宿題 7 解答
ゲーム理論 TA
∗2017 年 5 月 27 日
解答 1.
(a)この展開形ゲームをゲームの木(Game Tree)で表すと,図1のようになる。
図1: Game Tree
(b)このゲームにおける部分ゲームは, 図1におけるi. ii. iii.の3つである。i.のように, ゲーム全体自体も1つの部分ゲームとしてみなすことに注意。
(c)O君の戦略を(M君がSをとった場合にとる行動, M君がBをとった場合にとる行動) と表すことにすると,このゲームは表1のようにマトリックス表現できる。
(d)表1から, 純粋戦略ナッシュ均衡は(M君の戦略, O君の戦略)として(S, (S, S)), (S,
∗担当:小田原悠朗([email protected])
表1: ゲームのマトリックス表現 O君
(S,S) (S,B) (B,S) (B,B) M君 S (3, 2) (3, 2) (1, 1) (1, 1) B (1, 1) (2, 3) (1, 1) (2, 3)
(S, B)), (B, (B, S))の3つであることがわかる。
(e)(b)で求めた各部分ゲームにおいて,ナッシュ均衡になっている戦略を考える。
i. この部分ゲーム, すなわち全体のゲームにおけるナッシュ均衡は (S, (S, S)), (S, (S, B)), (B, (B, S))の3つである。
ii. この部分ゲームにおけるナッシュ均衡は, O君がSをとることである。 iii. この部分ゲームにおけるナッシュ均衡は, O君がBをとることである。
以上のi. ii. iii.を踏まえると,いずれの部分ゲームにおいてもナッシュ均衡となってい
るのは(S, (S, B))のみであることがわかり, これが部分ゲーム完全均衡である。部分
ゲーム完全均衡は図2の太矢印で表され,これは後方帰納法により得られる結果と一致 する。
図2: 部分ゲーム完全均衡
注意. 「部分ゲーム完全均衡を答えよ」という設問なので, 部分ゲーム完全均衡におい て実現する結果(S, S)ではなく, 各プレイヤーがとる戦略(すなわち, 各Nodeにおい て各プレイヤーがどう行動するか)を(S, (S, B))のように列挙すること。
2.
(a)まず,企業1が供給量をq1と決定した後の部分ゲームを考える。このとき,企業2は供 給量をq2とすると,
{A − b (q1+ q2)} q2− cq2 の利潤を得る。q2で偏微分すると,
−2bq2+ A − bq1− c となることから,企業2の最適反応をBR2(q1)とすると*1
BR2(q1) = A − bq1− c
2b (1)
となる。企業2が最適反応をとることを考慮すると,企業1の利潤最大化問題は maxq1
[A − b {q1+ BR2(q1)}] q1− cq1 となる。q1についてのFirst-Order Conditionより,
∂
∂q1
A − b
q1+A − bq1− c 2b
q1− cq1
= 0
⇔ −bq1+ A − c 2 = 0
∴q1= A − c 2b を得る。これを(1)に代入すると,
BR2 A − c 2b
= A − c 4b
となり,これが均衡における企業2の生産量となる。よって均衡における価格は
A − b A − c 2b +
A − c 4b
= A + 3c 4 であり,企業1の利潤は
A + 3c 4 − c
A − c 2b =
(A − c)2 8b 企業2の利潤は
A + 3c 4 − c
A − c 4b =
(A − c)2 16b
*1正確には, q1が十分大きいと企業2の最適反応は0になるが,内点解が保証されているため, このようなケースは考 慮しない。
となる。
一方, クールノー競争のときは,企業1の最適反応BR1(q2)が(1)式と同様に BR1(q2) = A − bq1− c
2b となることから,各企業の生産量について
(q2= A−bq2b1−c q1= A−bq2−c
2b
が成り立ち,これを解くと,クールノー競争のナッシュ均衡における生産量 q1= q2= A − c
3b を得る。このときの価格は
A − b A − c 3b +
A − c 3b
= A + 2c 3 であり,また各企業の利潤は
A + 2c 3 − c
A − c 3b =
(A − c)2 9b である。
シュタッケルベルクモデルとクールノーモデルの比較 以上の結果をまとめると, 図3 のようになる。青斜線部が企業1の利潤,赤斜線部が企業2の利潤である。
(a)シュタッケルベルクモデル (b)クールノーモデル
図3: シュタッケルベルクモデルとクールノーモデルの比較
