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金属Vol87No6p563 567pdf 最近の更新履歴 wwwforumtohoku3rd 金属Vol87No6p563 567

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(1)

齋藤 文良,矢野 雅文 

東北大学 「研究不正疑義の告発に関する調査報告書 2016 12 15 日付)

の意識的な誤認,科学的根拠なしの不合理判定―

少数意見を述べられた委員の名誉回復が必須

論 説

はじめに

 本誌,金属の連載記事1)∼5)にも示されている とおり,科学技術振興機構(以下,JST という)の ERATO 井上過冷金属プロジェクトの成果論文に は研究不正が認められ,いくつもの論文が不正告 発されている.JST は,受領した全ての告発を東 北大学に「確認・調査依頼」した.この委託を受け た井上明久総長時代の東北大学は,これまで一貫 して「告発された内容は研究不正とは認められな い」として本調査に入らず,事実上告発の門前払 いをしてきた.

 一方,井上明久総長の任期満了により2012 月 4 月に東北大学執行部が交代した後,「ガイドライ ン」に定められている「本調査委員会」が,2014 年 11 月に始めて設置された.この事実は,調査委員 会メンバーが以下の6 名であることを含め,東北 大学のHP に公開された「研究不正疑義の告発に 関する調査報告書」(以下,「調査報告書」という) で明らかにされている.この調査報告書に書かれ ている内容には,極めて多数の疑義が認められる が,ここでは詳細には触れず,重要ポイントのみ を紹介する.

 「調査報告書」http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/ 12/news20161216.html

研究不正疑惑告発に関する本調査委員会委員名簿 中島英治  九州大学・総合理工学研究院融合創

造理工学部門・教授

東田賢二  九州大学・工学研究院材料工学部 門・教授

久道 茂  宮城県対がん協会会長 / 元日本医学 会副会長

本間基文  元日本金属学会会長 / 元職業訓練大 学校長

丸川健三郎 北道大学名誉教授(委員会開催期間 中にご逝去)

四ッ柳隆夫(※) 元国立高等専門学校機構顧問 / 元日本分析化学会会長   ※ 委員長

調査報告書のポイントについて

 「JIM99 論文6)に不正が認められる」と,少なく とも独立に三者から顕名で告発を受けているが, 東北大は前述の手法で告発を三者とも門払いにし てきた.しかし,3 年前に,この JIM99 論文の試 料概観写真(Fig.1)およびその元論文と考えられる JIM97 論文7)の試料概観写真(Fig.2)に報告されて いる長さ約50mm で直径が異なる 3 本の Ag5%を

 東北大学がHP に 2016 年 12 月 16 日付で公開した「研究不正疑義の告発に関する調査報告書」は,2 年

以上の歳月を費やしたにも拘らず,「研究者の共通理解」とかけ離れた,真相究明にはほど遠い内容であっ

た.一方,この調査報告書には3 件の少数意見が含まれており,この 3 件はいずれも研究者の共通理解に合

致している.したがって,少数意見を述べられた委員の名誉回復が,学問の信頼回復とともに必須である.

(2)

含むZr65Al7.5Cu12.5Ni10Ag5のバルクアモルファス

(BA)合金 (Zr 合金と称する ) の写真データが,全 く別のJIM96 論文8)で報告済みの「長さ約50 mm で直径が異なる3 本の Nd70Fe20Al10-BA 合金(Nd 合金と称する)のものと同一である」ことが判明し, 告発された1).上図にはJIM99 論文の試料概観写 真(Fig.1)とその元論文と考えられる JIM97 論文の 試料概観写真(Fig.2)を示す.

 繰り返すと,この告発は,JIM97 論文 Fig.2 およ びJIM99 論文 Fig.1(上記図の枠で囲んだ 3 本の試 料)は,どちらもZr 合金に関する試料外観写真と して示されているが,実はこの3 本の試料外観写 真は,ここでは写真を示していないが,JIM96 年 論文のNd 合金の試料外観写真 Fig.2 の右側に与え られている3 本と同一である,という驚く内容で あった.この不正疑惑の指摘に対して,調査報告 書には,以下の記述(太字・下線は本稿著者による マーク)があり,結論として「不正とは認められ ない」と記されている.

JIM97 論文と JIM96 論文で同一試料の外観 写真 が掲載されたことについて,被告発者らは,そ の事実を認めた上で「似た形状の試料であるた め, JIM 97 論文作成時に写真を取り違えて使っ た」と,その故意性を否定している.

