宮崎県鳥獣被害対策緊急プロジェクト推進計画
(第1回改訂)
平成25年6月
は
じ
め
に
近年、野生鳥獣による農林作物等への被害が全国的に広がりを見せるなど、大きな社
会問題となっています。本県における平成23年度の農林作物等の被害額は約4億4千
万円で、前年度に対し約60%の増加となり、農林家の生産意欲の減退や作付の断念な
どの影響を含め、中山間地域を中心に深刻な問題となっています。
県 では、平成22年度から鳥獣被害対策の専門家の招聘により、「新たな視点」に立
った鳥獣被害対策の推進体制を構築するとともに、地域住民や市町村、関係機関・団体
等と連携し、被害現場において総合的な鳥獣被害対策が推進されるよう「鳥獣被害対策
緊急プロジェクト」に取り組んでおります。
このプロジェクトは、地域が一体となった「面的」な鳥獣被害対策が必要不可欠であ
り、地域住民をはじめ、多くの関係者の理解が必要であることから、鳥獣被害対策の基
本的な考え方や本プロジェクトの推進手順等を「鳥獣被害対策緊急プロジェクト推進計
画」として取りまとめております。
本 計画は、鳥獣被害対策に取り組む基本指針や重点推進事項(3本の柱)、推進体制
についてお示しするとともに、各事項ごとに取り組むべき課題を具体的に、実施する順
序を踏まえて整理したものです。
しかしながら、野生鳥獣による被害は、その発生要因や態様が様々であり、全てに有
効な方策はなく、それぞれの地域の状況に応じ柔軟に対策を進める必要があるため、今
回、過去3年間のプロジェクトの推進状況等を踏まえ、本計画の見直しを行いました。
今後とも、プロジェクト推進に向け、多くの関係者の方々一人ひとりが、それぞれの
立場で主体的な取組みを進めていただくよう、皆様の御理解、御協力をお願いいたしま
す。
平成25年6月
宮崎県鳥獣被害対策特命チーム長
目
次
第1 基本方針 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
第2 重点推進事項(3本の柱)
1 地域が一体となって取り組む「被害防止対策」 ・・・・・・・・・・2
(1)集落対策の推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
(2)総合的な被害防止対策の実施・・・・ ・・・・・・・・・・・・ 5
(3)モデル集落の設置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
(4)地域リーダーの育成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
(5)被害防止対策マニュアルの活用・・・・・・・・・・・・・・・ 9
(6)広域的な被害防止対策の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・9
2 被害状況に応じた適切な「捕獲対策」
(1)野生鳥獣の生息状況の的確な把握 ・・・・・・・・・・・・・10
(2)適切な捕獲の実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
(3)捕獲体制の整備及び対策指導捕獲員の配置 ・・・・・・・・・14
3 中・長期的視点に立った「生息環境対策」
(1)多様な森づくりの推進 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
(2)林道等の「のり面」や「路肩」の適正管理 ・・・・・・・・・17
第3 推進体制の整備
1 鳥獣被害対策特命チーム
(1)本庁の推進体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
(2)各地域における推進体制 ・・・・・・・・・・・・・・・・・19
2 鳥獣被害対策支援センター
(1)組織 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
(2)鳥獣センタ-の業務内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・20
3 チーム員の知識向上、技術指導者の育成
(1)チーム員の知識向上 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
(2)技術指導者の育成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
第1 基本方針
近年、イノシシ、シカ、サルなどの野生鳥獣による農林作物等への被害が拡大して おり、中山間地域を中心に深刻な問題となっている。
これまで、捕獲や防護柵の設置等の対策を実施してきたものの、農林作物等の被害 額は依然として増加傾向にある。
また、被害金額にとどまらず、農林家の生産意欲の減退や作付の断念など数字では 計れない影響を地域に及ぼすなど、早急な対策が求められている。
このため、県では、野生鳥獣の生息状況や被害の状況の的確な把握に努めるととも に、新たな視点に立った鳥獣被害対策の基本的な考え方の浸透・定着を進め、鳥獣を 近づけない集落環境づくりや徹底的な追い払い、地域リーダーの育成、適切な捕獲の 実施、多様な森づくりの推進、林道等の 「のり面」の適正管理など、「鳥獣を寄せ付 けない『地域力』の向上」を目指し、以下の3本の柱からなる総合的な鳥獣被害対策 を推進する。
