2016.7.14. 作成:加藤賢悟 補足資料:特性関数
特性関数が分布を一意に決めることと,その系として,モーメント母関数が存在すれば 分布を一意に決めることを証明する.また,連続性定理を証明する.簡単のために1次元 の場合を考える.次の技術的な補題が重要である.
Lemma 1. Xをr.v.とし,その特性関数をϕとする.また,σ >0に対してZσ ∼ N(0, σ2) であって,Xと独立とする.このとき,有界区間の外側では0になる連続関数g: R → R に対して,
E[g(X + Zσ)] = 1 2π
∫ ∞
−∞
ˇ
g(t)e−σ2t2/2ϕ(−t)dt が成り立つ.ここで,
ˇ g(t) =
∫ ∞
−∞
g(x)eitxdx である.
Proof. x∈ Rに対して, E[g(x + Zσ)] = √ 1
2πσ2
∫ ∞
−∞
g(x + z)e−z2/(2σ2)dz= √ 1 2πσ2
∫ ∞
−∞
g(u)e−(u−x)2/(2σ2)du. ここで,N(0, 1)の特性関数がe−t2/2であることから,
e−t2/2= √1 2π
∫ ∞
−∞
e−x2/2+itxdx が成り立つ.変数を入れ替えて,
e−(u−x)2/(2σ2) = √σ 2π
∫ ∞
−∞
e−σ2t2/2+i(u−x)tdt を得る.よって,
E[g(x + Zσ)] = 1 2π
∫ ∫
g(u)eitue−σ2t2/2e−itxdtdu= 1 2π
∫ ∞
−∞
ˇ
g(t)e−σ2t2/2e−itxdt を得る.積分順序の交換はFubiniの定理から保証される.従って,再びFubiniの定理より,
E[g(X + Zσ)] = E[E[g(x + Zσ)]|x=X] = 1 2π
∫ ∞
−∞
ˇ
g(t)e−σ2t2/2E[e−itX]
| {z }
=ϕ(−t)
dt
を得る.
この補題を使って,特性関数が分布を一意に定めることを示そう.
Theorem 1. X ∼ F, Y ∼ Gに対して,特性関数をそれぞれϕF, ϕGとする.このとき, ϕF ≡ ϕGならばF ≡ Gである.
Proof. σ >0に対してZσ ∼ N(0, σ2)として,(X, Y )と独立とする.任意のa < b, ε >0 に対して,
ga,b,ε(x) =
0 x < a− ε linear a− ε ≤ x < a 1 a≤ x ≤ b linear b < x≤ b + ε 0 x > b+ ε とおくと,
I(a,b](x) ≤ ga,b,ε(x) ≤ I(a−ε,b+ε](x), ∀x ∈ R, |ga,b,ε(x) − ga,b,ε(y)| ≤ |x − y|ε , ∀x, y ∈ R をみたす. よって,
0 ≤ E[ga,b,ε(X)] − P (a < X ≤ b) ≤ P (a − ε < X ≤ a) + P (b < X ≤ b + ε) であって,
|E[ga,b,ε(X)] − E[ga,b,ε(X + Zσ)]| ≤ E[|ga,b,ε(X) − ga,b,ε(X + Zσ)|] ≤ E[|Z
σ|]
ε ≤
σ ε. 同様の評価がXをY に替えても成り立つ.ここで,ϕF ≡ ϕGと(*)より,E[ga,b,ε(X + Zσ)] = E[ga,b,ε(Y + Zσ)]だから,
|P (a < X ≤ b) − P (a < Y ≤ b)| ≤ P (a − ε < X ≤ a) + P (b < X ≤ b + ε) + P (a − ε < Y ≤ a) + P (b < Y ≤ b + ε) +2σε
を得る.さらに,a→ −∞, σ ↓ 0, ε ↓ 0の順に極限をとって,F(b) = G(b)を得る. 次に,モーメント母関数が存在すれば分布を一意に定めることを示す.
Theorem 2. X∼ F, Y ∼ Gに対して,それぞれモーメント母関数ψF, ψGが存在すると する.このとき,十分小さいε >0に対して,
ψF(θ) = ψG(θ) ∀|θ| < ε ならばF ≡ Gである.
Proof. ψF を複素平面の領域D= {θ + it : |θ| < ε, −∞ < t < ∞}に拡張する: ψ˜F(z) = ˜ψF(θ, t) = E[e(θ+it)X], z = θ + it, |θ| < ε, −∞ < t < ∞.
ここで,E[eθX] < ∞ ∀|θ| < εより,ψ˜F は複素数値関数としてちゃんと定義されている. ψ˜F がD上で正則であることを確認しよう.そのためにはψ˜F(θ, t)が(θ, t)について連続 微分可能であって,Cauchy-Riemannの方程式
∂ ˜ψF
∂θ (θ, t) + i
∂ ˜ψF
∂t (θ, t) = 0 をみたすことを確認すればよい.いま,
∂
∂θe
(θ+it)X = Xe(θ+it)X, ∂
∂te
(θ+it)X = iXe(θ+it)X
であって,|θ| < εにおいて期待値と偏微分の交換が正当化できて,
∂ ˜ψF
∂θ (θ, t) = E[Xe(θ+it)X], ∂ ˜ψF
∂t (θ, t) = iE[Xe(θ+it)X]
となるから(Lebesgueの優収束定理による),Cauchy-Riemannの方程式がみたされる.さ らに,再びLebesgueの優収束定理より,(θ, t) 7→ E[Xe(θ+it)X]が|θ| < εにおいて連続であ ることが示せるから,ψ˜FはD上で正則である.同様に,ψGもD上の正則関数ψ˜Gに拡張で きる.ここで仮定より,ψ˜Fとψ˜Gは{θ ∈ R : |θ| < ε}上で一致しているので,正則関数に対 する一致の定理より,ψ˜F(z) = ˜ψG(z) ∀z ∈ Dを得る.これからE[eitX] = E[eitY] ∀t ∈ R, i.e., F ≡ Gを得る.
