TREND
まかには、燃料極(アノード)、電解質、空気極(カソード) から構成されています。
図 1-1 に燃料電池の主たる技術変遷を示します。 燃料電池の原理発見は 1801 年にデービー卿(英国)によ るといわれています。その後、1839 年にグローブ卿(英国) が白金電極を用い、水素と酸素を供給して発電が出来るこ とを証明しました。現在の燃料電池の原型を発明したとい えるでしょう。
燃料電池の特許として、1952 年ベーコン(英国)がアル カリ形燃料電池(AFC:Alkaline Fuel Cell)の原型となる 特許を取得しています。米国 UTC 社がこのベーコン特許 を買い上げて宇宙用に改良した PC3A はアポロ計画に採用 され、1969 年アポロ 11 号に搭載されました。一方、アポ ロ計画に先立ったジェミニ計画では 1965 年ジェミニ 5 号 にゼネラル・エレクトリック(GE)社製固体高分子形燃料 電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)が搭載され ました。
米国では、軍事技術の民間転用により米経済を活性化さ せる目的で、1967 〜 1976 年でターゲット計画が開始され、 液体含浸形のりん酸形燃料電池(PAFC:Phosphoric Acid FuelCell)が開発の主体になりました。
日本国内では、1991 年 4 月「りん酸型燃料電池(PAFC) 発電技術研究組合」が設立され、資源エネルギー庁の資金 援 助 で 加 圧 型 5,000kW、 常 圧 型 1,000kW の 実 証 試 験 が 1995 〜 1996 年に行われました。その後、溶融炭酸塩形燃 料電池(MCFC:Molten Carbonate Fuel Cell)の開発も、 日米政府の強力な支援を受けて実施されましたが、コスト、 信頼性・耐久性の問題からメーカが撤退しています。
抄 録
燃料電池は、クリーンエネルギー源として、自動車、 家庭用電源等への利用が今後益々期待されています。 しかしながら、10年以上の開発努力にもかかわらず、 燃料電池の技術は完全な商業化には到達しておらず、 市場も本格的には立ち上がっておりません。このよう な背景のもと、「燃料電池」を調査テーマとして平成 23 年度特許出願技術動向調査を実施しました。本稿 では、この調査結果から、「燃料電池」における技術 開発、研究開発状況についてご紹介します。
特許審査第三部 化学応用
藤代 亮
燃料電池
─平成 23 年度
特許出願技術動向調査─
1.
はじめに
燃料電池は水素と空気中の酸素を電気化学的に反応させ ることにより、化学エネルギーを電気エネルギーへ直接的 に変換する発電装置です。火力発電装置に比べ発電効率が 高く、発電過程で NOx や SOx を排出しないクリーンなエ ネルギー源として期待されています。
今回のテクノトレンドでは、平成 23 年度特許出願技術 動向調査「燃料電池」の調査結果から、燃料電池における 技術開発、研究開発状況についてご紹介します。
特許出願技術動向調査とは、特許情報から技術全体を俯 瞰し、研究開発動向・市場動向等を踏まえた技術開発の進 展状況・方向性を分析するものです。特許情報は、企業、 大学等における研究開発の成果に係る技術情報や権利情報 です。これを多面的に分析することにより、今後の技術開 発、研究開発状況を明らかにするものです。
今回は、平成 23 年度に調査を行った「燃料電池」につい て、特許動向、研究開発動向、市場動向の調査結果を示し、 最後に、今後わが国が目指すべき技術開発、研究開発の方 向性について示します。
2.
