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大学院 計量経済分析 Masumi Kawade Site 07moment

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(1)

7 モーメント法とその周辺

7.1 モーメント法

7.1.1 推定量

一般的にモーメント法は、標本数N を関数に含まないものの、標本から成り立 ち、積率の情報が含まれる連続関数mk(·) について、

¯ mk= 1

N

N



i=1

mk(xi) (7.1)

のように推定値を求めます。その上で、mk(·) の期待値 E[mk(·)] を考えてみます。 期待値が求めたい何らかの母数を組み合わせることで表現できていると仮定しま す

1

。そのとき、E[mk(·)] と期待値を積率で表現する関数を

E[mk(·)] = mfk1, β2, · · · , βK) (= plim ¯mk) (7.2) とおきます。その上で、関数の推定値と期待値が一致していると考えて、母数を 逆算します。すなわち、モーメント方程式(Moment Equations) を、

¯

m1− mf11, β2, · · · , βK) = 0

¯

m2− mf21, β2, · · · , βK) = 0

...

¯

mK− mfK1, β2, · · · , βK) = 0 (7.3) として、連立方程式を立てた上で、この解

βˆk = s( ¯m1, ¯m2, · · · , ¯mN) (7.4)

を推定された推定量とするのです。このとき注意すべきことは、母数の数(K 個) に合う関数の推定値m¯kと期待値E[mk(·)] が一意に存在していることです。もし、 母数の数以上に関数が存在する場合はこの方法は適用できません。なぜなら、別 の条件式mK+ℓ1, β1, · · · , βK), ℓ = 1, 2, · · · に対応する母数の値 β1, β1, · · · , βK 複数存在すれば、どの関数を選ぶかによって推定値も複数存在してしまうからで す。これでは推定値が一意ではなくなってしまいます。これを後に出てくる同時 方程式の識別性に関連して、モーメント条件の過剰識別性と呼ぶこともあります。

1

母数自身がもともと確率変数を規定する定数であり、それ自身が期待値で求められることを考

(2)

7.1.2 推定量の単純例

モーメント法の例として、ある標本x1, x2, · · · , xN について、この母数を推定す ることを考えて見ましょう。この場合、母数とは

mk= E(xk) (7.5)

です。この母数を利用すれば、分散や歪度、尖度などの中心積率(Central Mo- ments) を利用した諸量を求めることができます。たとえば、分散は

V ar(x) = E(x − µ)2 (7.6)

= E(x2) − µ2 = m2− m 2

1 (7.7)

で示されます。そのため、この母数を推定することを考えます。この母数の基本 的に考えられる推定量は

mk= 1 N

N



i=1

xki (7.8)

です。

7.1.3 望ましさ

なお、この推定量を利用して分散を作った場合には推定量は不偏性を持ちませ ん。たとえば、分散については

1 N

N



i=1

x2i

1 N

N



i=1

xi

2

= 1 N

N



i=1

(xi− ¯x)2 (7.9)

となるので、学部の統計学を思い出せば、この期待値がσ∗2(N − 1)/N であったこ とから、不偏性を失っていることがわかります。ただし、N が十分大きければ、期 待値も、また推定量の分散も十分に小さくなることから、一致性はあることがわ かります。したがって、モーメント法は一致推定量であることがわかります。

では、効率性はどうでしょう。ほとんどの場合でモーメント法による推定量は 効率的でもありません

2

モーメント法は推定の段階で大きな制約がありました。それは母数の数と母数 の関係を表す関数の数が一致しているといいものでした。これを満たさないケー スは多くあります。それをどう対処したらよいのでしょうか。それを解消する方 法が一般化モーメント法です。

2

指数分布族であれば、モーメント推定量は最尤推定量と一致するため効率的です。

(3)

7.2 一般化モーメント法

先に述べたモーメント法を拡張するとで、一致性を中心にすえる推定を行うこ とが可能になります。また、一般化最小二乗法やWhite 推定、操作変数法を包括 する推定方法が構築できます。

モーメント法が

¯

m1− mf11, β2, · · · , βK) = 0

¯

m2− mf21, β2, · · · , βK) = 0 ...

