波長化、波長 安定化(波長ロック)、伝送帯域および利得帯域平坦化などが求められている。また、 WDM伝送の長距離化に必要なデバイスとして光増幅器と分散補償器の高機能化が進 められている。一方、波長ルーティング用デバイスとしては、光スイッチ、波長 Add/ Dr op マルチプレクサ、波長変換器の重要性が高まっている。特に、ファイバグレーティン グは種々の用途に適用可能で、注目されるデバイス要素である。

 光ファイバセンサの中では機能型センサの研究開発が現在活発である。通信用デバイ ス要素として注目されているファイバグレーティングはセンサ要素としても有望である。

標準化関連機関

 ITU−T システム、インターフェース規定  IEC   用語定義、試験法の規格化

 光通信システムの標準化

  郵政省( 現総務省)  強制規格の策定   民 間      任意の標準規格の策定  ファイバオプティクスの標準化

  通産省( 現経済産業省) /( 財) 日本規格協会        強制規格の策定   財団法人 光産業技術振興協会     JIS素案の作成

    1988 年 光産業技術標準化会 国際標準化

国内標準化

(4)

−4− 技術俯瞰図

システム化

 構成:光源

    光受信器

    信号処理器

 特性解析

 製造

 検査

設 置 運 用

光応用計測システム 構 造

 機能:歪みセンサ     温度センサ  等  構成:計測原理  等  特性解析 :検出感度       温度特性  等

製 造  製造  検査

光ファイバセンサ

システム化

 構成:光源

    集光系  等

 特性解析

 製造

 検査

運 用

エネルギー伝送システム 光伝送システム 構 造

 機能:エネルギー伝送     光伝送  等  構成

 特性解析 製 造

 製造

 検査

ライトガイド

ケーブル敷設

 延線

 接続:永久接続     コネクタ接続

 検査

ケーブル運用

 保守:障害点検出     寿命予測  等

(本調査ではこの  領域は扱わない)

光通信システム 構 造

 機能:公衆通信

    船舶車両内信号伝送 等

        構成:ユニットケーブル

    ルースチューブケーブル     スロットケーブル 等  特性解析 :伝送特性       機械特性       耐環境特性 等

製 造

 製造:集合

    外被がけ  検査

光通信用ケーブル

構 造

 機能:光スイッチ     光増幅器     波長変換器     分散補償器     波長ロック/ 選択器     波長 Add/ Dr op マルチプレクサ 等  構成:ファイバグレーティング     干渉計   等  特性解析 :伝送特性

    (帯域,波長総数等)等 製 造

 製造

 検査

光通信用デバイス

システム化

 構成

 特性解析

 製造

 検査

運 用

画像直接伝送システム 構 造

 機能:二次元信号を        そのまま伝送  構成:コンジット型        バンドル型

    アレイ型  特性解析 :解像度

      Yel l ow I ndex  等 製 造

 製造

 検査

イメージガイド 構 造

 機能:光信号伝送     画像伝送     光エネルギー伝送     光増幅

    分散制御  等

 化学的構成:無機ガラス光ファイバ        全プラスチック光ファイバ       等

 物理的構成:屈折率分布        応力付与  等

 特性解析 :構造パラメータ       伝送特性       非線形光学特性       増幅特性  等

製 造  母材製造  線引き  被覆  検査       等

光ファイバ

ファイバ デバイス システム

(5)

−5− 4.日米欧における研究開発状況の比較

 (1)高性能光ファイバに関する研究開発テーマ

 高性能光ファイバ関連技術のうち特に重要と考えられる 6 つの領域(WDM伝送用 ファイバ、光増幅用ファイバ、分散補償ファイバ、全プラスチック光ファイバ、コネク タ(主にフェルール)、歪み検知用光ファイバセンサ)について、主要な特許および原 著論文類(原著論文、速報、学会発表)をもとに研究開発テーマを整理した。その一部 を以下に示す。

光ファイバ関連研究開発テーマリスト(一部)

対象技術 用途( 市場) 競争軸 研究開発テーマ 接続の低損失化 増幅系構成の検討 構成部品の低損失化 励起波長帯の選択 自然放出雑音の低減 高出力化/

高利得化/ 高効率化/ 低雑音化

雑音測定 安定化 利得一定制御

利得等化器の高性能化 増幅器の複合化 通信

( WDM伝送)