燃料電池とは
ます。2005 〜 2008 年 NEDO / NEF の「家庭用 PEFC の 大規模設置事業」、2007 〜 2010 年の「家庭用 SOFC の実証 試験」を経て、2009 年「エネファーム」補助事業が開始され、 一般家庭用 PEFC の販売が開始されました。また、2011 年からは家庭用 SOFC の販売も開始されています。一方、 燃料電池自動車は 2002 〜 2010 年まで実証試験と水素イン フラ整備が行われ、2015 年が燃料電池自動車普及元年と 位置づけられています。
図 1-2 に具体的システムとして一般家庭用に販売が開始 されている家庭用 PEFC コジェネシステムを示します。 セル構成部材は、電解質の両側の燃料極・空気極触媒層、 その後、上述の液体電解質の問題を回避するため、固体
電解質を用いた固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)、固体高分子形燃料電池(PEFC)及び 直接メタノール形燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)の開発が積極的に行われるようになりました。 たとえば、現在注目されている固体電解質は PEFC・ DMFC 用としてデュポン社が発明したフッ素系のパーフ ルオロアルキルスルホン酸系ポリマー(Nafion:デュポン 社の登録商標)、炭化水素系、フッ素・炭化水素系、無機 系等が使用されており、SOFC 用電解質には安定化ジルコ ニア系、セリア系、ランタンガレート系等が使用されてい
図1-1 燃料電池の主たる技術変遷
図1-2 家庭用PEFCコジェネシステム
石油 機
1800倴 --- 1900倴 --- 1950倴 --- 1960倴 --- 1970倴 --- 1980倴 --- 1990倴 --- 2000倴 --- 2010倴 --- 2020倴 2040倴
PEFC
Polymer Ele roly e Fuel Cell
DMFC
Dire Me hanol Fuel Cell
SOFC
Soli O i e Fuel Cell
MCFC
Mol en Carbona e Fuel Cell PAFC
Phos hori A i Fuel Cell
1981倴 ムーンライト計
スタート 2000倴 ミレーニアム計スタート 燃料電池普及促進
2002倴 トヨタ、 ンダ FC の 定 開 2002 2010倴 FC の
2015倴 FC 普及 元倴 2025倴 FC 200 台 2003倴 NEF
定置 PEFCの 開 2005 2008 倴 NEDO NEF 家庭用PEFCの大 置事業 2007 2010 倴 家庭用SOFCの
2009倴 エネフ ーム 補助 事業 家庭 俚倥 2011倴
SOFC家庭用コジェネ補助
日
本
の
状
況
1987倴 電 事業用 1MW PAFC
1993倴 電中研 100kW MCFC発電 成
1801倴 Davy ( 国) 燃料電池の原理発
1959倴 a on( 国) AFC発電 置の 作 5kW 1900倴 Nerns(俯国)
SOFCの発電原理発 電 YSZ Y ria S abili e Zir onia 1910倴 Tai elbaum
体燃料電池原理の発
1937倴 auer(俯国) SOFC 作
燃
料
電
池
原
理
・
試
作
1839倴 Grove ( 国) 現 の燃料電池の原型 モデル に成
1921倴 auer(俯国) MCFC 作
1962倴 DuPon Na on発 1961倴 Jus i アルコールDMFC原理の 発
1996倴 米国
FC 用化カリフォルニア州 パートナーシップ 成 1987倴 バラード
(カナダ)高性偂PEFC開発
海
外
の
状
況
1994倴 ダイムラ バラ ード PEFC FC 共同開発
1972倴 米国Targe 計 東京 、大 1961倴 米国
用 PEFC開発
俯国 SFC DMFCを 用化 計 台数2 台 1950倴 GE
PEFC開発
1967倴 Targe 計 PAFC開発開 1965倴
ジェミニ5 にPEFC侴 (GE ) 1969倴
アポロ11 にAFC侴 ( TC )
1996倴 ダイムラ FC Ne ar1 発表
1980倴 GE のPEFC技術を
TC に移
種 を にJATIS作成 1991倴 Pal Al o,研 C Oaklan
Na on 用のMEA構成の発
NEDO (俯)新エネルギー・産業技術総合開発機構 NEF 新エネルギー
FC 燃料電池自動車
エネフ ーム 家庭用燃料電池コージェネレーションシステムの
2007倴
と移行するまでの時間差のために、2008年以降の件数は全 データを反映してない可能性がある点に注意が必要です。
(1)全体動向
(a)出願人国籍別の出願動向
