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安定した食料生産を目指すテクノロジー

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Academic year: 2017

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安定した食料生産を目指すテクノロジー

大学院農学研究院・大学院農学院 准教授

石井

一暢

かずのぶ

(農学部生物環境工学科)

専門分野 : 農業情報工学,農業環境工学

研究のキーワード : リモートセンシング,精密農法,通信システム,GPS,ロボット HP アドレス : http://applied.bpe.agr.hokudai.ac.jp/

人の目からセンサの目へ

一面に広がる水田、畑…北海道は日 本の食糧基地と呼ばれるように膨大な 耕作面積を有しています。ところが、 そこで栽培される作物をよく見てみる と、その成長は決して一様ではありま せん。そこに同じように肥料を加える とどうなるでしょう?成長の良いとこ ろは、必要以上の肥料が与えられるこ とになり、余った肥料は水に流れて環 境を破壊していきます。作物は必要以 上の肥料を与えられ、場合によっては 自身の重さで倒れてしまいます。成長 の悪いところは、肥料不足で十分な収 穫を得ることができないでしょう。大

きく見れば畑ごと、水田ごと、小さく見ればその中の部分ごとに見ても生育にはバラツキ があるのです。ところが人間が全てを把握するのはとても膨大な労力が必要になります。 では、どうすれば…その解決方法の一つがセンサを使った生育情報の計測(リモートセン シング)です。カメラやマルチスペクトルセンサなどの光学手法を用いて、植物体に含ま れるクロロフィルの特性から生育情報を計測し、GPS のような位置を測定できるセンサと 組み合わせることで、バラツキを表す地図などを作ることが可能となります。

情報化による省資源化

これまでの農業は農家の経験と勘によって行われてきましたが、センサを用いることで 生育の状態を把握できるようになると、客観的なデータによって管理作業をすることがで きるようになります。また、データを蓄積することにより、後継者のない農家の畑に新規 就農者が入った場合でも、これまでの農家と同様に栽培管理を行うことが可能となります。 でも、それだけで良いのでしょうか?実際の畑は場所ごとに生育のバラツキがあるのは既 に書いたとおりです。つまり、センサによって計測された生育のバラツキに応じて、必要 なところに必要な量だけ肥料をまいたり、雑草が繁殖しているところにだけ除草剤をまい

産業用無人ヘリコプタに生育センサを搭載して、高度約50mから作 物の生育状態を計測。

出身高校:北海道札幌西高校 最終学歴:北海道大学大学院農学研究科

食料生産

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たり、さらに細かな管理を行うことで、 肥料や薬剤といった資源を無駄にするこ となく省資源化に繋がるだけでなく、食 料生産による環境破壊を抑止することも 可能となります。このような考え方を精 密農法と呼んでいます。精密農法の考え 方は世界中でも広まっており、局所管理 に対応した作業機械が開発されてきてい ます。ところが、海外に比べて耕地面積 の小さい日本では、そのほとんどが大き すぎて使うことができません。そこで、 日本で使用される作業機械に取り付ける ことで、局所管理できる機械(VRT: Variable Rate Technologyバラツキに応じて施用量を調整する技術)を実現できる電子制 御ユニット(ECU:Electrical Control Unit)の開発を行っています。また、このような ECUや生育センサを車内で繋ぐ通信技術(ISO-BUS)に関する研究開発も行っています。

未来の農業

私たちの目指している未来の農業は、 これまでトレードオフの関係にあった食 料生産と環境の共存、そして食料の安定 的供給です。耕地面積の少ない日本で効 率良く食料生産を行いながら、環境に対 する負荷を軽減する…そのためには、作 物を知り、環境を知り、それに応じて適 切にアプローチする。そして、それらが 正しく働いているかを管理する。

SensingApplicationManagement この3つのサイクルを適切に運用するた めの技術を開発する。それが私たちの研 究室の課題です。そして、このような細

かな作業を的確に行うために必要な技術、それがロボットを用いた省力化農業と考えてい ます。

参考書

(1) 農業情報学会編,『新農業情報工学 21世紀のパースペクティブ』,養賢堂(2004) (2) 監修 令幸,『北海道農業機械施設ハンドブック』北海道協同組合通信社2012

国産肥料散布機械にECUを取り付け、可変散布を行っている様 子。周辺の小麦の生育に応じて、後ろから散布される粒状肥料の 量が変化する。

ロボットトラクタに可変散布機を搭載して、作業している様子。 GPSと慣性航法装置を用いて、約5cm以内の精度で走行する ことができるので、作物を踏むことはありません。

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参照

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