¯

mK− mfK+ℓ1, β2, · · · , βK) = 0, ℓ ≥ 1 (7.10) であるために、母数の解が整合的に求められない時には利用できませんでした。 モーメント法の説明では、それを回避する方法として、関数の数をK に絞ること を述べましたが、それでは関数選択によって推定量が変わる大きな問題を起こし ます。では、どうすべきでしょうか。

7.2.1 推定量

ここで、恒等関係が0 であるものを緩めてみましょう。すなわち、

¯

m1− mf11, β2, · · · , βK) = ¯ξ1

¯

m2− mf21, β2, · · · , βK) = ¯ξ2 ...

¯

mK− mfK+ℓ1, β2, · · · , βK) = ¯ξK+ℓ (7.11) を考えて見ます。こうしたもののどうしていいのかわかりません。次に、この値 が満たす条件を

ξ =¯

 ξ¯1

ξ¯2

... ξ¯K+ℓ

として、このベクトルを2 次形式で表した際の値

ξ¯W ¯ξ (7.12)

を最小化することを考えて見ましょう。なお、W は (K + ℓ) × (K + ℓ) の正定号行 列とします。なお、何を最小化するかまで明示するため、

arg min ξ¯W ¯ξ ⇔ arg min ( ¯m − mf(β))W ( ¯m − mf(β)) (7.13)

(4)

と書きましょう。arg min は対象となる関数を最小とするような変数 β を求めよと いう意味です。したがって、推定量は

β = arg minˆ

βˇ ( ¯m − m

f( ˇβ))W ( ¯m − mf( ˇβ)) (7.14)

ということになります。モーメントが満たすべき条件式mf1, β1, · · · , βK) とその 値m が全く一致しているという条件はモーメント法の原理でしたが、現実のデー¯ タは十分にそれらに一致できていないと条件を緩めるつつ、しかし、その乖離は 全体的なある評価基準でできるだけ小さなものになっているとすることで、決定 できない問題を解消しています。

なお、正定号行列であることから、 ¯ξ = 0 であれば、問題なく最小値 0 をとりま すが、それ以外は0 をとることはありません。そのため、この方法は先のモーメ ント法を包含する概念です。そのため、この方法を一般化モーメント法(GMM: General Moment Method) とよびます。

7.2.2 モデル推定における推定量

では、実際の推定ではどうなるのでしょうか。本来非線形でも成り立つ議論で すが、わかりやすく進めるため、線形モデル限って分析を進めることにします。ま ず、対象とするモデルは

yi = xiβ + ǫi (7.15)

になります。では、モデルを推定を行う際のモーメントの条件はどうなるのでしょ う。それは、説明変数と誤差項に関する仮定を利用することになります。すなわち、

E[xtǫt] = 0 (7.16)

です。この際、定数項と誤差項の相関も条件の中に含まれ、それが誤差項の期待 値を0 にする条件となることが示されます。この条件を直交条件 (Orthogonality Conditions) といいます。この条件から、 ¯mi = 0 ということになります。ただし、 この条件が成り立たない場合も包含する議論を考えましょう。その際、説明変数 と誤差項が相関を持つことになりますので、そのような変数であることを示すた め、xtの代わりにvtを使うことにしましょう。すなわち、

∃j, E[vj,tǫt] = E[ξj] = 0 (7.17) という場合を考慮します。vtは、説明変数でありながら、誤差項と相関のある場 合を許容します。これは後に述べる、同時方程式の内生変数や観測誤差を含む場 合なども含みます。その代わり、vtと誤差項を直交条件に使うのをやめて、vtの 一部に新たに作ったその他の変数を加えたztを考えましょう。厳密には、ztはモ デル内の外生変数(すなわち、誤差項とは相関しない変数で、当然観測誤差もない

(5)

もの) に加え、操作変数として新たに加える変数も含まれます。そうすると、モデ ルは

E[ztǫt] = E[zt(yi− viβ)] = 0 (7.18) に変わります。

パラメーターの推定量 線形モデルにおけるGMM 推定量を求めてみましょう。ま ず、モーメントの条件で利用する ¯ξ は

ξ =¯ 1 N

N



i=1

ziˆǫi = 1 N

N



i=1

zi(yi− viβ)ˆ (7.19)