燃料電池に関する特許出願の出願人国籍別の出願動向を 分析しました。図 2-1 に、日米欧中韓への出願における出 願人国籍別の出願件数推移及び出願件数比率を示します。 図2-1から、出願件数比率では、日本国籍が58.2%と最多で、 次 い で 韓 国 籍、 米 国 籍、 欧 州 国 籍 が そ れ ぞ れ 12.1 %、 11.7%、11.6%と拮抗し、中国籍は 3.6%と低率であるこ とがわかります。個別の出願人国籍別推移を見ると、中国 籍がほぼ横ばいであるのを除いて、日米欧韓は概ね全体と 同じ減少傾向にあります。
(b)日米欧中韓における出願収支
図 2-2 に出願先国別─出願人国籍別出願件数収支(日米 欧中韓への出願)を示します。図 2-2 において、円グラフ の大きさは各国への出願件数に、また各国間に引かれた矢 印の太さは、各国籍出願人が他の国へ出願した件数に比例 しています。
日本国籍の出願人は、日本への出願を多く行っているだ けでなく、米国・欧州・中国・韓国への出願も多いことが 更にその外側に設置されている燃料極・空気極拡散層、更
に外側に設置されているセパレータ、冷却板で構成されて います。スタックは複数のセル構成部材で構成され、更に、 モジュールは複数のスタックで構成されています。システ ムは改質器・変成器・CO 除去器等の燃料系、ブロア・加 湿器で構成される空気処理系、冷却系、給湯系及び発電し た直流を交流に変換するインバータ等の電力変換装置等で 構成されています。
上記のような燃料電池の構成、種類、課題及び実用化の ための技術を踏まえて作成した燃料電池の技術俯瞰図を図 1-3 に示します。
今回ご紹介する平成 23 年度特許出願技術動向調査「燃 料電池」では、図 1-3 の技術俯瞰図を基に調査対象を設定 しました。
3.
特許動向
特許動向では、対象となる特許文献として、出願日(優 先権主張日)を基準として 2005 年〜 2009 年の特許出願を 対象としています。また、出願先としては、日本、米国、 欧州、中国、韓国への出願を対象としています。なお、出 願件数推移のデータを見る際には、特許文献のデータベー スへの収録までの時間差や PCT 出願が各国の国内段階へ
図1-3 燃料電池の技術俯瞰図 自動車用 産業用業 用 住 用
モバイル用
材料技術
(電 材料、電 材料、セパレータ材料) (接合、構 、 材製 技術等)
セル製 ・構 技術
(補助機 制 、 侇制 技術等)制 技術
俆連 電力 倥
購
入
補
助
金
の 併合性向上
信頼性向上
製 コスト 低減 耐久性向上
低 性
燃料電池システム
(補助機 ・ 侇制 技術、製 ・構 技術等)
電
電
・電
セパレータ
発
電
ユ
ニ
ッ
ト
セル 構成 材
システム
モジュール
スタック
セル
制 技術
製 ・構 技術
材料技術
技
術
区
分
応
用
産
業
酸 形 燃料電池 (MCFC) 固体高分子形
燃料電池 (PEFC) 直接
メタノール 形燃料電池 (DMFC)
固体酸化物形 燃料電池 (SOFC)
その他 燃料電池 酸形
燃料電池 (PAFC)
種
類
(2)技術区分動向
燃料電池に関する特許出願について、技術区分ごとに出 願動向を分析しました。技術区分ごとの分析を行うための 解析軸は、図 1-3 に示す燃料電池の俯瞰図を基に設定しま した。
解析軸の項目としては、燃料電池の種類に関して「種類 わかります。対照的に、中国籍の出願人は中国国内への出
願は多いですが、他国・地域への出願数は少ないことがわ かります。韓国籍の出願人からの米国、欧州、中国への出 願は比較的多く、特に米国を重視していることが推測され ます。また、米国、欧州の出願人は、お互いの国・地域へ の出願が多いものの、日本への出願は少ないことがわかり ます。
図2-1 出願人国籍別出願件数推移と出願件数比率
図2-2 日米欧中韓における出願収支
10,606 10,760 9,565
6,688
4,400
0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000
2005 2006 2007 2008 2009
出
願
件
数
出願倴( 先 主 倴)
日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 先 主
2005 2009倴
出願人国籍
日本国籍 24,448件
58.2
米国籍 4,909件 11.7 欧州国籍
4,862件 11.6
中国籍 1,512件 3.6
韓国籍 5,069件 12.1
その他 1,219件 2.9
合計 42,019件
合計
日本国籍 17,687件
91.0 米国籍
540件 2.8
欧州国籍 499件
2.6
中国籍 11件 0.1
韓国籍 528件 2.7
その他 180件
0.9 日本 の出願19,445件
