医学概論 講義要約(2012.4.17)テーマ:骨格系
骨と関節の機械的側面と臓器としての側面を解説し、いくつかの傷病でのそれらの破綻と回復について解説す る。
①骨の機能、形状、「リモデリング」 ②関節の構造、可能な動き、機能維持 ③さまざまな骨 ④代表的な傷病
①骨は構造物としての役割だけでなく、電解質の貯蔵庫として体液の恒常性を保つ臓器としての機能を有してい る。従って、骨の内部には多数の血管が入り込んでいる。神経も骨に達している。また、一部の骨では内腔を充 填する血管に富んだ組織-骨髄-で造血が行われている。骨に加わる力の刺激や血液を循環するホルモンに 骨を構成する細胞が反応して、骨の分解吸収と生成とのバランスが変化し、量や形状の変化-リモデリング- が行われる。骨の構造は、単純な形からの発生ならびに外部からの力に反応してこれを行うために適したものと なっている。
②機械は一定の時間で磨耗し交換することを前提として作られているが、関節は軟骨、関節包(線維膜と滑膜か ら成る)、靭帯といった生体組織でつくられ、関節腔は体液由来の滑液で満たされている。それらの組織の細胞 のターンオーバー(入れ替わり)と滑液の循環がおこなわれることで、正常な状態では常に新しい状態の関節が 保たれている。いろいろな方向に動かす必要のある関節は球関節であったり複数の関節面が一つの関節包に 入った複関節であったりする。
③人体の骨の数は約200個。数の多いのは上肢(64個)、下肢(62個)。頭蓋でも23個もある。哺乳類の頚椎の数 は7個。当然キリンも7個。上肢と下肢の構造は似ている。頭蓋骨の骨化は生後も進行する。骨盤の癒合は思春 期に完成する。頭蓋底はいろいろな骨がしっかりと結合(縫合)し、血管や神経を通す穴が開いている。脊柱は頭 蓋の大後頭孔にはまり、自然な湾曲をもつ。脊髄と脊髄神経を通す穴に注意する。椎骨と椎骨の間には椎間板 があり、線維でしっかりと包まれている。上肢への力は肩甲骨と鎖骨を介して胸骨、肋骨、脊柱へ伝わることに注 意する。肋骨が保護する臓器に注目する。肋骨の骨折は多くの臓器の損傷につながることがある。骨盤の形の 男女差に注意する。法医学的鑑別でも利用される。肘関節も膝関節も複関節だが、膝関節には種子骨である膝 蓋骨がある。上下肢の骨の左右と前後を見分けるためには骨頭の向き、神経を通す溝(神経溝)、筋肉の付着 部(粗面、顆、結節)がどのように見えているかなどに注目する。肩関節と股関節の構造の違いは、それぞれの 可動性の範囲ならびに外れやすさと関係がある。手関節(手根関節)と足関節を比較する。
④骨折、椎間板ヘルニア、骨粗鬆症、がんの骨転移などを紹介する予定。