利得平坦化/ 広帯域化

設計・評価技術の開発 高出力化 高出力増幅器の開発

増幅器の複合化 光増幅器の

構成

アナログ伝送

利得平坦化/

広帯域化 利得の傾きの計測

 (2)原著論文類からみた研究開発の現状と動向

 光ファイバに関連する発表論文数上位機関は次表のとおりである。 光ファイバ関連原著論文類発表数上位機関 (1980∼1999 年)

日  本 米  国 欧  州

順位 機関名

原著 論文類 発表数

順位 機関名

原著 論文類 発表数

順位 機関名

原著 論文類 発表数 1 日本電信電話 3, 249 1 L uc ent Tec hnol ogi es 2, 169 1 Br i t i s h Tel ec om 943

2 NEC 445 2 Nav al Res . Lab. 745 2 Uni v. Sout hampt on 628

3 住友電気工業 346 3

Tel c or di a Tec hnol ogi es ( 旧Bel l c or e)

463 3 Fr anc e Tel ec om, CNET 428

4 KDDI 273 4 Uni v. Cal i f or ni a 416 4 Al c at el 396

5 富士通 245 5

Vi r gi ni a Pol y t ec h. I ns t . & St at e Uni v .

323 5 Si emens 373

6 日 立 製 作 所 243 6 I BM 321 6 CSELT 361

7 東京大学 231 7 St anf or d Uni v. 315 7 Uni v. Kent 334

8 大阪大学 203 8 Uni v. Mar yl and 297 8 Uni v. St r at hc l yde 251

9 古河電気工業 189 9

Mas s ac hus et t s I ns t i t ut e of

Tec hnol ogy

265 9 Ci t y Uni v . 168

10 フジクラ 184 10 Cor ni ng 260 10

Hei nr i c h- Her t z - I ns t . F ur Nac hr i c ht en- t ec h.

Ber l i n GmbH

159

(6)

−6−

 (1)で整理した用途および競争軸ごとに、原著論文類の数と内容を参考にして日米 欧における競争力を比較した。結果を次表に示す。原著論文類数は英語文献の数とし、 日本語文献は含めなかった。また、本調査は「技術動向調査」であるから研究水準ではな く技術水準を重要視することとした。すなわち、文献の内容については、当該競争軸の 効果を実現したという報告を最高の評価とし、次に原理の発見を高く評価した。当該競 争軸の効果に関するモデリングや理論はあまり高く評価しなかった。

原著論文類からみた競争力比較

技術水準比較( 上段) と強みとする研究開発テーマ( 下段) 対象技術 用途( 市場) 競争軸

日本 米国 欧州

やや強い 強い 普通

WDM伝送路非線形光学

効果の低減 非ゼロ分散シフト光ファイバ 非線形光学効果の影響評価

やや弱い 強い 弱い

広帯域化

分散と分散スロープの同時補償

やや強い 強い 普通

分散補償

分 散 補 償 効 果

向上 光位相共役の利用 デ ュ ア ル モ ー ド 光 フ ァ イ バ の 利用

光位相共役の利用

弱い やや弱い 強い

偏波モード 分散補償

偏波モード分散 補償効果向上

注1 強い 普通

高出力化/ 高利得化/ 高効率化/ 低雑音化

強い やや弱い やや強い

無機ガラス 光 フ ァ イ バ の 構成

光増幅器

利得平坦化/

広帯域化 Er3+ド ー プ 用 ホ ス ト ガ ラ ス の 探索

弱い 普通 強い

簡易化/

小型化 フ ァ イ バ ブ ラ ッ グ グ レ ー テ ィ

ングの利用

やや弱い 強い やや弱い

広帯域化

ファイバブラッググレーティン グによる分散補償の広帯域化

弱い 強い 弱い

分 散 補 償 器 の 構成

通信 ( WDM伝送)

調整可能化

フ ァ イ バ ブ ラ ッ グ グ レ ー テ ィ ングの調整可能化

強い 弱い やや弱い

光増幅器の 構成

通信 ( WDM伝送)