1 地域が一体となって取り組む「被害防止対策」
2 被害状況に応じた適切な「捕獲対策」
3 中・長期的視点に立った「生息環境対策」
これらの対策を実施するため、平成22年度に本庁及び各地域において、鳥獣被害 対策緊急プロジェクトの推進母体となる「鳥獣被害対策特命チーム」を、平成24年 度には、よりきめ細やかで効果的な対策 を技術面で支援するため、「鳥獣被害対策支 援センター(以下、「鳥獣センター」という。)」を設置した。
今後も引き続き、地域条件に応じた「被害防止対策」、「捕獲対策」、「生息環境対策」 を的確に進めるため、特命チームを構成する職員等の知識の向上と併せ、被害現場で の相談役ともなる専門的な知識・技術を有する技術指導者(以下「技術指導者」とい う。)を育成するなど、鳥獣被害対策を効率的かつ積極的に推進する。
なお、これらの取組に当たっては、「市町村被害防止計画」に記載された鳥獣被害 対策実施隊や、国の「鳥獣被害防止緊急捕獲等対策」に伴い設立された宮崎県鳥獣被 害防止緊急対策協議会と十分な連携を行い、その活動に対し積極的な支援を行ってい くこととする。
新たな視点に立った鳥獣被害対策
こ の 集 落に 来 る と“ 必ず 満 腹に な れる ”、人 や 車は “そ ん なに 怖 くな い ”と 動物 が 学習 する
ような無自覚の「餌付け」をやめ、徹底的な追い払いを行うとともに、不足する冬期のエサを
第2 重点推進事項(3本の柱)
1 地域が一体となって取り組む「被害防止対策」
被害防止対策では、加害獣種や被害の発生時期・頻度、対象作物、被害地域の範囲 などの状況を的確に把握し、被害発生の原因やプロセスを解明し、適切な被害防止技 術を選択することが重要である。
防護柵の設置などのハード対策が各地で行われているところであるが、数戸の個別 農家が「点的な被害対策」を行っても、近隣農地に被害が分散するなど地域全体とし ての被害軽減効果は低いことから、地域ぐるみによる「面的な被害対策」に取り組む ことが必要である。
そこで、平成22年度から鳥獣被害対策緊急プロジェクトを実施し、平成24年度 からは鳥獣センターを中心に、地域特命チーム等の被害防止対策に関する取組に対し て、技術面での支援を積極的に行ったことにより、以下のような成果がみられたとこ ろである。
特に、モデル 集落を中心に一部の集落では、「新たな視点」に基づいた被害防止対 策が取られたことで、鳥獣被害の減少がみられ、集落住民の営農意欲が高まったこと により、耕作放棄地の未然防止につながった等の成果が報告されている。
○「被害防止対策」の主な成果(平成22年度から平成24年度まで)
① 地域特命チームや鳥獣センターの指導の下、集落点検や各種研修会の開催によ る啓発活動の実施、アンケート調査の実施、暗視カメラによる侵入防止経路の特 定、集団追い払いの実施、被害防止マップの作成等の取組が県内各地で実施され た。
② 「鳥獣被害対策マイスター」が224名、「鳥獣被害対策地域リーダー」が、 1,021名育成され、総合的な鳥獣被害防止対策を実施するための人材育成が 進んだ。
③ 現地での研修会や集落点検を実施しながら、59カ所で、防護柵の点検と加害 獣の生態に即した改善策の指導が行われ、これらの取組により、一部の地区では、 住民自らが防護柵を改善する動きがみられるなど、効果的な防護柵設置技術の普 及が図られた。
④ 各地域での講演会や現地指導を行い、集落の合意形成を進めた結果、各地域で 核となるモデル集落が24地区設置された。
⑤ 集落等での講習会や技術指導を効果的に実施するため、獣種毎の特徴や対策を まとめたマニュアルが作成され、各地域特命チームへ配付された。
⑦ 特用林産物被害対策では、侵入防止ネットと電気柵を効果的に組み合わせた対 策が、イノシシ、シカの侵入防止に有効であることが確認できたことから、市町 村と連携して現地調査を実施し、対策が必要な箇所の選定を行った。
一方で、被害対策を実施した集落であっても、対策実施後の検証や改善が不十分で、 取組の成果が上がっていない事例も見られる。
このため、今後は、県下全域にモデル集落の成果を波及するとともに、住民自らが 被害軽減目標や被害防止対策を定めた上で、計画的な活動の実施と実施後の検証を行 い、集落住民が一体となった効果的な被害防止対策の実践を推進していく。
併せて、広範囲を行動域とする野生鳥獣の特性に対応するために、集落間の連携や 市町村間の連携を図り、広域での被害防止対策の実現を目指す。
さらに、これらの被害防止対策を実施する集落において、鳥獣被害防止対策の実施 をきっかけに高まった集落活性化の取組に対しても必要な支援を行っていくことで、 集落における成功事例を創出し、「鳥獣被害から守る集落づくり」から、「鳥獣被害に 強い活力ある地域づくり」への転換を図る。
(1)集落対策の推進
① 地域住民の合意形成づくり(「みんなで勉強」の実施)
地域ぐるみの対策を実施するには、まず集落内の合意形成が必要となるが、農 家と非農家、被害が深刻な住民と被害を受けていない住民など、住民の立場や意 見は多様であることから、十分な説明を行い、共通の認識を持ってもらう必要が ある。
また、被害を受けている住民の意識では、対策は行政が中心に行うものである との考えが多いことから、「地域住民が一体となった総合的な対策が必要であり、 防護柵の設置や有害鳥獣捕獲だけの対処療法的な対策では、抜本的な被害軽減に 繋がらない」ということを集落の人たちに理解してもらう必要がある。
