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獣医学部・大学院獣医学研究科

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Academic year: 2017

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(1)

動物の超音波検査の実際: 画面を食い入るように見つ め る 動 物 も い て 面 白 い で す。

動物の健康を通して社会に貢献する

大学院獣医学研究科 教授

滝口

た き ぐ ち

満喜

み つ よ し

(獣医学部共同獣医学課程)

専門分野 : 獣医内科学,超音波医学,画像診断学 研究のキーワード : 伴侶動物,超音波診断,超音波治療,がん

HP アドレス : http://www.vetmed.hokudai.ac.jp/internalMedicine01.html

何を目指しているのですか?

動物、とくに伴侶動物(ペット)の健康を通して社会に貢献することを目指しています。 みなさんはペットを飼ったことがありますか?みなさんの年齢は親との関係がぎくしゃく する時期だと思いますが、ペットになら素直に自分の気持ちを語れるし、そばにいてくれ るだけで日常の様々なストレスから癒されますよね。そんな心の友であるペットが病気に なった時、頼りになるのが獣医師です。

私の動物病院内科での仕事は、動物のからだに何が起こっているのかを的確に見極め、 飼い主さんにどのような治療が選択肢としてあるのかをわかりやすく説明することです。 そうすることで病気になったペットを抱えた飼い主さんの心の不安を少しでも和らげてあ げることが私達獣医師の使命です。その一方、臨床をベースにした研究を展開することで 得られた研究成果を臨床現場にフィードバックさせることも重要な課題です。

どうして病気になるのだろう?動物医療の現場から感じるこれらの素朴な疑問を常に抱 き続け、病気の成り立ちを解明し、早期診断法や新たな治療法の開発につなげていくため に様々な研究を行っています。

どんな研究をしていますか?

獣医療の進歩に伴い、動物の病気もがんや心臓病などの割合が 増えてきています。物言わぬ動物たちの病気を診断する際、様々 な検査を行いますが、麻酔を必要としない超音波診断が私の専門 です。最近取り組んでいる研究テーマの一つは、超音波造影剤の 臨床応用に関する研究です。従来の超音波診断では、肝臓や脾臓 に病変が認められても、それが良性なのか悪性なのかは組織を採 取して顕微鏡で詳しく調べなければわからなかったのですが、超 音波造影剤を使って超音波検査を行うことでこのような顕微鏡に よる評価なしで良性か悪性かを高い精度で鑑別できる可能性が示 唆されています。特に肝臓に関しては、過形成などの良性病変が

周囲の正常肝実質と同等に均一に造影増強される(明るく見える)のに対して、肝臓がん などの悪性病変は造影欠損(暗く見える)を示すことから、造影超音波検査が犬の肝臓腫 瘤性病変の鑑別診断に極めて有用であることを示しました。現在、膵臓疾患の診断に役立 てるべく研究を行っています。

出身高校:千葉県立千葉高校 最終学歴:北海道大学大学院

獣医学研究科

医療/いきもの

獣医

(2)

肝腫瘤性病変の造影超音波検査所見の模式図:

肝臓の結節(*)が良性であれば、造影後、周囲実質と同様に均 一に染影されるが、悪性であれば造影欠損を呈する(黒く抜けて 見える)。

犬の肝臓悪性腫瘍の造影超音波検査所見: 通常の検査で肝臓に認められる2個の結節病 変(右図)は、造影後、明らかな造影欠損を呈し た(左図)。

マイクロバブルと超音波によるドラッグデリバリー: 超音波照射により細胞近傍のマイクロバブルが破 裂した際に生じるジェット流で細胞に小さな孔があ き、そこから薬物( )が細胞内に導入される。

また、超音波検査は心臓の動きや機能を評価する際にも使われます。私の研究室では、 左心房の動きに着目した心臓病の新しい評価基準を確立することを目的とした研究も行っ ています。

このように超音波は診断領域で大きく貢献し ていますが、実は治療にも応用されています。現 在、私の研究室では超音波造影剤であるマイクロ バブル(微小気泡)を利用したがんの超音波治療 の研究を行っています。マイクロバブルと超音波 を併用することで細胞膜に一時的に孔を開け、そ こから薬物を細胞内に取り込ませることができま す。超音波を腫瘍局所に照射させてがん細胞に効 率的に抗がん剤を取り込ませることをねらうこの 方法は、従来の薬物動態学的な考え方を根底から 覆す全く新しい治療法で、痛みを伴わず副作用の 少ない安全かつ効率的な手法といえることから、 将来の臨床応用が大いに期待されています。私は、 伴侶動物のがん治療への超音波の応用を目的とし

て、がんの根絶を目指すのではなく、がんと共存しながらQOL(quality of life)を低下 させないことを重視した獣医臨床ならではの実用的な手法の開発を研究しています。

次に何を目指しますか?

