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PDF 原生動物園 Vol 3 (2012年度号) 原生動物園

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 読者の中には嫌気性微生物を研究材料と されている方もおられる事とは思います が、馴染みのない方の為に、ここで嫌気性 微生物の取扱い方と培養法について簡単に 触れたいと思います。「嫌気性微生物の取 扱いは難しいんでしょ?」あるいは、「嫌 気性菌は培養が面倒だよね?」といった声 を良く耳にします。空気中に酸素がある以 上、常に密閉された環境下で作業や培養を 行わなければならないと思われるのかも知 れません。しかしながら、嫌気性微生物の 取扱いは、いくつかの基本を抑えておけ ば、いたって簡単で、特別に高額な機器を 必要とするものでもありません。ここで は、環境中の嫌気性微生物を培養する場合 を例に取って簡単に紹介してみたいと思い ます。

 まず、嫌気環境からの試料採取は、少し 多めに試料を採取し、密封して研究室へ持 ち帰ります。環境中には他の好気性の微生 物も数多く存在しているので、混入した酸 素が かであれば速やかに消失するので、 あまり神経質になる必要はありません。研 究室へ持ち帰った試料の処理はグローブボ ックス内で行うのが望ましいですが、N2 を常に試料容器内に吹き込む等、上手く N2雰囲気を作って短時間で処理を行えば 問題はないと思います。筆者はガスによる 曝気や置換操作を容易にできるガス置換装

置(図、三紳工業製)を用いていますが、 これも必須なものではありません。ガスは 純 窒 素 も し く は N2/ C O2の 混 合 ガ ス

(80:20)を用いますが、グレードはいず れも超高純度(99.9999%)である必要が あります。純度が低い場合は還元銅カラム を通して微量に混入した酸素を除去する必 要があります。培養にはブチルゴム栓でき る試験管、あるいはバイアル瓶を用意しま す。密栓には気相の透過率が低いブチルゴ ム栓をできるだけ使用します。培地は(液 体 培 養 の 場 合 ) 純 窒 素 も し く は 、 N2/ CO2(80:20)の混合ガスで数分間曝気を 行って、溶存酸素をできるだけ追い出して やります。その上で空気を巻き込まないよ うにブチルゴム栓等で密封してやります。 それほど高い嫌気度を要求しない微生物で あれば、この処理の後にオートクレーブを 行うだけで培養が可能になります。比較的 高い嫌気度が必要な微生物には、接種前に 還元剤(システイン塩酸塩、N2S、クエン 酸チタン等)を添加して酸化還元電位をさ らに低くします。紫色の色素であるレサズ リンを添加しておくと、酸化還元電位が− 110 mV以下になったところで無色となる ので、十分に嫌気条件になったことが確認 できます。以後の取り扱いはすべてシリン ジを用いて行えば問題ありません。メタン 生成アーキアは最も高い嫌気度を要求する

Column

嫌気性微生物の取扱いと培養法

(39)

Protozoological Garden Vol. 3 (2012)

(2)

菌の仲間で、筆者も研究材料の一つとして いますが、上述のような方法で問題なく培 養を行っています。しかしながら、酸素に 弱い細胞成分やタンパク質の取扱いにはグ ローブボックスでの作業が必要となりま す。参考までに、筆者は、(比較的きちん とした)グローブボックス(Don Whitley Scientific社製)を用いています。ビニール で覆って嫌気雰囲気を作る比較的安価なも のもありますので、必要の際は検討してみ てください。

 あくまで概略のみでしたが、嫌気微生物 の取り扱いはそんなに難しくないというこ とが伝われば幸いです。嫌気微生物の研究 者はまだまだ少ない印象がありますので、 機会があれば是非トライしてみてくださ い。

(新里尚也) 図 ガス置換装置の例(三紳工業製)

手前は培養に用いる嫌気バイアルとブチルゴム栓

原生動物園 Vol. 3 (2012) 39-40. Column.

新里尚也 (琉球大学熱帯生物圏研究センター)

(40)

Protozoological Garden Vol. 3 (2012)

参照

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