<実験書> 自然選択による進化のしくみを理解する
●実験方法
◇架空生物オリガミバード(Avis papyrus)とは? 以下のような生態をもつ架空の生物である.
・北アフリカの乾燥地域に生息するため,飛行によって オアシスに辿りつけるかどうかが生存・繁殖に大きく影響.
・メス1個体はオスとの交尾を経て,生涯で1回産卵し, 3個の卵 を産む.なお,この実験で登場する個体はすべて メスとする.
◇材料(1グループ2~3人 当たり)
色画用紙(青と赤1枚ずつ・B4判),セロハンテープ,ストロー(曲がらないタイプのものを11本程度), クリップ(3個程度),はさみ,定規,油性マジック,配偶子突然変異BOX,配付プリント3枚(実験書,結 果シート,突然変異表)
◇飛行場(右図参照)
廊下に設置してある.飛行実験後,個体の先端でメジャーの目盛りを読む.
(10m地点にはオアシスが設置してある)
手順1.環境を決める
近年,地理的隔離に集団が2つに分断され,オアシスの数が「少ない」環境では,オアシス間を飛翔できる「飛 行距離の長い個体」が,一方,オアシスの数が「多い」環境では,エネルギーの損出が少なく,捕食者にも見 つかりにくい「飛行距離が短い個体」が生き残る.そこで,グループごとに,オリガミバードは,オアシスの 数が少ない環境(飛行距離が長い個体が生存・繁殖)とオアシスの数が多い環境(飛行距離が短い個体が生存・ 繁殖)のどちらの環境に生息するかを決めよう.
手順2.親世代の作成と飛行実験
・ はじめに色画用紙を切り,3cm×20cmの紙片を2つ作る.それぞ れの紙片とも,輪を作り,1cmだけ重なり合わせ(その結果,円周 は 19cm になる),テープで止める.作った輪は,ストローのそれ ぞれの端から3cmのところにテープで止める(上図参照).ストロ ーの片側の端に油性マジックで‘F’(Front の F)と書く.この個 体が親個体となる.
・ 親鳥を紙飛行機のように上手投げし,どのくらい飛翔するかを調べる.
これを2度行い(2回とも同じ力で飛ばすように心掛ける),飛行距離の最大値を結果シートに記入する.
こ の 方 向 に 飛 ば
3cm 後羽
3cm 前羽
手順3.F1世代の作成
・親個体が3個の卵(配偶子)を作る減数分裂の際、DNAの変化(=突然変異)が起きる.
次のステップに従って,3個の卵それぞれに起こる突然変異の表現型への効果を決定し,飛行実験を行う.
Step A 配偶子突然変異BOXのルーレット1を回して,
変化する遺伝子(塩基)を決める.
Step B 配偶子突然変異BOXのルーレット2を回して,
どのように塩基配列が置換するかを決める.
Step C 結果シートに置換後の塩基配列を記録する.
Step D 突然変異表(上図)を参考に,mRNAの配列,アミノ酸,表現型への影響を記入する.
手順A~Dを3個体分繰り返す.
Step E 3個体のF1 を作成し,飛行実験を行う.先程と同様に,飛行実験は2度ずつ行い,
飛行距離の最大値を結果シートに記入する.3個体のうち飛行距離が最も長かった個体(もしくは 最も短かった個体)のDNA全体をマーカーで囲み,配偶子突然変異ボックスの塩基配列を
その個体の塩基配列に変える.
Step F F1 3個体の飛行距離の平均値を計算し,結果シートに記入する.
手順4.F2世代
手順A~Fを繰り返し(最大F4まで),世代を経てオリガミバード集団の形質や飛行距離が どのように変化していくかを見ていく.
★よくある質問
Q. ルーレットの結果,塩基に変化がない場合はルーレットをやり直すのか?
A. ルーレットはやり直さない.今回注目している形質(羽など)の発現に関わる遺伝子には, 突然変異による遺伝子の変化が起こらなかったと考える.
Q. 塩基配列に変化がなかった場合,あるいはDNAが変化しても形態が変化しない場合,作らなくてよい? A. 作らなくて良い.飛行実験もしなくて良い.飛行距離は前世代の個体と同じとする.
Q. 飛行距離が同じ個体が複数いる場合はどの個体が生き残る?
A. 番号の若い個体が生き残る.例えば,個体①と②が「変化なし」,個体③のみ形態に変化が生じ, 個体①と②の飛行距離が500cmで,個体③の飛行距離が450cmの場合,個体①が生き残る. Q. 前の世代の個体の羽やストローはリサイクルして良い?
A. どんどんリサイクルしましょう。
手順5. グラフ化
黒板を見て,結果シートの裏面にある表に,各グループの結果を記入する.この結果をもとに,
オアシスの数が多い環境と少ない環境のそれぞれにおいて,世代を経た飛行距離の変化をグラフ化する. 配偶子突然変異BOX
(左からルーレット1,2)
突然変異表