利得平坦化/

広帯域化 光増幅器の複合化

強い やや弱い 弱い

小型化/ 多心化/ 高密度化

フェルールの積層

強い 弱い 弱い

低価格化

ジ ル コ ニ ア 以 外 の フ ェ ル ー ル 材料の探索

強い やや弱い 弱い

光 コ ネ ク タ の 構成

通信

組立作業性 向上

現場組立可能化

強い 普通 弱い

広帯域化

グレーデッドインデックス型全 プラスチック光ファイバの開発

強い 弱い 普通

全 プ ラ ス チ ッ ク 光 フ ァ イ バ の構成

短距離通信

低損失化

近赤外用光ファイバの開発

弱い 普通 強い

光ファイバ 機 能 型 セ ン サ の構成

歪みセンサ 簡単化/

小型化 フ ァ イ バ グ レ ー テ ィ ン グ の 利

弱い やや弱い 強い

分布型測定

可能化 セ ン サ か ら の 反 射 光 の 波 長 変

化/位相変化検出方式の検討

弱い やや強い 強い

光ファイバ 機 能 型 セ ン サ のシステム化

歪みセンサ

歪 み と 温 度 の 同時測定 可能化

フ ァ イ バ グ レ ー テ ィ ン グ の 利

複数のセンサの複合化

フ ァ イ バ グ レ ー テ ィ ン グ の 利

自然ブリユアン散乱の利用 注)1.最近このテーマに関する日本の原著論文類の数は少ない。しかし、それは日本がこの分野の研究開発をすでに終えているため

であって、この分野の技術水準が低いからではないと考えられる。

(7)

−7−  (3)特許からみた研究開発の現状と動向

 過去 20 年における日欧特許出願件数および米国特許取得件数の上位各 10 機関は次表 のとおりである。

光ファイバ関連特許出願数上位機関

順位 機関名

特許 出願件数

順位 機関名

特許 取得件数

順位 機関名

特許 出願件数 1 日本電信電話 6, 261 1 L uc ent T ec hnol ogi es 1, 331 1 L uc ent T ec hnol ogi es 715

2 住友電気工業 5, 404 2 住友電気工業 585 2 Al c at el 419

3 古河電気工業 3, 840 3 S i emens 428 3 Si emens 396

4 フジクラ 3, 328 4 Cor ni ng 386 4 住友電気工業 378

5 富士通 2, 281 5 日本電信電話 288 5 Cor ni ng 346

6 NEC 1, 764 6 Phi l i ps 277 6 Phi l i ps 321

7 日立電線 1, 679 7 Amer i c a Nav y 260 7

Dr J ohannes Hei denhai n GmbH

148

8 松下電器産業 1, 221 8 NEC 250 8 日本電信電話 147

9 日 立 製 作 所 1, 209 9 富士通 220 8 Br i t i s h Tel ec om 147

10 三菱レイヨン 865 10

Hughes Ai r c r af t

188 10 Pi r el l i 123

 (1)で採り上げた高性能光ファイバ関連技術に関係の深い6つの技術領域について、 特許の出願および取得件数をWPIファイルで調査した。その中から、光増幅について の結果を下図に示す。希土類ドープファイバ増幅器の技術は日本が世界をリードしてい るが、光増幅技術関連特許全体で見ると、特に日本の優位性はうかがえない。この分野 の特許の出願数はここ10年間あまり変化がないが、内容はデバイス中心からシステムへ と移り変わってきている。デバイスで優位に立った日本が今後もこの分野で優位性を保 てるか否かの鍵は、システム化技術にあると考えられる。

出願先国別・出願人国籍別の特許出 願および取得状況 −光増幅− ( a) 特許出願件数 ( b) 特許取得件数

注)1.特許出願件数および特許取得件数は 1990∼1998 年の 9 年間の合計値である。

  2.件数はWPIファイルにおける該当データ件数であり、厳密には出願件数や取得件数とは 一致しない。

 (1)で採り上げた 6 つの技術領域における光ファイバに関する主な特許を発明の構 成および効果について分類し、出願された時期を出願人国籍別にプロットして、日米欧 における技術発展の変遷を分析した。 その中から光増幅についての結果を次に示す。光

0 200 400 600 800 1000

日本 米国 欧州

欧州 米国

日本

出願人国籍

出願先国

0 200 400 600

日本 米国 欧州

欧州 米国

日本

出願人国籍

出願先国

(8)