日本国籍 2,782件
37.5 米国籍 2,231件
30.1 欧州国籍
818件 11.0 中国籍
34件 0.5
韓国 972件 13.1
その他 585件 7.9 米国 の出願
7,422件
日本国籍 1,748件
27.6 米国籍 1,158件 18.3 欧州国籍
2,835件 44.7 中国籍
16件 0.3
韓国籍 373件
5.9 その他 210件 3.3
欧州 の出願 6,340件
日本国籍 1,506件
32.2
米国籍 705件 15.1 欧州国籍
422件 9.0 中国籍 1,443件
30.8 韓国籍 421件 9.0
その他 185件 4.0
中国 の出願 4,682件
日本国籍 725件 17.6 米国籍 275件 6.7
欧州国籍 288件 7.0 中国籍 8件 0.2
韓国籍 2,775件 67.2
その他 59件 1.4
韓国 の出願 4,130件
499件 1,748件
1,158件
818件 540件 2,782件
34件
705件
8件
421件
373件 288件 11件
1,506件 528件 725件
275件 972件
図2-3に燃料電池種類別における出願件数比率と推移(日 米欧中韓への出願)を示します。固体高分子形燃料電池 (PEFC)53.2%、固体酸化物形燃料電池(SOFC)12.3%、
直接メタノール形燃料電池(DMFC)11.4%と、この 3 タ イプで全体の 78%の出願比率を示すことがわかります。
イプでも全体の出願件数は減少傾向にあるものの、日本国 籍出願人からの出願が半数を超えることがわかります。 軸」を設け、技術に関連して、「電極触媒軸、電解質軸、
発電構成エレメント軸、周辺機器軸」等を設定しました。 さらに、燃料電池を用いる用途として「応用産業軸」を、 技術が解決すべき課題として「課題軸」を設けています。 ここでは、燃料電池の種類に関する技術区分動向を示し ます。
次 に、 燃 料 電 池 種 類 別 出 願 件 数 の 多 い、PEFC、 DMFC、SOFC の出願人国籍別出願件数比率および推移 を図 2-4、図 2-5、図 2-6 にそれぞれ示します。いずれのタ
図2-4 固体高分子形燃料電池(PEFC)の出願人国籍別出願件数比率及び推移 図2-3 燃料電池種類別の出願件数比率及び推移
図2-5 直接メタノール形燃料電池(DMFC)の出願人国籍別出願件数比率及び推移
7,702 7,403
6,905
4,670
3,224
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000 8,000 9,000
2005 2006 2007 2008 2009
PEFC DMFC AFC SOFC
MCFC PAFC レドックス 俪定せ
バイオ その他 合計
先 主 2005 2009倴
種類別 PEFC
20,533件 53.2 DMFC
4,389件 11.4 AFC 215件 0.6
SOFC 4,767件
12.3 MCFC
293件 0.8 PAFC 108件 0.3 レドックス
139件 0.4 俪定せ 6,885件
17.8 バイオ 449件 1.2
その他 835件 2.2
合計 38,613件
率 91.9
出
願
件
数
出願倴( 先 主 倴)
5,290
5,002 4,759
3,350
2,132
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000
日本国籍 13,148件
64.0 米国籍
2,204件 10.7 欧州国籍
1,820件 8.9
中国籍 712件 3.5 韓国籍 2,230件
10.9 その他 419件 2.0
合計 20,533件
2005 2006 2007 2008 2009
出
願
件
数
出願倴( 先 主 倴)
先 主 2005 2009倴
日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 出願人国籍
合計
日本国籍 2,794件
63.7 米国籍
202件 4.6 欧州国籍
285件 6.5
中国籍 166件 3.8
韓国籍 756件 17.2
その他 186件 4.2
合計
4,389件 1,316 1,303
919
493 358
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
先 主 2005 2009倴
出
願
件
数
2005 2006 2007 2008 2009 出願倴( 先 主 倴)
日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 出願人国籍
図2-6 固体酸化物形燃料電池(SOFC)の出願人国籍別出願件数比率及び推移
1,063 1,057 1,149
