第10章 短期の経済分析 ( 1 )
190
短期と長期の違い
長期:市場の調整メカニズムが働く.
需要と供給のギャップを解消するように(需要 と供給が一致するように)価格が調整される.
短期: 市場の調整メカニズムがうま
く働かない.
GDPや雇用水準が大きく変動
10.1 総需要
短期において経済の生産水準を決める重要な要因は経済全体の 需要水準(総需要)である.
総需要曲線を導出する.
手順
第1段階 r と P を一定とする.
実質利子率 物価水準
変数; Y (実質国内総生産) 第2段階 P を一定のまま
変数; Y と r
第3段階
変数; Y と r と P
192
10.1 総需要
短期の分析で注目する市場
財・サービス市場 貨幣市場
この2つの市場を分析するフレームワーク
IS-LMモデル
P(物価水準)を一定として,財・サービス市場の需要と供給 が一致するようなY(国内総生産)とr(実質利子率)の関 係
P(物価水準)を一定として,貨幣市場の需要と供給が一致す るようなY(国内総生産)とr(実質利子率)の関係
IS曲線
LM曲線 ここまでで第2段階
10.1 総需要
財・サービス市場 と 貨幣市場 が同時に均衡するような Y(国内総生産) と P(物価水準)の関係 総需要曲線
第3段階では
Y P
総需要曲線
194
10.1.1 IS曲線
財・サービス市場
家計 企業 政府 海外
総需要 = 消費 + 投資 + 政府支出 + 純輸出
C I G
Y = C + I + G
(10.1)総需要
総供給
10.1.1 IS曲線
消費(C) Y に依存
投資(I) 一定 ( rが一定より )
政府支出(G) 一定
第 1 段階
r (実質利子率) , P (物価水準) 一定
変数;Y ( 国内総生産 )
総需要の構成要素
財・サービス市場
第 1 段階
196
10.1.1 IS曲線
消費 に対して影響を与える要因
1. 初期の実質資産
2. 実質利子率
3. 生涯に得られる実質所得
P(物価)が一定 rが一定
現在の所得
将来の所得の割引現在価値 所与
×
×
×
◎
消費(C)
は現在の所得(Y)
が増えると増大する
第 1 段階
10.1.1 IS曲線
消費(C)はYの増加関数
Y(実質GDP) C(消費)
45°
消費;C
∆ Y ∆ C
増えた所得⊿Yをすべ て消費せず,一部を貯 蓄する.
∆ Y
>∆ C
第 1 段階
198
10.1.1 IS曲線
Y C(消費),総需要
45°
I+G C
YD
Y
D
= C
+ I + G
一定 YS 総需要
Y
S= Y
D=C + I + G
総需要 総供給
のとき,(10.1)式が成立 Y=Y0のとき
Y0 Y0
A
B
総供給
Y0 < C+I+G 総供給 総需要
財・サービス市場の需要と供給が一致するのは,
45 ° 線( Y
S線)と総需要( Y
D線)の交点 E
Ye Ye
総需要 E
第 1 段階
10.1.1 IS曲線
第 2 段階 r ( 実質利子率 ) を変化させる.
r 1
一定としていた 利子率
r 2 (r 1
<r 2 )
家計
r↑
⇒ 現在の消費↓ 貯蓄↑上昇
消費 (C) ↓
企業 r↑
⇒ 投資需要↓
投資 (I) ↓
r
2では,家計の消費および企業の投資が下が
るため,総需要が下がる.
第 2 段階
200
Y 総需要
45°
YS
Y1D(r1)
Y2D(r2) r↑ 総需要
E1
E2
Y
r
Y1e Y2e
r 1
r 2
Y2e
Y1e
IS曲線
Y1D(r1) 利子率がr1のときの総需要 Y2D(r2) 利子率がr2のときの総需要
財・サービスの需要と供給を一致さ せる実質利子率と実質GDPの関係
r 1 Y
1er 2 Y
2eIS曲線
財・サービスの需要と供給を一致さ せる実質利子率と実質GDPの関係
r 1 r 2
上昇
実質利子率rの上昇
総需要が下がり
実質GDPは減る.
10.1.2 LM 曲線
第 1 段階
r (実質利子率) , P (物価水準) 一定
変数;Y ( 国内総生産 )
貨幣市場
貨幣需要の大きさは名目 GDP と名目利子率
に依存する.
