「 協 定 書 : 年 度 早 期 退 職 優 遇 制 度 」 年 月 日
「 協 定 書 : 変 革 プ ラ ン 期 間 中 に 実 施 す る 構 造 対 策 に 伴 う 組 織 ・ 部 門 を 限 定 し た 早 期 退 職 優 遇 制 度 」 年 月 日
『 次 代 を 拓 く 約 束 ・ 挑 戦 ― 新 た な ス テ ー ジ に む か っ て チ ャ レ ン ジ ― 』 「 弊 組 織 の 再 編 の 記 録 」
「 組 合 グ ル ー プ 連 合 会 組 合 機 関 誌:グ ル ー プ 連 合 ― 移 籍 先 で 労 働 組 合 を 結 成 し ま す ― 」 号 外 : 年 月 日
「 製 造 会 社 に お け る 一 部 業 務 の 専 門 会 社 へ の 外 部 委 託 化 に 伴 う 従 業 員 の 移 籍 申 入 れ に 関 す る 基 本 的 な 考 え 方 に つ い て 」 年 月 日
「 製 造 会 社 に お け る 一 部 業 務 の 専 門 会 社 へ の 外 部 委 託 化 に 伴 う 従 業 員 の 移 籍 申 入 れ に 関 す る 第 回 合 同 労 使 協 議 を 踏 ま え た 当 面 の 見 解 に つ い て 」 年 月 日
「 製 造 会 社 に お け る 一 部 業 務 の 専 門 会 社 へ の 外 部 委 託 化 に 伴 う 従 業 員 の 移 籍 に 関 す る 最 終 見 解 に 向 け た 考 え 方 に つ い て 生 産 シ ス テ ム 業 務 」 年 月 日
「 製 造 会 社 に お け る 一 部 業 務 の 専 門 会 社 へ の 外 部 委 託 化 に 伴 う 従 業 員 の 移 籍 に 関 す る 最 終 見 解 生 産 シ ス テ ム 業 務 」 年 月 日
「 組 合 結 成 大 会 議 案 書 」 年 月 日
一 般 図 書
泉 田 良 輔 ( 2 0 1 3 ) 『 日 本 の 電 機 産 業 ― 何 が 勝 敗 を 分 け る の か 』 日 本 経 済 新 聞 出 版 社 。 呉 学 殊 ( 2 0 1 5 )「 企 業 組 織 再 編 へ の 労 働 組 合 の 対 応 と 課 題 」仁 田 道 夫 ・ 連 合 編 著『 こ れ か ら
の 集 団 的 労 使 関 係 を 問 う ― 現 場 と 研 究 者 の 対 話 ― 』 エ イ デ ル 研 究 所 。
菊 池 正 典 ( 2 0 1 2 )『 半 導 体 工 場 の す べ て ― 設 備・材 料・プ ロ セ ス か ら 復 活 の 処 方 箋 ま で ― 』 ダ イ ヤ モ ン ド 社 。
坂 本 幸 雄 ( 2 0 1 3 ) 『 不 本 意 な 敗 戦 ― エ ル ピ ー ダ の 戦 い ― 』 日 本 経 済 新 聞 出 版 社 。 佐 野 昌 ( 2 0 1 2 ) 『 半 導 体 衰 退 の 原 因 と 生 き 残 り の 鍵 』 日 刊 工 業 新 聞 社 。
東 洋 経 済 新 報 社 『 週 刊 東 洋 経 済 』( 年 月 日 版 )。
電 機 ・ 情 報 ユ ニ オ ン 関 連 労 働 者 懇 談 会 『 人 権 と 経 営 の 両 立 は 、ど う す れ ば 実 現 で き る か 』。
日 経 社 『 』( 年 月 日 号 )。
西 村 吉 雄 ( 2 0 1 4 ) 『 電 子 立 国 は 、 な ぜ 凋 落 し た か 』 日 経 社 。 湯 之 上 隆 ( 2 0 1 2 ) 『 電 機 ・ 半 導 体 大 崩 壊 の 教 訓 』 日 本 文 芸 社 。
湯 之 上 隆 ( 2 0 1 3 ) 『 日 本 型 モ ノ づ く り の 敗 北 ― 零 戦 ・ 半 導 体 ・ テ レ ビ 』 文 藝 春 秋 。
131
第
3
部
ま と め ― 労 使 関 係 メ リ ッ ト の 最 大 化 に 向 け て ―
以 上 、 企 業 組 織 再 編 を 行 っ た 7 事 例 に つ い て 、 再 編 の 背 景 、 プ ロ セ ス 、 ま た 、 労 使 関 係 等 に つ い て 考 察 し た 。 こ こ で は 、 主 に 政 策 的 な イ ン プ リ ケ ー シ ョ ン に 繫 が る 内 容 を 中 心 に ま と め て み る こ と に す る 。
1 . 企 業 組 織 再 編 の 形 態 と そ の 背 景
7 つ の 事 例 の 中 、 会 社 分 割 が 6 つ 、 事 業 譲 渡 が 1 つ 、 ま た 、 合 併 も 1 つ ( 分 割 と の 並
行 事 例 ) あ っ た 。 再 編 の 主 要 背 景 に つ い て み て み る と 、 第 1 に 、 分 割 部 門 の 業 績 悪 化 に よ り 、 分 割 会 社 が そ れ を 抱 え る こ と が 難 し く 、 他 社 同 事 業 部 門 と の 合 併 を 通 じ て 、 分 割 部 門 の 維 持 ・ 発 展 を 図 る タ イ プ で あ る( 「 分 割 部 門 業 績 悪 化 ・ 他 社 同 業 部 門 と の 統 合 再 編 」 )。 一 番 典 型 的 に は G 事 例 で あ る 。2003 年 、 電 機 大 手 2 社 が 半 導 体 部 門 を 分 割 し て 新 設 会 社 に 統 合 し た の で あ る 。ま た 、2010年 、同 新 設 会 社 の 他 社 半 導 体 子 会 社 と の 合 併 も 同 じ 背 景 と い え る 。
第 2 に 、 分 割 部 門 が よ り 成 長 し て い く た め に 、 他 社 と の 統 合 を 通 じ て 規 模 の 経 済 性 を 高 め る 分 割 ・ 統 合 で あ る( 「 分 割 部 門 専 業 化 ・ 他 社 同 業 部 門 と の 統 合 再 編 」 )。典 型 的 な の は D 事 例 で あ る 。 世 界 の 強 豪 と 伍 し て い く た め に は 、2 つ の 会 社 が 火 力 発 電 部 門 を 持 ち 続
け る よ り は 、 そ れ を 分 割 し て 新 設 会 社 に 統 合 し た ほ う が よ い と 判 断 し た 結 果 で あ る 。C 事 例 の A 事 業 、C 事 業 の 分 割 も こ の タ イ プ に 当 た る が 、 い ず れ も 政 府 関 連 機 関 か ら の 支 援 を 得 て 、 更 な る 成 長 を 目 指 す た め に 分 割 し た の で あ る 。
第 3 に 、 分 割 部 門 の 収 益 性 が 高 い が 、 選 択 と 集 中 の 経 営 戦 略 を 進 め て い く た め に 、 同 部 門 の 分 割 益 を 活 用 す る た め に 行 う 分 割 で あ る( 「 分 割 益 活 用 ・ 選 択 事 業 集 中 戦 略 再 編 」 )。 F事 例 と C事 例 のB事 業 が こ れ に 当 た る 。 分 割 売 却 益 は 、 前 者 の 場 合 、 経 営 の 負 担 と な
っ て き た 有 利 子 負 債 へ の 返 済 と と も に 集 中 事 業 へ の 更 な る 投 資 に 有 効 に 活 用 さ れ た 。 第 4 に 、 分 割 部 門 と 他 の 異 種 部 門 子 会 社 と の 統 合 を 通 じ て 、 統 合 の シ ナ ジ ー 効 果 を 図 る た め の 分 割 で あ る( 「 分 割 部 門 と 異 種 部 門 子 会 社 と の 統 合 シ ナ ジ ー 効 果 再 編 」 )。A事 例 が こ れ に 当 た る 。A 事 例 で は 、 営 業 部 門 を 分 割 し て 、 エ ン ジ ニ ア リ ン グ や 保 守 サ ー ビ ス の 子 会 社 と の 統 合 に よ り 、 顧 客 へ の ソ リ ュ ー シ ョ ン ・ サ ー ビ ス を 効 果 ・ 効 率 的 に 行 う た め に 再 編 が 行 わ れ た 。
第 5 に 、 分 割 部 門 と 同 種 部 門 子 会 社 と の 統 合 を 通 じ て 、 統 合 の シ ナ ジ ー 効 果 を 図 る た め の 分 割 で あ る( 「 分 割 部 門 と 同 種 部 門 子 会 社 と の 統 合 シ ナ ジ ー 効 果 再 編 」 )。E事 例 が こ れ に 当 た る 。E事 例 で は 、4つ の 製 造 部 門( 工 場 )を 分 割 し 製 造 専 門 子 会 社 に 統 合 さ せ て 、 高 い 品 質 ・ 高 い 生 産 性 を 実 現 し よ う し た の で あ る 。
132
JI 社 は 、 経 営 が 厳 し く い く つ か の 工 場 を 閉 鎖 す る 等 の 対 策 を 講 じ て も 改 善 せ ず 、S 工 場
を 同 業 他 社 の B社 に 譲 渡 し た 。
こ う し た 企 業 組 織 再 編 が 企 業 グ ル ー プ 内 の も の と 外 の も の に 分 か れ る 。 再 編 元 も 先 も 特 定 の 企 業 グ ル ー プ ( 親 会 社 が 子 会 社 株 の 100% 保 有 ) に 属 し て い る の は 、 A 事 例 、B 事 例 と E事 例 で あ る 。再 編 先 の 資 本 金50% 以 上 を 持 ち 、再 編 元 が 再 編 先 企 業 の 主 導 権 を 持 ち 、当 該 企 業 の 連 結 会 計 対 象 と し て い る の は 、D事 例 で あ る 。分 割 会 社 が 、分 割 当 初 、 分 割 統 合 会 社 株 の50% 以 上 を 保 有 し て い た が 、そ の 持 ち 分 が 低 下 し て 連 結 会 計 対 象 外 と な っ て い る の が G事 例 で あ る 。そ の 他 の 事 例 は 、再 編 当 初 よ り 再 編 先 企 業 の 株 を50% 未 満 保 有 す る か ま っ た く 保 有 し な い 形 で あ り 、 企 業 グ ル ー プ 外 の 再 編 に 当 た っ た 。
再 編 の 背 景 は 、 以 上 の よ う に 、 各 社 各 様 で あ る が 、 多 く の 事 例 で 共 通 す る の は 、 選 択 と 集 中 と い う 経 営 戦 略 の 推 進 で あ る 。 当 該 企 業 の 本 業 に 資 源 を 集 中 さ せ る た め に 、 本 業 で は な い 部 門 を 切 り 離 す の で あ る 。 代 表 的 な の は C事 例 、D 事 例 、F 事 例 、G事 例 で あ る 。 い ず れ も 切 り 離 さ れ る 部 門 の 事 業 が 熾 烈 な 競 争 に さ ら さ れ て 、 継 続 的 に 抱 え 込 ん で い く た め に は 莫 大 な 投 資 が 必 要 で あ り 、 そ れ に は 本 業 へ の 資 源 集 中 に 問 題 が 発 生 す る 恐 れ が あ っ た 。
