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(1)

代数系のクラスの圏同値性

東北大学理学研究科数学専攻 井澤 昇平

2011年6月24日 東北大学ロジックセミナー

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 1 / 22

(2)

目次

1

一般代数系の基礎

2

代数系のなす圏

3

最近の取り組み

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 2 / 22

(3)

一般代数系とは

集合A と A 上の演算(の集合)S の対に関する一般的な性質を 研究する分野。大まかに以下のように分類できる(?)

関係記号のない言語を固定して、その構造の全体像を探る 集合を一つ固定しその上の(合成に閉じた)演算の集合と してどのようなものがあるのかを探る

他の構造との間にある対応などを調べる。 用語

以下では関数記号(と定数記号)のみからなる言語Lを固 定し、Lを作用域と呼ぶ。

L構造のことを代数系と呼ぶ。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 3 / 22

(4)

一般代数系とは

集合A と A 上の演算(の集合)S の対に関する一般的な性質を 研究する分野。大まかに以下のように分類できる(?)

関係記号のない言語を固定して、その構造の全体像を探る 集合を一つ固定しその上の(合成に閉じた)演算の集合と してどのようなものがあるのかを探る

他の構造との間にある対応などを調べる。 用語

以下では関数記号(と定数記号)のみからなる言語Lを固 定し、Lを作用域と呼ぶ。

L構造のことを代数系と呼ぶ。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 3 / 22

(5)

新しい代数系を作る操作1

定義

部分構造を部分(代数)系と呼ぶ。

{Ak}k∈Kを代数系の族としたとき直積集合に成分毎の演算を 入れた代数系を{Ak}の直積(代数系)という。

s((ak)k)i := (s(ai))k

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 4 / 22

(6)

新しい代数系を作る操作2

定義(合同関係・剰余系) A を代数系、θ ⊂ A2とする。

θ が合同関係であるとは

(ai,bi) ∈ θ ⇒ (s(ai), s(bi)) ∈ θ

が任意のs ∈ L, ai,bi ∈ A に対して成り立つことをいう。 A の合同関係全体を Con(A) と書く。

θ がA の合同関係のとき、次のように構造を入れた A/θ を Aθ による剰余系と呼ぶ:

s(ai) := s(ai)/θ

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 5 / 22

(7)

定義(準同型と核)

A, B:代数系。写像 f : A → B が準同型であるとは f (sA(ai)) = sB( f (ai))

が任意のs ∈ L と ai ∈ A に対して成り立つことをいう。 準同型 f : A → B に対し以下を f の核という。

Ker( f ) := {(a1,a2) ∈ A2 | f (a1) = f (a2)}

命題(準同型定理)

f : A → B を準同型とするとき Ker( f ) は A の合同関係であり、 A/Ker( f ) ≃ Im( f )

が成り立つ。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 6 / 22

(8)

等式クラスの定義

定義

1 ∀ ¯x(t( ¯x) = t( ¯x)) の形の論理式からなる公理系を等式公理と 呼ぶ。

2 等式公理Σ により V = {A | A |= Σ} と書けるクラス V を等式 クラスと呼ぶ。

一般代数系の研究は等式クラスに関連するものがかなりの割合 を占めているように思われる。

理由は・・・何故か心惹かれるという身も蓋もないものが一番大 きい(??)

またcloneというある等式公理で特徴付けられる代数系と等式ク

ラスが一対一に対応するという事実があり研究を行ないやすく、 一般の代数系のクラスを考えるときにもそれを含む最小の等式 クラスを経由して考える方が扱いやすいという理由も大きいか も知れない。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 7 / 22

(9)

等式クラスの定義

定義

1 ∀ ¯x(t( ¯x) = t( ¯x)) の形の論理式からなる公理系を等式公理と 呼ぶ。

2 等式公理Σ により V = {A | A |= Σ} と書けるクラス V を等式 クラスと呼ぶ。

一般代数系の研究は等式クラスに関連するものがかなりの割合 を占めているように思われる。

理由は・・・何故か心惹かれるという身も蓋もないものが一番大 きい(??)

