2017/1/11 入門物理学 B
入門物理学 B
第 14 回 (1/11) 光と粒子の二重性・電子軌道
7. 光の粒子性 (前回の続き)
8. ボーアの原子模型
9. 電子の波動性
10. 電子軌道
11. 放射線 (時間が余れば)
第 15 回 (1/18) 学期末試験
法政大学 市ヶ谷リベラルアーツセンター兼任講師 福川 賢治
(https://sites.google.com/site/kfukukawa00/hosei2017)
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7-4. コンプトン効果
(1922 年、1927 年ノーベル物理学賞)
光が波でもあり粒子であることの証明
X線等の高エネルギーの光を電子に当てた時、X 線の波長が伸びる現象
X 線の波長λ→λ になると、ν= c/λ→ ν =c/λ なので、 光の振動数(エネルギー)は小さくなる。
逃げたエネルギーは電子が持ち去ると考えると、このズレを説明できる。
光子(波長λ)
光子(波長λ ) 電子 θ λ >λ
縦軸: X 線の強さ 横軸: X線の波長
画像は九州大学実験核物理研究室インターネットセミナー第3部7頁「コンプトン効果」より
2
その他の光の粒子性に関する証拠
単一光子によるヤングの干渉実験(浜松ホトニクス、1982年) https://www.youtube.com/watch?v=ImknFucHS_c
1個ずつの粒子はデタラメに飛んでいくが、
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8. ボーアの原子模型
(1913 年, 1922年ノーベル物理学賞)
各原子は特有の波長 (=色) の電磁波を放出・吸収する。
(第7回の講義)
1885年 ヨハン・ヤコブ・バルマー (スイス、1825 - 1898)
水素のスペクトルの波長の間に以下の関係が成り立つ頃を発見
(n2=3, 4, 5,…) リュードベリ定数 RH=1.097… 107m-1
1890年: リュードベリが上の式を一般化
(n2 = n1+1, n1+2, n1+3, …)
バルマーの場合は n1 = 2の場合
n1 = 1 (ライマン系列、1906 年),
n1 = 3 (パッシェン系列、1906 年)
n1 = 4 (ブラケット系列、1922 年),
n1=5 (プント系列、1924 年)… 1
λ = RH
!
1 22 −
1 n2
2
"
1
λ = RH
! 1 n2 1 − 1 n2 2 "
水素原子のバルマー系列
画像はWikipedia 「バルマー系列」より引用
3
Niels Bohr「量子力学の父」
(デンマーク、1885-1962) コペンハーゲン大学
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ボーアの原子模型
(続き)
ラザフォードの原子模型の問題。
問題1. 原子の大きさ (約 10-10 m) を理論的に決定説明できない →
プランク定数 h が何か理論的に関係している。
問題2. 電磁気学によると、円運動する電子はエネルギーを失う。
その結果、電子は原子核にすぐに引き寄せられ、原子はつぶれる
。
ボーアはバルマーの公式とプランクの発見から問題 1の解決を着想「光のエネルギーに最小単位があれば、電子にあっても良いのでは?」 以下の 2 条件を置いて、問題 1 を解決
1. (量子条件) 電子軌道半径 r, 電子の速度 v, 電子の質量を me とすると、
(主量子数 n=1, 2 ,3 …) と仮定する。r,v はこの式と (原子核と電子の間に働く電気力)=(電子にかかる遠心力)
という力学的関係から決定。
半径やエネルギーは nを使って表され、勝手な値は取れない。→ 電子軌道の概念 n が大きいほど、半径やエネルギーは大きくなる。
n = 1の水素原子の半径 r (ボーア半径) … 0.53 10-10 m mevr = n h
2π
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ボーアの原子模型
(続き)
2.