2 . 企 業 組 織 再 編 の プ ロ セ ス と そ の 適 法 性 お よ び 課 題
企 業 組 織 再 編 は 、 再 編 の 類 型 に よ っ て 法 的 な 措 置 が 異 な る 。 特 に 雇 用 に つ い て み て み る と 、 合 併 は 企 業 間 の 統 合 と な る の で 包 括 承 継 と な る 。 そ の た め 、 合 併 の 際 に 、 労 働 者 の 雇 用 は 合 併 前 の 会 社 か ら 合 併 後 の 会 社 に 自 動 的 に 承 継 さ れ る( 「 包 括 承 継 」 )。雇 用 契 約 の 移 転 に 伴 う 契 約 の 結 び 直 し 等 の 手 続 き は 不 要 で あ る 。 譲 渡 の 場 合 、 労 働 者 の 雇 用 契 約 は 、 譲 渡 元 か ら 譲 渡 先 に 代 わ る が 、 そ の 際 、 譲 渡 先 が 労 働 者 個 人 の 同 意 を 得 る こ と に な る( 「 特 定 承 継 」 )。合 併 も 譲 渡 も 雇 用 契 約 の 移 転 に つ い て 、以 上 の よ う な 手 続 き が 必 要 で あ る の み で あ る 。
他 方 、 分 割 の 場 合 、 包 括 承 継 で は あ る も の の 、 「 労 働 契 約 承 継 法 」 に よ り 一 定 の 手 続 き が 必 要 と さ れ る 。分 割 会 社 が 行 う べ き 必 要 な 手 続 き を 順 に 示 せ ば 次 の と お り で あ る 。第 1 に 、労 働 者 の 理 解 と 協 力 を 得 る よ う に 努 力 す る( 同 法7 条 、い わ ゆ る 「7条 措 置 」 )こ と 。 そ の 際 、 従 業 員 の 過 半 数 を 組 織 し て い る 労 働 組 合 が あ れ ば 、 そ の 過 半 数 組 合 、 そ れ が な け れ ば 従 業 員 過 半 数 を 代 表 す る 労 働 者 ( 従 業 員 の 過 半 数 代 表 者 ) か ら 理 解 と 協 力 を 得 な け れ ば な ら な い 。 第 2 に 、 労 働 者 個 人 と の 協 議 を 行 わ な け れ ば な ら な い ( 商 法 等 改 正 法 附 則 第 5条 、 い わ ゆ る 「5条 協 議 」 )。 そ し て 、 第 3に 、 企 業 は 、 分 割 効 力 発 生 日 、 労 働 契 約 の 承 継 の 有 無 、 労 働 条 件 の 承 継 等 を 記 載 し た 通 知 を 労 働 組 合 お よ び 当 該 労 働 者 に 行 う ( 同 法 2 条 、 い わ ゆ る 「2 条 通 知 」 ) こ と で あ る 。 こ こ で は 、 労 使 関 係 の 面 で 必 要 な 手 続 き と し て7 条 措 置 と5条 協 議 に し ぼ っ て 実 態 を み て み た い 。
ま ず 、7 条 措 置 で あ る 。 労 働 者 の 理 解 と 協 力 を 得 る と は ど の よ う な 意 味 が あ る の か 。
同 法 で は 具 体 的 に 示 さ れ て い な い 。 そ の 実 態 を み て み る と 極 め て 多 様 で あ る 。 ま ず 、 事 実 上 、 労 働 組 合 の 同 意 が な さ れ た の は 同 意 程 度 の 順 に 事 例 、 事 例 、 事 例 、 事 例 で あ っ た 。 事 例 で は 、 労 使 が 「 製 造 工 場 の 分 社 化 に お け る 協 定 書 」 を 締 結 し 、 最 も 同 意 の 程 度 が 強 い 。 事 例 で は 、労 働 組 合 が 、会 社 に 対 し 、新 会 社 に お け る 労 使 協 議 の 運 営 、 組 合 員 の 労 働 条 件 等 に 関 す る 労 使 協 議 、労 働 協 約 締 結 者 の 確 認 、良 好 な 労 使 関 係 の 構 築 ・ 発 展 と い う 要 求 を 受 け 入 れ れ ば 、分 割 ・ 統 合 の 申 し 入 れ を 受 け 入 れ る と 表 明 し た 。 事 例 で は 、 労 使 協 議 の 場 で 労 働 組 合 が 分 割 ・ 統 合 に 了 解 す る と の 組 合 態 度 お よ び 意 見 ・ 要 望 、 ま た 、「 組 合 建 議 」 も 示 し た 。ま た 、分 割 ・ 統 合 に 理 解 を 示 さ な い 労 働 組 合 員 に は 、組 合 が 会 社 に な り か わ っ て 丁 寧 に 説 明 し 、 理 解 を 得 る 取 り 組 み も 行 っ た 。 事 例 で は 、 中 央 レ ベ ル の 最 後 の 協 議 の 場 で 、 労 働 組 合 が 「 職 制 に よ る 従 業 員 ・ 組 合 員 に 対 す る 職 場 説 得 が 行 わ れ て 組 合 員 の 理 解 が 進 ん だ 」 と 判 断 し 、会 社 の 分 割 ・ 統 合 案 に つ い て 「 理 解 し 、協 力 し て い く 」 旨 を 表 明 し た 。 そ の 際 、 統 合 会 社 の 新 社 長 に 、 雇 用 ・ 労 働 条 件 に 対 す る 組 合 員 の 不 安 払 拭 、 事 業 統 合 シ ナ ジ ー 効 果 の 実 現 、 明 確 な 経 営 ビ ジ ョ ン の 明 示 と い う メ ッ セ ー ジ を 示 す こ と を 要 求 し た 。 事 例 、 事 例 、 事 例 は 緩 や か な 条 件 付 事 実 上 の 同 意 で あ っ た 。 い っ ぽ う 、 事 例 で は 、 労 働 組 合 が 「 経 営 は あ く ま で 経 営 者 が 行 う も の で あ り 、 経 営 判 断 に 関 し て は 労 働 組 合 と し て は 強 く 是 非 を 問 う べ き も の で は な い 」 と い う 方 針 の 下 、会 社 が 労 働 契 約 承 継 法 に 則 っ て 手 続 き を 進 め て い る こ と に 対 し 、 分 割 対 象 の 組 合 員 の 意 見 集 約 を 経 て 、「 特 筆 す る よ う な 大 き な 課 題 は 今 の と こ ろ な く 、会 社 側 に 引 き 続 き 着 実 か つ 丁 寧 に 取 り 組 ん で も ら い た い 」 と い い 、分 割 を 認 め た の で あ る 。 事 例 で は 、会 社 が 分 割 の 際 に プ レ ス リ リ ー ス を 行 う が 、 そ の 前 後 、 労 働 組 合 は そ の 内 容 に つ い て 会 社 と の 協 議 を 経 て 、そ の 日 、協 議 の 議 事 録 を 作 成 し 、組 合 員 に 配 布 す る 。労 使 協 議 は 、必 要 に 応 じ て 回 以 上 行 う こ と も あ る が 、 組 合 が 会 社 の 分 割 に 承 認 を 示 す 手 続 き を と っ て い な い 。 同 事 例 で は 、 過 半 数 組 合 が な い の で 、 事 業 所 ご と に あ る 従 業 員 の 過 半 数 代 表 者 に 対 し て も 分 割 に 関 す る 説 明 会 を 行 う が 、 同 代 表 者 の ほ と ん ど は 組 合 員 で あ る の で 、 説 明 会 の 前 に 組 合 発 行 の 労 使 協 議 議 事 録 を 入 手 す る 。 説 明 会 で は 、 会 社 側 の 説 明 を 聞 く だ け で 、 そ の 内 容 を 従 業 員 に 知 ら せ る 活 動 等 は 行 っ て い な い 。 労 働 組 合 も 従 業 員 の 過 半 数 代 表 者 も 会 社 の 分 割 に 対 し て 承 認 す る と い う メ ッ セ ー ジ は 発 し て い な い 。
社 は 、 経 営 が 厳 し く い く つ か の 工 場 を 閉 鎖 す る 等 の 対 策 を 講 じ て も 改 善 せ ず 、 工 場 を 同 業 他 社 の 社 に 譲 渡 し た 。
こ う し た 企 業 組 織 再 編 が 企 業 グ ル ー プ 内 の も の と 外 の も の に 分 か れ る 。 再 編 元 も 先 も 特 定 の 企 業 グ ル ー プ ( 親 会 社 が 子 会 社 株 の % 保 有 ) に 属 し て い る の は 、 A 事 例 、 事 例 と 事 例 で あ る 。再 編 先 の 資 本 金 % 以 上 を 持 ち 、再 編 元 が 再 編 先 企 業 の 主 導 権 を 持 ち 、当 該 企 業 の 連 結 会 計 対 象 と し て い る の は 、 事 例 で あ る 。分 割 会 社 が 、分 割 当 初 、 分 割 統 合 会 社 株 の % 以 上 を 保 有 し て い た が 、そ の 持 ち 分 が 低 下 し て 連 結 会 計 対 象 外 と な っ て い る の が 事 例 で あ る 。そ の 他 の 事 例 は 、再 編 当 初 よ り 再 編 先 企 業 の 株 を % 未 満 保 有 す る か ま っ た く 保 有 し な い 形 で あ り 、 企 業 グ ル ー プ 外 の 再 編 に 当 た っ た 。
再 編 の 背 景 は 、 以 上 の よ う に 、 各 社 各 様 で あ る が 、 多 く の 事 例 で 共 通 す る の は 、 選 択 と 集 中 と い う 経 営 戦 略 の 推 進 で あ る 。 当 該 企 業 の 本 業 に 資 源 を 集 中 さ せ る た め に 、 本 業 で は な い 部 門 を 切 り 離 す の で あ る 。 代 表 的 な の は 事 例 、 事 例 、 事 例 、 事 例 で あ る 。 い ず れ も 切 り 離 さ れ る 部 門 の 事 業 が 熾 烈 な 競 争 に さ ら さ れ て 、 継 続 的 に 抱 え 込 ん で い く た め に は 莫 大 な 投 資 が 必 要 で あ り 、 そ れ に は 本 業 へ の 資 源 集 中 に 問 題 が 発 生 す る 恐 れ が あ っ た 。
2 . 企 業 組 織 再 編 の プ ロ セ ス と そ の 適 法 性 お よ び 課 題