= 1 N

N



i=1

ziyi 1

N

N



i=1

zivi

β (≡ sˆ zy− Szvβ)ˆ (7.20)

のように計算することができます。その上で、最小距離を計算する式を arg min

βˆ

(N ¯ξ)W (ˆ N ¯ξ) ⇒ arg minˆ

β

N(szy− Szvβ)ˆ W (sˆ zy− Szvβ) (7.21)ˆ

とします。この時、

√N が出てくるのは平均値がN のスピードで動きが落ちて ゆくためです。この関数について、一階の条件を取って、

∂ ˆβ[N(szy− Szv

β)ˆ W (sˆ zy− Szvβ)] = 0ˆ (7.22)

−2Szv W sˆ zy+ 2Szv W Sˆ zvβ = 0ˆ (7.23)

β = [Sˆ zv W Sˆ zv]−1Szv W sˆ zy (7.24)

を得ます。これが線形モデルにおけるGMM 推定量になります。線形モデルにお けるGMM 推定量の統計的構造は、

ξ¯ = szy− Szvβ ⇔ szy = Szvβ+ ¯ξ (7.25) (7.25) 式を (7.24) 式に代入して、

β = [Sˆ zv W Sˆ zv]−1Szv W [Sˆ zvβ+ ¯ξ] (7.26)

= β+ [Szv W Sˆ zv]−1Szv W ¯ˆξ (7.27) になります。

(6)

パラメーターの分散 線形モデルにおけるGMM 推定量の分散を求めてみましょう。 V ar[N( ˆβ − β)] = NE{[Szv W Sˆ zv]−1Szv W ¯ˆξ}{[Szv W Sˆ zv]−1Szv W ¯ˆξ}

= E{[Szv W Sˆ zv]−1Szv W N ¯ˆ ξξ¯

ˆ

W Szv[Szv W Sˆ zv]−1}(7.28) となります。ところで、

zv

−−→ Sp zv , Wˆ

−−→ Wp (7.29)

となります。また、

E[ξiξj] = 0, i = j (7.30) という仮定を置くと、

V ar[¯ξ] = V ar 1

N

N



i=1

ξi

= 1 N2V ar

N



i=1

ξi

= 1

NV ar [ξ] (7.31) V ar[ξ] = E[ξξ] = E[ziǫiǫizi] = E[ǫ∗2i zizi] (= NV ar[¯ξ]) (7.32) なので、S ≡ V ar[ξ] とすると、

V ar[N( ˆβ − β)] = [SzvWSzv ]−1SzvWSWSzv [SzvWSzv ]−1 (7.33) が得られます。したがって、

Est.V ar[N( ˆβ − β)] = [ ˆSzv W ˆSzv]−1Sˆzv W ˆSW ˆSzv[ ˆSzv W ˆSzv]−1 (7.34) となります。この時、 ˆS の推定量は

S = Est.V ar[ξ] =ˆ 1 N

N



i=1

ˆǫ2izizi = 1 NZ

ΩZˆ (7.35)

を利用します。 ˆS ≡ Est.V ar[ξ] として、均一分散ならば、 Ω = ˆˆ σ2I ⇒ ˆS = 1

NZ

ΩZ = ˆˆ σ2 1

NZ

Z (7.36)

不均一分散ならば、 Ω = ˆˆ ΩH ⇒ ˆS = 1

NZ

ˆ

HZ (7.37)

となります。

7.2.3 望ましさおよびその性質

一般化モーメント法は最尤法と同じく一致推定量であり、一致性と漸近的な効 率性に関心を持つことになります。

(7)

一致性 W が正定号行列である上に、

plim ( ¯m − mf( ˆβ))W ( ¯m − mf( ˆβ)) = 0 (7.38) であれば、推定量β は一致性を持ちます。正定号行列であることから、ここで大ˆ きな役割を果たすのは

plim ¯m − mf( ˆβ) = plim ¯ξ = 0 (7.39) ということになります。もし、0 にならなければ、モーメント条件を満たさないこ とになります。したがって、定式化やその他の要因によるモデル上の欠陥を持って いることになります。線形推定量では、

V ar[ ˆβ] = [S

zvWSzv ]−1S

zvWSWSzv [S

zvWSzv ]−1

N (7.40)