シュタッケルベルクモデルにおいては, 企業1は自身の生産量を踏まえて企業2が 行動することから,強気の生産量設定をすることができる。そのため, クールノー モデルと比較して企業1の生産量は増加し,一方で企業2の生産量は減少してい
る。また, シュタッケルベルクモデルの場合はクールノーモデルに比べ各企業の生 産量の和は増加していることから,価格は下がる。これに伴い両企業の利潤の和も 減少しているが,企業1の利潤は増加している。
(b)j ∈ {2, . . . N }とする。まず, 企業1が供給量をq1と決定した後の部分ゲームを考え る。このとき,企業jは供給量をqj とすると,
A − b
q1+ qj + X
k6=1,j
qk
qj − cqj
の利潤を得る。qjで偏微分すると,
−2bqj+ A − b
q1+ X
k6=1,j
qk
− c
となる。均衡においてはこれが0に等しくなり, かつ対称性より任意のj ∈ {2, . . . N } についてqj が等しくなることから,
−2bqj+ A − b (q1+ (N − 2) qj) − c = 0
∴qj = A − bq1− c
N b (2)
が成り立つ。これを踏まえると,企業1の利潤最大化問題は
maxq1
A − b
q1+ (N − 1)A − bq1− c N b
q1− cq1 となる。q1についてのFirst-Order Conditionより,
∂
∂q1
A − b
q1+ (N − 1)A − bq1− c N b
q1− cq1
= 0
⇔ −bq1+A − c 2 = 0
∴q1= A − c 2b を得る。これを(2)に代入すると,
qj = A − c 2N b
となり,以上が均衡における各企業の生産量となる。よって均衡における価格は
p = A − b A − c
2b + (N − 1) A − c
2N b
= A + (2N − 1) c 2N
であり,企業1の利潤は
A + (2N − 1) c
2N − c
A − c 2b =
(A − c)2 4N b 企業jの利潤は
A + (2N − 1) c
2N − c
A − c 2N b =
(A − c)2 4N2b となる。
N → ∞のとき このとき,
p = A + (2N − 1) c
2N → c
より, 価格はc, すなわち完全競争市場における価格に収束する。これにともない, 費用一定の仮定から各企業の利潤は0に収束するが,企業1の利潤は1/N に比例し
ているのに対し, 企業jの利潤は1/N2に比例していることから,企業jの利潤の方 がより0に収束する。図4でこの収束の様子を表した。
図4: シュタッケルベルクモデルの収束の様子
3. この交渉ゲームでは, 各プレイヤーの提案する価格が連続ではない。このことによって, 各 プレイヤーが
[A] 提案をrejectしたときの利得がacceptしたときの利得以下ならば, acceptする だけでなく,
[B] 提案をrejectしたときの利得がacceptしたときの利得未満ならば, acceptする ような均衡も存在する。
[Step 1] A君が(qA, 10 − qA)を提案する
[Step 2] B君がStep 1における提案を受け入れるか決める [Step 3] B君が(10 − qB, qB)を提案する
[Step 4] A君がStep 3における提案を受け入れるか決める とする。
(a)A君もB君も[A]のように意思決定する均衡
• このとき, Step 4でA君はrejectした場合の利得は0であるから, Step 4におい て(10 − qB) δ ≥ 0を満たす,すなわち任意のqB ∈ {0, 1, 2, . . . , 10}の提案を受け 入れる。
• B君はこのことを踏まえて, Step 3でqB= 10を提案する。
• よってB君はStep 2でrejectした場合10δ の利得を得るから, Step 2において 10 − qA≥ 10δ を満たす,すなわちqA∈ {0, . . . , 10 − ⌈10δ⌉}の提案のみを受け入 れる。
• A君はこのことを踏まえて, Step 1でqA = 10 − ⌈10δ⌉を提案する。
(b)A君は[A], B君は[B]のように意思決定する均衡
• このとき, Step 4でA君はrejectした場合の利得は0であるから, Step 4におい て(10 − qB) δ ≥ 0を満たす,すなわち任意のqB ∈ {0, 1, 2, . . . , 10}の提案を受け 入れる。
• B君はこのことを踏まえて, Step 3でqB= 10を提案する。