企 業 組 織 再 編 は 、 再 編 の 類 型 に よ っ て 法 的 な 措 置 が 異 な る 。 特 に 雇 用 に つ い て み て み る と 、 合 併 は 企 業 間 の 統 合 と な る の で 包 括 承 継 と な る 。 そ の た め 、 合 併 の 際 に 、 労 働 者 の 雇 用 は 合 併 前 の 会 社 か ら 合 併 後 の 会 社 に 自 動 的 に 承 継 さ れ る( 「 包 括 承 継 」 )。雇 用 契 約 の 移 転 に 伴 う 契 約 の 結 び 直 し 等 の 手 続 き は 不 要 で あ る 。 譲 渡 の 場 合 、 労 働 者 の 雇 用 契 約 は 、 譲 渡 元 か ら 譲 渡 先 に 代 わ る が 、 そ の 際 、 譲 渡 先 が 労 働 者 個 人 の 同 意 を 得 る こ と に な る( 「 特 定 承 継 」 )。合 併 も 譲 渡 も 雇 用 契 約 の 移 転 に つ い て 、以 上 の よ う な 手 続 き が 必 要 で あ る の み で あ る 。
他 方 、 分 割 の 場 合 、 包 括 承 継 で は あ る も の の 、 「 労 働 契 約 承 継 法 」 に よ り 一 定 の 手 続 き が 必 要 と さ れ る 。分 割 会 社 が 行 う べ き 必 要 な 手 続 き を 順 に 示 せ ば 次 の と お り で あ る 。第 に 、労 働 者 の 理 解 と 協 力 を 得 る よ う に 努 力 す る( 同 法 条 、い わ ゆ る 「 条 措 置 」 )こ と 。 そ の 際 、 従 業 員 の 過 半 数 を 組 織 し て い る 労 働 組 合 が あ れ ば 、 そ の 過 半 数 組 合 、 そ れ が な け れ ば 従 業 員 過 半 数 を 代 表 す る 労 働 者 ( 従 業 員 の 過 半 数 代 表 者 ) か ら 理 解 と 協 力 を 得 な け れ ば な ら な い 。 第 に 、 労 働 者 個 人 と の 協 議 を 行 わ な け れ ば な ら な い ( 商 法 等 改 正 法 附 則 第 条 、 い わ ゆ る 「 条 協 議 」 )。 そ し て 、 第 に 、 企 業 は 、 分 割 効 力 発 生 日 、 労 働 契 約 の 承 継 の 有 無 、 労 働 条 件 の 承 継 等 を 記 載 し た 通 知 を 労 働 組 合 お よ び 当 該 労 働 者 に 行 う ( 同 法 条 、 い わ ゆ る 「 条 通 知 」 ) こ と で あ る 。 こ こ で は 、 労 使 関 係 の 面 で 必 要 な 手 続 き と し て 条 措 置 と 条 協 議 に し ぼ っ て 実 態 を み て み た い 。
ま ず 、 条 措 置 で あ る 。 労 働 者 の 理 解 と 協 力 を 得 る と は ど の よ う な 意 味 が あ る の か 。
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同 法 で は 具 体 的 に 示 さ れ て い な い 。 そ の 実 態 を み て み る と 極 め て 多 様 で あ る 。 ま ず 、 事 実 上 、 労 働 組 合 の 同 意 が な さ れ た の は 同 意 程 度 の 順 に E事 例 、A 事 例 、D事 例 、G事 例 で あ っ た 。E 事 例 で は 、 労 使 が 「 製 造 工 場 の 分 社 化 に お け る 協 定 書 」 を 締 結 し 、 最 も 同 意 の 程 度 が 強 い 。A事 例 で は 、労 働 組 合 が 、会 社 に 対 し 、新 会 社 に お け る 労 使 協 議 の 運 営 、 組 合 員 の 労 働 条 件 等 に 関 す る 労 使 協 議 、労 働 協 約 締 結 者 の 確 認 、良 好 な 労 使 関 係 の 構 築 ・ 発 展 と い う 要 求 を 受 け 入 れ れ ば 、分 割 ・ 統 合 の 申 し 入 れ を 受 け 入 れ る と 表 明 し た 。D事 例 で は 、 労 使 協 議 の 場 で 労 働 組 合 が 分 割 ・ 統 合 に 了 解 す る と の 組 合 態 度 お よ び 意 見 ・ 要 望 、 ま た 、「 組 合 建 議 」 も 示 し た 。ま た 、分 割 ・ 統 合 に 理 解 を 示 さ な い 労 働 組 合 員 に は 、組 合 が 会 社 に な り か わ っ て 丁 寧 に 説 明 し 、 理 解 を 得 る 取 り 組 み も 行 っ た 。G 事 例 で は 、 中 央 レ ベ ル の 最 後 の 協 議 の 場 で 、 労 働 組 合 が 「 職 制 に よ る 従 業 員 ・ 組 合 員 に 対 す る 職 場 説 得 が 行 わ れ て 組 合 員 の 理 解 が 進 ん だ 」 と 判 断 し 、会 社 の 分 割 ・ 統 合 案 に つ い て 「 理 解 し 、協 力 し て い く 」 旨 を 表 明 し た 。 そ の 際 、 統 合 会 社 の 新 社 長 に 、 雇 用 ・ 労 働 条 件 に 対 す る 組 合 員 の 不 安 払 拭 、 事 業 統 合 シ ナ ジ ー 効 果 の 実 現 、 明 確 な 経 営 ビ ジ ョ ン の 明 示 と い う メ ッ セ ー ジ を 示 す こ と を 要 求 し た 。A事 例 、D事 例 、G事 例 は 緩 や か な 条 件 付 事 実 上 の 同 意 で あ っ た 。 い っ ぽ う 、F事 例 で は 、 労 働 組 合 が 「 経 営 は あ く ま で 経 営 者 が 行 う も の で あ り 、 経 営 判 断 に 関 し て は 労 働 組 合 と し て は 強 く 是 非 を 問 う べ き も の で は な い 」 と い う 方 針 の 下 、会 社 が 労 働 契 約 承 継 法 に 則 っ て 手 続 き を 進 め て い る こ と に 対 し 、 分 割 対 象 の 組 合 員 の 意 見 集 約 を 経 て 、「 特 筆 す る よ う な 大 き な 課 題 は 今 の と こ ろ な く 、会 社 側 に 引 き 続 き 着 実 か つ 丁 寧 に 取 り 組 ん で も ら い た い 」 と い い 、分 割 を 認 め た の で あ る 。C事 例 で は 、会 社 が 分 割 の 際 に プ レ ス リ リ ー ス を 行 う が 、 そ の 前 後 、 労 働 組 合 は そ の 内 容 に つ い て 会 社 と の 協 議 を 経 て 、そ の 日 、協 議 の 議 事 録 を 作 成 し 、組 合 員 に 配 布 す る 。労 使 協 議 は 、必 要 に 応 じ て2 回 以 上 行 う こ と も あ る が 、 組 合 が 会 社 の 分 割 に 承 認 を 示 す 手 続 き を と っ て い な い 。 同 事 例 で は 、 過 半 数 組 合 が な い の で 、 事 業 所 ご と に あ る 従 業 員 の 過 半 数 代 表 者 に 対 し て も 分 割 に 関 す る 説 明 会 を 行 う が 、 同 代 表 者 の ほ と ん ど は 組 合 員 で あ る の で 、 説 明 会 の 前 に 組 合 発 行 の 労 使 協 議 議 事 録 を 入 手 す る 。 説 明 会 で は 、 会 社 側 の 説 明 を 聞 く だ け で 、 そ の 内 容 を 従 業 員 に 知 ら せ る 活 動 等 は 行 っ て い な い 。 労 働 組 合 も 従 業 員 の 過 半 数 代 表 者 も 会 社 の 分 割 に 対 し て 承 認 す る と い う メ ッ セ ー ジ は 発 し て い な い 。
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事 業 譲 渡 の B 事 例 で は 、 労 使 が 団 体 交 渉 を 通 じ て 、 譲 渡 に 伴 う 自 社 退 職 の 退 職 金 加 算 ( 平 均 10 か 月 ) を 定 め た 後 、 会 社 が 組 合 員 個 人 ご と の 説 明 ・ 面 談 を 行 っ た 。 譲 渡 は 特 別 承 継 と し て 会 社 と 労 働 者 個 人 間 の 契 約 に よ り 、 雇 用 契 約 が 譲 受 会 社 に 移 行 す る が 、B 事 例 で は 、 そ の 前 に 労 働 組 合 が 、 会 社 と の 団 交 に お い て 、 退 職 金 加 算 を 決 定 し た 。
次 に 、5 条 協 議 の 実 態 に つ い て み る こ と に す る 。 法 律 の 中 に 「 協 議 」 の 具 体 的 な 内 容 が 示 さ れ て い る わ け で は な い 。 厚 生 労 働 省
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に よ る と 、 労 働 者 個 人 と の 協 議 の 際 に 、 承 継 さ れ る 会 社 の 概 要 、 分 割 会 社 お よ び 承 継 会 社 等 の 債 務 履 行 の 見 込 み に 関 す る 事 項 、 承 継 さ れ る 事 業 に 主 と し て 従 事 す る 労 働 者 に 該 当 す る か 否 か の 考 え 方 等 を 十 分 説 明 し て 、 本 人 の 希 望 を 聴 取 し た 上 で 、 当 該 労 働 者 の 労 働 契 約 の 承 継 の 有 無 、 当 該 労 働 者 が 従 事 す る こ と を 予 定 す る 業 務 の 内 容 、 就 業 場 所 そ の 他 の 就 業 形 態 等 が 協 議 事 項 と な っ て い る 。 し か し 、こ こ で は 協 議 の 具 体 的 な 意 味 が 見 当 た ら な い 。仮 に 協 議 を 「 相 手 と 対 等 な 立 場 で 話 し 合 い 自 分 の 意 見 を 自 由 に 言 え て そ れ を 反 映 す る こ と 」 と 定 義 す れ ば 、5条 協 議 は 意 味 あ る も の と は い え な い 。 な ぜ な ら 、 協 議 の 当 事 者 は 、 通 常 、 分 割 に 従 う 労 働 契 約 承 継 対 象 者 の 上 司 で あ る こ と 、 ま た 、 当 事 者 と 上 司 と の 1 対 1 の 協 議 で あ る こ と か ら で あ る 。 よ り 具 体 的 に 協 議 の 実 態 を み て み る 。「 協 議 は 業 務 命 令 上 の 協 議 に 過 ぎ ず 、事 実 上 の 説 明 に と ど ま っ て (A 事 例 ) 」 お り 、 「 職 場 ご と に 説 明 会 を 開 き 、 説 明 を 行 っ た が 、 当 該 の 労 働 者 と 個 別 に 協 議 し て い る わ け で は な い (D 事 例 ) 」 、 「 承 継 対 象 者 に 対 し 全 員 面 談 を 実 施 す る (F事 例 ) 」 程 度 で あ り 、 「8000人 の 従 業 員 と の 個 別 の 協 議 を も れ な く 実 施 す る こ と は 極 め て 難 し い (G事 例 ) 」 の が 実 態 で あ る 。