モーメント母関数が存在すれば分布を一意に決めることから,r.v. Xに対して,有限な k次モーメントmk = E[Xk], k = 1, 2, . . . がすべて存在するなら,{mk}∞k=1からXの分
布が一意に決まるであろうか.じつはそうでないことが次の例からわかる.
Example 1 (Heydeの例). Z ∼ N(0, 1)に対して,X= eZとおく.ここで,x >0に対 して,P(X ≤ x) = P (log X ≤ log x) = Φ(log x)だから,両辺をxで微分して,Xは密度 関数
fX(x) = √1 2πx
−1e(log x)2/2, x >0
をもつことがわかる.Xの分布のことを 対数正規分布 (log-normal distribution)と呼ぶ. いま,Zのモーメント母関数はψZ(θ) = eθ2/2だから,k= 1, 2, . . . に対して,
E[Xk] = E[ekZ] = ψ(k) = ek2/2 である.一方,Y を密度関数
fY(y) = fX(y)(1 + sin(2π log y)), y > 0
をもつr.v.とする.fY がちゃんと確率密度関数になっていることは,
∫ ∞
0
fX(y) sin(2π log y)dy = E[sin(2π log X)] = E[sin(2πZ)] = 0 から確認できる.さらに,k= 1, 2, . . . に対して,
∫ ∞ 0
ykfX(y) sin(2π log y)dy = E[ekZsin(2πZ)] = e
k2/2
√2π
∫ ∞
−∞sin(2π(z − k))e−(z−k)2/2dz
= e
k2/2
√2π
∫ ∞
−∞
sin(2πz)e−z2/2dz= 0 だから,E[Yk] = E[Xk]である.
最後に連続性定理を証明する.
Theorem 3 (連続性定理). Xの特性関数をϕとし,Xnの特性関数をϕnとする.この とき,
Xn→ X ⇔ limd
n ϕn(t) = ϕ(t) ∀t ∈ R.
Proof. ⇒はsin xとcos xがともに有界連続関数であることから従う.⇐を証明する.証 明を2つのステップに分割する.g: R → Rに対して,∥g∥∞= supx∈R|g(x)|と定める.
ステップ 1.有界区間の外側では0になる連続関数g: R → Rに対して, limn E[g(Xn)] = E[g(X)]
を示す.Lemma 1より,σ >0に対してZσ ∼ N(0, σ2)をXと独立とすると, E[g(X + Zσ)] = 1
2π
∫ ∞
−∞
ˇ
g(t)e−σ2t2/2ϕ(−t)dt となる.ここで,
ˇ g(t) =
∫ ∞
−∞
g(x)eitxdx である.さらに,gは一様連続だから,
∀ε > 0, ∃δ > 0 s.t. |x − y| < δ ⇒ |g(x) − g(y)| < ε より,
|E[g(X)] − E[g(X + Zσ)]| ≤ E[|g(X) − g(X + Zσ)|]
≤ E[|g(X) − g(X + Zσ)|I(|Zσ| < δ)] + E[|g(X) − g(X + Zσ)|I(|Zσ| ≥ δ)]
≤ ε + 2∥g∥∞P(|Zσ| ≥ δ)
となる.よって,
|E[g(Xn)]−E[g(X)]| ≤ 2π1
∫ ∞
−∞|ˇg(t)|e
−σ2t2/2
|ϕn(−t)−ϕ(−t)|dt+2ε+4∥g∥∞P(|Zσ| ≥ δ) を得る.ˇgは有界であって,limnϕn(t) = ϕ(t) ∀t ∈ Rだから,Lebesgueの優収束定理より,
lim sup
n |E[g(Xn)] − E[g(X)]| ≤ 2ε + 4∥g∥∞P(|Zσ| ≥ δ)
| {z }
=2{1−Φ(δ/σ)}
を得る.あとはσ↓ 0, ε ↓ 0の順に極限をとって,limnE[g(Xn)] = E[g(X)]を得る. ステップ 2. 有界連続関数g : R → Rに対して,limnE[g(Xn)] = E[g(X)]を示そ う.これからXn → Xd が従う.任意のε > 0に対して,M > 1を十分大きくとって, P(X ∈ [−M + 1, M − 1]) ≥ 1 − εとする.η : R → Rを
η(x) =
0 x <−M
linear −M ≤ x < −M + 1 1 −M + 1 ≤ x ≤ M − 1 linear M− 1 < x ≤ M 0 x > M
と定めると,
I[−M +1,M −1](x) ≤ η(x) ≤ I[−M,M ](x), ∀x ∈ R だから,ステップ1の結果より,
limn E[η(Xn)] = E[η(X)] ≥ P (X ∈ [−M + 1, M − 1]) ≥ 1 − ε となる.よって,
|E[g(Xn)] − E[g(X)]| ≤ |E[g(Xn)η(Xn)] − E[g(X)η(X)]| + 2∥g∥∞{E[1 − η(Xn)] + E[1 − η(X)]}
| {z }
≤2ε+o(1)
を得る.ここで,g(x)η(x)は[−M, M]の外側では0になる連続関数だから,ステップ 1 の結果より,limnE[g(Xn)] = E[g(X)]を得る.