またcloneというある等式公理で特徴付けられる代数系と等式ク

ラスが一対一に対応するという事実があり研究を行ないやすく、 一般の代数系のクラスを考えるときにもそれを含む最小の等式 クラスを経由して考える方が扱いやすいという理由も大きいか も知れない。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 7 / 22

(10)

抽象化して初めて考えられる問題

以上は群、環、束など、特殊な代数系の場合に考えられる基本的 な概念のいくつかが、より広い場合においても考えることがで きるということだった。しかし

一般代数系が真に取り組むべき問題は「演算構造が入った集合」 というもの全てを見るという視点に立ったときに初めて意味を 持つ現象を発見することにある。

例:

V1, V2を代数系のクラスとする。V1とV2が圏として同型 となる条件を求めよ。

“ 拡大等式クラス全体 ” の束構造は等式クラスの完全不変 量か?

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 8 / 22

(11)

抽象化して初めて考えられる問題

以上は群、環、束など、特殊な代数系の場合に考えられる基本的 な概念のいくつかが、より広い場合においても考えることがで きるということだった。しかし

一般代数系が真に取り組むべき問題は「演算構造が入った集合」 というもの全てを見るという視点に立ったときに初めて意味を 持つ現象を発見することにある。

例:

V1, V2を代数系のクラスとする。V1とV2が圏として同型 となる条件を求めよ。

“ 拡大等式クラス全体 ” の束構造は等式クラスの完全不変 量か?

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 8 / 22

(12)

抽象化して初めて考えられる問題

以上は群、環、束など、特殊な代数系の場合に考えられる基本的 な概念のいくつかが、より広い場合においても考えることがで きるということだった。しかし

一般代数系が真に取り組むべき問題は「演算構造が入った集合」 というもの全てを見るという視点に立ったときに初めて意味を 持つ現象を発見することにある。

例:

V1, V2を代数系のクラスとする。V1とV2が圏として同型 となる条件を求めよ。

“ 拡大等式クラス全体 ” の束構造は等式クラスの完全不変 量か?

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 8 / 22

(13)

抽象化して初めて考えられる問題(続き)

ある性質を持つ代数系/等式クラスの分類を与えよ。  等式クラスの性質の例:

  部分等式クラスのなす束が○ ○ の性質を持つ   ○ ○ の例:直積分解できない

 代数系の性質の例:

  部分系の束/合同関係の束/自己同型群etc. が× × の 性質を持つ

  × × の例:(台集合を固定し)termを一つでも増やすと 全ての演算がtermの演算となる

ある新しい代数系をとる操作で閉じた代数系のクラスの特 徴付けを与えよ。

“ 方程式 ” の解の性質、数の評価

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 9 / 22

(14)

定義

K を代数系のクラスとする。F ∈ K が X ⊂ F を自由生成元とす るK の自由(代数)系であるとは、

任意のA ∈ K と写像 f : X → A に対し、g|X = f となる準同型 g : F → A がただ一つ存在することをいう。

X の濃度を F のランクという。

命題

等式クラスは任意ランクの自由系を持つ。

証明:termの全体を公理からt = s が導けるものを同一視する同 値関係で割ったものに自然に演算を入れたものが自由系になる。



(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 10 / 22

(15)

定義

K を代数系のクラスとする。F ∈ K が X ⊂ F を自由生成元とす るK の自由(代数)系であるとは、

任意のA ∈ K と写像 f : X → A に対し、g|X = f となる準同型 g : F → A がただ一つ存在することをいう。

X の濃度を F のランクという。

命題

等式クラスは任意ランクの自由系を持つ。

証明:termの全体を公理からt = s が導けるものを同一視する同 値関係で割ったものに自然に演算を入れたものが自由系になる。



(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 10 / 22

(16)

定義

Vを等式クラス、TnをVのn 項 term の全体とし(V で常に同 一の演算を定めるものを同一視する)xn,i ∈ Tnを変数記号、 cn,m : Tnm× Tm→ Tn

cn,m((t1, ···,tm), s) := s ◦ (t1, ···,tm)