こ の よ う に 、 労 働 者 個 人 と の 協 議 の 実 態 を 鑑 み る と 、 協 議 は 、 業 務 命 令 上 の 協 議 や 説 明 に 過 ぎ な い 。 対 象 労 働 者 が 対 等 な 立 場 で 自 分 の 意 見 を 言 え る 状 況 と は い え な い 。
3 . 企 業 組 織 再 編 後 の 雇 用 お よ び 労 働 条 件 の 実 態
企 業 組 織 再 編 の 対 象 労 働 者 は 、 前 記 の と お り 、 再 編 の 形 態 に よ っ て 、 再 編 先 の 企 業 と の 雇 用 関 係 の 承 継 が 異 な る 。 合 併 は 、 包 括 承 継 と し て 合 併 前 の 労 働 者 は 合 併 会 社 に そ の 雇 用 が そ の ま ま 承 継 さ れ る 。 譲 渡 は 、 譲 渡 元 の 労 働 者 個 人 と 譲 受 企 業 と の 同 意 に よ り 、 そ の 雇 用 が 譲 受 企 業 に 移 籍 さ れ る 。分 割 の 場 合 、分 割 契 約 書 に 承 継 の 対 象 者( 「 主 た る 従 事 者 」 )と 記 載 さ れ て い れ ば 、分 割 先 に そ の 雇 用 お よ び 労 働 条 件 が 包 括 的 に 承 継 さ れ る こ と に な っ て い る 。 た だ し 、 雇 用 お よ び 労 働 条 件 の 承 継 の 期 限 は 定 め ら れ て い な い 。 実 態 は ど の よ う に な っ て い る の か 。 調 査 対 象 や 再 編 後 の 期 間 が 事 例 ご と に 異 な る の で 、 そ の 実 態 を 正 確 に 表 す の は 自 ず と 限 界 が あ る こ と を ま ず 断 っ て お き た い 。 ま ず 、 分 割 に つ い て み て み た い 。 雇 用 の 承 継 は 、 主 た る 従 事 者 の み な ら ず 、 従 た る 従 事 者 も そ の 対 象 に な っ た 。 主 た る 従 事 者 の 場 合 、 分 割 対 象 業 務 が 明 確 に 区 分 さ れ て い る の で 、 承 継 対 象 の 線
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厚 生 労 働 省 「 会 社 分 割 に 伴 う 労 働 契 約 の 承 継 等 に 関 す る 法 律 ( 労 働 契 約 承 継 法 ) の 概 要 」
引 き に 問 題 は 基 本 的 に 起 こ ら な か っ た 。 従 た る 従 事 者 は 、 人 事 、 総 務 、 財 務 や 研 究 等 の 間 接 部 門 に 従 事 す る 者 で あ っ た が 、 会 社 が 個 人 的 に 対 象 者 と 協 議 し 分 割 部 門 に 分 割 前 に 異 動 を 行 う か ( 事 例 、 事 例 )、 分 割 会 社 が 個 別 に 同 意 を 得 て 、 雇 用 を 承 継 会 社 に 承 継 さ せ た ( 事 例 、 事 例 、 事 例 )。
分 割 ・ 労 働 契 約 承 継 法 に 基 づ き 、 分 割 ・ 承 継 の 際 に 雇 用 の 承 継 を 行 う が 、 そ れ が い つ ま で 続 く の か は わ か ら な い 。 分 割 会 社 が 、 条 措 置 の 際 に 、 承 継 後 の 雇 用 保 障 に つ い て も 言 及 し て い る と こ ろ も あ る( 事 例 、 事 例 )。 事 例 で は 、い わ ゆ る 終 身 雇 用 慣 行 が 強 く 、 明 示 的 に そ れ を 示 し て い る 。 例 え ば 、 「 万 一 、 そ の 新 会 社 ( 承 継 会 社 ) が だ め に な る と き は 、企 業 グ ル ー プ と し て 雇 用 は き ち ん と 守 る 」 と い う 発 言 が あ る 。 事 例 で は 、個 別 事 例 に か か わ る 「 製 造 工 場 の 分 社 化 に 関 す る 協 定 書 」 や 包 括 的 に 「 分 社 化 に 関 す る 労 働 協 約 」 の 中 に 「 将 来 に 亘 り 企 業 グ ル ー プ で の 雇 用 確 保 の 義 務 お よ び 責 任 を 有 し て い る こ と を 確 認 す る 」 と い う 内 容 が 盛 り 込 ま れ て い る 。 事 例 で は 、 再 編 の 際 に メ ジ ャ ー 出 資 、 事 例 で は 企 業 グ ル ー プ 内 の 再 編 と い う 特 徴 が あ る 。ち な み に 、 事 例 で は 、再 編 の 際 に 、 「 再 編 時 の 労 働 契 約 の 円 滑 移 動 お よ び 再 編 後 の 雇 用 安 定 」 と い う 大 原 則 を 重 視 す る の で 、 再 編 後 の 雇 用 問 題 が 発 生 し な か っ た 。
再 編 後 、 雇 用 は 守 ら れ て い る の か 。 そ う な っ て い な い の は 、 事 例 、 事 例 、 事 例 で あ る 。 事 例 で は 、再 編 先 も 含 め て グ ル ー プ レ ベ ル で 早 期 退 職 ・ 希 望 退 職 が 実 施 さ れ て 再 編 先 か ら の 退 職 者 が 出 た 。 事 例 で は 、 労 働 条 件 の 引 き 下 げ 、 転 居 を 伴 う 転 勤 、 さ ら に は 工 場 閉 鎖 に 伴 う 退 職 者 が 発 生 し た 。 事 例 で は 分 割 後 に 回 、 合 併 後 に 回 、 合 わ せ て 回 に わ た る 早 期 退 職 ・ 希 望 退 職 が 行 わ れ て 多 く の 労 働 者 が 退 職 し た 。 分 割 、 譲 渡 、 合 併 と い う ど の 企 業 組 織 再 編 で も 雇 用 削 減 が み ら れ 、 再 編 形 態 の 間 に 相 異 点 は 見 出 さ れ な い 。
他 方 、 再 編 の 際 に 、 再 編 対 象 部 門 の 労 働 者 の み が 雇 用 削 減 の 対 象 外 と な り 、 雇 用 の 安 定 が 図 ら れ た と こ ろ も あ っ た ( 事 例 ) が 、 再 編 ( 分 割 ) 対 象 部 門 が 最 も 高 い 収 益 率 を 記 録 し て お り 、 売 却 益 が 会 社 の 有 利 子 負 債 へ の 返 済 に 用 い ら れ た 。 ま た 、 事 例 で は 、 再 編 を 機 に 、 有 期 雇 用 か ら 無 期 雇 用 へ と 雇 用 の 安 定 が 図 ら れ た 。
い っ ぽ う 、 労 働 条 件 の 承 継 に つ い て み て み る こ と に す る 。 再 編 と と も に 労 働 条 件 が 下 が っ た の は 譲 渡 の 事 例 の み で あ る 。組 合 員 の 月 例 賃 金 が 平 均 % 下 が っ た 。他 の 事 例 で は 、労 働 条 件 が そ の ま ま 承 継 さ れ た が 、労 使 の 協 議 で は ど の よ う な 言 及 が あ っ た の か 。 条 措 置 に お い て 、 企 業 は 、 再 編 先 ( 他 社 と の 統 合 の 際 に ) に お け る 従 業 員 の 一 体 感 を 図 る た め に も 労 働 条 件 の 統 一 が 望 ま し い と 考 え て い る が 、 統 一 が い つ な の か に つ い て は 明 言 を 避 け て い る 。 そ れ は 、 再 編 先 が 自 社 で は な い か ら で あ り 、 再 編 後 の 状 況 が 正 確 に は 見 通 せ な い か ら で あ ろ う 。 そ れ で は 、 実 際 、 再 編 か ら 労 働 条 件 の 統 一 ま で ど の く ら い
事 業 譲 渡 の 事 例 で は 、 労 使 が 団 体 交 渉 を 通 じ て 、 譲 渡 に 伴 う 自 社 退 職 の 退 職 金 加 算 ( 平 均 か 月 ) を 定 め た 後 、 会 社 が 組 合 員 個 人 ご と の 説 明 ・ 面 談 を 行 っ た 。 譲 渡 は 特 別 承 継 と し て 会 社 と 労 働 者 個 人 間 の 契 約 に よ り 、 雇 用 契 約 が 譲 受 会 社 に 移 行 す る が 、 事 例 で は 、 そ の 前 に 労 働 組 合 が 、 会 社 と の 団 交 に お い て 、 退 職 金 加 算 を 決 定 し た 。
次 に 、 条 協 議 の 実 態 に つ い て み る こ と に す る 。 法 律 の 中 に 「 協 議 」 の 具 体 的 な 内 容 が 示 さ れ て い る わ け で は な い 。 厚 生 労 働 省 に よ る と 、 労 働 者 個 人 と の 協 議 の 際 に 、 承 継 さ れ る 会 社 の 概 要 、 分 割 会 社 お よ び 承 継 会 社 等 の 債 務 履 行 の 見 込 み に 関 す る 事 項 、 承 継 さ れ る 事 業 に 主 と し て 従 事 す る 労 働 者 に 該 当 す る か 否 か の 考 え 方 等 を 十 分 説 明 し て 、 本 人 の 希 望 を 聴 取 し た 上 で 、 当 該 労 働 者 の 労 働 契 約 の 承 継 の 有 無 、 当 該 労 働 者 が 従 事 す る こ と を 予 定 す る 業 務 の 内 容 、 就 業 場 所 そ の 他 の 就 業 形 態 等 が 協 議 事 項 と な っ て い る 。 し か し 、こ こ で は 協 議 の 具 体 的 な 意 味 が 見 当 た ら な い 。仮 に 協 議 を 「 相 手 と 対 等 な 立 場 で 話 し 合 い 自 分 の 意 見 を 自 由 に 言 え て そ れ を 反 映 す る こ と 」 と 定 義 す れ ば 、 条 協 議 は 意 味 あ る も の と は い え な い 。 な ぜ な ら 、 協 議 の 当 事 者 は 、 通 常 、 分 割 に 従 う 労 働 契 約 承 継 対 象 者 の 上 司 で あ る こ と 、 ま た 、 当 事 者 と 上 司 と の 対 の 協 議 で あ る こ と か ら で あ る 。 よ り 具 体 的 に 協 議 の 実 態 を み て み る 。「 協 議 は 業 務 命 令 上 の 協 議 に 過 ぎ ず 、事 実 上 の 説 明 に と ど ま っ て ( 事 例 ) 」 お り 、 「 職 場 ご と に 説 明 会 を 開 き 、 説 明 を 行 っ た が 、 当 該 の 労 働 者 と 個 別 に 協 議 し て い る わ け で は な い ( 事 例 ) 」 、 「 承 継 対 象 者 に 対 し 全 員 面 談 を 実 施 す る ( 事 例 ) 」 程 度 で あ り 、 「 人 の 従 業 員 と の 個 別 の 協 議 を も れ な く 実 施 す る こ と は 極 め て 難 し い ( 事 例 ) 」 の が 実 態 で あ る 。