(振動数条件)
電子が量子数 n (エネルギー E
n) の軌道から
量子数 n (エネルギー E
n) の軌道に移る時、
E
n> E
n(n>n )であれば光を放出し、E
n< E
n(n<n )であれば光を吸収する。
その光の振動数νは
hν=¦E
n-E
n¦
で与えられる。
水素原子から放出される光のスペクトルを完全に再現
(左図) 水素原子の軌道イメージと放出・吸収 される光の波長
画像はWikipedia 「水素スペクトル系列」より引 用、Photo by Szdori, (19th March 2009), CC表示2.5ライセンス
5
水素原子中の電子のエネルギーは 電子が原子核から離れた時の
エネルギーを 0 として
En = 13.6/n2 [eV] で与えられる。
eV (電子ボルト)は 1個の電子を 1V の電圧で加速した際の
電子のエネルギーであり、
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9. 電子の波動性
(ド・ブロイ1924年、1929年ノーベル物理学賞)ラザフォード模型の問題2「電子は何故、原子核とくっつかないのか?」
アインシュタインのエネルギーの式 E2 = m2c4 + p2c2 を光子について考える。 (E: エネルギー、m: 質量、p: 運動量 [=mv]、c: 光速度)
光子の質量は m = 0 なので、E2 = p2c2 E = pc
プランクの公式 E = hν= hc/λ= (h/λ)c と組み合わせると、 p = h/λ λ=h/p (ド・ブロイ波長)と書ける。
「この式は物質でも実は成り立つのでは?」
電子の運動量 pe = mev を用いて、ボーアの量子条件 は per = n [h/(2π)] 2πr = n(h/pe) = nλ
「電子波」があるとすると、
「軌道の円周」=「波長の整数倍」になる (一周した時波の位相が う)。
量子条件は電子が波として安定するために必要な条件を与える。
電子も波としての性質と粒子としての性質を持つ。 電子も二重スリット実験により干渉模様が現れる (外村彰 (日立製作所等、1942-2012) 、1989年)。
mevr = n h
2π
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(上) 電子の物質波のイメージ (n=7 の場合)
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(右) 透過型電子顕微鏡。
電子線が光線の役割をし、磁場がレンズの役割をする。 物質波の波長は非常に短いので、「光の波」ではなく、 「電子の波」を用いて極めて細かいところ(原子レベル) まで見分けられる。
画像はともに Wikipedia より引用
(左) Louis de Broglie (仏、1892 - 1987)
紹介した業績は彼の博士論文
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10. 電子軌道 (基礎方程式の完成)
シュレディンガーの波動方程式
(1926年, 1933年ノーベル物理学賞)
粒子と波の性質を併せ持つ
i : 虚数単位 (= -1), h:プランク定数
: 偏微分の記号 (この場合はψを t で偏微分) ψ(x, y, z, t): 電子の
波動関数
(位置と時間により決まる関数、複素数) : エネルギーに対応する微分演算子
ボルンによる波動関数の確率解釈
(1926年、1954年ノーベル物理学賞)
波動関数の絶対値の 2 乗 ¦ψ¦
2は、
その場所に粒子が発見される確率を
表す。
粒子の存在位置の予言は、
確率的にしかできない
Erwin Shr̈odinger
(オーストリア, 1887-1961)、 量子力学、分子生物学の祖 画像はWikipedia より引用
i
h
2
π
∂ψ
∂t
= ˆ
Hψ
ˆ
H
(※)ψは psi (プサイ)と呼ぶギリシャ文字
Max Born (ドイツ,1882-1970) 画像は Wikipedia より引用
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ハイゼンベルグ方程式
(シュレディンガーの波動方程式と等価 1925年, 1932 年ノーベル物理学賞)
Werner Heisenberg (独、1901-1976)
画像はWikipedia より引用
:観測が可能な物理量 A に対応する行列
:エネルギー H に対応する行列
(行列とは、数字を縦横で並べカッコで囲ったもの 大学初級の数学 [理系]の内容)
不確定性原理
(1927年)
量子力学では位置 x と運動量 p
(=速度 質量)
を
同時に正確に知ることができない。
ハイゼンベルグが自身の方程式から提唱
但し、σx, σp はそれぞれ位置と 運動量の不確定さ (標準偏差) を表す
σ
xσ
p≥
h
4
π
9
i
h
2
π
d
A
ˆ
(
t
)
dt
= ˆ
A
H
ˆ
−
H
ˆ
A
ˆ
ˆ
A
不確定性原理は粒子の運動量 p = h/λが決まっている状態だと、 粒子の位置がどこにあるか特定できず、
粒子の位置が決まっている状態だと、
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電子軌道
シュレディンガーの波動方程式を解くと、電子の波動関数は 3 つの整数(n,l,m)
でラベル付けされる。ここでは、そのうち2つ (n,l) を紹介する
(n は主量子数、l は方位量子数と呼ばれる)。
表: 電子の軌道 (カッコ内は電子の収容数)
細かい例外はあるものの、元素の電子配置は
原子番号順に 1s → 2s → 2p → 3s → 3p →
4s → 3d → 4p → 5s → 4d → 5p → 6s →
4f → 5d → 6p → … という順番で入っていく。
n \ l 0(s軌道) 1 (p軌道) 2(d) 3(f) 1(K殻) 1s (2)
2(L殻) 2s (2) 2p (6)
3(M) 3s (2) 3p (6) 3d (10)
4(N) 4s (2) 4p (6) 4d (10) 4f (14)
s 軌道 (l=0)
p 軌道 (l=1)
d 軌道 (l=2)
画像はWikipedia「s軌道」、「p軌道」、「d軌道」より引用, Photo by Azu (August 2008), CC 表示 3.0 ライセンス