−8−

増幅技術に関しては、1990 年代前半から多くの特許が出願され、日本が他国に先駆け て多くの特許を出願している。効果に関しては、1990 年代前半は高出力化のニーズが 高く、それを発明の目的とした特許が多く出願された。構成の面からみると、この頃は、 高出力化、高効率化を目指した希土類のドープ方法に関する研究開発が盛んであった時 期である。その後、研究テーマは広帯域化や利得の平坦化、非線形光学効果の低減へと 移行している。それにともない、1990 年代にはいって広帯域増幅器を実現するための ホストガラスの探索に関する特許が散見されはじめ、1995 年以降に特に目立つように なった。また、ラマン増幅に関する特許が最近出願されはじめており、今後の動向が注 目される。

   光増幅技術の変遷     ( a) 構成

    ( b) 効果

 (1)で採り上げた高性能光ファイバに関連する技術領域の中で特に注目される技術 について、過去 20 年間にわたって注目特許を探索し、発展の推移を調査した。ここで はエルビウム(Er )ドープ光ファイバ増幅器に関する結果を示す。Er ドープ光ファイ バ 増 幅 器 に つ い て は 、「 ド ー ピ ン グ し た 光 フ ァ イ バ を 用 い る レ ー ザ 増 幅 器 」( 特 許 2742309)を注目特許として採り上げた。レーザ活性物質を添加した光ファイバを光増 幅に使う技術は前駆特許にあるが、この理論を定量的に規定したのが注目特許である。

80 85 90 95 00

希土類ドープ ホストガラス 大誘導断面積 ラマン増幅

特開平 1- 94329 87 年 10 月 希 土 類 ド ー プ し た 光 フ ァ イ バ に よ る 直接増幅素子開発

EP 368196 88 年 11 月( 優)

Er ド ー プ 量 、 フ ァ イ バ 長、ドーピングゾーン径 方向位置特定し利得拡大

US 4674830 US 4723824 US 4859016 83 年 11 月 希 土 類 ド ー プ フ ァ イバ光学増幅器

日本 米国 欧州

80 85 90 95 00

非線形光学効果低減 出力

帯域 利得平坦化

特開平 1- 94329 87 年 10 月 希 土 類 ド ー プ し た 光 フ ァ イ バ に よ る 直接増幅素子開発

EP 368196 88 年 11 月( 優)

Er ド ー プ 量 、 フ ァ イ バ 長、ドーピングゾーン径 方向位置特定し利得拡大 US 4674830

US 4723824 US 4859016 83 年 11 月 希 土 類 ド ー プ フ ァ イバ光学増幅器

日本 米国 欧州

(9)

−9−

三菱電線工業の特許(特開平 1- 94329)の方が早いが、他の元素を加えた改良特許に相 当する。

(10)

−10− Erドープ光ファイバ増幅器技術の発展の推移

(前駆特許:活性物質ドープ)

US4515431、特公平 4- 64197  特公平 6- 24273 82. 08. 11、82. 12. 10( 優)    83. 11. 25( 優)

リーランド スタンフォード リーランド スタンフォード ジュニア 大学( 米国)     ジュニア 大学( 米国) 第1の屈折率を持つファイ  レーザ発振物質がドープ バと活性レーザ放射物質で  された結晶ファイバとポ ドープされた第2の屈折率  ンプ光源と一端に結合し を持つファイバを極く接近  た光ファイバと結合手段 させたファイバ光学増幅器  からなるファイバ光学増         幅器

      (注目特許:E r ドープ)        特許 2742309

       88. 11. 10( 優)        ジエネラル

       デレクトリシテ( 仏国)        Er ドープ量、ファイバ        長さ、ドーピングゾー        ンの径方向位置を特定;        利得の拡大

       (非権利化特許)    (双方向から励起光)

      特開平 1- 94329 特公平 7- 58377 特許 2627562 特許 3062204       87. 10. 06 88. 12. 12 89. 09. 06 89. 10. 13       三菱電線工業、 日本電信電話 国際電信電話 三菱電線工業       日本電信電話 Er 添加光ファイバの Er ドープファイバの 日本電信電話       光信号を直接増幅す 1端から 1. 4μ mレー 両端にポンピング光 増幅用光ファイバの       る素子として希土類 ザ出力を他端から 1. 5 源をおいて励起;増 順および逆方向に       元素( Nd、Yb、Er など) μ m出力を入射;小型 幅特性が双方向で等 励起手段配置;増幅       をドープした光ファイ 高増感度       しくなる パワー大