こ の よ う に 、 労 働 者 個 人 と の 協 議 の 実 態 を 鑑 み る と 、 協 議 は 、 業 務 命 令 上 の 協 議 や 説 明 に 過 ぎ な い 。 対 象 労 働 者 が 対 等 な 立 場 で 自 分 の 意 見 を 言 え る 状 況 と は い え な い 。
3 . 企 業 組 織 再 編 後 の 雇 用 お よ び 労 働 条 件 の 実 態
企 業 組 織 再 編 の 対 象 労 働 者 は 、 前 記 の と お り 、 再 編 の 形 態 に よ っ て 、 再 編 先 の 企 業 と の 雇 用 関 係 の 承 継 が 異 な る 。 合 併 は 、 包 括 承 継 と し て 合 併 前 の 労 働 者 は 合 併 会 社 に そ の 雇 用 が そ の ま ま 承 継 さ れ る 。 譲 渡 は 、 譲 渡 元 の 労 働 者 個 人 と 譲 受 企 業 と の 同 意 に よ り 、 そ の 雇 用 が 譲 受 企 業 に 移 籍 さ れ る 。分 割 の 場 合 、分 割 契 約 書 に 承 継 の 対 象 者( 「 主 た る 従 事 者 」 )と 記 載 さ れ て い れ ば 、分 割 先 に そ の 雇 用 お よ び 労 働 条 件 が 包 括 的 に 承 継 さ れ る こ と に な っ て い る 。 た だ し 、 雇 用 お よ び 労 働 条 件 の 承 継 の 期 限 は 定 め ら れ て い な い 。 実 態 は ど の よ う に な っ て い る の か 。 調 査 対 象 や 再 編 後 の 期 間 が 事 例 ご と に 異 な る の で 、 そ の 実 態 を 正 確 に 表 す の は 自 ず と 限 界 が あ る こ と を ま ず 断 っ て お き た い 。 ま ず 、 分 割 に つ い て み て み た い 。 雇 用 の 承 継 は 、 主 た る 従 事 者 の み な ら ず 、 従 た る 従 事 者 も そ の 対 象 に な っ た 。 主 た る 従 事 者 の 場 合 、 分 割 対 象 業 務 が 明 確 に 区 分 さ れ て い る の で 、 承 継 対 象 の 線
厚 生 労 働 省 「 会 社 分 割 に 伴 う 労 働 契 約 の 承 継 等 に 関 す る 法 律 ( 労 働 契 約 承 継 法 ) の 概 要 」
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引 き に 問 題 は 基 本 的 に 起 こ ら な か っ た 。 従 た る 従 事 者 は 、 人 事 、 総 務 、 財 務 や 研 究 等 の 間 接 部 門 に 従 事 す る 者 で あ っ た が 、 会 社 が 個 人 的 に 対 象 者 と 協 議 し 分 割 部 門 に 分 割 前 に 異 動 を 行 う か (F 事 例 、G事 例 )、 分 割 会 社 が 個 別 に 同 意 を 得 て 、 雇 用 を 承 継 会 社 に 承 継 さ せ た (A事 例 、C事 例 、D事 例 )。
分 割 ・ 労 働 契 約 承 継 法 に 基 づ き 、 分 割 ・ 承 継 の 際 に 雇 用 の 承 継 を 行 う が 、 そ れ が い つ ま で 続 く の か は わ か ら な い 。 分 割 会 社 が 、7 条 措 置 の 際 に 、 承 継 後 の 雇 用 保 障 に つ い て も 言 及 し て い る と こ ろ も あ る(D事 例 、E事 例 )。D事 例 で は 、い わ ゆ る 終 身 雇 用 慣 行 が 強 く 、 明 示 的 に そ れ を 示 し て い る 。 例 え ば 、 「 万 一 、 そ の 新 会 社 ( 承 継 会 社 ) が だ め に な る と き は 、企 業 グ ル ー プ と し て 雇 用 は き ち ん と 守 る 」 と い う 発 言 が あ る 。E事 例 で は 、個 別 事 例 に か か わ る 「 製 造 工 場 の 分 社 化 に 関 す る 協 定 書 」 や 包 括 的 に 「 分 社 化 に 関 す る 労 働 協 約 」 の 中 に 「 将 来 に 亘 り 企 業 グ ル ー プ で の 雇 用 確 保 の 義 務 お よ び 責 任 を 有 し て い る こ と を 確 認 す る 」 と い う 内 容 が 盛 り 込 ま れ て い る 。D事 例 で は 、 再 編 の 際 に メ ジ ャ ー 出 資
167 、E 事 例 で は 企 業 グ ル ー プ 内 の 再 編 と い う 特 徴 が あ る 。ち な み に 、C事 例 で は 、再 編 の 際 に 、 「 再 編 時 の 労 働 契 約 の 円 滑 移 動 お よ び 再 編 後 の 雇 用 安 定 」 と い う 大 原 則 を 重 視 す る の で 、 再 編 後 の 雇 用 問 題 が 発 生 し な か っ た 。
再 編 後 、 雇 用 は 守 ら れ て い る の か 。 そ う な っ て い な い の は 、A 事 例 、B 事 例 、G 事 例 で あ る 。A事 例 で は 、再 編 先 も 含 め て グ ル ー プ レ ベ ル で 早 期 退 職 ・ 希 望 退 職 が 実 施 さ れ て 再 編 先 か ら の 退 職 者 が 出 た 。B 事 例 で は 、 労 働 条 件 の 引 き 下 げ 、 転 居 を 伴 う 転 勤 、 さ ら に は 工 場 閉 鎖 に 伴 う 退 職 者 が 発 生 し た 。G事 例 で は 分 割 後 に 1 回 、 合 併 後 に 6 回 、 合 わ せ て 7 回 に わ た る 早 期 退 職 ・ 希 望 退 職 が 行 わ れ て 多 く の 労 働 者 が 退 職 し た 。 分 割 、 譲 渡 、 合 併 と い う ど の 企 業 組 織 再 編 で も 雇 用 削 減 が み ら れ 、 再 編 形 態 の 間 に 相 異 点 は 見 出 さ れ な い 。
他 方 、 再 編 の 際 に 、 再 編 対 象 部 門 の 労 働 者 の み が 雇 用 削 減 の 対 象 外 と な り 、 雇 用 の 安 定 が 図 ら れ た と こ ろ も あ っ た (F 事 例 ) が 、 再 編 ( 分 割 ) 対 象 部 門 が 最 も 高 い 収 益 率 を 記 録 し て お り 、 売 却 益 が 会 社 の 有 利 子 負 債 へ の 返 済 に 用 い ら れ た 。 ま た 、E 事 例 で は 、 再 編 を 機 に 、 有 期 雇 用 か ら 無 期 雇 用 へ と 雇 用 の 安 定 が 図 ら れ た 。
い っ ぽ う 、 労 働 条 件 の 承 継 に つ い て み て み る こ と に す る 。 再 編 と と も に 労 働 条 件 が 下 が っ た の は 譲 渡 のB事 例 の み で あ る 。組 合 員 の 月 例 賃 金 が 平 均 16% 下 が っ た 。他 の 事 例 で は 、労 働 条 件 が そ の ま ま 承 継 さ れ た が 、労 使 の 協 議 で は ど の よ う な 言 及 が あ っ た の か 。 7 条 措 置 に お い て 、 企 業 は 、 再 編 先 ( 他 社 と の 統 合 の 際 に ) に お け る 従 業 員 の 一 体 感 を
図 る た め に も 労 働 条 件 の 統 一 が 望 ま し い と 考 え て い る が 、 統 一 が い つ な の か に つ い て は 明 言 を 避 け て い る 。 そ れ は 、 再 編 先 が 自 社 で は な い か ら で あ り 、 再 編 後 の 状 況 が 正 確 に は 見 通 せ な い か ら で あ ろ う 。 そ れ で は 、 実 際 、 再 編 か ら 労 働 条 件 の 統 一 ま で ど の く ら い
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か か っ た の か 。 確 認 さ れ た と こ ろ を み て み る と 、1年 3 か 月 (A事 例 )、2 年 (G事 例 の 分 割 ・ 合 併 と も )、2 年 2 か 月 (D 事 例 ) で あ っ た が 、 そ の 期 間 は 再 編 前 の 労 働 条 件 が そ の ま ま 承 継 さ れ た 期 間 で も あ る 。分 割 後 、他 社 と の 統 合 が な いF事 例 で は 、労 働 条 件 は 「 承 継 後 も 数 年 間 は 総 体 的 に 不 利 に な ら な い 」 と 会 社 は 言 及 し た 。
再 編 後 、 実 際 、 労 働 条 件 は ど の よ う に 変 わ っ た の か 。 基 本 的 に 大 き な 変 化 は な か っ た が 、 例 外 的 に 下 が っ た の は 、 既 述 し た 譲 渡 の B 事 例 と 分 割 ・ 合 併 の G 事 例 で あ っ た 。G 事 例 で は 、2003年 、 分 割 ・ 統 合 後 に 役 割 給 の 約 10% 減 額 、 ボ ー ナ ス の 引 き 下 げ ( 産 別 ミ ニ マ ム の 割 り 込 み ) と い う 労 働 条 件 の 引 き 下 げ が あ り 、2010 年 、 合 併 ・ 統 合 後 に は 基 本 給 の 7.5% 引 き 下 げ や 残 業 手 当 の 割 増 率 の 引 き 下 げ ・ 法 定 割 増 率 へ の 調 整 (2 回 は 期 限 限 定 、 そ の 後 恒 久 的 措 置 ) 等 が 行 わ れ た 。