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電子軌道配列を考えた立体周期表の例 Elementouch (京都大学前野教授の考案) http://www.ss.scphys.kyoto-u.ac.jp/elementouch/
動画 https://www.youtube.com/watch?v=9eaU2kq3urU
いろいろな周期表のデータベース (英語)
http://www.meta-synthesis.com/webbook/35_pt/pt_database.php
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11. 放射線と原子核の崩壊
11-1. X 線の発見
(1895年11月)
(1901 年第1回ノーベル物理学賞)
暗室内でクルックス管の側面を黒い紙で
覆って陰極線を発生させると、テーブルの
上に離して置いた蛍光板が光った。
レントゲンは新たな放射線がクルックス管
から出ていたと考え、
X線
と名付けた。
X線は以下の性質を持つ。
① 1000 ページ以上の分厚い本やガラスを通過する ② 鉛には遮 される
③ 陰極線と違い、磁場をかけても曲がらない ④ 蛍光物質を発光させる
左図 Wilhelm Conrad Röntgen (独 1845 - 1923)
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11-2. 放射能の発見
(1896年、アンリ・ベクレルによる
キュリー夫妻と共に1903年ノーベル物理学賞) レントゲンの発見に刺激を受け、
蛍光物質から X 線が出るかどうか研究 太陽光に当てたウラン塩が蛍光して
その写真乾板が感光し、黒化していることを発見
曇りの日に実験を中断し、ウラン塩と写真乾板を保存
それでも写真乾板は感光し、黒化していた (自発放射能の発見) 。
放射性物質が 1 秒あたりに崩壊する原子の個数の単位を ベクレル [Bq] と呼ぶ。
キュリー夫妻による放射性元素
ラジウム・ポロニウムの発見 (1898年、1911年 ノーベル化学賞) 非常にたくさんのウラン鉱石から精錬
ラジウム 1 g が1秒間に崩壊する原子の個数を元に定められた放射能の単位を キュリー [Ci] と呼ぶ。 1 Ci = 3.7 1010 Bq である。
Henri Becquerel (仏、1852-1904)
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11-3. α線、β線、γ線の発見
ラザフォードが、ウラン等の天然の放射性物質 から出ている放射線の物質による吸収の測定から 電離能力 (原子から電子を剥ぎ取る能力)・
透過能力の異なる 2 種類の放射線(α線・β線)を発見 (1899 年)
更に透過力が大きい放射線があることも分かり
(1900年 Paul Villard (仏)), ラザフォードがγ線と
名付けた (1903 年)。また、α線の正体 (ヘリウム 42He の原子核) は ラザフォードによって、β線の正体 (電子) はベクレルによって放射線を 電場及び磁場で曲げて、e/m = (電気量)/(質量) を測定することにより 明らかになった。
それぞれの放射線の性質
α線: 紙一枚で防ぐことができる。空気中では数 cm 飛べる。電離作用が強い。 β線: 厚さ数 mm のアルミニウム板で防ぐことができる。空気中では数 m 飛ぶ。 γ線: 正体は X 線よりさらに高エネルギーな光子
透過力が高く、20 cm以上の鉛の板が必要。
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Pierre Curie (仏 1859-1906) & Marie Curie (1867 - 1934)
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11-4. 陽子と中性子の発見 (原子核物理の始まり)
陽子の発見
(1919年)
ラザフォードは、α線を軽い原子核に当てると原子核またはα粒子の破壊が 起こるのではないかと考え観察を行った。
窒素とぶつかったα線から水素の原子核 11H が放出され、
ギリシャ語で「最初」を表す proton (陽子) と名付けた。
147N + 42α → 178O + 11H (p): 人類初の原子核反応
中性子の発見
(1932年、1935 年ノーベル物理学賞)
1920 年ラザフォードが
その存在を予想
James Chadwick
(英、1891-1974)
により実証
94
Be +
42α →
126C+
10n
画像は Wikipedia より、Photo by Bdushaw (11 November 2017), CC-BY-SA4.0 ライセンス
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11-5 原子核の崩壊
原子核の崩壊 … エネルギーが低い状態になろうとし、
ある原子核から他の原子核へ移り変わること。 多くの超重原子核では自然に崩壊して放射性崩壊を起こす
崩壊過程は主に 3 種類ある
α崩壊 原子核がα線 (ヘリウム 42He の原子核) を出して崩壊
β崩壊 原子核がβ線 (電子) あるいは陽電子を出して崩壊
原子核の中性子の1つが陽子に変わる場合 n → p + e- + (反ニュートリノ),
陽子の1つが中性子に変わる場合 p → n + e+ + ν
陽子が電子を捕獲する場合 p + e- → n + ν が存在する。
γ崩壊 中性子や陽子はそのままでγ線を放出してエネルギーを下げる。 (※) 陽電子は電子と同じ大きさで、ただし + 符号の電気を持ち、
その他は電子と性質が等しい、いわゆる電子の反粒子である。
ウラン原子核の連鎖反応
ウランの大部分は 238U であるが、0.7% 235U が含まれている。
10n + 23592U → 14156 Ba+9236Kr + 310n 等の核分裂反応が起きる。
放出された中性子が他の235U 原子核にあたり、次々と核分裂反応が起きる。
(連鎖反応)
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