付録 数学の復習:数と式
● 〇
言葉と意味
言葉は意味を伝達する手段
日本語など「日常言語」は扱いやすいが曖昧な部分も多い.
(例)
「鈴木の授業はやばい」
と誰かが言ったとする.
⇒聞く相手によって受け取る意味が変わり得る.
「鈴木」ってどの鈴木?「鈴木の授業」ってどの授業?
「やばい」ってどういう意味?
「やばい」は本来不都合な状況を指す
.しかし,最近の若者言葉では良い状況を「やばい」と表現すること
も.
(ありうる意味)
〇●
言葉と意味
「日常言語」は少ない言葉数で多くの意味を伝えら
れる.しかし,曖昧な分,不正確だったりもする.
日常言語で正確な意味を表現するためには多くの言
葉数が必要になる.
日常言語は「意味を正確に表現する」のが苦手.
「言葉の受け取り手」に「言葉を理解しようという意思
がある」のなら特に問題はない.たとえば友人関係なら
問題はない.
しかし,すべての人が自分の言葉を正確に理解しようと
してくれるわけではない.
● 〇
数学という言葉
大学で学ぶ学問の多くは非常に複雑な意味・概念を
扱う.
日常言語だけで表現,理解するのは困難.
高校の現代文で難解な読解問題をやらされるのは,その
ため.
経済学では日常言語だけでなく
「数学」
を用いて社
会や人間行動の仕組みを分析する.
数学の長所は主に以下の二つ.
〇●
数学という言葉
数学は「計算を容易にしてくれる」.
消費税の計算を日常言語(日本語)だけで行うのは不可
能.消費税を計算するための公式がないと計算できない
.
「日常的な意味を曖昧さがないように扱える」とい
うのはちょっとわかりにくい.
中学(高校)で習う数学の復習をしつつ,数学を用いて
● 〇〇〇
自然数と整数
数学の基本は
「数」
.
数には様々な種類があり,それぞれ数える対象が違う.
日常的にわかりやすいのは自然数と整数.
自然数とは
0
または
1
から
1
ずつ加えていった数の
全体をいう.
自然数は個数や順番を数えるために用いる数.
整数とは
0
から
1
ずつ加えていった数と
1
ずつ引い
ていった数の全体をいう.
〇●〇〇
自然数と整数
自然数は
0
を基準にして右側にレンガを
1
個,
2
個
,
3
個と並べていったイメージ.
3
+
2
=
5
(意味;レンガ
3
個と
2
個の合計はレンガ
5
個)
3
-
2
=
1
(意味;レンガが
3
個あって
2
個使うと残り
は
1
個)
〇〇●〇
自然数と整数
整数は
0
を基準にして右と左にレンガを並べ右側の
レンガの右端と左側のレンガの左端に小石を並べた
感
じ
.
3
+
2
=
5
(意味;レンガ
3
個と
2
個の合計はレンガ
5
個)
3
-
2
=
1
(意味;レンガが
3
個あって
2
個使うと残り
〇〇〇●
自然数と整数
自然数
目
の
前
にある
具
体的なレンガについて考えている感
じ
.
2
つしかないなら
3
つ使うことはできない.
整数
工事
計
画
を
立
てるときなどにレンガ
一般
について
抽
象的
に考えている感
じ
.
2
つしないなら
3
つ使うには
1
つ
足
りない.
自然数と
比
べ整数は数える対象を
抽
象的にとらえて
● 〇〇〇〇〇〇〇〇〇
実
数と計算
整数は引き算を自
由
に行うことのできる数.
割
り算はどうか?
10÷2=5
意味;
10
個のレンガを
2
人で
運
ぶ
時
,
一
人
当
たり
5
個
運
ぶ.
10÷3=?
10÷3
は
3
より大きく
4
より小さい.
3
と
4
の間に小石はない.したがって,整数では
10÷3
を計算できな
い.
〇●〇〇〇〇〇〇〇〇
実
数と計算;数
直線
基準点(原点)
0
の左右に伸びた一本の直線を数直線という.
その数直線上のすべての点に数を対応させることで,向きを含
めた原点との位置関係として数を捉えたものの全体が実数.
実
数を表現する
方法
の
一
つとして分数がある.
と表すことができる.すなわち
10÷3
とは
整数
3
に分数 を加えたものの大きさという意味.
3
10
3
10
〇〇●〇〇〇〇〇〇〇
実
数と計算;
実
数の意味
実
数は
1
つの
単位
で
測
られた
モノ
の
量
や大きさを
細
かく分
割
したり,いくつかでくくり
直
して
他
の
単位
に
測
り
直
すことができる.
これを「
除法
(
割
り算)が可能」という.
数
直線上
に
連続
的に
存在
している数の全体をとらえ
るのが
実
数.
実
数のうち,整数の分数で表現できるものを
有
理数,で
きないものを
無
理数という.
無
理数には (
平方根
);
1.41421…
や
円周率
;
3.1
41592…
などがある.