なので、真の値および定数で構成される[S

zvWSzv ]−1S

zvWSWSzv [S

zvWSzv ]−1

が一定であることから、

V ar[ ˆβ] → 0, N → ∞ (7.41) となることがわかります。

漸近分布 β の推定量の分布を確認してみましょう。こちらは線形モデルだけで見ˆ てゆくことにします。 Szv が一致推定量なので、重要なのは

β = βˆ + [Szv W Sˆ zv]−1Szv W ¯ˆξ (7.42)

から、 ¯ξξの平均あることから、中心極限定理から正規分布にしたがうことが わかります。すると、分散はすでにわかっているので、推定量の分布は

βˆ ∼ Na

β, 1 N[S

zvWSzv ]−1S

zvWSWSzv [S

zvWSzv ]−1

(7.43)

になります。

ウェイトパラメーターと効率性 この推定量の意味にもう少し迫ってみましょう。 推定量のウェイトW について、考えてみましょう。その際、唐突ではありますが、 ワルド原理などでもおなじみ深い

W = S∗−1(= V ar( ¯ξ)−1) ⇒ arg minβ ξ¯S∗−1ξ¯ (7.44)

を考えて見ましょう。なお、推定せずともV ar( ¯ξ)−1をすでに知っているというの は考えにくいことですから、 ˆS = Est.V ar( ¯ξ) を用いることにしましょう。このと

(8)

き、このウェイトの意味を考えて見ましょう。最小化する関数はS が (対称) 正定ˆ 号行列だったことを思い出すと、

ξ¯Sˆ−1ξ = ¯¯ ξEst.V ar(¯ξ)−1ξ¯ (7.45)

= ¯ξEst.V ar( ¯ξ)−1/2Est.V ar( ¯ξ)−1/2 ¯ξ (7.46)

= Est.V ar(¯ξ)−1/2ξ¯Est.V ar(¯ξ)−1/2ξ¯ (7.47) であることがわかります。Est.V ar( ¯ξ)−1/2ξ は ¯¯ ξ を正規近似する変換であり、

Est.V ar( ¯ξ)−1/2ξ¯ ∼ N(0, I)a (7.48) となり、

ξ¯S ¯ˆξ ∼ χa 2(ℓ) (7.49)

という、ワルド統計量に従うことがわかります。(7.48) 式と (7.49) 式を見れば、一 般的な点と点の距離関数を表していることがわかります。そのため、この行列を 最小距離推定量(Minimum Distance Estimator) とよびます3

そして、このウェイトパラメータを用いた場合には一般化モーメント法のクラ スの中では最も効率的な推定量となるのです

4

。なお、W = ˆS−1としたときの線 形モデルの推定量は

β = [ ˆˆ Szv Sˆ−1Sˆzv]−1Sˆzv Sˆ−1zy (7.50)

になります。その分散の推定量は

Est.V ar[N( ˆβ − β)] = [ ˆSzv Sˆ−1Sˆzv]−1Sˆzv Sˆ−1S ˆˆS−1Sˆzv[ ˆSzv Sˆ−1Sˆzv]−1 (7.51)

= [ ˆSzv Sˆ−1Sˆzv]−1Sˆzv Sˆ−1Sˆzv[ ˆSzv Sˆ−1Sˆzv]−1 (7.52)

= [ ˆSzv Sˆ−1Sˆzv]−1 (7.53)

⇒ Est.V ar[ ˆβ] = 1 N[ ˆS

zvSˆ−1Sˆzv]−1 (7.54)

となります。

7.2.4 一般化モーメント法の汎用性

一般化モーメント法は他の推定量を多くの面で包含しているといえます。その 上、最小二乗法に対しては(漸近的な) 効率性があることがわかるので、その意味 では大標本では便利な推定量だとわかります。

3

本質的にはウェイト行列が正定号行列であればなんであってもいいのですが、教育的意図でこ のような説明をしました。

4

付論D.1 を参照

(9)

最小二乗法 ウェイト行列をI にした場合どのようなことになるのでしょう。こ の場合、推定量は最小二乗法に一致します。したがって、GMM は大標本特性に置 いて、最小二乗法に比べて効率的であることがわかります。なお、ウェイト付き 最小二乗法もGMM 推定量に含まれます。

