ミクロ経済学 HW3
濱田高彰
∗平成 28 年 11 月 21 日
1 確認
ある特定の財に注目しよう。今この財の市場に消費者・生産者がそれぞれ1人ずつ存在しており、 彼らはプライステイカ―である。この時、以下の問題に答えなさい。
1.1 消費者余剰
消費者の効用関数はu(X, m) = v(X) + mという「準線形型」の効用関数であり、予算制約式は pX+ m ≤ Iで与えられる。ただし、X(≥ 0):財の消費量、m(≥ 0):その他の財に当てる貨幣量、 p(> 0):財の価格、I(> 0):消費者の所得である。なお、関数vは二階連続微分可能であり、v(0) = 0、 v′(X) > 0、v′′(X) < 0を満たすとする。また所得I は十分に大きいと仮定する。
(1)消費者の効用最大化問題を定式化し、最大化の一階条件を求めなさい。またその式を直感的に説
明しなさい。
(2)(1)から導出される逆需要関数をp
d(X)と書く。消費者が価格pで財をX単位購入する際の消費
者余剰(CS)を、積分記号を用いて定義しなさい。
(3)CS = u(X, I − pX) − u(0, I)となることを確認しなさい。
1.2 生産者余剰
生産者の費用関数はC(X)であり、二階連続微分可能、C(0) = 0、C′(X) > 0、C′′(X) > 0を満 たすとする。この時、以下の問題に答えなさい。
(1)生産者の利潤最大化問題を定式化し、最大化の一階条件を求めなさい。またその式を直感的に説
明しなさい。
(2)(1)から導出される逆供給関数をp
s(X)と書く。生産者が価格pで財をX単位販売する際の生産
者余剰(P S)を、積分記号を用いて定義しなさい。
(3)生産者の利潤をπ(X)とする時、P S = π(X) − π(0)となることを確認しなさい。
∗質問・誤植等があればTAのメールアドレス(komabamicro2016@gmail.com)にご連絡ください。
1
1.3 競争均衡と総余剰
(1)価格pにおける消費者の財の需要量をX
d(p)、生産者の財の供給量をX
s(p)とかく。競争均衡価
格p∗が満たす条件式を書きなさい。
(2)消費者余剰と生産者余剰の和を総余剰とする。総余剰は競争均衡下で最大となることを示しなさ
い。(ヒント:まず総余剰をXで微分し、最大化の条件を求め、競争均衡下でその条件が満たされ ることを示しなさい。)
1.4 余剰分析について
余剰分析に関する次の会話を読んで、以下に答えなさい。
Aさん「準線形効用関数を仮定すると、消費者余剰は市場取引による消費者の効用の増分を表すん
だよ
1)
。」 Bさん「そうなんだ。」
Aさん「いくつかの仮定の下で、生産者余剰も市場取引による生産者の利潤の増分を表しているよ2)。」 Bさん「へぇ∼。じゃあ余剰を考えることは、つまりは消費者の効用や生産者の利潤を考えてるこ
とになるんだね!」
Aさん「そうそう!ちなみに余剰分析によって、競争均衡の下では消費者余剰と生産者余剰を足し
合わせた総余剰は最大になることが示されるよ!3)」 Bさん「へぇ∼、競争均衡っていい性質持ってるんだね!」 Aさん「効率性の観点からはね。」
Bさん「でも思ったんだけど、この議論って消費者の効用関数が準線形じゃなきゃ成り立たないん
だよね?」 Aさん「そうだよ。」
Bさん「そんなみんながみんな準線形の効用関数持ってるって考えていいの?そもそもなんで効用
関数が準線形なら、消費者の市場取引から得られる便益が消費者余剰で表せるの?」 Aさん「それは…え∼と…」
【Q1】Aさんを助けなさい。
【Q2】Aさんの「効率性の観点からはね」という言葉の意図を説明しなさい。
1)1.1(3)
の結果より。
2)1.2(3)
の結果より。
3)1.3(2)
の結果より。
2
2 標準
2.1 部分均衡分析
奥野正寛[編]『ミクロ経済学演習』の問題3.1、3.2を解きなさい。
2.2 課税と経済行動
問題1と同じ設定を考える。ただし、v(X) =
(aX − b2X2) (a, b > 0)、C(X) = dX +2eX2(d, e > 0)という特定の関数形を考えよう。今政府が(i)財1単位につきtの従量税、(ii)財の取引価格に対