② 被害実態の適切な把握と情報の共有
集落が一体となった取組の実現のためには、まず、具体的な被害面積・金額等 を算出し、被害状況を地域住民へ的確に伝え、深刻な状況であることを地域全体 が理解する必要がある。
このため 、地域の被 害状況を的確に捉え るため、「地域で守る鳥獣被害みえる 化事業」で開発された地図情報システムの導入と活用を推進することで、効果的 な被害防止対策の実施を図る。
その上で、鳥獣被害対策における集落の問題点を洗い出し、地域住民が被害防 止対策に取り組む意識を高めるため、チェックシートを活用するなど住民による 「集落点検」を実施する。
[事例](チェックシート項目)
№ 取 組 項 目 ○or×
1 鳥獣被害対策をみんなで話し合う場を設けている。
2 電気柵は漏電しないように下草刈りなどの管理を徹底している。 3 誰も管理していない放任果樹は伐採している。
4 サルを見かけたら誰でもいつでも追い払うようにしている。 5 被害を出す個体を中心に捕獲するようにしている。
6 7
③ 集落被害対策ビジョンの作成
鳥獣被害に強い集落づくりを進めるためには、集落点検結果等を基に、集落住 民が主体となって取り組む「守れる集落づ くり」や「守れるほ場づくり」等の具 体的内容を記した「集落被害対策ビジョン」の作成が重要である。
なお、集落被害対策ビジョンには、鳥獣被害対策から発展した集落振興(地域 づくり)の内容についても定め、地域一体となった取組への共通認識を図る。
④ 集落被害対策ビジョンに基づく被害防止対策の実施
集落被害対策ビジョンの実施に当たっては、防護柵の設置だけではなく、集落 にあるエサ場の除去、鳥獣を近づけない集落環境づくり、徹底的な追い払い等の 「守れる集落づくり」のための技術や低樹高栽培等の「守れるほ場づくり」を適切
に組合せながら、総合的な対策を行っていくことが重要である。
⑤ ビジョンの点検
「集落被害対策ビジョン」については、ビジョンの進捗状況や集落変化等に即 し、適宜、見直しを行うなど、効果的な集落対策の推進を図ることとする。
⑥ 鳥獣被害対策から発展した営農振興・地域づくりの実現
鳥獣被害対策の最終的な目的は、集落を「鳥獣被害から守る」だけでなく、守 った集落で農林産物を生産しながら、集落の振興につなげていくことである。
これまでも、モデル集落の中で、鳥獣被害の軽減が図られた集落では、地域の 連携が生まれ、集落の活性化につながった事例がみられている。
(2)総合的な被害防止対策の実施 ① 農作物被害対策
農作物の被害防止は、電気柵、爆音機、忌避剤、テグスやネット等の資材を用 いて行われている。
これらの被害防止対策を効果的に行うためには、加害鳥獣の生態に即した正し い知識に基づき資材を適切に設置するとともに、防護柵は継続的な維持管理を徹 底し、複数の資材をうまく組み合わせるなど、いわば「防護柵を成長させていく」 ことが重要である。
また、個人を単位とした「点」的な防護柵の設置では効果が限られることから、 地域全体の侵入防止効果が十分発揮されるよう、広域的で組織的な防護柵の設置 へと誘導する必要がある。
さらに、今後は、適切な防護柵の設置等の個別対策の普及だけでなく、追い払 い活動等の「守れる集落づくり」のための技術と防護柵の設置をはじめとした「守 れるほ場づくり」を適切に組み合わせ、以下の視点に留意しながら、効果的な対 策に努める。
ア 守れる集落づくり
(ア)集落にあるエサ場の撤去
農地周辺には、農家にとっては価値のないものでも、鳥獣にとっては餌と なるものが数多くある。“この集落に来ると必ず満腹になれる”と動物が学 習するような、住民が行う無自覚の「餌付け」をやめ、これらを適切に管理 することが鳥獣を農地に引き寄せない第一歩となる。
さらには、収穫後のイネの切り株から再生するヒコバエや冬の水田を覆う 緑草など、野生鳥獣の餌が乏しくなる冬期のエサ源の管理が重要となってく る。
[事例]
□ 収穫が終わった野菜を除去、すき込む □ 水田のヒコバエや雑草をすき込む □ 放置された果樹を伐採・撤去する
□ 人家やお墓の周辺に鳥獣の餌となるものを放置しない
(イ)鳥獣を近づけない集落環境づくり
多くの野生動物は、本来、外敵から身を守るために身を隠すことができな い開けた空間では「警戒心」を持ちやすいものである。そこで見通しの良い 空間(緩衝地帯)を整備し、元来、臆病な野生鳥獣が出没しづらい集落環境 をつくり出す。
[事例]
□ 定期的に里山林の下草刈りを実施する
□ 山裾の耕作放棄地に牛や羊の放牧地を設置する
(ウ)徹底的な追い払い
集落にサルやシカがいるのをただ見て通り過ぎれば、“人や車はそんなに 怖くない”といった動物の学習、いわゆる「人慣れ学習」が進むことになる。
「サルが廃園のみかんを食べていたのでそのまま通り過ぎた」、「休耕田の レンゲやセリを食べていれば自分の家の大根畑は安心だと見て通った」、こ れが一番やってはいけない「人慣れ学習」であることを住民に理解してもら い、集落住民みんなで徹底的な追い払いを実施する。
なお、サルが人を威嚇したり、買い物袋を奪うようになるまで凶暴化する など極度に人慣れが進行した場合においても、サルの人慣れは固定化したも のではなく、人の態度次第では「急におどおどした態度をとるようになる」 ことがあることから、安全に配慮した上で、追い払い活動を開始する必要が ある。