操作変数法 説明変数と誤差項の関係を仮定するところから始めるGMM は操作 変数法の概念に一致しています。実際、後に示すように、誤差項に不均一分散性 がない場合には推定量は二段階最小二乗法になるなど、操作変数法を包含してい ることがわかります。

最尤法 最尤法で利用される一階の条件が多くの場合でモーメント法におけるモー メントの条件に一致することが知られています。したがって、GMM が最尤法も多 くの場合で包含していることがわかります。

GMM は最もよい推定量か? GMM は他の推定量を包含するのでよい推定量と いうことがわかりました。では、これだけを使えばいいのでしょうか。それは違 うといえるでしょう。なぜなら、不均一分散の検定や系列相関の仮説検定を行う 場合にはGMM は大変複雑になります。したがって、これらの検定を行う必要が ある場合には最小二乗法が簡易だといえます。当然、不均一分散や系列相関は一 致性に影響を与えないので、真の母数を見つける場合には標本の大きさと効率性 の面でGMM が有益ですが、仮説検定もふまえた広範な分析を行う場合には、そ れらの考慮も必要になるといえるでしょう。

当然、GMM は一致推定量ですから、小標本で分析することは目的としていま せん。小標本で、誤差項等の情報があるならば、最小二乗法が選ばれることにな ります。したがって、結論は月並みですが、時と場合に応じて、柔軟に選ぶべき ということになります。

7.3 一般化モーメント法の定式化に関する仮説検定量

推定対象となる母数が確率変数であり、大標本の下で漸近的に評価する以上、そ の分布は漸近的に正規分布に従い、関連する仮説検定はすべて利用可能というこ とになります。

7.3.1 t 検定

係数に関する検定は βˆ− β



{Est.AV ar[ ˆβ]}ℓℓ

→ N[0, 1] (7.55)

(10)

で示されます。t 分布を用いていないところが、注意すべき点といえるでしょう。

7.3.2 尤度比検定

制約付きの推定値をβ とすると、˜

LR ≡ N(szy− Szvβ)˜ S˜−1(szy− Szvβ) − N(s˜ zy− Szvβ)ˆ Sˆ−1(szy− Szvβ)ˆ

(7.56) を用います。なお、自由度は制約の本数m とする χ

2

二乗分布にしたがいます。

7.3.3 ワルド検定

制約付きの推定値をR ˆβ とすると、

W ald ≡ N(R ˆβ − r){REst.AV ar[ ˆβ]R}−1(R ˆβ − r) (7.57) を用います。なお、自由度は制約の本数m とする χ

2

二乗分布にしたがいます。

7.3.4 ラグランジュ乗数検定 制約付きの推定値をβ とすると、ˆ

LM ≡ N[{(R ˆβ)Sˆ−1A}ˆ Sˆ−1{(R ˆβ)Sˆ−1A)}]ˆ (7.58) を用います。なお、自由度は制約の本数m とする χ

2

二乗分布にしたがいます。 なお、

A =ˆ ∂R ˆβ

∂ ˆβ (7.59)

となります。

7.3.5 モーメント条件の識別性の検定

GMM で推定することは、標本が十分大きければ、モーメント方程式がちょう ど識別されていることが前提ということになります。しかし、これが満たされな ければ、過剰識別となり、推定は正しくなく、定式化に問題があるといえるでしょ う。そこで、χ

2

検定を利用して、

ξ¯( ˆβ)Est.Asy.V ar[¯ξ( ˆβ)]−1ξ( ˆ¯β)−−→ χd 2[ℓ] (7.60) を検定すればいいことになります。通常の推定量では

N(ˆszy− ˆSzvβ)ˆ Sˆ−1(ˆszy− ˆSzvβ)ˆ (7.61)

(11)

を検定することになります。なお、条件付積率検定も、

N(ˆszy− ˆSzvβ)ˆ Sˆ−1(ˆszy− ˆSzvβ)ˆ (7.62) で、行うことができます。これらをHansen の識別性検定と呼びます。

D 関連内容の補足

D.1 最適なウェイトパラメーターの証明

効率性を保証する最適なウェイトパラメーターがS∗−1であることを証明してみ ましょう。効率性を確認するには行列が

(SzvW Szv )−1SzvW SW Szv (SzvW Szv )−1− (SzvS∗−1Szv )∗−1≥ 0 (D.1) になっている必要があります。しかし、逆行列の扱いが大変なので、