• よってB君はStep 2でrejectした場合10δ の利得を得るから, Step 2において 10 − qA > 10δ を満たす,すなわちqA ∈ {0, . . . , 9 − ⌊10δ⌋}の提案のみを受け入 れる。
• A君はこのことを踏まえて, Step 1でqA = 9 − ⌊10δ⌋を提案する。
(c)A君は[B], B君は[A]のように意思決定する均衡
• このとき, Step 4でA君はrejectした場合の利得は0であるから, Step 4におい て(10 − qB) δ > 0を満たす,すなわちqB ∈ {0, 1, 2, . . . , 9}の提案のみを受け入 れる。
• B君はこのことを踏まえて, Step 3でqB= 9を提案する。
• よって B君はStep 2で rejectした場合 9δ の利得を得るから, Step 2において 10 − qA ≥ 9δを満たす, すなわちqA ∈ {0, . . . , 10 − ⌈9δ⌉}の提案のみを受け入 れる。
• A君はこのことを踏まえて, Step 1でqA = 10 − ⌈9δ⌉を提案する。
(d)A君もB君も[B]のように意思決定する均衡
• このとき, Step 4でA君はrejectした場合の利得は0であるから, Step 4におい て(10 − qB) δ > 0を満たす,すなわちqB ∈ {0, 1, 2, . . . , 9}の提案のみを受け入 れる。
• B君はこのことを踏まえて, Step 3でqB= 9を提案する。
• よって B君はStep 2で rejectした場合 9δ の利得を得るから, Step 2において 10 − qA > 9δを満たす,すなわちqA∈ {0, . . . , 9 − ⌊9δ⌋}の提案のみを受け入れる。
• A君はこのことを踏まえて, Step 1でqA = 9 − ⌊9δ⌋を提案する。 以上の(a)から(d)のような部分ゲーム完全均衡が存在する。
注意. δ が十分大きいとき, (a)や(b)の部分ゲーム完全均衡ではA君の得られる利得が0 になる。この場合, Step 1でどの提案をしてもB君がacceptしてくれるのはA君の取り分 が0になるような配分だけなのだから,とacceptされないこと前提の配分を提案するよう な部分ゲーム完全均衡も存在し得る。このような部分ゲーム完全均衡は,提案する価格が連 続の場合は存在しない。
講評
1. 講義中に取り上げたものの類題ということもあり,全体的によく出来ていました。
(a)よく出来ていました。
(b)ゲーム全体自体を部分ゲームとして挙げ忘れている答案がいくつかありました。部分 ゲーム完全均衡の定義から,全体のゲーム自体も部分ゲームとする方が妥当なことが掴 めるかと思います。また,今回の例では情報集合がつながっている箇所がありませんが, 不完備情報ゲームなど情報集合が繋がっている箇所がある場合の部分ゲームの扱いには 十分注意してください。
(c)よく出来ていました。
(d)(B, (S, B))をナッシュ均衡としてあげている答案がいくつかありました。O君が(S,
B)の戦略をとる場合, M君はBではなくSを選んだ方が利得が大きくなります。ナッ シュ均衡の定義を再度確認して下さい。
(e)よく出来ていました。 2.
(a)この部分は講義中に取り上げていた箇所の類題ということもあり,よく出来ていました。
(b)対称性を利用する際に,企業jの利得を
{A − b (q1+ (N − 1) qj)} qj− cqj と書いてしまい,ここから
qj = A − bq1− c 2 (N − 1)
としてしまっている誤答が多く見受けられました。偏微分をする際は,その企業が利得 を最大化する上でどの変数を変更できるかを意識してください。
この設問は院生向けの講義で出題されてもおかしくない設問で,やや難しかったと思い ます。
3. 1.(e)では動学ゲームの均衡をきちんと戦略の組で表記出来ていた人が多かったのですが,こ
の設問では単に逐次合理性を満たすナッシュ均衡における結果のみを記している答案が多く 見受けられました。例えば,講義スライド13のp.9において「部分ゲーム完全均衡」が指す 範囲は,両者の戦略の組,すなわち
Stage 2:
後手プレーヤー1 すべての提案x2∈ [0, 1]をAccept 先手プレーヤー2 x2= 0を選択
Stage 1:
後手プレーヤー2 x1≤ 1 − δをAccept, x1> 1 − δならRejectしてStage 2 先手プレーヤー1 x1= 1 − δ
の全体です。
また, 離散のケースならではの「rejectした場合より厳密に得をする場合のみacceptする」 という均衡についてもきちんと考えてられいた人は2名だけでした。非常に難しかったと思 います。