[事例]
□ 鳥獣を見かけたら悪さをしていなくても徹底的に追い払う □ 非農家や高齢者を含め地域住民みんなで追い払う
イ 守れるほ場づくり
(ア)適切な防護柵の設置と維持管理
防護柵は、適切な設置と維持管理を実施することにより、効果が生じるも のである。
このため、研修や集落点検の実施を通じて、適切な設置を行うとともに、 定期的な点検を実施することで、維持管理に努める必要がある。
[事例]
□ 電気柵は、地面から20cm以上あけず日中も通電する □ 柵の近くに作物を栽培しない
□ 柵周辺は、定期的に除草するなど維持管理を徹底する
(イ)鳥獣被害に強い栽培体系づくり
防護柵の設置と併せて、鳥獣被害に強い栽培技術の改善を図ることは、鳥 獣被害対策に対して、効果的な取組である。
また、防護柵で囲みやすいほ場、ほ場内に野生鳥獣が侵入した際の追い払 い効果を高めるためには、ほ場内の作業性の向上は重要である。
[事例]
□ ツル性の農作物は畑の周囲ではなく中央部に植える
□ 野生獣の掘り返しから守りやすい栽培方法(竹マルチ栽培等)を実施 □ 防護柵で囲みやすい栽培方法(低樹高栽培栽培、低面ネット栽培)を実
施
② 人工林被害対策
森林における被害は、そのほとんどがスギ等の造林地における植栽幼齢木のシ カによる食害や、雄シカの角こすりによる樹皮の剥皮被害等であり、被害を受け た造林木は、成長が阻害され材質が低下するほか、激しい場合には造林木が枯死 する場合もある。シカ等が出没する地域では、造林地へのシカ等の侵入を防ぐた め、造林地の周囲にシカネット等の防護柵を設置することが必要である。
これらの防護柵の設置は、造林事業等を活用して森林所有者等により実施され ているが、被害防止対策を効果的に行うには、適正な防護柵の設置に加えて、設 置 後 の 巡 回 点 検 ・ 補 修 な ど の 森 林 所 有 者 等 に よ る 経 常 的 な 維 持 管 理 が 重 要 で あ る。
このため、引き続き地域特命チームや鳥獣センターと連携して森林所有者等に 対する指導や、作業を受託して防護柵の設置を行う森林組合職員・作業班等を対 象に適正な防護柵の設置と管理に関する講習会を開催するとともに、下からの侵 入を防ぐためにネットを地面に垂らすなど、より効果のある防護柵の設置を普及 ・定着させていく必要がある。
③ 特用林産物被害対策
乾しいたけをはじめとする特用林産物の多くは、集落を離れた山間地等に点在 した場所で栽培されており、管理・監視の目が届きにくいことから、シカやサル 等の被害を受けやすい環境下にある。
このため、従来の侵入防止ネット・電気柵等による被害防止対策は元より、目 の届きやすい集落周辺に栽培施設等を整備することで、管理・監視体制の強化を 図ることが重要である。
特に、猿害対策については、上面側からの侵入対策について十分な検討を行う 必要がある。
④ 家畜防疫対策
ア 畜舎等における侵入防止
本県で発生し甚大な被害をもたらした「口蹄疫」は、ウイルスの感染による 急性熱性伝染病であり、伝染力が強く、牛、豚などの家畜をはじめ、シカ、イ ノシシ等の野生動物を含むほとんどの偶蹄類動物が感染する。
このことから、野生鳥獣の生息域内の畜舎等においては、野生鳥獣が侵入し ないよう防護柵を設置するなど、畜舎等の適切な隔離に努めることとする。
イ 飼料作物の適切な管理
野生鳥獣による飼料作物の平成23年度被害額は、水稲、野菜、果樹、人工 林に次い で5番目と なっているが、作付 ほ場(採草地及び放牧地を含む。)に 野生鳥獣が侵入することは、飼料作物の被害に留まらず、野生鳥獣と家畜とが 間接的に接触することに繋がるため、家畜防疫の観点から、その侵入防止に取 り組む必要がある。
また、山ぎわの牧草地では、イノシシが牧草(イタリアンライグラス)の冬 季生草重の6割、春季生草重の4割を食害しているとの報告もあることから、 飼料作物の適正な管理を推進し、単位面積当たりの収量を向上させることによ り、安全性の高い自給飼料の増産に取り組むことが重要である。
これらのことから、飼料作物への鳥獣被害が発生する地域においては、適切 な防護柵を設置するなど、野生鳥獣を寄せ付けない飼料作物の管理に努めるこ ととする。
⑤ 新たな被害防止技術の開発
前述の被害対策のなかで、特に、森林へのシカ被害やしいたけの林内ほだ場で のサル被害については、未だ効果的な防止技術が確立されていない。また、野生 鳥獣による畜舎や飼料作物ほ場への侵入防止は、「口蹄疫」の発生を防ぐための 家畜防疫上も大変重要である。
これらのことから、宮崎県における森林の施業方法や農林作物等の栽培・飼養 形態に応じた、新たな被害防止技術の開発に取り組むこととする。
(3)モデル集落の設置
集落対策の推進には、身近な地域において成功事例が創出されることが重要であ る。このことから、各地域特命チームごとに、モデル集落の設置に取り組む。
この モデル集落では、「集落被害対策ビジョン」を作成し、ビジョンに基づき地 域住民に対する研修会や集落点検、追い払い活動等を実施するとともに、集落点検 に基づき適切な防護柵等の設置・管理・開発を行い、集落ぐるみによる被害防止効 果を実証するとともに成功事例の創出を図る。
(4)地域リーダーの育成