さらに,以下の記述(太字・下線は本稿著者による マーク)もある.

本論文は, 組成が Zr65Al7.5Ni10Cu17.5−xAgx x =0

∼10)のバルク合金に関しては JIM97 論文に続 く2 度目の発表であり,合金それ自体に関する 新規性は既になくなっているため,合金の存在 を示すための外観写真の掲載は必ずしも必要な かったと考えられる.後述するように(検証結 果その5),JIM99 論文への JIM M97 論文の試 料外観写真の転用は2 つの論文を関連づける 目的で意図的に行われたものである.これらの 研究の流れの視点から見ても,外観写真問題は JIM97 論文作成時点での錯誤に端を発している と考えた方が合理的である.

JIM99年論文のFig., 左側3本の直径は3, 4, 5 mm

JIM97年論文のFig.2, 直径は1, 3, and 5 mm dの試料写真は切り貼り

細工されている

(3)

 一方,この試料外観写真に関連して,調査報告 書に付されている3 件の少数意見が注目される(太 字・下線は本稿著者によるマーク).

①少数意見 [1]:掲載写真の齟齬に関して

 科学者としての観点で見ると,問題の発生時点

(JIM97 論文執筆時)から今日に至るまでの被告発 者らの行動や弁明には,「写真使用の故意性」の疑 いをまねく不自然さ等が存在する.JIM96 論文お よびMMT98 論文9)において使用したNd 合金試 料の外観写真を,JIM97 論文および JIM99 論文に おいてZr 合金試料の外観写真として使用したこ とについては,故意に行ったのでないかとの疑い が 払拭出来ない.その動機としては,たまたま Ag 含有 Zr 合金では良い外観 写真が得られなかっ たので流用を思いついた,などが考えられる.も し,取り違えが故意でなく単なるミスならば告発 される前までの10 年以上の間には,それの訂正 は簡単なはずで,正しいZr 合金試料の写真を学 会誌 Errata に提出すれば済むことであるのに,告 発されるまでその提示はなされていない.これが 故意でないかと疑われる理由である.著者らは写 真原板が海難事故で失われたために提出できな いのだと主張しているが,複数の共著者の誰もが 該当する写真のプリントを持っていないと云うの は不自然である.また,上記4 編の論文(JIM96, MMT98,JIM97,JIM99)の全てについての共通著者 が2 人いるにもかかわらず取り違えミスに告発ま で気付かなかったことも不自然で,このことから も,取り違えの故意性が疑われる.

②少数意見 [2]:写真の切り貼りについて(先の図 参照)

 JIM99 論文の Fig.1 で写真の切り貼りが見られた が,説明もなくこのような切り貼りを行うことは 研究分野によっては研究不正と判断されることが ある.

③少数意見 [3]:再実験の必要性に関して

 被告発者は,鋳塊写真の転用を鋳塊の外観の類

似性による錯誤と弁明しているが,証拠が無く, 疑わしい.疑惑の解消には鋳塊の類似性を確認す る必要がある.関係資料が消失しているので,類 似性の確認には再実験を行って類似の鋳塊を作製 する必要がある.当該研究には,再実験の実施に 障害となる決定的な要因はない.しかし,被告発 者は再実験が困難で,必要性もないとしているの で類似性は確認できない.その結果,類似性を根 拠とした弁明の正当性は立証されず,それに対す る疑惑も解消されていない.よって,鋳塊写真の 転用は作為的で,故意になされたことを否定する ことはできない.

 これらの3 件の少数意見こそ,研究者の共通理 解と合致する.また,少数意見 [2] について補足 すれば,遠慮がちに金属材料系分野ではあたかも 適合しないかのような表現となっているが,「たと え自ら公表したデータ(写真・図)であっても,同 じデータを別の論文で使用する場合,元データと の関係を明示することが求められる.もし,元デー タとの関係が明示されていない場合,ましてや一 部を変更して使用されている場合等は,不正行為 とみなされる」ことは,分野を問わず正しい.す なわち,切り貼りそのものは直ちに不正ではない が,説明もなく JIM97 論文の試料概観写真 (Fig.2) に切り貼り加工をして,JIM99 論文の試料概観写 真 (Fig.1) として使っていることが,不正行為に相 当するのである.また,JIM97 論文の実験方法の 欄には,『The cast cylindrical alloys were prepared by casting the molten alloy into a copper mold with an inner cavity of 5 mm in diameter and 100 mm in length.(参考訳:円柱状合金は,直径 5 mm,長 さ100 mm のキャビティ(内部的空洞)をもつ銅鋳 型に鋳造して作製した』と記載されているので, JIM97 論文で作製されて試料長さは 100 mm であ る.この事実を踏まえれば,「長さ約50 mm しか ないNd 基合金のものと似た形状とは?」は,信 じ難い.(この点は,https://sites.google.com/site/ wwwforumtohoku3rd/ に詳しく紹介されているので 参照されたい).すなわち半分の長さしかない試料