な お 、譲 渡 は 、譲 受 会 社 の 労 働 条 件 が 譲 渡 企 業 よ り 低 い 場 合 、用 い ら れ る(B事 例 、C 事 例 )。そ う い う 意 味 で 、譲 渡 は 、分 割 や 合 併 よ り 労 働 者 に 厳 し い 選 択 と な る 可 能 性 が 高 い 。労 働 者 の 保 護 と い う 観 点 か ら 一 定 の 法 的 措 置 が 求 め ら れ る が 、2016年 9 月 1日 か ら 施 行 さ れ た 「 事 業 譲 渡 又 は 合 併 を 行 う に 当 た っ て 会 社 等 が 留 意 す べ き 事 項 に 関 す る 指 針 」 (【 付 録6】) は そ れ に 応 え る も の で あ っ た と 高 く 評 価 で き る 。
4 . 企 業 組 織 再 編 に お け る 労 働 組 合 の 役 割 ・ 存 在 意 義
企 業 組 織 再 編 に お け る 労 働 組 合 の 役 割 ・ 存 在 意 義 に つ い て 、会 社 側 は 高 く 評 価 し て い る 。 「 企 業 組 織 再 編 も 組 合 の 了 承 な し で は 会 社 は や れ な い 。正 式 な 提 案 を し た 時 点 で 組 合 は も う 会 社 と 一 心 同 体 に な っ て く れ る 関 係 (D 事 例 ) 」 で あ り 、 「 組 合 の 協 力 な し に は 再 編 は う ま く い か な か っ た だ ろ う (F事 例 ) 」 と 言 わ れ る ほ ど 、 企 業 組 織 再 編 に お け る 労 働 組 合 の 存 在 意 義 は 高 い 。 い く つ か の 側 面 か ら 組 合 の 役 割 ・ 存 在 意 義 に つ い て み る こ と に す る 。 ま ず 、 第 1 に 、 労 働 者 代 表 と 適 法 性 の 確 保 の 役 割 で あ る 。C 事 例 を 除 き 、 全 て の 事 例 で 労 働 組 合 は 過 半 数 組 合 と し て 全 従 業 員 を 代 表 し て お り 、 企 業 の 7 条 措 置 を と る 上 で 、 理 解 と 協 力 の 当 事 者 と な っ て い る 。 ま た 、 再 編 の 際 に 、 承 継 や 転 籍 等 の 拒 否 を 理 由 に 不 利 益 取 扱 い を し な い よ う に 会 社 に 求 め て 、5条 協 議 の 基 盤 を つ く っ た 。会 社 が 7条 措 置 と5 条 協 議 と い う 法 的 対 応 を 法 律 に そ っ て 行 う 上 で 、 労 働 組 合 の 存 在 は 大 き い の で あ る 。 更 に は 、E 事 例 で は 、 会 社 が 、 会 社 分 割 な の に 特 別 承 継 を と ろ う と し た が 、 組 合 が そ の 問 題 点 を 指 摘 し た 結 果 、 労 働 契 約 承 継 法 に 基 づ く 包 括 承 継 を 採 用 し た 。 そ れ に よ っ て 、 適 法 性 が 守 ら れ た 。
ま た 、 労 働 組 合 は 、7 条 措 置 の 中 で 、 法 律 に 基 づ く 手 続 き ( 例 え ば 、「5 条 協 議 」、「2 条 通 知 」)を す る よ う に 会 社 に 促 し て い る 。会 社 は 、そ う い う 要 望 を 受 け な く て も 、法 律 上 の 手 続 き を 進 め て い く と み ら れ る が 、 組 合 か ら の 要 望 を 受 け る と 、 よ り い っ そ う 適 法 性 の 確 保 に 注 意 し て い く と み ら れ る 。 特 に 、 組 合 は 、 再 編 へ の 協 力 を し な い 、 異 議 申 出 を す る 組 合 員 に 対 し て 不 利 益 取 扱 い を し な い よ う と 促 し て い る が 、 企 業 は そ う い う 組 合
の 指 摘 を 踏 ま え て 、 不 利 益 取 扱 い を し な か っ た 。
第 に 、 組 合 員 の 再 編 情 報 に 関 す る 理 解 度 の 向 上 で あ る 。 会 社 は 、 再 編 に 関 す る 情 報 を 労 働 者 ・ 組 合 に 説 明 す る が 、あ く ま で も 使 用 者 の 観 点 か ら の も の で あ り 、会 社 に 都 合 の よ い も の を 取 り 上 げ が ち で あ る 。 組 合 は 、 会 社 情 報 の 真 意 、 背 景 等 に つ い て 更 な る 会 社 の 説 明 を 求 め る 協 議 を す す め た 。 ま た 、 協 議 の 内 容 を 組 合 員 に 伝 え る と と も に 組 合 員 か ら の 質 問 等 ( 事 例 の 場 合 、 項 目 ) を 吸 い 上 げ て 会 社 に 伝 え て 関 連 情 報 を 引 き 出 す 。 以 上 を 通 じ て 、 組 合 員 は 、 会 社 の 再 編 情 報 を い っ そ う 的 確 に 理 解 す る こ と が で き る 。 分 割 ・ 労 働 契 約 承 継 に 関 し て 理 解 で き な い 組 合 員 に 個 別 に 「 会 社 に な り か わ っ て 」 説 明 を 行 い 、 再 編 へ の 理 解 度 を 高 め た の で あ る 。 こ う し た 活 動 に か か る 期 間 は 、 最 長 が か 月 で あ っ た ( 事 例 )。
労 働 組 合 が 、 企 業 組 織 再 編 に 対 す る 組 合 員 の 理 解 度 を 高 め て い く 上 で 、 事 前 に 再 編 の 内 容 に つ い て 的 確 な 知 識 や 情 報 を 持 つ こ と が 不 可 欠 で あ る 。 し か し 、 再 編 情 報 は 、 イ ン サ イ ダ ー 取 引 に 繫 が る 恐 れ が あ る と の こ と で 、 企 業 が 対 外 発 表 の 前 に 労 働 組 合 に 出 し た が ら な い 傾 向 も あ る 。 出 す と し て も 直 前 が 一 般 的 で あ る 。 こ う し た 問 題 を 解 決 す る つ の 方 法 は 、労 働 組 合 の 当 事 者 に 守 秘 義 務 を 課 す こ と で あ る( 事 例 )。そ う す る こ と に よ っ て 、 対 外 プ レ ス 発 表 や 正 式 な 労 使 協 議 の 前 に 、 労 働 組 合 は 再 編 の 関 連 情 報 を 事 前 に 入 手 し 、 対 応 の 準 備 や 組 合 員 へ の 的 確 な 説 明 等 を 行 う こ と が で き る の で あ る 。
労 働 組 合 は 、再 編 の 際 に 、「 会 社 が 求 め て い る も の と 組 合 員 が 考 え て い る も の を き ち ん と つ な げ る 」 役 割 を 果 た し て い る の で あ る ( 事 例 )。
第 に 、 再 編 の 円 滑 な 履 行 の 確 保 で あ る 。 労 使 関 係 上 の 問 題 に よ り 、 再 編 が で き な か っ た り 計 画 よ り 遅 れ た り す る こ と は な か っ た 。 労 働 組 合 は 、 会 社 と の 協 議 の 内 容 を 協 議 の 度 に 組 合 機 関 紙 に 掲 載 し 、 組 合 員 に 広 く 伝 え る こ と に よ り 、 組 合 員 が 企 業 の 組 織 再 編 へ の 理 解 を 高 め て い く の に 重 要 な 役 割 を 果 た し た と い っ て 過 言 で は な い 。 条 協 議 は 、「 業 務 命 令 上 の 協 議 」 に 過 ぎ ず 、 当 該 労 働 者 が 再 編 の 背 景 ・ 内 容 や 自 分 の 対 処 等 に つ い て 自 分 の 本 意 に よ る 意 思 表 示 が 難 し い 可 能 性 が あ る が 、 「 協 議 」 の 前 に 、 事 前 に 労 働 組 合 の 機 関 紙 を 通 じ て 関 連 情 報 を 入 手 し た り 、組 合 か ら 説 明 を 聞 い た り す る と 、対 応 の 幅 が 広 が る 。 異 議 申 出 が ほ と ん ど 起 こ ら な か っ た の は 、 条 措 置 が き ち っ と な さ れ た と い っ て 過 言 で は な く 、 条 措 置 の 担 い 手 で あ る 労 働 組 合 の 存 在 意 義 が 高 い 。
第 に 、 組 合 員 の 企 業 へ の 求 心 力 の 向 上 お よ び 納 得 性 の 向 上 で あ る 。 労 働 組 合 は 、 以 上 の よ う な 役 割 ・ 存 在 意 義 を 発 揮 し て い く と 、組 合 員 は 企 業 の 再 編 の 決 定 や そ の 手 続 き に 対 す る 理 解 を 高 め て 、 企 業 の 方 針 に 協 力 す る こ と に な り 、 企 業 が 再 編 や そ の 後 の 企 業 経 営 に つ い て 従 業 員 の 求 心 力 を 得 る こ と に な る 。
か か っ た の か 。 確 認 さ れ た と こ ろ を み て み る と 、 年 か 月 ( 事 例 )、 年 ( 事 例 の 分 割 ・ 合 併 と も )、 年 か 月 ( 事 例 ) で あ っ た が 、 そ の 期 間 は 再 編 前 の 労 働 条 件 が そ の ま ま 承 継 さ れ た 期 間 で も あ る 。分 割 後 、他 社 と の 統 合 が な い 事 例 で は 、労 働 条 件 は 「 承 継 後 も 数 年 間 は 総 体 的 に 不 利 に な ら な い 」 と 会 社 は 言 及 し た 。
再 編 後 、 実 際 、 労 働 条 件 は ど の よ う に 変 わ っ た の か 。 基 本 的 に 大 き な 変 化 は な か っ た が 、 例 外 的 に 下 が っ た の は 、 既 述 し た 譲 渡 の 事 例 と 分 割 ・ 合 併 の 事 例 で あ っ た 。 事 例 で は 、 年 、 分 割 ・ 統 合 後 に 役 割 給 の 約 % 減 額 、 ボ ー ナ ス の 引 き 下 げ ( 産 別 ミ ニ マ ム の 割 り 込 み ) と い う 労 働 条 件 の 引 き 下 げ が あ り 、 年 、 合 併 ・ 統 合 後 に は 基 本 給 の % 引 き 下 げ や 残 業 手 当 の 割 増 率 の 引 き 下 げ ・ 法 定 割 増 率 へ の 調 整 ( 回 は 期 限 限 定 、 そ の 後 恒 久 的 措 置 ) 等 が 行 わ れ た 。