      バを用いる;他の元素       もドープして広帯域化

      (構造・構成)

       特許 2617564 特開平 3- 132726        89. 03. 13        89. 10. 19        日本電信電話   藤倉電線

       希土類元素添加増幅   コア中心部に希土類        媒体としてロッドを   元素添加しそのまわ                 用いる;励起断面積   りに第2のコア;                 拡大で大出力光源を   励起光の強度分布に                   利用できる   よる増感度低下なし

      特許 2596620       90. 01. 09       日本電信電話       発振波長 0. 8μ mの励       起光と 1. 5μ m信号光       を合波して Er 添加フ       ァイバに入射;Er       0. 8μ mで励起される       小型増幅器

注)1.年月日は出願日または優先権主張日

(11)

−11− 5.技術開発の方向性と課題

 (1)技術開発の方向性

 技術開発の方向性を下図にまとめた。

 今後、本格的な情報化社会を迎えるにあたり、情報通信のグローバル化と情報通信量 の飛躍的増大が予想されるため、光ファイバ伝送の更なる大容量化と長距離化が一層重 要となり、デバイス面では地球規模の長距離大容量WDM伝送を可能にするための超低 損失広伝送帯域ファイバ、広利得帯域ファイバアンプや広帯域高精度分散補償技術とそ の関連デバイスの技術開発が焦点になるものと思われる。一方、地球規模の大容量海底 通信網や国内の幹線網の整備と並行して、加入者宅にも大量の情報を安価に送信する加 入者網の整備も重要となる。途中まで光ケーブルで対応し最後の数 100m を銅ケーブル やCATV用同軸ケーブル、無線通信とする現行の方式では伝送容量不足となるのは必 至で、いずれ、加入者宅まで光ケーブルとするFTTH方式の実現が必須である。また、 高速インターネットアクセスなどの需要の増加とともに光加入者網サービスは普及して 低コスト化が進み、また、100Mb/ s 、さらには 1Gb/ s へと高速広帯域化されていくもの と思われる。

 光加入者網の普及により家庭内に大量の情報が入力されることとなり、住宅内部にも 高速の通信回線が必要となってくる。住宅内の通信回線として、通常の電話線を使う方 式のほか、無線通信方式や電灯線を活用する方式、さらには全プラスチック光ファイバ による光伝送方式などが検討されている。なかでも、高速データの伝送が可能で石英系 ファイバよりも扱いやすく短距離光伝送の分野で威力を発揮する全プラスチック光ファ イバは、この種の住宅内通信回線の最有力候補になるものと期待される。

技術開発の方向性

  (a)無機ガラス光ファイバ

 WDM伝送技術の出現により、無機ガラス光ファイバの特性が地球規模の長距離光通 信網の伝送容量や伝送距離、伝送品質を決める重要な要因となってきた。とくに、優れ た広帯域伝送特性や平坦な波長分散特性、小さな偏波分散特性を有する光ファイバの構 造設計技術とその精密な加工技術の開発が鍵を握るとされている。

情報通信のグローバル化と通信量の飛躍的増大

海底通信網、幹線網 大容量化、長距離化 安価に大容量化 一般家庭・事務所内 安価に高速化

無機ガラス光フ

− 優れた広帯域伝送特性、平坦な波長分散特性、小さな偏波分散特 性を実現する構造設計技術と精密加工技術

全プラスチック光ファイバ ∼ 日本が世界を大きくリード − 家庭電気機器や事務機器の技術と統合した新産業の創出 光ファイバ増幅器

− 増幅効果の向上、利得の広帯域・平坦化 その他の光伝送部品

− 小型・多心化、低価格化、接続性能向上、組立作業性向上

(12)

−12−

(b)全プラスチック光ファイバ

 一般家庭内や事務所構内に光ファイバ回線を引く場合には、短い伝送線の中に数多く の分岐や端末機器との接続がなされるため、低コストで分岐や接続が可能な光ファイバ 系が望まれる。全プラスチック光ファイバは、無機ガラス光ファイバに比較してコア径 が大きく、かつ曲げにも強い特徴があるため、この種の用途に最適な光ファイバである。  以前から、家庭電気機器や事務機器は我が国が強い国際競争力を有してきた分野であ り、技術力と産業支配力の両面で世界をリードしてきた。一方、全プラスチック光ファ イバも、その画期的な製法がわが国で開発され、また、製品を生産しているのは実質的 に日本メーカーのみであるなど、わが国が世界を大きくリードしている。これらふたつ の技術を統合した一層強い国際競争力をもつ新しい産業を、わが国が世界に先駆けて切 り開いて行くために、全プラスチック光ファイバに果たす役割はきわめて大きい。   (c)光ファイバ増幅器