(4)

について,似た形状であるため間違えたは,極め て不自然で・不合理である.調査委員会は,被告 発者のこの「JIM97 論文作成時に写真を取り違え て使った」を,どのような科学的根拠に基づいて 確認したのか具体的に公表すべきである.なぜな ら,理化学研究所,STAP 細胞論文に関する調査 委員会は,「被告発者の本来使うべき写真を提示 しての」弁明すらも除けているからである.また, 文科省のガイドラインでは,「被告発者が自己の説 明によって不正行為であるとの疑いを覆すことが できないときは,不正行為と認定される」となっ ており,その疑いを覆すものとは,科学的根拠の はずだからである.

 実験科学に係わる研究者は,自らの論文に疑問 を示され,かつ現物や実験記録などが失われてい た場合,積極的に再現実験を試みて,「実験誤差 の範囲で再現できることを示すことで疑惑の解消 に努める」はずである.だからこそ,被告発者に は再現実験の機会を与えることがガイドラインに 定められている.しかし,少数意見 [3] の記述部 分に明記されているとおり,「被告発者は再実験が 困難で,必要性もない」としている.再実験が困 難だと言いながら,被告発者は同じ製法で造られ たZr BA 合金試料を追加提出している.それは, 調査報告書の結論部分【4】に,「追加で提出された Zr BA 合金試料の中に,同じ製法で造られた直径 5 mm の試料が存在することを考慮するとき…」と の記載から把握できる.さらに海難事故で試料, 写真,実験ノートなど疑惑をもたれた論文に関連 する資料を失ったので,証拠を提出できないと弁 明しているにもかかわらず,結論部分【3】(ii) には,

「JIM99 論文の Fig.1d に,存在を疑われた Zr BA 合 金の写真が存在する」と,切り貼りに使われた写 真を提出していることが書かれている.調査報告 書のメイン部分の主張;「被告発者の弁明」ならび に「不正は認められない」は,このように矛盾に満 ちあふれている.

 さらに,調査報告書の「JIM99 論文への JIM97 論文の試料外観写真の転用は2 つの論文を関連づ ける目的で意図的に行われたものである」には,

非科学的,非論理的説明で,あきれるばかりである. なぜならば,JIM99 論文の試料概観写真 (Fig.1) の 部分に,JIM 97 論文の試料外観写真 (Fig.2) の転用 に関する事実関係は,何一つ書かれていない.し たがって,前述の枠で囲った調査報告書の内容は, 虚偽説明であると言わざるを得ない.逆に,少数 意見 [1],少数意見 [2] および少数意見 [3] を述べ られた委員は,まさに正当なご意見を主張されて いる.それにもかかわらず,虚偽説明の報告書を 作成した調査委員会の6 名の中にひとくくりにさ れていることは,誠に不名誉でたいへんお気の毒 な状態である.したがって,少数意見を提示され た委員の名誉のためにも,東北大学およびJST は, 少数意見を提示された委員名を公表すべきである.

まとめ

 今回の本調査委員会の設置は,過去に東北大学 が行ってきたガイドラインにない「対応委員会」と は独立に審議するとして設置された経緯がある, それにもかかわらず,①四ツ柳隆夫氏( 本調査委 員会委員長)と東田賢二氏(同委員会委員)の2 名 が,この調査期間中に,別の東北大学内の対応委 員会外部委員として加わり,別の告発を従来どお り門前払いしていること,ならびに,②過去の対 応委員会の不正隠蔽の謗りを免れないような不公 正かつ非科学的な姿勢を,本調査委員会が継続さ せていることは,極めて遺憾である.本調査委員 会の独立性・公平性は守られていない.なぜなら,

①の内容を他の4 名の委員が事前に把握・正しく 理解した上で,本調査委員会の審議に参加してい たかは極めて疑問だからである.言い換えると,3 件の少数意見は極めて的を射る発言であるにもか かわらず,これらが軽視されていることにつながっ ていると推断する.