786 712
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400
日本国籍 2,460件
51.6 米国籍 867件 18.2 欧州国籍
877件 18.4
中国籍 161件 3.4
韓国籍 304件 6.4
その他 98件 2.1
合計
4,767件 先 主
2005 2009倴
出
願
件
数
2005 2006 2007 2008 2009 出願倴( 先 主 倴)
日本国籍 米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 出願人国籍
合計
以上の全体動向及び技術動向分析より、特許出願件数か らは日本の技術的なポテンシャルの高さがうかがえます。
(3)出願人別動向
燃料電池に関する特許出願について出願人毎の出願件数 をカウントして、出願人の動向を分析しました。表 1 に出 願人別出願件数上位ランキングを示します。
出願人の国籍を見ると、上位 30 位中、日本国籍が 21 社 (者)と 7 割を占めています。他は韓国籍が 5 社、米国籍と 欧州国籍が 2 社、中国籍はゼロ社です。業種を見ると、上 位 5 位のうち自動車会社が 4 社を占めているのが目立ちま す。首位であるトヨタ自動車の出願件数 5,871 件は、2 位 サムスン SDI の約 3 倍、全体に占める割合で 14.0%と突出 した数値となっています。
次に、自動車メーカ、機械・重工メーカを中心に出願 件数ランキングの上位から選定した主要出願人 9 社の出願 先国別出願件数推移及び比率を図 2-7 〜図 2-15 に示しま す。
自国への出願比率に注目すると、日本国籍の 3 社は、ト ヨタ自動車 68.0%、本田技研工業 72.3%、日産自動車 86.2%、欧州国籍も、ダイムラー 75.9%と、いずれも 60%以上を占めていることがわかります。対して韓国籍 2 社は、サムスン SDI43.7%、現代自動車 55.8%、米国籍 2 社はゼネラルモーターズ 35.8%、ゼネラル・エレクトリッ ク 41.3%と、いずれも自国への出願は 60%未満となって おり、各国企業間における出願戦略の違いがみられます。 出願件数の推移を見ると、全体的に減少傾向にある中で、 現代自動車が 2008 年まで増加し、本田技研工業とゼネラ ルモーターズの 2 社がほぼ横ばいとなっています。他には サムスン SDI が 2006 年にほぼ横ばいの後、2007 年に前年 比約 3 分の 1 に激減しているのが目立ちます。本格的な市 場の立ち上がり時期が見えない中で、各社の出願戦略も変 化してきているのかもしれません。
4.
研究開発動向
本調査では、特許動向だけでなく、燃料電池に関する研 究開発動向についても分析を行いました。研究開発動向の 指標として燃料電池に関する発表論文を採用し、研究者所 属機関国籍別の論文件数の推移と件数比率を調査しまし
表1 出願人別出願件数上位ランキング
順
位 出願人名称 出願件数 順位 出願人名称 出願件数
1 トヨタ自動車 5,871 16 住友化学 332
2 サムスンSDI(韓国) 1,971 17 大日本印刷 326
3 本田技研工業 1,931 18 新日本石油 295
4 日産自動車 1,576 19 LG化学(韓国) 274
5 ゼネラルモーターズ(米国) 1,401 20 ソニー 267
6 東芝 1,357 21 エクォス・リサーチ 256
7 パナソニック 1,235 22 TOTO 252
8 現代自動車(韓国) 699 23 三洋電機 250
9 アイシン精機 454 24 サムスン電機(韓国) 231
10 カシオ計算機 427 25 富士電機 215
11 ダイムラー(ドイツ) 411 26 サムスン電子(韓国) 202
12 京セラ 389 27 豊田中央研究所 198
13 日立製作所 371 28 凸版印刷 183
14 キヤノン 351 29 関西電力 182
図2-8 出願先国別出願件数推移及び比率(サムスンSDI)
図2-10 出願先国別出願件数推移及び比率(日産自動車) 図2-9 出願先国別出願件数推移及び比率(本田技研工業)
合計
1,971件 772 750
265
88 96
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900
日本 288件 14.6
米国 394件 20.0
欧州 187件
9.5 中国 241件 12.2
韓国 861件 43.7
先 主 2005 2009倴
日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 出願先国
出
願
件
数
2005 2006 2007 2008 2009 出願倴( 先 主 倴)
合計
1,576件 678
