自立的で持続可能な地域経済を構築する

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自立的で持続可能な地域経済を構築する

大学院公共政策学連携研究部

大学院公共政策学教育部(公共政策大学院) 教授

専門分野 : 地域政策,地域経済,地方財政

研究のキーワード : 地域経済,財政,地域の自立的発展,公民連携

衰退する地方、成長力を失う大都市

わが国は、これから本格的な人口減少社会を迎えます。

そうしたなかで、大都市が経済成長をけん引し、地方も財政移転という成長の果実を享

受し、地域的に均衡ある発展を目指していくという成長モデルが根底から揺らいでいます。

これまでの地域政策は、大都市抑制と地方振興を基本として、立地規制・優遇、公共投

資や地方交付税による財政移転を軸に進められてきましたが、地方の衰退に歯止めをかけ

ることができないばかりか、近年では、大都市の活力をも削いでいるのではないかといっ

た指摘も出されています。

長年、地域政策金融の実務に携わり、主に地方からの視点で、地域経済発展の道筋を考

えてきましたが、財政移転を中心とする政策によっては、地域の自立的な発展経路を構築

するのは難しいのではないかという思いから、「文理融合」「大学と社会の架橋」というミッ

ションを持つ公共政策大学院に移り、様々な角度から、地域の自立的な発展につながる社

会変革の必要性、可能性について考えてきています。

活力低下の要因をどう捉えるか

1980年代にはジャパンアズナンバーワンと言われ、官主導の経済システムが世界的にも

高く評価され、日本企業の競争力にも目を見張るものがありました。しかしながら、バブ

ル崩壊以降のいわゆる失われた20年を経て、企業の国際競争力が急速に弱まってきている

ほか、わが国の財政は、国・地方合わせて900兆円を超える長期債務を抱えるに至ってい

ます。

大都市も含むわが国経済全体の活力低下の背景要因は、様々な要素が絡み合っていると

考えられますが、これまでの考察からは、今日の縦割り社会が既得権益を守る温床となり、

変革や意思決定の遅れをもたらしていること、高齢者に偏った社会保障が所得再分配に新

たなひずみをつくり消費の低迷をもたらしていること、官民を問わず過剰設備が積み上げ

られ、デフレ基調を脱し切れていないことなどが指摘できると思います。

特に、地方経済については、過剰設備の解消が進まず、商業、観光業などで厳しい収益

環境が続いていること、公共投資により形成されたストックが十分活用されていないこと

などが指摘できると思います。

こうした状況を踏まえると、財政移転を中心とするこれまでの地域政策はすでに転換点

を迎えており、自立的発展を目指す方向に移行する必要があると言え、そのためには「官

から民」「国から地方」という資源移転の流れをつくっていくことが重要になっています。

社会

出身高校:創価高校(東京都) 最終学歴:一橋大学商学部

石井

いしい

よし

はる

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児童生徒数の減少に比して減少していない教員数 北海道における社会資本ストックと県内総生産

官から民への移転と地方分権が経済構造変革の大きなカギに

官から民への資源移転に際しては、民間主体の育成に加え、企業家精神の醸成などの効

果が期待されますが、都市水道の民営化や空港の上下一体化など、官に温存されてきた資

源の思い切った民間移転が強く求められています。こうした方向については、国も成長戦

略などで重い腰を上げていますが、実現に向けた動きには必ずしもつながっていないので、

引き続き具体化に向けた提言を続けていきたいと考えています。

また、PFI(Private Finance Initiative:公共施設等の建設・運営等を民間の資金、経

営能力などを活用して行う新しい手法)や指定管理者などの公民連携手法については、す

でに、民間企業の活動領域を拡大するとともに、公共サービスの効率化にも資するとの評

価を確立してきており、手法面をさらに洗練していく段階に入っていると考えています。

一方、地方分権については、近年の大都市における経済停滞という課題に着目すると、

それぞれの大都市が独自の産業政策に取り組んでいくという方向に一定の意義を見出すこ

とができます。その意味で、大都市制度の変革が大きなエポックになってくる可能性が考

えられます。

社会保障制度の見直しも、受益と負担の均衡、適切な所得再分配の確保などの観点から

不可欠になっています。いくつかの例をあげれば、「生活保護が制度疲労を起こし、受給者

のモラルハザードを醸成している。」「きめ細かい対応によって救急車の安易な利用が助長

され、救急医療の膨張をも招いている。」といった論点が指摘できます。その他にも多くの

課題を抱えていますが、どのような制度変革につなげていくかについては、定まった方向

はみえていません。いずれにせよ、問題解決に当たっては、後世代に負担を引き継がない

ことを基本に、早急な解決が求められており、こうした課題についても実証的な分析を重

ね、さらに対応していきたいと考えています。

持続的な経済の構築ということでは、3.11以降のエネルギー情勢や北海道の地域特性を

考えると、様々な再生可能エネルギーの活用が大きな可能性を持ってきますし、省エネ、

節電によりエネルギー多消費型の構造を変革していくことも重要な課題になっています。

自立への最初の一歩は、自己決定と自己責任という、いわば権利義務を十分に認識する

ことにあると言え、まずは住民の意識改革につながる問題提起にも引き続き取り組んでい

きたいと思っています。 18,736

14,210 17,525

10,824 446

761 697

715

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900

0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000

47 50 53 56 59 62 65 68 71 74 77 80 83 86 89 92 95 98 01 04

児童生徒数(千人) 小中学校教員数(千人)

1.1

15.0 21.9 38.1

47.7 52.0 458

708

379

0 100 200 300 400 500 600 700 800

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0

55 60 65 70 75 80 85 90 95 00 03 社会資本ストック(14部門、兆円)

社会資本生産性(ストック1百万円当たり県内総生産、千円)

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参照

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