〇〇〇●〇〇〇〇〇〇
実
数と計算;分数
実
数は分数または小数により表現できる.
分数のうち,小学校の「算数」で習う「
帯
分数」は「数
学」では使わないので
注
意.
演
算
記号
で
省略
してよいのは
掛
け算
記号
(
×
)のみ.
足
し算
記号
は
絶
対に
省略
してはいけない.
3
1
3
3
1
3
3
10
〇〇〇〇●〇〇〇〇〇
実
数と計算;小数と
パ
ー
セ
ン
ト
小数とは分
母
を
10
,
100
,
1000
としたときに,分
子
の左下に小数
点
「.」をつけて表現したもの.
例
,
例
「消費税
8
%
」という
時
の
%
(
パ
ー
セ
ン
ト
)は小数
の
一
種.
分
母
を
100
としたときの分
子
の
値
を
パ
ー
セ
ン
ト
という.
5
.
0
10
5
2
1
1
0
.
5
1
.
5
〇〇〇〇〇●〇〇〇〇
実
数と計算;
絶
対
値
と
符号
数には自然数,整数,
実
数以
外
にも様々なものがあ
るが,とりあえずこの
3
種類を理解して
お
けばよい
.
実
数は
原点
(
0
)を基準とする数
直線上
に
存在
して
いる.
実
数が
0
からどれだけ
離
れているのかに対
応
する「数の
大きさ」を
「絶対値」
という.
0
よりも右にある
場
合
+
(プ
ラス
),左にある
場
合-
〇〇〇〇〇〇●〇〇〇
実
数と計算;変数・
パラ
メー
タ
・
定
数
数学は
「分からないものは分からない」
でいい.分
からない数は
具
体的な数ではなく,
記号
で表
記
する
.
数の中には
具
体的な
値
が
1
つに
決
まっているものと
値
が
決
まって
お
らず
色
々と変わり得るものがある.
値
が
決
まっているものを「
定数
」という.
値
が変わり得るものを「
変数
」という.
変数はどういう
値
をとるかわからないので
記号
で表
記
す
る.
〇〇〇〇〇〇〇●〇〇
実
数と計算;
累乗
変数
x
を
2
回掛
け合わ
せ
る
操作
を「
x
を
2
乗
」するという.
変数
x
を
n
回掛
け合わ
せ
る
操作
を「
x
を
n
乗
」するという.
x
2=
x
×
x
x
n=
x
×
x
×
・・・
×
x
x
を基数,
n
を指数,べき数などと
呼
ぶ.
変数
x
を
0
乗したものは
1
とする.
x
0=1
ど
ん
な数か分からなくても(変数),
0
乗
すると必ず
1
.
〇〇〇〇〇〇〇〇●〇
実
数と計算;
累乗
と
添
え
字
数学を経済学に
応
用する
場
合,
添
え
字
という表
記法
を用
いる.
例えば,
x
を所得とする.「
2014
年
の所得」,「
2015
年
の所得」というように複数
年
の所得を扱う必要がある
場
合,
右下に
年
を
添
えて,その
x
が
2014
年
や
2015
年
の所得であ
ることを
明示
する.右下に
添
えて表
記
する
方法
を
下
添
え
字
と
いう.
一方
,
上添
え
字
という表
記法
もあり,これは
累乗
の表
記
と大
変
紛
らわしいので
注
意が必要.
〇〇〇〇〇〇〇〇〇●
実
数と計算;
平方根
「
x
を
2
乗
する」とは
逆
に,
2
乗
して
x
になる数を
x
の
「
平方根
」
という.
2
乗
して
4
になる数は
2
と-
2
.
4
の
平方根
は
±2
.
2
乗
して
9
になる数は
3
と-
3
.
9
の
平方根
は
±3
.
2
乗
して
2
になる数(
1.41421…
)や
3
になる数
(1.7
3205…)
は小数
点
以下が
無限
に
続
く(
無
理数).
一般
に「変数
x
の
平方根
は 」.すなわち
マイ
ナス
の
値
の
平方根
は
実
数ではない.
であるような数を「複
素
数」という.経済学で
x
x
2
x
x
●
加
減乗除
(+-
×÷
)
実
数
上
の変数
x
,
a
を考える.ただし,
a
は正とする.
加
法
(
足
し算)
x+a
とは,
実
数
上
の
点
x
から
右側に
a
だけ
移
動
さ
せ
る
操作
.
減法
(引き算)
x
-
a
とは,
実
数
上
の
点
x
から
左側に
a
だけ
移
動
さ
せ
る
操作
.
乗法
(
掛
け算)
a
×
x
とは,
x
と
同じ方向
に
0
(
原点
から)
x
を
a
個分並べる
操作
.
乗法
(
掛
け算)
● 〇〇
計算の
優
先順
位
主な計算
記号
は以下のものがある.
加
減乗除
(+-
×÷
)
累乗
(
x
n).