と定める。

({Tn}n∈N, {cn,m}n,m∈N, {xn,i}n∈N,1≤i≤n) を V に対応する clone といい C(V) とかく。

cloneはもとの等式クラスの本質的情報(termを一義的なものと

考え、何が演算記号であるかを気にしない立場から見たときの 構造:definitional equivalence)を完全に表現している。また、 等式クラスのcloneとなりうる構造の特徴付けも容易に与えるこ とができる。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 11 / 22

(17)

定義

以下の条件をみたす対({Cn}n∈N, {cn,m}n,m∈N, {pn,i}n∈N,1≤i≤n) を clone という:

Cnは集合。 cn,m : Cmn × Cm→ Cn.

pn,i ∈ Cn

cn,l((cn,m((xi)mi=1,yj))lj=1,z) = cn,m((xi)mi=1,cm,l((yj)lj=1,z)). cn,m((xi)mi=1,pm, j) = xj.

cn,n((pn,i)ni=1,y) = y. 定理

等式クラスのclone は clone である。また、任意の clone C に対し C(V) = C となる等式クラス V が存在し、V は定数記号の有無と definitionally equivalent を除いて一意に定まる。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 12 / 22

(18)

定義

圏とは次の条件をみたす対(Ob, Mor, dom, cod, id, ◦) のことを いう。

Ob, Mor はクラス、id : Ob → Mor, dom, cod : Mor → Ob,

◦ = {◦A,B,C : Mor(B, C) × Mor(A, B) → Mor(A, C)}A,B,C∈Ob. ただしMor(A, B) = { f ∈ Mor | dom( f ) = A, cod( f ) = B}. dom(g ◦ f ) = dom( f ), cod(g ◦ f ) = cod(g),

( f ◦ g) ◦ h = f ◦ (g ◦ h), dom(id(A)) = cod(id(A)) = A,

f ◦ id(A) = id(B) ◦ f = f ( f ∈ Mor(A, B)). 以下id(A) を idAと書く。

f ∈ Mor(A, B) であることを f : A → B と書く。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 13 / 22

(19)

L:関係記号のない言語 KL構造からなるクラス このとき

Ob = K

Mor(A, B) = Hom(A, B),Mor =A,B∈KMor(A, B)

id(A) = idAf ◦ g = g と f の合成写像 とすると圏になる。以下この圏もKと書く。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 14 / 22

(20)

定義

f : A → B ∈ Mor が同型射である

⇔ ∃g : B → A; g ◦ f = idA, f ◦ g = idB.

同型射A → B が存在するとき A と B は同型であると言い、 A ≃ B と書く。

定義 C1, C2:圏

・関手F : C1→ C2とは対

FOb: ObC1 → ObC2,FMor : MorC1 → MorC2 id, dom, cod, ◦ を保存 するもののこと。

・関手F : C1→ C2,G : C2 → C1が圏同値対であるとは

G(F(A)) ≃ A (∀A ∈ ObC1), F(G(B)) ≃ B (∀B ∈ ObC2) となること。 F, G が存在するとき C1C2は圏同値と言う。

問題

代数系のクラスK , L が圏同値となるのはどんなときか?

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 15 / 22

(21)

定理(McKenzie)

K , L:任意ランクの自由系を含む retract に閉じたクラス K Lが圏同値 ∃n ∈ N, ∃σ = (σ1, ···, σn) ; L = K[n](σ). ここでσiはK のn 項 term で、 ¯σ はべき等的かつ可逆なもの。 定義

 σ がべき等的  ⇔  ¯ σ ◦¯ σ.¯  σ が可逆¯

⇔ (x1, ···,xn) = ¯t( ¯σ(t1( ¯x)), ···, ¯σ(tm( ¯x))) をみたす term t, t1, ···tm 存在する。

定義

A[n]の台集合はAnm 項演算は A の nm 項演算の n 個の対。 A(σ) の台集合は σ(A),演算は σ ◦ t(t は A の演算)の形の もの。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 16 / 22

(22)

定義

A を代数系、Reln(A) := Anの部分系全体とする。

Rel(A) = {Reln(A) | n ∈ N} に以下の演算を入れた代数系を A の関 係構造という。

・置換:σ: {1, ·, n} 上の置換に対し σ(ρ) := {(x1, ···,xn) | (xσ(1), ···,xσ(n)) ∈ ρ}.