集落の合意形成、集落点検等を効率的に進めていくには、基礎的な鳥獣被害対策 の考え方や地域ぐるみの対策の重要性等を理解した集落リーダーの存在が必要であ る。
スターの指導のもと、各地域毎にリーダー育成のための講習会を開催し、講習受講 者を「鳥獣被害対策地域リーダー」として認定する。
(5)被害防止対策マニュアルの活用
平成24年度において、鳥獣被害対策の基礎的な考え方や地域ぐるみの対策の重 要性、有害鳥獣の生態、防護柵等の原理と設置方法の外、具体的な取組事例や成功 事例などを盛り込んだ「鳥獣被害防止対策マニュアル」を策定した。
今後は、このマニュアルを積極的に活用して、鳥獣被害対策マイスター等の技術 指導者が集落での講習会や技術指導を行うこととする。
また、鳥獣センターにおいて、研修資料等データの一元化を図っていることから、 それらを十分に活用して、より効率的な指導を行うこととする。
(6)広域的な被害防止対策の実施
鳥獣は、市町村等の区域にかかわらず、自然界で自由に行動することから、被害 防止対策においては、鳥獣の行動域に対応した広域的な取組を行うことが、効果的 である。
2 被害状況に応じた適切な「捕獲対策」
捕獲対策では、野生鳥獣の生息状況の的確な把握や、適切な捕獲の実施、捕獲体制 の整備及びシカ・サル対策指導捕獲員の配置などを行い、以下のような成果がみられ たところである。
○「捕獲対策」の主な成果(平成22年度から平成24年度まで)
① シカやサルの生息状況調査を実施することにより、各地域における生息数や被 害の状況を把握し、個体数の適正管理等を推進した。また、各地域での説明会や 研修会を通じ、生息分布や被害現状等を周知することで対策等の情報の共有化が 図られた。
② 有害鳥獣捕獲班及び野生猿特別捕獲班への活動支援、シカ・サル対策指導捕獲 員 の 配 置 等 に よ り 、 効 率 的 な 捕 獲 に 努 め た 。 ま た 、 狩 猟 免 許 試 験 の 会 場 数 や 回 数を増やすなど受験しやすい環境の整備を図った。
③ 県境を越えて広域的に生息するシカの一斉捕獲を九州4県(熊本県、大分県、 鹿児島県、宮崎県:春期、秋期の年2回、平成24年度から福岡県が加わり5県) 及び九州森林管理局並びに関係市町村が連携して九州脊梁を中心に実施し、森林 ・生態系被害の軽減に努めた。
④ 県内のシカ推定生息頭数については、有害捕獲や特別捕獲の効果的・計画的な 取組により、約7万7千頭(平成20年度)から約4万5千頭(平成23年度)に減 少したと推定され、目標生息頭数4万8千頭に対し、目標以上の成果を得た。
(1)野生鳥獣の生息状況の的確な把握
シカ、サル、イノシシなどの野生鳥獣にあっては、地域的な増加や分布域を拡大 し、中山間地域を中心に食害等による農林業被害の拡大や植生の衰退等の被害が生 じている。
この ため、被害の軽減と適正な個体数調整 を図り、特定鳥獣(シカ、サル、イノ シシ)の適正な保護管理を推進するとともに、野 生鳥獣と人との共存を促進するた め、シカやサルなどの生息調査等を行い、その生息状況を的確に把握することが必 要不可欠である。
① シカの生息調査
② サルの生息調査
サルの生息調査については、サルによる被害が深刻化していることから、生息 状況を的確に把握するため、平成14年度から県内を大まかに県北、県央、県南 の3ブロックに分けて、現地調査による群れ数と頭数の調査を実施しているが、 引き続き、調査を実施していくこととする
なお、本県のサルの生息数は、平成23年度末の時点で101群れの約5千頭 と推定している。
③ イノシシの生息調査
イノシシの生息数については、今のところ有効な調査方法が確立されておらず、 全国的にもその把握は行われていない。ただし、環境省が実施した自然環境保全 基礎調査の結果によると、平成15年のイノシシの生息区画率(1区画:5㎞メ ッシュ)は、昭和53年と比較して、6.5%増の92.9%(全国平均38.5%) となっており、分布域が拡大し、ほぼ県下全域でイノシシが確認されている状況 にある。
あわせて、近年、イノシシによる農作物等への被害額が増えていることから、 県内のイノシシの生息数も増加しているものと推測される。
今後は、イノシシの有害鳥獣捕獲マップを整備し、生息状況の把握に努めるこ ととする。
(2)適切な捕獲の実施
シカ、サル、イノシシなどの野生鳥獣の生息数が増えすぎた場合には、各地域の 一体となった被害防除対策が効果を発揮するまでの間に、個体数調整のための特別 捕獲や有害鳥獣捕獲に取り組んでいくことが必要である。
このため、集中的な捕獲活動により野生鳥獣の個体数を抑制する「鳥獣被害防止 緊急捕獲等対策」の交付金による「緊急捕獲活動」を実施し、集中的かつ効果的な 被害対策の取組について支援する。
また、必要に応じて、狩猟等の規制緩和を行うなど、適切な捕獲圧を維持し、確 保していくことも大切である。
① シカの捕獲対策
シカについては、本県における推定生息数が、平成17年の約4万2千頭から 平成20年の約7万7千頭へと急増したことから、平成21年度において、ニホ ンジカ適正管理計画(平成21年度~平成25年度)を策定し、シカの個体数調整の ための特別捕獲に取り組み、平成25年度末までに約3万8千頭までに減らすこ ととし、農林作物等への被害の軽減を図ることとしている。
シカの捕獲に当たっては、繁殖率を抑制するため、メスジカの捕獲に努めるも のとする。