ル
ー
ト記号
()は「
累乗
」の
一
種.
カッコ
[
{
( )
}
]
,
[ ]
;大
カッコ
,
{}
;中
カッコ
,
( )
;小
カッコ
.
計算
記号
の
優
先順
位
1.
カッコ内
の計算
2.
累乗記号
の計算
〇●〇
計算の
優
先順
位
例:
3 + (4
-
5)×4÷2
2+10
1.
カッコ内
を計算する
3 +
(4
-
5)
×4÷2
2+10
= 3
-
1
×4÷2
2+10
2.
累乗
(
2
乗
)の部分を計算する.
3
-
1×4÷
2
2+10
= 3
-
1×4÷
4
+10
3
.
掛
け算,
割
り算を計算する.
3
-
1×4÷4
+10
= 3
-
1
+10
〇〇●
計算の
優
先順
位
割
り算の計算には若
干
の
注
意が必要.
割
り算は,
割
り算
記号
(
÷
)の
直後
の数を分
母
,
1
を分
子
とする
分数に変換し掛け算として扱う.
例)
この
規則
を
覚
えれば分数の
足
し算についてのよくある間
違いもなくなる.
(よくある間違い)
⇒
分数は
割
り算なので,
足
し算よりも
優
先.
通
分の
操作
が必要.
6
3
1
2
3
6
2
6
4
3
2
3
1
6
2
4
2
1
1
4
1
2
1
4
1
2
1
● 〇〇〇〇
記号
の計算
記号
の入った式(文
字
式)では
×
記号
を
省略
する.
×
記号
の
省略
a
×
b
=
ab
重要!+は絶対に省略してはいけない!!
(よくある間違い)
a
(
x
+1)=
a
+
x
+1
のように,計算
記号
が
省略
されている部分
を
足
し算だと
勘
違い
している学生が多いがこれは
誤
り.
a
(
x
+1)=
a
×(
x
+1)
である.
例:
x
x
4
3
x
x
x
x
〇●〇〇〇
記号
の計算
計算順
序
の入れ
替
えに関する
ル
ー
ル
交換法則
(
足
し算と
掛
け算は順番を入れ
替
えられる)
a
+
b
=
b
+
a
,
ab
=
ba
引き算と
割
り算は入れ
替
え不可能
a
-
b
≠
b
-
a
,
a
÷
b
≠
b
÷
a
結
合
法則
(
足
し算と
掛
け算はどの順番で行ってもよい)
a
+(
b
+
c
)
=
(
a
+
b
)+
c a
(
bc
)=(
ab
)
c
〇〇●〇〇
記号
の計算
分
配法則
(
カッコ
の
外
し
方
に関する
規則
)
a
(
b
+
c
)=
ab
+
ac
, (
a
+
b
)
c
=
ac
+
bc
例:
4
x
2+3
x
-
2
x
2+2
x
+4
=
4x
2+3
x
-
2x
2+2
x
+4 =
4x
2-
2x
2+3
x
+2
x
+4
=
(4
-
2)x
2+(3+2)
x
+4 =
2x
2+5
x
+4
例:
(
x
+
y
)(
x
+
y
)
=(
x
+
y
)
x
+(
x
+
y
)
y
=
x
x
+
y
x
+
x
y
+
y
y
〇〇〇●〇
記号
の計算
;
x
の「
n
次
の
項
」.
n
を「
次
数」という.
a
を係数と
いう.
式の
次
数の最も高い数を使って「
n
次
式」という.
例
x
2+2
x
+1
は「
x
の
2
次
式」,
4
x
5+
x
3+4
は「
x
の
5
次
式」
x
2+3
y
4+1
は「
x
の
2
次
式」, 「
y
の
4
次
式」
指数の計算
規則
x
a×
x
b= x
a+b例:
2
2×2
3=(2×2)×(2×2×2)=2
5
(
x
a)
b= x
ab例:
(2
2)
3= (2×2)×(2×2)×(2×2)=2
6
(
x
a×
y
b)
c= x
ac×
y
bc例:
(2
2×3
2)
2= (2×2×3×3)
2= (2×2×3×3)×(2×2×3×3)=2
4×3
4〇〇〇〇●
記号
の計算
平方根
の
累乗
表
記
である.理
由
:でより.
である.
● 〇
方程
式の意味と計算
ル
ー
ル
未知
の数(
記号
)の
満
たすべき式が
等
式(=でつながれた式)
で表されている
時
,その式を
「
方程
式」
という.
2
x
+1
は方程
式ではない
.
→
ただの計算手順を表す式.
2
x
+1=4
は方程
式である
.
→
「
未知
の数
x
を
2
倍
して
1
を加えたもの
は
4
」という
未知
の数
x
の
満
たすべき
条件
を表している.
未知
の数
x
が
満
たすべき
条件
が
与
えられていれば,その
条件
を
満
たす
x
を
求
めることができる.