・直積:ρ × τ:= {(x1, ···,xn,y1, ···,ym) | (x1, ···,xn) ∈ ρ, (y1, ···,ym) ∈ τ}

・射影:prn(ρ) := {(x1, ···,xn) | ∃y ∈ A; (x1, ···,xn,y) ∈ ρ}

・結合:

ρ ◦ τ:= {(x1, ···,xn−1,y2, ···,ym) | ∃z; (x1, ···,xn−1,z) ∈ ρ, (z, y2, ···,ym) ∈ τ}

・複製:∆(ρ) := {(x1, ···,xn,xn) | (x1, ···,xn) ∈ ρ}

・“ 対角集合 ”:δ := {(x, x, y) | x, y ∈ A} 定理(Denecke, L ¨uders)

A, B:有限代数系

  V(A) と V(B) との間に A を B に移す圏同値がある

⇔ Rel(A) と Rel(B) が同型。

A B の有限性の仮定を外しても Rel を A 項関係まで加えた不 変関係の全体とすれば定理は成り立つ。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 17 / 22

(23)

Fact (McKenzieの定理の系)

K Lが自由系を含みretract に閉じたクラスのとき、その 間の圏同値はそれらを含む最小の等式クラスに拡張される。 V, W が等式クラスでそれらの間に圏同値が存在するとき、 VとWの部分等式クラスの束は同型。

問題

「圏同値の拡張」において等式クラスは何らかの自然な位 置づけが与えられるか?より細かく分けると

・他のクラスの圏同値は等式クラスの圏同値に拡張され るか?

・等式クラスの間の圏同値は自然により広いクラスへと拡 張されるか?

拡大等式クラスの対応関係はあるか?

最後の問について「全く否定的である」という回答が多分成り立 つのではないかと思う。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 18 / 22

(24)

定理(McKenzie)

V, W1, W2を等式クラス、ϕi : V → Wiを圏同値とする。 W1とW2がdefinitionally equivalent である条件は W1

rank 1 の自由系 FW1(1) の ϕ1による引き戻しとW2のそれが 同型であることである。

ϕ−11 (FW1(1)) は 有限生成、射影的、余生成 代数系であり、下 線部の条件をみたす代数系は等式クラスの間の圏同値で F(1) に写りうる。

定義

代数系A ∈ V が余生成であるとは任意の B ∈ V に対し A から B への全ての準同型の像によりB が生成されることをいう。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 19 / 22

(25)

Fact

V1, V2を等式クラスとし、V1からV2への翻訳(が存在すると しその一つ)を固定する。

その翻訳の随伴関手G : V1 → V2により有限生成性、射影 性、余生成性は保存される。また自由系は同じrank の自由 系に写る。

W1 = V[n]1 (σ) で ϕ1: V1 → W1を圏同値とするとき W2 := V[n]2 (σ) とおくと自然に圏同値 ϕ2 : V2→ W2があ

り、ϕ2(G(ϕ−1(FW

1(1)))) = FW2(1) となる。

等式クラスVの有限生成射影的余生成代数系の全体をP(V) と 表記すると、等式クラスの間の翻訳V1 → V2は写像

P(V1) → P(V2) を誘導する。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 20 / 22

(26)

今後やりたいこと

1 P(V) に適当な構造を入れ、取り得る構造の特徴付けを与え る公理を与える。

2 「等式クラスVと上で定義したい構造の準同型

f : X → P(V) が任意に与えられたとき、等式クラス Vと翻 訳V → VでP(V) ≃ X であり、翻訳が誘導する準同型が f と一致するものが存在する」という命題を証明する。

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 21 / 22

(27)

参考文献

1 Ralph McKenzie, An algebraic version of categorical equivalence for varieties and more general algebraic categories, Logic and Algebra vol.180

2 K.Denecke, O. L ¨uders, Categorical equivalence of varieties and invariant relations, Algebra Universalis 46(2001)

3 Yoshihiro Maruyama, A Duality for Algebras of Lattice-Valued Modal Logic,

4 Stanley N. Burris and H.P. Sankappanavar, A Course in Universal Algebra The Millennium Edition, Springer-Verlag

(井澤昇平) 代数系のクラスの圏同値性 22 / 22

参照

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