人の医療に先立って新たな治療法を試していくことで、動物医療から人の医療に還元で きるような成果を挙げていきたいと考えています。ストレスの多い現代社会の中で、人は もはや動物との関わりなくして生きていくことは難しくなっているのではないでしょうか。 動物の健康を通して人の健康に貢献することで人と動物のよりよい共生社会の実現を目指 し、科学の眼を持つ獣医師の創出に努力していきたいと思います。獣医師を志しているみ なさん、是非、北海道大学に来てください。ともに学び、夢を持って研究しましょう。

獣医

(3)

生物多様性保全をめざして野生動物を知る

大学院獣医学研究科 教授

坪田 敏男

(獣医学部共同獣医学課程)

専門分野 : 野生動物医学

研究のキーワード : 哺乳類,クマ,生物多様性,保全,野生動物管理

HP アドレス : http://www.vetmed.hokudai.ac.jp/organization/ecol/index.html

何を目指しているのですか?

一言でいえば“生物多様性の保全”です。野生動 物は、種間あるいは種内で相互作用を持ちながら生 きています。また、生息する地形や気候、さらには 周辺の生物群集に応じて生き様を変化させ、環境に 適応しながら独自の生態系を形作っています。その 構成要素である野生動物は人間にとって益があるか ないかではなく、生態系の中で各々が重要な役割を もって生きています(右図)。その役割を明らかにす ることが、すなわち生物多様性の保全につながる一 歩だと考えています。また、野生動物には驚くよう な能力や特性(例えば、クマの冬眠など:右図)を 兼ね備えているものがおり、そのユニークで特徴的 な生態や生理を解き明かすこともわれわれのねらい です。

北海道には、今でも比較的豊かな自然が残っており、種々の野生動物が生息しています。 大型哺乳類でいえば、ヒグマ、シカ、アザラシといった動物がその代表です(下図)。わ れわれとしてはこれらの野生動物の保全(Conservationや保護管理Management めざして、その生態や生理を探究しています。また、野生動物は、進化の中で微生物との 共生をはたしてきた生き物です。けっして症状としては現さないが、保菌者として病原体 を維持する役割を担っています。ときに人や家畜に感染させたり、新たな野生動物との感 染を成立させたりするなど、新興あるいは再興の危険性をもっています。その侵淫状況を 把握しリスク評価をすることも大事な研究の一つです。

出身高校:大阪府立箕面高校 最終学歴:北海道大学大学院

獣医学研究科

環境系

ヒグマ エゾシカ(ニホンジカの1亜種) ゼニガタアザラシ

(4)

どんな装置を使ってどんな実験をしているのですか?

多くの時間をフィールド調査に費やします。フィールドでは、大掛かりな装置や器械を 使って野生動物の調査に挑みます。例えば、ヒグマ調査の場合、体重が400kgもあるヒグ マを捕まえるために、大型の金属製オリを製作して山の中に設置しなければなりません。 ヒグマがオリに入った時に扉が閉まったことを合図する発信機を取り付け、札幌にまでそ の信号を送ってもらいます。ヒグマが捕まったらすぐに現地に駆けつけ、麻酔をかけてヒ グマに発信機を装着します(下図)。野に放たれたヒグマが移動する位置情報を研究室にあ るパソコン上で確認することができます。その後、どのような環境を多く利用しているの か、行動圏の広さはどのくらいなのか、個体同士での行動圏の重なりはあるのか、といっ た疑問についてパソコン上で地図やGIS(地理情報システム)を使って解析します。

一方、捕まったヒグマや有害駆除により捕殺されたヒグマ、さらには野生に生きるヒグ マより体毛や皮膚組織を採取し、DNAを抽出して遺伝子解析を行います。PCRやシーク エンス装置など、通常の遺伝子解析を使ってヒグマの遺伝的グループ分けや親子判定など を行っています。これらの研究成果を北海道の生物多様性保全に役立たせます。

次に何を目指しますか?