物価水準一定実質 GDP 実質利子率
貨幣需要 = kP Y
比例定数
Pが一定 ∆ =0
P P
今は一定とし ている.
第 1 段階
202
10.1.2 LM 曲線
Y 貨幣の需要,供給
O
貨幣需要 = kP Y
M 貨幣供給= M
E
貨幣供給は中央銀行によって コントロールさせる
←所与
第 1 段階
10.1.2 LM 曲線
第 2 段階 r ( 実質利子率 ) を変化させる.
r 3
一定としていた 利子率
r 4 (r 3
<上昇
r 4 )
実質利子率の上昇は貨幣以外の資産(債権)の収益が増えるので 貨幣を手放して債権を保有する.
r ↑ 貨幣需要↓
貨幣需要 = k(r)P
Y
rの減少関数 一定
r↑⇒傾きがゆるやかになる.
第 2 段階
204
A 貨幣の需要(r3)
B 貨幣の需要(r4) M
貨幣供給;M(一定)
Y 貨幣の需要・供給
O
r 3 r 4
上昇
貨幣の需要が下がる(需要 曲線の傾きが小さくなる) E3 E4
Y3e Y4e
Y
r
実質利子率rの上昇
Y3e Y4e
r 3
r 4
LM曲線
r ↑
貨幣の需要と供給を一致させる実質 利子率と実質GDPの関係
r 3 Y
3er 4 Y
4eLM曲線
貨幣の需要と供給を一致させる実質 利子率と実質GDPの関係
実質GDPは増える.
経済の均衡
財・サービス市場 貨幣市場
IS曲線
財・サービス市場を均衡させる 実質利子率と実質GDPの組み合 わせ
LM曲線
貨幣市場を均衡させる実質 利子率と実質GDPの組み合 わせ
IS曲線 LM曲線
Y r
r*
EY*
2 つの市場を同時に均衡さ
せる実質利子率 (r) と実質
GDP(Y) のペア
(Y*,r*)
206
10.1.3 総需要曲線
財・サービス市場への影響
貨幣市場への影響
第 3 段階 P( 物価水準 ) を変化させる.
第 3 段階
10.1.3 総需要曲線
財・サービス市場への影響
家計の保有する資産に影響を与える.
物価 P の上昇
家計の保有する資産の実質価値を減らし,その結 果,家計の消費は下がる.
物価 P の下落
家計の保有する資産の実質価値を増やし,その結 果,家計の消費は上がる.
資産効果
第 3 段階
208
Y 総需要
45°
YS
YaD(r1,Pa)
P↑ 総需要
Ea
Eb
Y
r
Yae Ybe
r 1
Ybe
Yae
ISa
YbD(r1,Pb)
ISb A B
物価水準;P の上昇 (P
a→Pb)
財・サービスの総需要が下がる
(消費の減少)
財・サービス市場の均衡 Ea Eb A
( Y , r
1)
e
a B
( Y , r
1)
e b
Yae > Ybe IS曲線が左シフト
10.1.3 総需要曲線
貨幣市場への影響
物価 P の上昇
財・サービスの取引に必要な貨幣量が増える.
物価 P の下落
財・サービスの取引に必要な貨幣量が減る.
貨幣の需要↑
貨幣の需要↓
貨幣需要 = k(r)P
Y
物価P↑⇒傾きが大きく なる
第 3 段階
210
D 貨幣の需要(r3,Pd)
M
貨幣供給;M(一定)
Y O
Ed Ec
Yde Yce
Y
r
Yde Yce
r 3
LMc
P ↑
C 貨幣の需要(r3,Pc)
LMd
物価水準;P の上昇 (P
c→Pd)
貨幣の需要が増加
貨幣市場の均衡
Ec Ed A
( Y , r
3)
e
c B
( Y , r
3)
e d
Yce > Yde LM曲線が左シフト D C
Y r
IS1 LM1
Y1 Y2
E1 E2
P1 P2
Y2 Y1
AD
Y P
P↑ P↑
物価水準;P の上昇 (P
1→P2)
財・サービス市場 IS曲線が左シフト
貨幣市場
LM曲線が左シフト
財・サービス市場と貨幣市 場の同時均衡
E1 E2 Y1 > Y2 総需要曲線
物価水準が変化したときに,財・ サービス市場と貨幣市場が同時に 均衡するような実質GDPがどう変 化するかを表す.
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