また、平成25年度は、引き続きシカ・サル対策指導捕獲員を県内に配置して、 「わな」等による有害捕獲に努めることとしている。
② サルの捕獲対策
サルについては、東日本を中心に全国的に生息数が増えており、農作物に対す る被害額はシカ、イノシシに次いで3番目に多く約8%を占めている。本県にお いては、山村から都市近郊までの県下全域で被害が多発しており、被害額も年々、 増加傾向にある。
に管理されない耕作放棄地等が集落周辺に広範囲に散在し、未収穫の農作物が放 置されるなど、サルを餌付けする状態になっているからと考えられている。
また、サルは、基本的に群れで行動する特性があることや、群れや個体数の増 減と被害の拡大との関係が明確でないことから、捕獲に当たっては、群れの分裂 や拡大を招かないよう十分に検討した上で、捕獲以外の被害防止対策も行いつつ、 慎重な対応に努める。
③ イノシシの捕獲対策
イノシシについては、生息密度や個体数を推定する調査方法が確立されていな いことから、その適切な保護管理のため、宮崎県特定鳥獣(イノシシ)保護管理 計画(平成24年4月1日~平成29年3月31日)において「被害額が増加傾向を示す 以前(昭和61年度~平成7年度)の平均被害額 (約5千万円)以下に抑える」こ とを保護管理目標とし、個体数の安定的な維持も考慮しながら、農林作物への被 害を軽減させる捕獲を実施する。
なお、イノシシの生息状況の指標となる捕獲数や被害額等を的確に把握すると ともに、その点検・評価を随時行い、必要に応じて捕獲対策の見直しを行うもの とする。
(3)捕獲体制の整備及び対策指導捕獲員の配置
シカ、サル、イノシシなどの野生鳥獣の個体数を調整するためには、その捕獲体 制を整備しておくことが必要である。
また、狩猟者数が年々減少するとともに、狩猟者の高齢化も進んでいることから、 有害鳥獣捕獲班員の母体となる新規狩猟者の確保対策も併せて推進していく必要が ある。
なお、有害鳥獣捕獲に際しての事故が全国的に多発しており、県内でも少なから ず発生していることから、安全の確保については、十分に配慮するものとする。
① 捕獲体制の整備
ア 有害鳥獣捕獲班の活動支援
鳥獣による農林水産業等への被害を防止するため、県内26市町村全てに「有 害鳥獣対策協議会」が設置され、その下部組織として「有害鳥獣捕獲班」が編 成されている。
有害鳥獣対策協議会は、市町村、JA、森林組合、猟友会代表者等で構成さ れており、有害鳥獣捕獲班による有害鳥獣の捕獲許可申請と実際の捕獲活動が 主な活動内容である。
イ 野生猿特別捕獲班の活動支援
サルによる農林作物への被害が近年増加し、人家周辺に出没して子供や女性 に対して威嚇したり、住居へ侵入するなど生活被害も発生している。
このため、サルの生息数が多く、被害の深刻化している18市町村では、有 害鳥獣対策協議会の中に、有害鳥獣捕獲班とは別に野生猿特別捕獲班を編成し ており、平成24年4月1日現在、60班、班員782名となっている。
野生猿特別捕獲班による有害鳥獣捕獲活動も、原則としてボランティアとな っていることから、市町村と連携して、捕獲活動に要する経費の一部を助成す る等、引き続き、その活動支援に努めることとする。
② シカ・サル対策指導捕獲員の配置
シカによる農林作物等への被害は、平成23年度で約1億5千8百万円と被害 の約3分の1を占めていることから、平成25年度においても県内にシカ・サル 対策指導捕獲員を配置し、被害の軽減に努めることとしている。
シカ・サル対策指導捕獲員は、地元住民の捕獲要請に迅速に対応するため、常 勤とし、「わな」等による捕獲や追い払いを実施するものとする。
さらに、モデル集落で行われる講習会などへの参加を通じ、鳥獣被害防止対策 全般のノウハウ習得に努めるとともに、地元住民に対する捕獲技術等の伝授を通 じて、狩猟免許取得希望者を増やす取組みにも協力していく。
③ 狩猟者の確保対策
狩猟免許保有者数は年々減少し、狩猟免許保有者のうち60歳以上の方の占め る割合が平成23年度は約70%と急速に高齢化が進んでおり、将来的には、有 害鳥獣捕獲に支障を来す恐れもあることから、狩猟者の確保対策を進めることが 急務となっている。
3 中・長期的視点に立った「生息環境対策」
生息環境対策では、森林における野生鳥獣が生息しやすい環境の確保や、林道等の のり面や路肩の適正な管理を行い、以下のような成果がみられたところである。
○「生息環境対策」の主な成果(平成22年度から平成24年度まで)
① 国庫補助事業や森林環境税活用事業により、広葉樹の植栽や広葉樹の侵入を促 す間伐を実施し、植生が豊かで多様な森林づくりを推進した。
② 林道等ののり面保護工において、タケニグサやマツカゼソウ(どちらも在来種) がシカの忌避植物であることや、編み目の小さい金網をかぶせるマット工法がシ カの侵入防止に一定の効果があることを確認した。
(1)多様な森づくりの推進
森林は、多種多様な動植物等の生息・生育の場となっており、野生動植物を取り 巻く自然環境とともに多様で複雑な生態系を構成していることから、森林施業によ る天然林の伐採や単一樹種による人工林の育成は、そこに生息する野生鳥獣などの 生態系へ影響を及ぼしている。
また、造成された人工林において適正な管理が行われなくなると、下層や林床の 植生が乏しくなり、生物多様性の保全に支障を来たすだけでなく、野生鳥獣の生息 場所や餌場が減少することによって、造林木の食害や野生鳥獣が里山周辺へ出没す るなど農作物等に被害を与えることが考えられる。