 また,上記の②で指摘した姿勢は以下のとおり 問題である.すなわち調査報告書の別紙2 には, JIM97 論文の部分に,「(5%の Ag を含む Zr 基バ ルクアモルファス合金試料の析出相の同定は再検 討」とあり,またJIM99 論文の部分に,「(5%の

(5)

Ag を含む Zr 基バルクアモルファス合金試料の) XRD データの再解析によってバルク合金試料で の準結晶相の析出を確認」と明示されている.い かにも『JIM99 論文では,JIM97 論文の XRD デー タ(Fig.6)で報告している析出相の同定について再 解析(あるいは解釈変更)し,バルク合金試料で の析出相は「準結晶」であることを確認した』かの ような説明である.また,同別紙2 の研究フロー は,「JIM97 論文発表以降の研究成果,とくにリボ ン状試料で準結晶の析出を確認したChen・櫻井研 との共同研究結果を踏まえて,JIM97 論文の XRD データを再解析・再解釈する流れがあるかのよう にまとめられている.しかし,どのように工夫し, 力説しようとも,この内容は虚偽説明である.な ぜなら,「JIM99 論文の Fig.6[XRD データ]に係 わる該当部分のどこにも,JIM97 論文の Fig.6 との 関係,あるいはリボン状試料で準結晶の析出を確 認した共同研究との関係が全く示されていない」 ので,この論理展開は全く非科学的で,かつ不合 理だからである.もし虚偽説明でないと主張する ならば,東北大学およびJST は,JIM99 年論文の Fig.6 に関連する記述部分のどこをみれば,JIM97 年論文の)XRD データの再解析によってバルク合 金試料での準結晶相の析出を確認」と判断できる のか,具体的箇所を明示すべきである.

 このような理由から,学問の信頼回復ならびに 少数意見を述べられた委員の名誉回復のために, 告発者らはそれぞれ独立に,東北大学およびJST に公開質問状を提出するに至っている.至極当然 である.公開質問の詳細については,下記のHP を参照願いたい.

https://sites.google.com/site/wwwforumtohoku3rd/

参考文献

1) 高橋禮二郎,日野秀逸,大村泉,松井恵:金属,86 No.2 (2016), 153-164.

2) 齋藤文良,矢野雅文:金属,86 No.3 (2016), 267-274. 3) 齋藤文良,矢野雅文:金属,86 No.4 (2016), 355-362. 4) 齋藤文良,矢野雅文:金属,86 No.5 (2016), 445-450. 5) 高橋禮二郎,日野秀逸,大村泉,松井恵:金属,86

No.6 (2016), 534-540.

6) (JIM99 論文)A. Inoue, T. Zhang, M. W. Chen and T.Sakurai: Mechanical Properties of Bulk Amorphous Zr-Al-Cu-Ni-Ag Alloys Containing Nanoscale Quasicrystalline Particles, Mater. Trans. JIM, 40 No.12 (1999), 1382-1389.

7) (JIM97 論 文 )A. Inoue, T. Zhang and Y. H. Kim: Synthesis of High Strength Bulk Amorphous Zr-Al-Ni-Cu Alloys with a Nanoscale Secondary Phase, Mater. Trans. JIM, 38 No.9 (1997), 749-755.

8) (JIM96 論文)A. Inoue, T. Zhang and A. Takeuchi: Bulk Nd-Fe-Al Amorphous Alloys with Hard Magnetic Properties, Mater. Trans. JIM, 37 No.2 (1996), 99-108 . 9) (MMT98 論文)A. Inoue, A. Takeuchi and T. Zhang,

Ferromagnetic Bulk Amorphous Alloys, Metall. and Mater. Trans., 29A (1998), 1779-1793.(注:The 1997 Annual Meeting of TMS at Orland, February 10-11, 1997

での発表に基づくとコメントあり).

さいとう・ふみお SAITO Fumio

1972 山形大学大学院修士課程修了,山形大学工学部助手,横浜 国立大学講師・助教授などを経て,1991 東北大学教授(選研, 多元研),2005-2010 多元研所長,2012 退職,同年 東北大学 名誉教授.工学博士.専門:粉砕とメカノケミストリー,粉体 精製工学.

やの・まさふみ YANO Masafumi

1974 九州大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学,日本学 術振興会奨励研究員,東京大学薬学部助手・講師・助教授を経て, 1992 東北大学電気通信研究所教授,2007.4-2010.3 電気通信研 究所所長,2010 退職,東北大学名誉教授.薬学博士.専門:生 体システム情報学.

参照

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