しτの従価税4)、(iii)財の取引量に関わらず固定額Tの一括税、のいずれか1つを課そうと考えてい る。それぞれの税に対し消費者・生産者の効用・利潤最大化問題を定式化しなさい。また最大化の一 階条件を導出し、税がない場合とどう違うか考察しなさい。さらにそれぞれのケースで逆需要曲線・ 逆供給曲線が、税がない場合と比べてどう変化するのかを考察しなさい。
2.3 従量税と従量補助金
ある財の市場における逆需要関数はp = 300 − 2X、逆供給関数はp= 3X + 50であるとする。こ の時、以下の問題に答えなさい。
(1)均衡価格、及び均衡取引量を求めなさい。 (2)消費者余剰、生産者余剰、総余剰を求めなさい。
今、政府が1単位当たり30の従量税を課そうと考えている。この時、以下の問題に答えなさい。 (3)従量税が消費者に課される際の、均衡価格、均衡取引量、消費者価格、生産者価格を求めなさい。 (4)従量税が生産者に課される際の、均衡価格、均衡取引量、消費者価格、生産者価格を求めなさい。
(5)上の(3)(4)から分かることをまとめなさい。また課税時の余剰について、問題(2)の結果と比べ
てどう変化するか、図を用いて考察しなさい。
今、政府が1単位当たり30の補助金を与えようと考えている。この時、以下の問題に答えなさい。 (6)補助金を消費者に与える際の、均衡価格、均衡取引量、消費者価格、生産者価格を求めなさい。 (7)補助金を生産者に与える際の、均衡価格、均衡取引量、消費者価格、生産者価格を求めなさい。
(8)上の(6)(7)から分かることをまとめなさい。また、補助金政策時の余剰について、問題(2)の結
果と比べてどう変化するか、図を用いて考察しなさい。
4)
例えばτ = 0.05で、価格の5%の税を徴収することを意味する。
3
3 応用
3.1 需要の価格弾力性と死荷重
政府 は 消 費 者 に従 量 税 を 課 そう と 考 え て いる 。今 あ な た には 、以 下 の 需 要の 価 格 弾 力 性に 関 す る データ(表1)がある。需要の価格弾力性と従量税の関係性に関して、部分均衡分析を用いて分析し、 課税に伴 う死荷重 をできるだ け小さく抑 えるとい う観点から、どのよ うな財に 課税すべき かを政府 にアドバイスしなさい。(ここでは供給の価格弾力性について考慮する必要はない。また、数式を用 いた厳密な議論をする必要はなく、図を用いた直感的な議論で構わない。ヒントを参考に考えてみて ください。)
食料 住居 電気水道 家具 衣服 医療 教育 娯楽 余暇
0.529 1.089 0.707 1.425 1.224 0.58 1.022 1.387 0.886
表 1: (引用元) Asano and Fukushima (2006) ”Some Enpirical Evidence on Demand
System and Optimal Commodity Taxation,” The Japanese Economic Review, 57-1, 50-
68.
(ヒント)需要曲線の傾きが重要です。傾きが大きい場合と小さい場合で、課税に対する死荷重が どう違うか、図を用いて考えてみてください。また傾きが大きい場合と小さい場合で、需要の価格弾 力性がどう違うか、定義に戻って考えてみてください。
3.2 参入と規制
ある財の市場における逆需要関数はp= 220 − 3Xであり、この市場に同一の生産技術を持った無 数の生産者が参入しようとしている。これらの企業の限界費用曲線はC′(X) = 20 + Xであり、固 定費用は0である。消費者・生産者はプライステイカ―であるとき、以下の問題に答えなさい。
※生産者 もプライ ステイカー であること に注意。ゲ ーム理論を 用いた寡占 の問題と 混同しない よう に。
(1)市場にn企業(nは自然数)参入してきた場合の均衡価格、均衡取引量、消費者余剰、生産者余
剰、総余剰を求めなさい。
(2)企業数の増加に伴って、消費者余剰、生産者余剰、総余剰がどう変化するか調べなさい。 (3) 参入規制がない場合、この市場には何社の企業が参入することになるか、調べなさい。ただし、
企業 は 正 の 利 潤が 得 ら れ る 時に 限 り 新 た に参 入 し て く ると す る 。ま た 市場 の 逆 供 給 曲線 は 、企 業 参入に伴いどのような形状になるか、調べなさい。
(4)政府はこの市場に参入規制を設けるかを検討している。(2)の結果を用いて、(i)消費者余剰、
(ii)生産者余剰、(iii)総余剰の観点から規制を評価しなさい。