このため、野生鳥獣による被害を防止する観点から、森林において野生鳥獣が生 息しやすい環境を確保するため、引き続き多種・多層の構造を持つ森林に誘導する など、多様な生息環境を持つ森づくりを推進する必要がある。
① 間伐の推進
人工林内に陽光の差し込む環境を確保し、下層植生の繁殖と生物多様性を保全 するため、適正な間伐を推進する。
② 高齢級の森の配置
人工林の林齢構成の平準化を図り、一斉伐採による環境への影響を軽減するた め、長伐期施業による高齢級の森を配置する。
③ 針広混交林・広葉樹林の造成
森林の伐採に当たっては、一定の広葉樹を残置した施業を行うほか、植栽に当 たっては広葉樹を植栽するなど針広混交林や広葉樹林の造成を図る。
④ 画一的な植栽からの転換
伐採跡地の再造林については、適地・適木や林業生産性を考慮し、木材生産を 行う資源循環の森林と多様な生物をはぐくむ自然度の高い森林を配置するなど画 一的な植栽からの転換を図る。
(2)林道等の「のり面」や「路肩」の適正管理
林道や農道等の「のり面」の保護は、雨水による浸食の防止や凍上による表層崩 壊の抑制を図ることを目的とし、草本類や木本類による緑化工により施工されてい る。
また 、「のり面」や「路 肩」の管理は、視距を確保し、車両の通行の安全性を図 ることを目的として草刈等の維持管理が行われている。
しかしながら、これらの林道等は山地と集落を連絡する“みち”であることから、 シカ等を集落へと導く「誘導路」ともなっており、生息域の拡大の一因として考え られている。
また 、「のり面」や「路 肩」などの青草(緑草帯)は、野生鳥獣の餌が乏しくな る冬期において、シカ等の貴重な餌資源となっており個体数維持の(個体数が減少 しない)一因と考えられている。
このため、シカの侵入を防止するためののり面緑化工法やシカが好まない植生の 検討を行ってきたところであり、一定の成果を得ている。今後は、食害や侵入を防 ぐ各種のり面緑化工法の実用化に向けた検証を進めることとする。
第3 推進体制の整備
1 鳥獣被害対策特命チーム
(1)本庁の推進体制
① 鳥獣被害対策特命チーム
庁内に副知事をチーム長とし、各部の関係課長で構成する「鳥獣被害対策特命 チーム」により、全県的な鳥獣被害対策の方向性や被害対策基本方針の決定、施 策成果の検証、各部会間の調整・進行管理、県民への啓発等、本県の鳥獣被害対 策を総括する。
② 専門部会
鳥獣被害対策特命チームの下部組織として、以下の3つの専門部会により、各 種事業を実施するとともに施策の検討を行う。
(ア) 農作物被害対策部会
□ 集落対策の推進 □ モデル集落の設置
□ 地域リーダーの育成
□ 被害防止対策マニュアルの活用
□ 広域的な被害防止対策の実施
(イ) 捕獲対策部会
□ 野生鳥獣の生息状況の的確な把握
□ 捕獲体制の整備及び対策指導捕獲員の配置 □ 適切な捕獲の実施
(ウ) 森林被害・環境対策部会
□ 適切な防護柵の設置
□ モデル実証展示ほ場の設置 □ 多様な森づくりの推進
□ 林道等の「のり面」や「路肩」の適正管理
なお、獣肉等利活用については、捕獲鳥獣の獣肉等の処理に係る食品衛生上の 課題や利活用する際の安定供給、品質、生産コストなどの課題が考えられるが、 地域資源の一つとして地域活性化に活用する観点から、その有効な利活用につい て研究していくこととする。
③ 鳥獣被害対策支援センターとの連携
特に、地域特命チームへの技術指導や人材育成、鳥獣被害防止対策に係る情報 の収集と発信、新たな鳥獣被害防止技術の開発等の機能を有する鳥獣被害対策支 援センターと密接に連携しながら、関係機関の支援体制の強化を図る。
④ 宮崎県鳥獣被害防止緊急対策協議会
近年の野生鳥獣の個体数増加による被害の深刻化、広域化に対応するため、「宮 崎県鳥獣被害防止緊急対策基金」を造成し、県、市町村、県農業協同組合中央会、 県森林組合連合会、県猟友会、県内各森林管理署により組織された標記協議会に おいて関係機関が連携し、緊急捕獲活動等を実施する。
(2)各地域における推進体制
支庁・農林振興局単位に設置した「地域鳥獣被害対策特命チーム」により、集落 や市町村等が行う集落対策、被害対策、生息環境対策、捕獲対策等を支援する。
① 地域特命チーム長
チーム長については、西臼杵支庁長及び農林振興局長が就任する。
② 窓口の一元化
本プロジェクトの実施に当たっては、支庁・振興局内に留まらず多くの関係機 関・団体の関与が必要なことから、本庁段階と支庁・振興局段階の連携窓口とし て、また、地域チームの全体の運営窓口として、窓口担当を選任する。
③ 支庁・振興局内の役割分担
今回のプロジェクトにおいて取り組むべき対策の役割分担については、下記の 役割分担表を参考に各地域において決定する。
◆支庁・振興局内の役割分担表 ◎:主担当
地域チー 集落対策 被害対策 生息環境対策 捕獲 獣肉等 ムの運営 合意形成 集落基盤 農作物 林産 物 森づくり 農林道等 対策 の処理
地域農政企画課 ◎ ○ ○
農 畜 産 課 ◎ ○
農村計画課 ○ ○
農村整備課 ◎ ○ ○
林務課(林政・普 及 ) ◎ ◎ ◎ ○
林務課( 森林土木) ◎
普及企画課 ◎
農業経営課 ○ ○
土木事務所 ○
保 健 所 ○ ○
④ 関係機関・団体等の関与について