な お 、譲 渡 は 、譲 受 会 社 の 労 働 条 件 が 譲 渡 企 業 よ り 低 い 場 合 、用 い ら れ る( 事 例 、 事 例 )。そ う い う 意 味 で 、譲 渡 は 、分 割 や 合 併 よ り 労 働 者 に 厳 し い 選 択 と な る 可 能 性 が 高 い 。労 働 者 の 保 護 と い う 観 点 か ら 一 定 の 法 的 措 置 が 求 め ら れ る が 、 年 月 日 か ら 施 行 さ れ た 「 事 業 譲 渡 又 は 合 併 を 行 う に 当 た っ て 会 社 等 が 留 意 す べ き 事 項 に 関 す る 指 針 」 (【 付 録 】) は そ れ に 応 え る も の で あ っ た と 高 く 評 価 で き る 。
4 . 企 業 組 織 再 編 に お け る 労 働 組 合 の 役 割 ・ 存 在 意 義
企 業 組 織 再 編 に お け る 労 働 組 合 の 役 割 ・ 存 在 意 義 に つ い て 、会 社 側 は 高 く 評 価 し て い る 。 「 企 業 組 織 再 編 も 組 合 の 了 承 な し で は 会 社 は や れ な い 。正 式 な 提 案 を し た 時 点 で 組 合 は も う 会 社 と 一 心 同 体 に な っ て く れ る 関 係 ( 事 例 ) 」 で あ り 、 「 組 合 の 協 力 な し に は 再 編 は う ま く い か な か っ た だ ろ う ( 事 例 ) 」 と 言 わ れ る ほ ど 、 企 業 組 織 再 編 に お け る 労 働 組 合 の 存 在 意 義 は 高 い 。 い く つ か の 側 面 か ら 組 合 の 役 割 ・ 存 在 意 義 に つ い て み る こ と に す る 。 ま ず 、 第 に 、 労 働 者 代 表 と 適 法 性 の 確 保 の 役 割 で あ る 。 事 例 を 除 き 、 全 て の 事 例 で 労 働 組 合 は 過 半 数 組 合 と し て 全 従 業 員 を 代 表 し て お り 、 企 業 の 条 措 置 を と る 上 で 、 理 解 と 協 力 の 当 事 者 と な っ て い る 。 ま た 、 再 編 の 際 に 、 承 継 や 転 籍 等 の 拒 否 を 理 由 に 不 利 益 取 扱 い を し な い よ う に 会 社 に 求 め て 、 条 協 議 の 基 盤 を つ く っ た 。会 社 が 条 措 置 と 条 協 議 と い う 法 的 対 応 を 法 律 に そ っ て 行 う 上 で 、 労 働 組 合 の 存 在 は 大 き い の で あ る 。 更 に は 、 事 例 で は 、 会 社 が 、 会 社 分 割 な の に 特 別 承 継 を と ろ う と し た が 、 組 合 が そ の 問 題 点 を 指 摘 し た 結 果 、 労 働 契 約 承 継 法 に 基 づ く 包 括 承 継 を 採 用 し た 。 そ れ に よ っ て 、 適 法 性 が 守 ら れ た 。
ま た 、 労 働 組 合 は 、 条 措 置 の 中 で 、 法 律 に 基 づ く 手 続 き ( 例 え ば 、「 条 協 議 」、「 条 通 知 」)を す る よ う に 会 社 に 促 し て い る 。会 社 は 、そ う い う 要 望 を 受 け な く て も 、法 律 上 の 手 続 き を 進 め て い く と み ら れ る が 、 組 合 か ら の 要 望 を 受 け る と 、 よ り い っ そ う 適 法 性 の 確 保 に 注 意 し て い く と み ら れ る 。 特 に 、 組 合 は 、 再 編 へ の 協 力 を し な い 、 異 議 申 出 を す る 組 合 員 に 対 し て 不 利 益 取 扱 い を し な い よ う と 促 し て い る が 、 企 業 は そ う い う 組 合
137 の 指 摘 を 踏 ま え て 、 不 利 益 取 扱 い を し な か っ た 。
第 2 に 、 組 合 員 の 再 編 情 報 に 関 す る 理 解 度 の 向 上 で あ る 。 会 社 は 、 再 編 に 関 す る 情 報 を 労 働 者 ・ 組 合 に 説 明 す る が 、あ く ま で も 使 用 者 の 観 点 か ら の も の で あ り 、会 社 に 都 合 の よ い も の を 取 り 上 げ が ち で あ る 。 組 合 は 、 会 社 情 報 の 真 意 、 背 景 等 に つ い て 更 な る 会 社 の 説 明 を 求 め る 協 議 を す す め た 。 ま た 、 協 議 の 内 容 を 組 合 員 に 伝 え る と と も に 組 合 員 か ら の 質 問 等 (G 事 例 の 場 合 、28 項 目 ) を 吸 い 上 げ て 会 社 に 伝 え て 関 連 情 報 を 引 き 出 す 。 以 上 を 通 じ て 、 組 合 員 は 、 会 社 の 再 編 情 報 を い っ そ う 的 確 に 理 解 す る こ と が で き る 。 分 割 ・ 労 働 契 約 承 継 に 関 し て 理 解 で き な い 組 合 員 に 個 別 に 「 会 社 に な り か わ っ て 」 説 明 を 行 い 、 再 編 へ の 理 解 度 を 高 め た の で あ る 。 こ う し た 活 動 に か か る 期 間 は 、 最 長 が 4 か 月 で あ っ た (D事 例 )。
労 働 組 合 が 、 企 業 組 織 再 編 に 対 す る 組 合 員 の 理 解 度 を 高 め て い く 上 で 、 事 前 に 再 編 の 内 容 に つ い て 的 確 な 知 識 や 情 報 を 持 つ こ と が 不 可 欠 で あ る 。 し か し 、 再 編 情 報 は 、 イ ン サ イ ダ ー 取 引 に 繫 が る 恐 れ が あ る と の こ と で 、 企 業 が 対 外 発 表 の 前 に 労 働 組 合 に 出 し た が ら な い 傾 向 も あ る 。 出 す と し て も 直 前 が 一 般 的 で あ る 。 こ う し た 問 題 を 解 決 す る 1 つ の 方 法 は 、労 働 組 合 の 当 事 者 に 守 秘 義 務 を 課 す こ と で あ る(D事 例 )。そ う す る こ と に よ っ て 、 対 外 プ レ ス 発 表 や 正 式 な 労 使 協 議 の 前 に 、 労 働 組 合 は 再 編 の 関 連 情 報 を 事 前 に 入 手 し 、 対 応 の 準 備 や 組 合 員 へ の 的 確 な 説 明 等 を 行 う こ と が で き る の で あ る 。
労 働 組 合 は 、再 編 の 際 に 、「 会 社 が 求 め て い る も の と 組 合 員 が 考 え て い る も の を き ち ん と つ な げ る 」 役 割 を 果 た し て い る の で あ る (A事 例 )。
第 3 に 、 再 編 の 円 滑 な 履 行 の 確 保 で あ る 。 労 使 関 係 上 の 問 題 に よ り 、 再 編 が で き な か っ た り 計 画 よ り 遅 れ た り す る こ と は な か っ た 。 労 働 組 合 は 、 会 社 と の 協 議 の 内 容 を 協 議 の 度 に 組 合 機 関 紙 に 掲 載 し 、 組 合 員 に 広 く 伝 え る こ と に よ り 、 組 合 員 が 企 業 の 組 織 再 編 へ の 理 解 を 高 め て い く の に 重 要 な 役 割 を 果 た し た と い っ て 過 言 で は な い 。5条 協 議 は 、「 業 務 命 令 上 の 協 議 」 に 過 ぎ ず 、 当 該 労 働 者 が 再 編 の 背 景 ・ 内 容 や 自 分 の 対 処 等 に つ い て 自 分 の 本 意 に よ る 意 思 表 示 が 難 し い 可 能 性 が あ る が 、 「 協 議 」 の 前 に 、 事 前 に 労 働 組 合 の 機 関 紙 を 通 じ て 関 連 情 報 を 入 手 し た り 、組 合 か ら 説 明 を 聞 い た り す る と 、対 応 の 幅 が 広 が る 。 異 議 申 出 が ほ と ん ど 起 こ ら な か っ た の は 、7 条 措 置 が き ち っ と な さ れ た と い っ て 過 言 で は な く 、7条 措 置 の 担 い 手 で あ る 労 働 組 合 の 存 在 意 義 が 高 い 。
第 4 に 、 組 合 員 の 企 業 へ の 求 心 力 の 向 上 お よ び 納 得 性 の 向 上 で あ る 。 労 働 組 合 は 、 以 上 の よ う な 役 割 ・ 存 在 意 義 を 発 揮 し て い く と 、組 合 員 は 企 業 の 再 編 の 決 定 や そ の 手 続 き に 対 す る 理 解 を 高 め て 、 企 業 の 方 針 に 協 力 す る こ と に な り 、 企 業 が 再 編 や そ の 後 の 企 業 経 営 に つ い て 従 業 員 の 求 心 力 を 得 る こ と に な る 。
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わ か ら な い 。 労 働 組 合 は 、 個 別 同 意 の 際 で も 、 包 括 承 継 と 同 様 な 条 件 と な る よ う に 、 会 社 に 求 め て い る 。 そ の 結 果 、 個 別 同 意 に よ る 転 職 者 も 会 社 の 方 針 に 納 得 す る 。 あ る 企 業 は 、分 割 ・ 労 働 契 約 承 継 の 対 象 者 で あ る が 、個 人 的 な 事 情 や 要 望 を 踏 ま え て 対 象 者 か ら 外 し た こ と も あ る が 、 そ れ も 労 働 組 合 が あ っ て 自 由 に 自 分 の 意 見 を 会 社 に 示 し た 結 果 で あ る 。こ う し た こ と を 通 じ て 、当 該 の 労 働 者 は 、企 業 へ の 求 心 力 ・ 納 得 性 を 高 め て い く と み ら れ る (F事 例 )。