379
227 229
63
0 100 200 300 400 500 600 700 800
日本 1,358件
86.2 米国
91件 5.8
欧州 95件 6.0
中国 17件
1.1 韓国 15件1.0
先 主 2005 2009倴
日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 出願先国
出
願
件
数
2005 2006 2007 2008 2009 出願倴( 先 主 倴) 合計
1,931件
435
320
430 421
325
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
日本 1,396件
72.3 米国
329件 17.0 欧州 139件
7.2 中国 53件 2.7
韓国 14件 0.7
先 主 2005 2009倴
日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 出願先国
出
願
件
数
2005 2006 2007 2008 2009 出願倴( 先 主 倴)
図2-7 出願先国別出願件数推移及び比率(トヨタ自動車)
合計 5,871件
1,210
1,579 1,695
843 544
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800
日本 3,995件
68.0 米国
600件 10.2
欧州 569件
9.7 中国 541件
9.2 韓国 166件
2.8
先 主 2005 2009倴
日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 出願先国
出
願
件
数
図2-12 出願先国別出願件数推移及び比率(現代自動車)
図2-14 出願先国別出願件数推移及び比率(ゼネラル・エレクトリック) 図2-13 出願先国別出願件数推移及び比率(ダイムラー) 図2-11 出願先国別出願件数推移及び比率(ゼネラルモーターズ)
合計 1,401件
45 139
202 212
101
0 50 100 150 200 250
日本 72件 10.3
米国 138件 19.7
欧州 38件 5.4 中国 61件 8.7
韓国 390件 55.8
先 主 2005 2009倴
日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 出願先国
出
願
件
数
2005 2006 2007 2008 2009 出願倴( 先 主 倴)
合計 172件
92
34 14
32
0 0
10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
日本 41件 23.8
米国 71件 41.3 欧州
29件 16.9 中国 20件 11.6
韓国 11件 6.4
先 主 2005 2009倴
日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 出願先国
出
願
件
数
2005 2006 2007 2008 2009 出願倴( 先 主 倴) 合計
411件
28 83
141
96
63
0 20 40 60 80 100 120 140 160
日本 25件 6.1
米国 65件 15.8
欧州 312件 75.9 中国
9件 2.2
韓国 0件 0.0
先 主 2005 2009倴
日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 出願先国
出
願
件
数
2005 2006 2007 2008 2009 出願倴( 先 主 倴) 合計
1,401件 321 318
232 361
169
0 50 100 150 200 250 300 350 400
日本 109件
7.8
米国 502件 35.8 欧州
458件 32.7 中国 326件 23.3
韓国 6件 0.4
先 主 2005 2009倴
日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 出願先国
出
願
件
数
を示します。表の機関名欄には、機関名と国籍を記載して います。中国科学院(Chinese Academy of Sciences)から の発表件数が群を抜いていることがわかります。
また、表 3 に研究者別発表件数ランキングを示します。 調査対象とした研究者数は延べ 29,279 人です。中国籍以 外の研究機関においても中国系の名前が多くみられること から、中国は国内の研究機関だけではなく世界的に著名な 大学・研究機関に研究者を送りこんでいることがわかりま す。今後、燃料電池分野の基礎技術を中国が開発する可能 性も否めません。
5.