本プロジェクト実施に当たっては、市町村や農協、農業共済組合、森林組合、 猟友会等の関係機関・団体及び集落の主体的な取組みと連携・協力が欠かせない ことから、地域特命チームの構成員には、関係機関・団体及び集落代表者等を加 えることとするが、その構成や役職等については、地域の実情や実効性の確保な どを考慮し、各地域で判断する。
また、捕獲に際し、国有林への野生鳥獣の逃げ込み等が課題になっている地域 にあっては、森林管理署との連携を図ることとする。
⑤ 隣県を含めた広域連携について
加害鳥獣の生息域が県域や市町村域をまたぐ場合には、広域連携による鳥獣被 害対策が有効であると考えられる。
現時点においても、県内での広域的な被害防止対策(東臼杵西部鳥獣被害防止 対策協議会)の取組、九州5県(平成23年度までは4県)によるシカ広域一斉 捕獲や一部地域における県外の隣接地域と連携した被害防止対策(高森・竹田・ 高千穂地域鳥獣害防止広域対策協議会)の取組が見られるところである。
また、県内の地域間はもとより県外の隣接地域との間においても、必要に応じ 野生鳥獣の生息状況や被害実態などの情報交換や意見交換を行いながら、より効 果的な鳥獣被害対策を進めることとする。
2 鳥獣被害対策支援センター
県内各地域で増加する野生鳥獣の被害実態を踏まえ、よりきめ細やかで効果的な対 策を技術面で支援するため、平成24年4月に、美郷町にある宮崎県林業技術センタ ー内に「鳥獣被害対策支援センター」を設置した。
(1)組織
林業技術センター
所長 副所長 管理研修課
育林環境部 特用林産部
鳥獣被害対策支援センター
○センター長
○専任職員及び各地域特命チームとの兼務職員
(2)鳥獣センターの業務内容
① 地域特命チーム(市町村、JA、集落などの関係機関・団体)等への技術指導
のモデル展示ほ場を活用するなどして、効率的な技術指導を行う。
② 鳥獣被害対策や技術指導を担う人材の育成
現 地調査、地 域研修会 、個別現地指導等を通じた人材の育成を図る。また、各 地域に おいて鳥獣被害対 策や技術指導を担う、県・市町村職員や鳥獣被害対策マ イスター等の継続的な育成・確保を図る。
③ 鳥獣被害対策に係る情報の受発信
被 害対策の新 たな知見 を蓄積するとともに地域特命チームの研修資料の一元化 (デー タベース化)によ り指導用資料の効率化等を図る。また、鳥獣センター通 信の発信などにより、県民への啓発を図る。
④ 鳥獣被害対策実態調査の精度向上
市 町村や研究 機関等と の連携により、GIS等の新たな技術を活用して、被害 実態の精度向上を図る。
⑤ 鳥獣被害防止対策の実証・研究
大学や研究機関等と連携して、新たな防止技術の開発や実証試験等を行う。 なお、業務の遂行にあたっては、総合農業試験 場や畜産試験場との連携を図る。
3 チーム員の知識向上、技術指導者の育成
(1)チーム員の知識向上
本プロジェクトの推進母体となる「鳥獣被害対策特命チーム」のチーム員及び関 係職員については、担当業務にかかわらず、地域ぐるみの対策の重要性や有害鳥獣 の生態、防護柵等の原理、鳥獣から守りやすい集落の仕組みなど、基礎的な鳥獣被 害対策の考え方を十分に理解しておく必要がある。
このため、特命チームを構成する全職員は、鳥獣センター等が主催する講演会や 研修会に参加し、本推進計画及び被害防止対策マニュアルの内容を理解するととも に、各専門部会や各地域特命チームにおける検討内容や推進状況の把握に努めるこ ととする。
(2)技術指導者の育成
地域で被害対策を適切に実施するためには、加害獣の生態や被害防止対策に関す る知識及び種々の補助事業等の業務知識を有し、被害実態の把握や対策に向けた計 画などを企画・実施できる技術指導者が必要である。
このため、前計画に引き続き、鳥獣被害対策スペシャリストや鳥獣センター職員 の指導のもと、普及指導員を始め市町村や農協、森林組合等の関係機関・団体等の 指導者、対策指導捕獲員を対象に講習会を開催し、講習受講者を「鳥獣被害対策マ イスター」として認定するなど、技術指導者の育成を図ることとする。
イスターとの連携強化を図るなど、地域間の情報交換や相互の技術研鑽に努め、「鳥 獣を寄せ付けない『地域力』の向上」への取組を推進する。
技術指導者は被害防止対策の適切な知識の普及や現地における技術の定着を図る 役割を担い、地域特命チームと連携して、地域が一体となって取り組む被害防止対 策への支援を行う。
なお、技術指導者が現地指導を行う上で必要な、技術的データや科学的知見につ いては、鳥獣センターはもとより、林業技術センターや総合農業試験場、畜産試験 場等の試験研究機関がその支援を行うものとする。
① 普及指導員
普及指導員(農業・林業)は、地域全体のアドバイザー・コーディネーターと しての役割を担うとともに、地域農林業の実態や農林作物等の栽培技術などに適 切に対応した鳥獣被害対策の支援等を行う。
② 関係機関・団体等の指導者
市町村や農協、森林組合等の関係機関・団体の指導者は、地域の実情を把握し ており、集落に密着した指導が可能であることから、住民の意見に耳を傾けなが ら、集落全体を一つの方向に導き、円滑な合意形成が行われるよう集落への支援 を行う。
③ 対策指導捕獲員
シカ・サル対策指導捕獲員は、既に保有している鳥獣の捕獲技術等に加えて、 鳥獣被害防止対策全般のノウハウ習得に努めるとともに、モデル集落をはじめ、 その他の集落への技術指導、地元猟友会との連携を積極的に行うこととする。