第 5 に 、 健 全 経 営 へ の 催 促 で あ る 。 企 業 組 織 再 編 を 行 う 企 業 は 、 多 様 な 企 業 経 営 環 境 の 下 で 、 そ の 再 編 を 決 断 し て い る 。 前 向 き な 再 編 も あ る が 、 ど ち ら か と 言 え ば 、 企 業 経 営 全 体 が う ま く い か な い か 、 あ る い は 再 編 対 象 部 門 に 何 ら か の 問 題 を 抱 え て い る 場 合 も あ る 。7条 措 置 の 中 で 、 労 働 組 合 は 、 再 編 の 背 景 ・ 必 要 性 や 再 編 後 の 企 業 経 営 の あ り 方 等 に つ い て 厳 し い 意 見 を い う 場 合 が あ る 。 企 業 が そ う い う 意 見 を ど の よ う に 受 け 止 め て い る か は 計 り 知 れ な い と こ ろ が あ る が 、 少 な く と も い っ そ う 健 全 経 営 を 目 指 し て い く と い う 方 針 や 考 え 方 を も つ こ と に 繫 が る と み ら れ る 。
5 . 労 働 組 合 の 組 織 化
企 業 組 織 再 編 の 渦 中 、労 働 組 合 が 組 織 化 に 成 功 し た と こ ろ も あ る(A事 例 、E事 例 、G 事 例 )。A 事 例 で は 、 1 社 分 割 ・ 2 社 の 合 併 に よ っ て 新 し い 統 合 会 社 が 設 立 さ れ た が 、 合 併 前 に 1 つ の 会 社 に は 労 働 組 合 が 組 織 さ れ て お ら ず 、 社 員 会 が あ る だ け で あ っ た 。 既 存 の 労 働 組 合 は 、 企 業 組 織 再 編 の 協 議 お よ び 労 働 条 件 の 統 合 の 際 に 、 同 社 員 会 の 代 表 が 協 議 に 参 加 で き る よ う に し 、 労 働 組 合 の 役 割 を 知 っ て 頂 く よ う に し た 。 代 表 は 、 労 働 組 合 の 存 在 意 義 を 認 識 し 組 織 化 に 協 調 し た 。 社 員 会 の 協 力 の も と 、 既 存 の 労 働 組 合 が 各 職 場 に 行 き 組 合 に 関 す る 説 明 会 を 開 催 し た 結 果 、 未 組 織 の 労 働 者 ほ ぼ 全 員 に 当 た る 約 700人 が 組 合 に 加 入 し た 。
E事 例 で は 、分 社 化 や 分 社 化 し た 企 業 へ の 転 籍 等 に 合 わ せ て 、「 分 社 化 す れ ば 労 働 組 合
を つ く る し 、 ま た 、 転 籍 が あ れ ば 、 こ れ を チ ャ ン ス に 、 じ ゃ 、 組 合 つ く れ 」 と い う 形 で 積 極 的 に 労 働 組 合 を つ く っ た 。ま た 、非 正 規 労 働 者 へ の 組 織 化 に 積 極 的 で あ っ た 。そ れ は 、 主 に 会 社 の 法 令 遵 守 ・ そ の チ ェ ッ ク 機 能 を 果 た す た め で あ っ た 。 そ の 結 果 、2002 年 企 業 グ ル ー プ レ ベ ル で 組 合 員 数 が 約 3500人 か ら2012年 に は 約7000人 ま で 増 加 し た 。
G 事 例 で は 、 労 働 組 合 の な い 職 場 に 転 籍 す る 元 組 合 員 が 労 働 組 合 を 結 成 す る よ う に 、
転 籍 に 向 け た 労 使 協 議 の 中 、 労 働 組 合 は 、 転 籍 先 企 業 へ の 組 合 結 成 に 対 す る 協 力 と 理 解 を 求 め た 。 転 籍 対 象 者 の 中 で 、 組 合 加 入 対 象 者 の 95.8% が 組 合 結 成 に 賛 成 し 、 転 籍 と と も に 新 た な 労 働 組 合 が ス タ ー ト し た 。
企 業 組 織 再 編 は 、 当 該 の 労 働 組 合 に と っ て 厳 し い 対 応 を 迫 ら れ る 可 能 性 が あ っ て 、 ど ち ら か と い え ば 、受 身 的 に 対 応 し が ち で あ る が 、再 編 を 労 働 組 合 の 組 織 化 ・ 組 織 拡 大 の チ ャ ン ス と し て 能 動 的 に 対 応 す る 事 例 も あ っ た 。 再 編 が 避 け ら れ な い の で あ れ ば 、 そ れ を
生 か し て 組 織 化 を 図 っ て 、 集 団 的 労 使 関 係 の 輪 を 広 げ る チ ャ ン ス と 捉 え る 発 想 の 転 換 が 求 め ら れ る 。
6 . 企 業 組 織 再 編 の 望 ま し い あ り 方 に 向 け て ( 1 ) 法 的 ・ 制 度 的 側 面
分 割 ・ 労 働 契 約 承 継 法 に 対 す る 労 使 の 評 価 は 高 い 。 上 記 の と お り 、 分 割 ・ 売 却 益 を 通 じ て 、 巨 額 の 有 利 子 負 債 を 返 済 し 、 本 業 に 経 営 資 源 を 集 中 で き る よ う に な っ た 事 例 も あ っ た ( 事 例 )。 し か し 、 こ う し た 高 い 評 価 も 、 後 述 す る 信 頼 に 基 づ く 良 好 な 労 使 関 係 の 上 で 、可 能 で あ る 。今 後 も 高 い 評 価 が 得 ら れ る た め に は 、法 的 ・ 制 度 的 に 改 善 す べ き と こ ろ も 少 な く な い 。と り わ け 、良 好 な 労 使 関 係 を 有 し て い な い 職 場 ・ 企 業 に 当 て は ま る 。ま ず 、 第 に 、 条 措 置 の 実 効 性 を 確 保 す る た め に は 、 過 半 数 組 合 の な い 職 場 ・ 企 業 に 協 力 と 理 解 を 示 す 労 働 者 代 表 が 存 在 す る よ う に す べ き で あ る 。現 在 、当 該 の 職 場 ・ 企 業 に 過 半 数 組 合 か 、 そ れ が な け れ ば 従 業 員 の 過 半 数 を 代 表 す る 者 ( 従 業 員 の 過 半 数 代 表 者 ) が 協 力 と 理 解 を 示 す 主 体 者 と な る 。 し か し 、 過 半 数 組 合 の 担 い 手 で あ る 労 働 組 合 の 組 織 率 が ほ ぼ 一 貫 し て 低 下 し 年 現 在 % に 過 ぎ ず 、 ま た 、 従 業 員 の 過 半 数 代 表 者 が そ の 選 出 規 定 の あ る 労 働 基 準 法 の 施 行 規 則 第 条 を 満 た す と こ ろ は 極 め て 少 な い 。 ま ず は 適 切 に 過 半 数 代 表 者 が 選 出 さ れ る 方 策 が 求 め ら れ る と と も に 、 従 業 員 代 表 制 の 整 備 ( そ の つ と し て い わ ゆ る 「 従 業 員 代 表 制 の 法 制 化 」 ) の 必 要 性 を 検 討 す る こ と が 求 め ら れ る 。 事 例 で は 、 過 半 数 組 合 が 存 在 し な い の で 、 従 業 員 の 過 半 数 代 表 者 で あ る 社 員 代 表 が 理 解 と 協 力 を 示 す 役 割 を 果 た し て い る が 、 前 記 の と お り 、 そ の 役 割 は 、 会 社 か ら の 説 明 を 聞 く に と ど ま り 、 社 員 に 会 社 の 方 針 を 伝 え た り 、 ま た 、 社 員 の 声 を 吸 い 上 げ て 会 社 に 伝 え た り す る 機 能 は 果 た し て い な い 。 従 業 員 代 表 制 の 法 制 化 に は 、 条 措 置 等 の 規 定 を 果 た す と い う そ の 代 表 の 役 割 を 定 め る 必 要 が あ る 。
第 に 、 条 措 置 の 「 理 解 と 協 力 」 を 「 事 実 上 の 同 意 」 に 格 上 げ す る こ と も 検 討 に 値 す る ( 事 例 、 組 合 側 の 発 言 )。 理 解 と 協 力 の 内 容 は 、 事 例 ご と に 異 な る が 、 多 く の 事 例 で 労 働 者 側 が 事 実 上 の 同 意 を 示 し た 。 こ う し た 実 態 に 合 わ せ て 「 事 実 上 の 同 意 」 に す る こ と も
労 働 基 準 法 施 行 規 則 条 や 通 達 ( 平 成 ・ ・ 基 発 第 号 ) で 次 の よ う に 示 さ れ て い る だ け で あ る 。す な わ ち 、過 半 数 代 表 者 と な る 者 の 要 件 と し て 、「 労 基 法 第 条 第 号 に 規 定 す る 監 督 又 は 管 理 の 地 位 に あ る 者 で は な い こ と 」、「 法 に 規 定 す る 協 定 等 を す る 者 を 選 出 す る こ と を 明 ら か に し て 実 施 さ れ る 投 票 、 挙 手 等 の 方 法 に よ る 手 続 に よ り 選 出 さ れ た 者 で あ る こ と 」 が 定 め ら れ て お り 、 同 通 達 で は 、「 挙 手 等 」 の 「 等 」 に は 、「 労 働 者 の 話 し 合 い 、 持 ち 回 り 決 議 等 、 労 働 者 の 過 半 数 が 当 該 者 の 選 任 を 指 示 し て い る こ と が 明 確 に な る 民 主 的 手 続 が 該 当 す る 」と 記 さ れ て い る 。こ う し た 規 定 に 照 ら し 合 わ せ て み る と 、 民 主 的 手 続 に 該 当 す る 選 出 方 法 は 、「 選 挙 」、「 信 任 」、「 全 従 業 員 話 し 合 い 」、「 職 場 ご と の 代 表 者 に よ る 話 し 合 い 」 と 考 え ら れ 、 そ れ を 全 部 合 わ せ て も % に 過 ぎ な い 。 企 業 規 模 別 に み る と 、 こ の 民 主 的 手 続 を 過 半 数 以 上 満 た し て い る 企 業 は 、 人 以 上 で あ る( 労 働 政 策 研 究 ・ 研 修 機 構( )『 中 小 企 業 に お け る 労 使 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン と 労 働 条 件 決 定 』 労 働 政 策 研 究 報 告 書 )。 中 小 企 業 の 社 長 へ の ヒ ア リ ン グ 調 査 に よ る と 、 上 記 の 規 定 を 厳 格 に 満 た し て い る と こ ろ は ほ ぼ 皆 無 に 等 し い ( 呉 学 殊 、