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為替レート為替レートの決まり方 国際金融論 kurosawalab

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Academic year: 2018

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国際金融論(黒沢):講義アウトライン 

     

為替レート(3)為替レートの決まり方 1. 購買力平価説

A. PPPの考え方

 ●グスタフ・カッセルの説(1918 年、1922 年)

  第一次大戦中、金本位制度が停止されていたときでも為替レートは無秩序に変動するのではな く購買力平価に基づく均衡値に収斂しながら変動していたことを論証

 ●100 円ライターの例(教科書はハンバーガーの例)

  日本:ライター=100 円   アメリカ:同じライター=1 ドル

  その場合:100 円=1 ドル(それぞれの通貨の購買力の比が為替レート)

  それを一般化すると:

  日本のライター=P 円    アメリカの同じライター=P*ドル   その場合:P 円=E×P*ドル (一物一価の法則が前提)

  したがって、E = P / P* この E が為替レート( E = 100 \ / $ )

物価が上昇すると為替レート(E)はどうなるか:

  日本:ライター=100 円    アメリカの同じライター=1ドル   為替レートは E = 100 \/$   

日本のライター=110 円に上昇 アメリカの同じライターは 1 ドルのまま   一般法則により E= P / P* = 110 \/$ となる

  もし、為替レートが E=100 \/$ のままだと、

日本の商社が為替市場において 100 円で 1 ドルを買って、アメリカで 1 ドルライ ターを買い、日本で売れば 110 円で売れるので 100 円当たり 10 円の利益をあ げることができる。  

  

皆が、そのように考えると:

変動相場制度の場合***為替市場でドル需要・円売りが増加するのでドルが 高く、円が安くなり、結局 1 ドル=110 円(ドル高・円安)になる***為替レ ートが変化する

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固定相場制度の場合***日本からアメリカに 1 ドル・ライターを買いに行く のでアメリカでライター価格が上昇し、日本では輸入販売により供給が増加する のでアメリカと同じ価格になるまで価格が下がる***物価が変化する

   ●実際に購買力平価(為替レートの理論値:Eppp)を計算するには、  Eppp (tn/t0) = E(t0) × P(tn/t0) / P*(tn/t0)

Eppp(tn/t0): t0 年を基準時点とした tn 年の為替レートの理論値(Eppp)   E(t0):基準時点 t0 年の実際の為替レート

  P(tn/t0):自国の基準時点 t0 年の物価に対する tn 年の物価上昇(下落)率   P*(tn/t0):外国の基準時点 t0 年の物価に対する tn 年の物価上昇(下落)率

  物価は状況に応じて、消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(WPI)、輸出物価 指数(EPI)などを使用する(輸出入構造に応じて選択する)。

● Epppの計算例

      1973 年(固定相場の最終年)  1985(プラザ合意の直 前)

  実際の為替レート    308 円/ドル        240円/ドル   日本の WPI       100      180    米国の WPI       100      250  

    1973 年 を 基 準 時 点 と す る 1985 年 の 円 ・ ド ル ・ レ ー ト の 理 論 値 : Eppp(1985/1973)

  = 308\/$×{(180/100)/(250/100)} = 221 \/$

   

プラザ合意(1985 年 9 月)前は¥の対ドルレートが PPP 理論値よりも市場 では安値(アンダーヴァリュー)が付いていたので G5 による為替加入が必要 であった。アンダーヴァリューの理由は、日本のダーティー・フロート、アメリ カの非弾力的輸入価格などの説がある。

● PPPの利点:長期的な為替レートの動向を知ることができる

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● PPPの欠点:

(1)短期的な説明力がない

   (2)基準時点の選び方によって値が異なる

   (3)関税・輸入規制などがあると適正な PPP を計算できない

   (4)貿易財と非貿易財の相対価格に変化があると PPP の継続性に問題が生 じる 

   (5)金融資産などの価格(金利)が含まれていない

B. イギリス・ポンドとアメリカ・ドルの例:(教科書 24 頁)

1929年の為替レート(4.8 ドル/ポンド)を基準として 1860 年から 120 年間 の実質為替レートをみると 4.8 ドル/ポンドに収斂している(PPP 理論が正し い):実質為替レート=基準時点のレート( 4.8 ドル/£)×Et / Eppp (Et が Epppに収斂している)

C. 経済企画庁の計算例(教科書 25 頁)

  1980 年から 85 年の間に現実の円がアンダーバリューされていた(米国金利の上 昇、円のダーティーフロートなどのため)が、プラザ合意による協調介入によって 86年には PPP に収斂

[PPPについての演習問題]

 下表は 1973 年から 1993 年までの名目為替レート(\/$)と日米の輸出価格指数 である。1973 年を基準とする購買力平価による為替レート(Eppp)を計算し、名目 レートと Eppp との乖離率(名目レート÷Eppp)を出して、グラフを描き、プラザ 合意前に乖離が大きかったことを確認してください。また、乖離が大きかった理由 について考えなさい。