SzvS∗−1Szv − SzvW Szv (SzvW SW Szv )−1SzvW Szv

= Szv[S∗−1− W Szv (SzvW SW Szv )−1SzvW ]Szv ≥ 0 (D.2) を考えてみましょう。このとき、S∗−1が非特異行列なので、S∗−1= PP と置いて、

Szv[S∗−1− W Szv (SzvW SW Szv )−1SzvW ]Szv

= SzvP[I − P−1W Szv (SzvW P−1P−1W Szv )−1SzvW P−1]P Szv (D.3) D = P Szv (L × K)、E = P−1W Szv (K × K) と置くと、

SzvP[I − P−1W Szv (SzvW P−1P−1W Szv )−1SzvW P−1]P Szv

= D[I − E(EE)−1E]D (D.4) です。この時、I − E(EE)−1E はべき等かつ対称であることが確認できますので、 対称かつべき等行列は非負定号行列という定理がありました。L × 1 のベクトル p について、q = Dp を考えれば、

pD[I − E(EE)−1E]Dp (D.5)

= q[I − E(EE)−1E]q ≥ 0 (D.6) となり、

SzvS∗−1Szv ≥ SzvW Szv (SzvW SW Szv )−1SzvW Szv

⇔ (SzvW Szv )−1S

zvW SW Szv (S

zvW Szv )−1 ≥ (SzvS∗−1Szv )−1 (D.7)

が示されることになります。

(12)

D.2 直交条件間の相関

これまで、ずっと仮定してきた。

E[ξiξj] = 0, i = j (D.8) という仮定をはずしてみましょう。この仮定がなくなると、

E[N ¯ξξ¯] = NV ar[¯ξ] = V ar[ξ] (D.9) が成り立たなくなってしまいます。ただし、この仮定が成り立たなくなったから といって、

S =E[N ¯ξξ¯]−1 (D.10) とすれば、効率的なGMM は構築できますから、この仮定自身は計算の簡便化に 貢献している程度だと理解すればよいでしょう。

そこで問題になるのはE[N ¯ξξ¯

] の推定となります。ただし、観測点 i, j におい て、特定できない形で相関が変わるというのも考えにくいので、先の仮定をゆる める仮定として、系列相関を考慮した、

E[ξtξt−j] = Γj, j = 0, ±1, ±2, · · · (D.11) と置きましょう。この仮定は条件付き系列相関、

E[ǫtǫt−j|xt, xt−j] = γj ⇒ E[ξtξt−j] = E[ǫtxtǫt−jxt−j] = γjE[xtxt−j] (D.12) というものを包含します。また、不均一分散に関する仮定は新たにおいていませ んから、不均一分散への対応はすでにできていることも確認できるでしょう。そ れらの確認も含めて、Γjの推定量は

Γˆj = 1 N

J



j=1

ξˆtξˆt−j = Xt,t−jt,t−jXt,t−j (D.13)

となります。そして、 S =ˆ

J



j=−J

Γˆj (D.14)

で、推定値を得ることになります。次に問題になるのはJ をいくつにするかです が、それが不明な場合にはカーネル関数を利用した推定量で推定値を得ることに なります。任意に与えた定数または標本数に応じて増加する帯域幅(bandwidth) 関 数q(N) とインデックス関数の性質を持つカーネル (Kernel) 関数

k(p) =

1 |p| ≤ 1

0 |p| > 1 (D.15)

(13)

を準備して、 S =ˆ

J



j=−J

k j

q(N)

Γˆj (D.16)

を考えます。これを切り落とされたカーネル(truncated kernel) 関数と呼びます。 また、別の関数として、バートレットカーネル(Bartlett kernel) 関数を用いた

k(p) =

1 − |p| |p| ≤ 1

0 |p| > 1 (D.17)

Newey-West Estimator があります。GMM は便利な性質を持つことが多いのです が、直交条件間に相関が発生する場合、すなわち誤差項間に相関を持つような場 合も含む場合、などは扱いが難しくなることもわかるでしょう。

参照

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