意思決定に役立つ会計情報とは何か?-理論と実務のギャップを探る-

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意思決定に役立つ会計情報とは何か?

-理論と実務のギャップを探る-

大学院経済学研究科 准教授

篠田

しのだ

朝也

と も な り

(経済学部経営学科)

専門分野 : 会計学,管理会計,財務諸表分析

研究のキーワード : 会計学,企業,情報,財務会計,管理会計

何を目指しているのですか?

私の専門領域は会計学です。会計とは、企業等の組織における様々なタイプの経済的事

象(経済的な取引をはじめとするあらゆる経済活動)を、認識、測定して、情報として集

約したうえで、報告する一連の仕組みのことを指します。

この一連の仕組みが通常の営利企業(皆さんの良く知るトヨタやソニーなど)において

実践される場合には、企業外部の利害関係者(既存株主、投資家一般、債権者など)が企

業を評価するのに役立つように、あるいは、企業内部での経営上の意思決定や業績評価に

役立つように、主に金銭的単位で表現された会計情報が提供されることになります。

前者は、外部公表目的の会計であり、これを財務会計と呼んでいます。一般に決算書な

どとも呼ばれる公表目的の財務諸表などは財務会計に関連します。後者は、内部意思決定

目的の会計であり、これを管理会計と呼びます。一般に、経営計画、利益計画、予算、中

長期プロジェクトの投資経済性評価などが管理会計に関連します。財務会計は、企業外部

の利害関係者に情報を提供するシステムですから、企業外部の利害関係者に役立つ情報が

提供されなければなりません。管理会計は、企業内部の経営者や従業員に情報を提供する

システムですから、企業経営にとって役立つ情報が提供されなければなりません。

それでは、どのようにすれば「役立つ会計情報」を得られるのでしょうか?

この問いは、簡単なようで、実はそれほど簡単なものではありません。同じ経済活動で

も、情報化のプロセスが異なれば、

報告される情報内容も異なるものと

なってしまい、それゆえ、その情報

に基づく意思決定の結果も変わって

しまう可能性があります。経済活動

を、どのように認識、測定、集約化

すると、最も目的適合的で意思決定

に役立つ情報を得ることができるの

か、十分に検討を重ねる必要があり

ます。この点について検討を重ねる

ことが、会計学研究の本質的課題で

あるといえます。

出身高校:岐阜県立岐阜高校 最終学歴:京都大学大学院経済学研究科 社会

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どんな研究をしているのですか?

私は、会計学全般のテーマに関心を持っていますが、特に、中長期プロジェクト投資な

ど、経営上の投資意思決定における経済性評価を主な研究テーマとしています。

中長期プロジェクトの投資の可否判断は、将来の企業経営の成否に直結するため、きわ

めて重大な意思決定となります。したがって、この可否判断をするうえで、どのような方

法で経済性評価を行うべきかについて、さまざまな理論的研究が展開されています。専門

的な内容は省略しますが、正味現在価値法と呼ばれる理論的な方法をはじめ、回収期間法

のような素朴な方法まで様々なものが提唱されています。近年では、金融工学を応用した

リアルオプション法という高度に洗練された方法も開発されています。

他方で、会計は実務で行われている実践ですから、企業における実務の状況も検討しな

ければなりません。そのために、企業へ質問票を郵送して回収したデータを分析したり、

企業に訪問して担当者等にインタビュー調査を実施したりすることを通じて、実務の状況

を確認します。このようなフィールドスタディによって実務を確認するわけですが、実際

の実務は想像以上に多様性を有しており、企業の状況に応じて柔軟にカスタマイズされて

いることが多いのです。実際に、経済性評価に際しても、各企業でさまざまな方法を利用

していましたし、なかには独自の方法を利用しているケースもありました。実務での方法

が理論的な方法と比較してどのように異なっているのかを検討するうえで、実務における

多様性や柔軟性が生じた原因、条件、背景事情を考察することは不可欠です。また、これ

らの考察を通じて、実務・理論の両面における課題を明らかにすることもできます。

このように、単なる理論研究にとどまらず、企業における実際の実務も研究対象として

いるところに会計学の面白さと難しさがあります。

次に何を目指しますか?

会計学の研究アプローチは、理論(理念)研究と実証研究に大別できます。前者は、理

屈で考えるとこうあるべきだとされる会計システムについて考える研究であり、後者は、

いま実際に実践されている会計システムについて考える研究です。

それぞれの研究は、それぞれの研究アプローチを採用する研究者によって展開されてい

ますが、実際のところ、この両者の間には

ギャップがあるのです。端的にいえば、「理

屈ではこうあるべきなのに、実際の実務は

そうなっていない・・・」そんなことが多

いのです。したがって、この両者の研究を

分断していては、将来、どのような会計シ

ステムがありうるのかについての展望を示

すことができません。理論的な研究アプ

ローチと実証的な研究アプローチを統合し

て、地に足の着いた会計の将来展望を検討

していくことを目指しています。

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参照

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