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[解答例]

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D. 円・ドル・レートの長期的変遷

●1785年米ドル誕生、1871 年(明治 4 年)新貨条例によって円誕生(日本国内通

貨統合)し、1 ドル=1.003 円で為替レートがスタート

  ●1940 年、1 ドル=約 4 円で為替市場閉鎖するまで円安で推移

  ●1949 年、1 ドル=360 円、1971 年、1 ドル=308 円、1973 年、円・ドルはフロ ーとへ移行

  ●1874 年以降、1995 年までの 120 年間の消費者価格 PPP と輸出価格 PPP を試

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 ◎[ミニット・ペーパー問題] 

下表のとおり、2006年4月の為替レートは 117\/$, 143\/Euro となっている。これらの円 レートは、PPP 理論値に対して割高 (over value) か割安 (under value) か?以下のデー タ(06年5月15日日経新聞16頁)を基にして2002年を基準として2006年4月の

\/$, \/Euro の消費者物価(CPI)による PPP 理論値を計算して、それを基準として割高か、割 安かを判断しなさい。

 

  Japan

CPI

USA CPI

EU12 CPI

\/$ \/Euro

2002 100.00 100.00 100.00 118.67 129.31 2003 99.80 102.30 102.10 103.90 127.02 2004 99.60 105.06 104.14 106.88 138.50 2005 99.70 108.63 106.43 117.73 142.39 2006.4 100.19 112.32 108.98 117.11 143.56

<解答例>

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2. フロー・アプローチ(中期の為替レート)

  

経常収支(E、GDP、GDP*)+ 資本収支(r―r*)= 外貨準備(R)

 

両国の GDP 関連指標(GDP 成長率、失業率など)、金融・資本指標(実質金利差、 当局による為替市場への介入、株式・債券市場などへの資本の流出入など)、外貨準備 の増減などが総合的に作用して為替レート水準を均衡的に決定する。

3. アッセット・アプローチ(短期の為替レート) A. オーバー・シューティング・モデル

 名目為替レートは、購買力平価 PPP を基準として、2 国間の実質金利差の 1/θ だけ オーバーシュート(乖離)するように決定される、とする説。1970 年代の初めに有 力視され、1980 年代中頃以降の資本移動規制の緩和によって注目されるようになっ た。

金利・為替裁定により r = r* + δE が成立している したがって、δE = r – r* である

一方、 δE = ( π - π* ) + θ ( Eppp - E ) という仮説(経験と研究によって 考えついた)が考えられる

 この式に δE = r – r* を代入すると r – r* = (π―π*)+θ(Eppp-E)

この式を整理し、E を求める

  θE = θEppp + ( r* - π*) – ( r – π )

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したがって、

E = Eppp + 1 /θ{ ( r* - π* ) - ( r - π ) }

名目為替レート=PPP 理論値+1/θ(外国の実質金利―自国の実質金利)  が得られる。これがオーバー・シューティング・モデル(OSM)である。

 すなわち、為替レートは、PPP 理論値から実質金利差の 1/θ だけオーバーシュート する。

仮想的な簡単な例:

 計算された PPP=100 円/$ であるとする  アメリカの実質金利r* - π*が6%

 日本の実質金利r - π が2%であるとすると  1/θ=1とすると

為替レート(OSM)=100 円/$+(6%-2%)=104円/$ となるはずである、とする説。

B. ポートフォリオ・バランス・アプローチ

 オーバー・シューティング・モデルに経常収支の不均衡の度合いを加味したモデル である。経常収支赤字による危機を懸念してポートフォリオ(金融資産を詰め込んだ 鞄)の中身を入れ替える(バランスを取る)。

  

r = r* + δE から

( r* + δE )― r = b (>0)

 経常収支の不均衡の度合いが大きくなると( r* + δE )― r がゼロでなくなり、 赤字の国の通貨に対して均衡値より高い金利(プレミアム)を求めるようになるとい う仮設を導入した。

したがって、δE = r –r* + b

δEを次式に代入 δE = ( π ― π* ) + θ( Eppp ― E ) 整理すると

E = Eppp + 1/θ{ ( r* ― π* ) ― ( r ― π ) } ― b /θ

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 すなわち、ポートフォリオ・バランス・アプローチによる為替レート(PBA)はオーバ ー・シューティング・モデル(OSM)による値よりもプレミアム b の 1/θ だけ経常収支 赤字国の通貨が安くなる(depreciate)。

仮想的な簡単な例:

計算された PPP=100 円/$ 、計算された OSM=104 円/$(上記の OSM の例)で あるとする

 米国の経常収支赤字に対するリスク・プレミアム(b)=2%とすると 為替レート(PBA)=104 円/$ -2%=102円/$

4. 超短期:ランダム・ウオーク仮説 ( random walk hypothesis ) 酔っ払いの千鳥足

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出発地 中継基地

目的地

参照

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