日本固有の生態系が未来永劫残るようさらに野生動物研究を続けます。日本にはとても 美しい自然があって、そこに息づく野生動物たちが暮らしています。美しい自然を作り上 げているのは、われわれが目にすることができる樹木や花、草、川、海といったものだけ でなくすべての生物とそれを取り巻く環境によって維持されています。その構成員のひと つである野生動物を将来にわたって地球上に残していく責務を果たしたいと思います。ま た、野生動物は人間の活動域とどうしても重複してしまいます。そのフロントラインでは 否が応でも軋轢が生じます。その軽減のために人間は英知を結集して、技術を駆使しなけ ればなりません。そのような仕事にも取り組んでいきたいと思います。

参考書

(1) 坪田敏男,『哺乳類の生物学③生理』,東京大学出版会(1998

(2) 坪田敏男・山崎晃司編,『日本のクマ-ヒグマとツキノワグマの生物学-』,東京大学 出版会(2011

(3) 光一宮木雅美宇野裕之編,『エゾシカの保全と管理』,北海道大学出版会(2006

(5)

動物を感染症の脅威から救う

大学院獣医学研究科 准教授

今内

こ ん な い

さとる

(獣医学部共同獣医学課程)

専門分野 : 感染免疫学

研究のキーワード : 感染症,免疫,生体防御,ワクチン,創薬

HP アドレス : http://www.vetmed.hokudai.ac.jp/infectiousDiseases01.html

何を目指しているのですか?

病原体の侵入に対して宿主動物は 免疫によって対抗します。しかし、細 菌、ウイルスおよび原虫などが原因と なる感染症の中には、予防や治療が困 難な感染症がまだ数多くあります。こ れは、病原体が免疫回避や撹乱を引き 起こし病態が進行することにあります。 これらの感染症に対し有効な治療薬や ワクチンを開発するためには、病原体 と宿主の相互作用を解明することが重 要です。本研究室では、動物に大きな

被害を起こすウイルスや原虫の病態メカニズムを解明することで新しい治療薬やワクチン の開発に取り組んでいます。また、これらの病原体を運ぶダニに対するワクチン開発につ いても研究を進めています。

どのようなものを使って、どんな実験をしているのですか?

どのような動物の病気が、

実際の野外でどのように問題 になっているかを自分の目で 確かめるように努めています。 現在、日本を含めた世界中の ウシ、水牛、ヤギなどの家畜 や野生動物から血液や試料を 採取し、どのような感染症が 流行しているかについて分子 疫学調査を行っています。同 時に、病原体がどのような機 序によって宿主の免疫から逃 れているかを遺伝子レベルか

出身高校:北海道北見北斗高校 最終学歴:北海道大学大学院

獣医学研究科

病理

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ら明らかにします。得られた結果を基に治 療薬やワクチンを開発、実際に動物に投与 し、その効果について検討しています。

一方、アフリカ等では、ダニによって種々 の感染症が引き起こされ問題となっていま す。たった一匹のダニに刺されることで、 ウシが死亡する感染症もあります。そこで ダニの唾液中の成分を解析し、病原体伝播 機序を解明することで、ダニの吸血を阻害 し感染症の伝播をも防ぐワクチン開発を海 外の研究機関と共同で行っています。

何を目指しますか?

日本での口蹄疫の被害は記憶に新しいと 思います。このように畜産資源を脅かす要 因の筆頭は感染症の蔓延で、特に甚大な被 害をもたらす悪性感染症の制御は世界共通 の悲願です。世界中には、まだ予防法や治 療法がない動物の感染症が多くあります。 それらの制御法の樹立は容易ではありませ んが、家畜を感染症の脅威から守るワクチ ンや治療薬の開発を目指しています。良い

研究成果が得られれば、日本だけではなく発展途上国の食資源確保にもつながるはずです。 また、愛玩動物や貴重な野生動物の命を救うことも可能となります。現在の研究は、色々 な疾病を同時に治す治療薬の開発も目指しています。

参考資料

研究内容:http://www.mcip.hokudai.ac.jp/TLO/pdf/12-1_hokudai01.pdf 研究風景:http://www.youtube.com/watch?v=6CJO9wwTs-0

参照

関連したドキュメント

2)医用画像診断及び臨床事例担当 松井 修 大学院医学系研究科教授 利波 紀久 大学院医学系研究科教授 分校 久志 医学部附属病院助教授 小島 一彦 医学部教授.

URL http://hdl.handle.net/2297/15431.. 医博甲第1324号 平成10年6月30日

学位授与番号 学位授与年月日 氏名 学位論文題目. 医博甲第1367号

金沢大学学際科学実験センター アイソトープ総合研究施設 千葉大学大学院医学研究院

鈴木 則宏 慶應義塾大学医学部内科(神経) 教授 祖父江 元 名古屋大学大学院神経内科学 教授 高橋 良輔 京都大学大学院臨床神経学 教授 辻 省次 東京大学大学院神経内科学

⑹外国の⼤学その他の外国の学校(その教育研究活動等の総合的な状況について、当該外国の政府又は関

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

関西学院大学手話言語研究センターの研究員をしております松岡と申します。よろ