エルビウム ( Er ) をドープした光ファイバ増幅器(EDFA)とツリウム( Tm) をドー プした光ファイバ増幅器 (TDFA)やファイバラマン増幅器とを組み合わせてさら に増幅帯域を拡張する研究がなされている。

増幅効果の向上,利得の広帯域 ・平坦化が中心課題である。   (d)光コネクタ等その他の光伝送部品

    堅調な光ファイバ需要に追随して、光コネクタの需要は、今後も年率 10%程度の 伸びで推移し、中でもシングルモード光ファイバ用の多心タイプが増加していくと考 えられている。小型・多心化,低価格化,接続性能の向上,組立作業性向上などが今 後の検討課題である。

 (2)取り組むべき課題

 技術、産業、政策面での課題は下表のとおりである。

技術、産業、政策面での課題

技術的課題 産業界のあり方 必要な政策

大容量化・長距離化

 WDM伝送用光ファイバの   低波長分散化

  多重波長スペースの縮小   偏波分散低減

 ファイバ増幅器の   広利得帯域化

関連業界や大学・国立研究機 関の技術陣の総力を結集した 開発体制の確立

実用化に向けた研究開発を加 速する方策

加入者系の光ケーブル化  関連通信設備の低コスト化

ネットワークとしての運用上 の経済性の向上

需要喚起の方策

膨大な設備投資に対する税制 上の優遇策

長期的視野にたった設備投資 とその運用を進められる政策 全プラスチック光ファイバ

 情報家電との異業種間の  協調体制による新用途開発

全プラスチック光ファイバの メーカーと家電メーカー、事 務機メーカー等との協力体制 強化

所管官庁における既存の枠を 越えた支援策

光部品

 小型化,多心化,高密度化,  標準化,低価格化

通 信 事 業 者 , シ ス テ ム メ ー カー,材料メーカーの緊密な 連携

国際標準化に向けて政策面で の主導的な役割

(13)

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 特に、特許の面に関しては、下図のような課題がある。

特許面での課題

 近年、世界の主要国において通信事業が自由化され、かつ、サービスの対象範囲が地 球規模に拡大( グローバル化) されるにつれて、通信事業者にとっては、国際標準に準拠 した設備を整備して、世界中のどの国にでも提供可能な仕組みをつくることが重要とな り、一方、通信機器メーカーにとっては、世界中の通信事業者をユーザーにして、世界 標準に準拠した製品を他社よりも早く低価格で提供することが重要となってきた。  光ファイバ,光伝送部品メーカーにとっても、多様な世界中のユーザーに独自の優れ た商品を提供できるもののみが勝ち残るという厳しい事業環境に置かれることになる。 さらに、これらの商品は機能と経済性のみが優劣を決める可能性が強く、優れた発明が 世界市場を制覇してしまうこともあり得る業種である。

 一方、高性能光ファイバ及び光伝送部品は情報通信の根幹に関わるものであり、多く の機器,システムと接点を有している。このため本商品の国際標準の整備は不可欠であ り、標準作成の場において主導権を握るためにも、優れた技術,特許権を保有している 必要がある。また、伝送情報の内容や伝送システムは多様なユーザー・ニーズに対応し つつ変化していくので、これらの推移をよくウォッチし、先進性のある商品をタイムリー に提供できる研究戦略,特許戦略が重要である。

国 際 標 準 の 整 備 は 不 可 欠 多様な世界中のユーザーに独

自の優れた商品を提供できるも ののみが勝ち残る

先 進 性 の あ る 商 品 を タ イ ム リ ー に 提 供 で き る 研 究 戦 略 、 特 許 戦 略 優れた発明が世界市場を制覇

標準化で主導権を握るために、 優れた技術、特許権の保有が

必要

【お問い合わせ先】

特許庁技術調査課技術動向班

100-8915

東京都千代田区霞が関3−4−3 Tel03-3581-1101 内線2155 Fax03-3580-5741

E-mailPA0930@jpo.go.jp

参照

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