市場動向
燃料電池市場は、まだ本格的には立ち上がっていない状 態です。燃料電池技術は完全な商業化には到達していませ んが、燃料電池業界が目標にしているのは、少量生産での 初期市場への参入です。市場全体では、最も柔軟性のある 燃料電池技術のひとつである PEFC(固体高分子形燃料電 池)が主流となっています。より大きな定置式発電用途と しては、溶融炭酸塩形燃料電池(Molten Carbonate Fuel Cells:MCFC)が現在でも主流ですが、りん酸形燃料電 池(PAFC)製品もすでに商品化されており、また、固体 酸化物形燃料電池(SOFC)も家庭用として販売が開始さ た。特許動向との時期的な整合性を考慮して、2005 年〜
2010 年発表の論文を対象としています。
(1)全体動向
図 3 に研究者所属機関国籍別論文件数推移と件数比率を 示します。まず、件数比率をみると、米国の研究機関から の発表が 1711 件(25%)と最も多く、次いで欧州が 1603 件(23%)、さらに中国 1038 件(15%)、日本 587 件(8%)、 韓国 516 件(7%)と続いています。
図 2-1 で示す特許出願の出願件数推移と出願件数比率の 結果と比較すると、日本の割合がかなり少なくなっており、 米国、欧州、中国の割合が増えていることがわかります。 さらに、研究者所属機関国籍別論文件数推移では、全体 的に 2006 年〜 2009 年あたりまで横ばいでしたが、2010 年には再び増加しています。特許とは異なり、全期間を通 して米・欧州国籍の研究機関からの発表件数より日本国籍 の研究機関からの発表件数が下回っています。近年では中 国からの論文件数の増加が見られ、米国、欧州に追いつく 勢いです。
(2)研究者所属機関別動向
表2に研究者所属機関別発表件数ランキング(上位40位)
図3 研究者所属機関国籍別論文件数推移と件数比率
615
1,215 1,111 1,303
1,214 1,490
0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 日本国籍
587件 8.4
米国籍 1,711件
24.6 欧州国籍
1,603件 23.1 中国籍
1,038件 14.9 韓国籍 516件 7.4
その他 1,493件
21.5 日本国籍
米国籍 欧州国籍 中国籍 韓国籍 その他 所属機関国籍
合計 合計
6,948件
2005 2006 2007 2008 2009 2010
論
文
発
表
件
数
出願倴( 先 主 倴)
発 倴 2005 2010倴
図2-15 出願先国別出願件数推移及び比率(シーメンス)
合計
88件 25
18 25
16
4
0 5 10 15 20 25 30 日本
1件 1.1
米国 8件 9.1
欧州 67件 76.1 中国
1件
1.1 11件韓国
12.5
先 主 2005 2009倴
日本 米国 欧州 中国 韓国 合計 出願先国
出
願
件
数
表2 所属機関別発表件数ランキング 表3 研究者別発表件数ランキング
図4 自動車用燃料電池普及に向けたシナリオ
所属機関 国籍 論文数
1 中国科学院 中国 493
2 CNRS(フランス国立科学研究センター)フランス 219
3 ペンシルベニア州立大学 米国 135
4 カナダ国立研究機構 カナダ 134
5 カリフォルニア大学 米国 128
6 産業技術総合研究所 日本 125
7 ハルビン工業大学 中国 118
8 南洋(ナンヤン)理工大学 シンガポール 110
8 コネチカット大学 米国 110
10 清華大学 中国 105
11 韓国科学技術院(KIST) 韓国 102
11 中国科学技術大学 中国 102
13 ロンドン大学 イギリス 96
14 吉林大学 中国 95
15 CSIC(教育科学省の公的研究機関) スペイン 92
16 ソウル大学校 韓国 90
17 九州大学 日本 85
18 パシフィック・ノースウェスト国立研究所 米国 82
19 ジョージア工科大学 米国 80
20 サウスカロライナ大学 米国 76
21 イタリア学術会議 (CNR) イタリア 74
22 イリノイ大学 米国 73
22 スタンフォード大学 米国 73
22 元智大学 台湾 73
25 国立台湾大学 台湾 72
26 ゼネラルモーターズ 米国 69
26 韓国科学技術院(KAIST) 韓国 69
28 ユーリッヒ研究所 ドイツ 65
28 上海交通大学 中国 65
28 スウェーデン王立工科大学 (KTH) スウェーデン 65
31 マックス-プランク研究所 ドイツ 64
31 ブリティッシュコロンビア大学 カナダ 64
33 香港科技大学 香港 63
34 ワーテルロー大学 カナダ 62
34 テキサス大学 米国 62
36 ポール-シェラー研究所 スイス 61
37 延世大学校 韓国 57
37 武漢理工大学 中国 57
37 高麗大学校 韓国 57
37 インド工科大学 インド 57
研究者氏名 所属機関 国籍 件数
1 Wang, C.-Y. ペンシルバニア州立大学 米国 61
2 Jiang, S.P. 南洋(ナンヤン)理工大学 シンガポール 57
3 Zhang, H. 中国科学院(大連) 中国 45
4 Liu, X. 中国科学技術大学 中国 39
5 Lim, T.-H. 韓国科学技術院(KIST) 韓国 38
6 Zhang, J. カナダ国立研究機構 カナダ 36
7 Huang, X. ハルビン工業大学 中国 31
8 Li, X. ワーテルロー大学 カナダ 30
8 Wang, H. カナダ国立研究機構 カナダ 30
10 Chan, S.H. 南洋(ナンヤン)理工大学 シンガポール 25
11 Kulikovsky, A.A. モスクワ大学 ロシア 22
12 Kim, H.-J. 韓国科学技術院(KIST) 韓国 21
13 Liu, H. マイアミ大学 米国 20
14 Chen, R. 香港科技大学 香港 19
15 Wang, S. 中国科学院(大連) 中国 18
15 Chen, F. 国立台湾大学 台湾 18
15 Chen, K. ハルビン工業大学 中国 18
18 Zhang, Y. ハルビン工業大学 中国 16
19 Zhang, Y.(No.18と同名)中国科学院(大連) 中国 15
19 Kim, H. 延世大学校 韓国 15
21 Wang, S.(No.15と同名)中国科学院(上海) 中国 13
21 Obara, S. 苫小牧工業高等専門学校 日本 13
23 Zhang, L. 南洋(ナンヤン)理工大学 シンガポール 11
24 Liu, Z. (IMRE)材料研究・工学研究所 シンガポール 10
24 Liu, M. ハルビン工業大学 中国 10
日本国籍
米国籍
欧州国籍
中国籍
韓国籍
部品単品の品質・信頼性・寿命に関するデータやノウハウ を蓄積し、日本市場のみならず、海外市場での競争優位性 を確保できる技術を確立すべきだと考えられます。 一方、燃料電池自動車については、安全性・信頼性・耐 久性、コスト低減などの共通基盤技術の開発を学界・産業 界の持つ技術情報を持ち寄り、課題、解決指針、および技 術検証方法の共有化を行い、かつ知的財産権の取得を目指 したプロジェクト研究の推進が望まれます。
れました。
自動車用燃料電池の普及に関しては、インフラの整備が 課題とされており、2010年3月に、日本の主要な自動車メー カ、エネルギー関連企業等が参加する燃料電池推進協議会 (FCCJ)によって「2015 年に商用の水素ステーションの設 置を開始し、燃料電池自動車の一般ユーザへの普及開始を 目指す」という普及シナリオが発表されています。図 4 に 自動車用燃料電池普及に向けたシナリオを示します。 2025 年時点での普及目標は、燃料電池自動車が 200 万台 程度、水素ステーションを 1,000 ヵ所程度となっています。
6.
まとめ
これまで示してきた特許動向の結果から、燃料電池に関 わる技術開発において、わが国は海外を上回る特許出願件 数を有していますが、研究開発の場では、米国、欧州及び 中国にリードされている状況にあることがわかりました。 また、中国系と思われる研究者による活発な研究活動が目 立ち、今後本格的な燃料電池自動車普及に向け、我が国は 予断を許さない状況にあるといえるでしょう。
今後より一層国際競争力を高めるため、わが国が取り組 むべき課題、目指すべき研究開発、技術開発の方向性とし て、以下の 3 つの提言にまとめました。
【提言1】 燃料電池事業の拡大に向けたコスト低減と信頼 性・耐久性を両立させるブレークスルー技術開発 の促進
【提言2】 機会拡大に向けた市場育成のため補助金制度から 自立する定置型燃料電池の技術開発の促進
【提言3】 機会拡大に向けた市場の早期育成のため、産業界 の持つ技術の共有化による燃料電池自動車向け燃 料電池開発の促進
10 年以上の開発努力にもかかわらず市場が中々拡大し ないのが実情ですが、この理由は、「市場で要求される、 低価格で機能・性能を充たす材料が未だに見出されていな い」こと、及び、「発電効率が高く耐久性に優れた製品の 信頼性確立まで技術が追い付いていない」ことにあると考 えられます。今後は燃料電池事業の早期拡大に向け、コス ト低減と信頼性・耐久性技術を両立させるブレークスルー 技術開発を促進すべきと考えられます。
また、我が国では、燃料電池導入補助金制度により、世 界に先駆けて定置型燃料電池の一般販売がスタートしてい ます。市場でこの定置型燃料電池の販売実績を積み、定置 型燃料電池のシステム・運転ノウハウ、アセンブリ部品、
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藤代 亮
(ふじしろ りょう)2006年4月 特許庁入庁(特許審査第三部有機化学) 2010年4月 審査官昇任