原子核の崩壊と
放射線
20世紀初頭....
古典力学(ニュートン力学&電磁気学)による理解が信じられていた時代
原子核はアルファ線、ベータ線を放出する事で原子番号をかえる 元素が変化
放射能は原子核内部のエネルギーによってつくられる
質量とエネルギーの等価性
放射性崩壊は確率的過程 量子力学による理解
古典力学の常識を覆す現象
原子核の崩壊
原子核の崩壊(壊変) 放射線
アルファ崩壊 アルファ線
ベータ崩壊 ベータ線
ガンマ崩壊 ガンマ線
デルタ線 X線
中性子線 重粒子線
Z
A
X
ZA−4−2Y
24He
Z
A
X
ZA1Y e
−
eZ
A
X
ZA−1Ye
eZ
A
X e
−
ZA−1Y
eβ+崩壊
電子捕獲
原子核の崩壊過程
陽子数 Z
中性子数 N
Z AX
Z−2 A−4Y
Z−1 A X' '
Z1 A X'
γ線放出 α崩壊
β崩壊
β+崩壊、電子捕獲
半減期・平均寿命
単位時間当たりに
1個の原子核が崩壊する確率 λ N 個の原子核が存在し、
dt という時間間隔に
dN 個の原子核が崩壊すると
dN
dt =− N
N = N
0e
−λ t=N
0e
− tT
T: 平均寿命
半減期
N0 個の原子核が N0/2 個に 減少するのにかかる時間 1
2=e
−thalf T
thalf =ln 2×T =0.693×T
thalf
T =0.697 0.5
岩石の年代測定
親の原子核 子の安定原子核 半減期(億年)40K 40Ar 13
87Rb 87Sr 470
232Th 208Pb 139
235U 207Pb 7
238U 206Pb 45
親の原子核 子の安定原子核 半減期(億年)
40K 40Ar 13
87Rb 87Sr 470
232Th 208Pb 139
235U 207Pb 7
238U 206Pb 45
thalf=ln 2×T =0.693×T
ある岩石が出来た時点で、親となる原子核が N0 個含まれていたとする。 時間 t が過ぎると親の原子核はの数は
親と子の原子核の総数は N0 に等しい。
親と子の原子核の数をそれぞれ測定出来れば、経過時間が分かる。
N = N
0e
−λ t= 1 T
アイソトープに関する情報の入手
Tabe of Isotope
アイソトープ手帳 アイソトープの電話帳 お手軽
最近はDVD版もあり
無料で公開されている。
http://www.nndc.bnl.go v/wallet/
などなど
Table of Isotopes
オンライン版の情報 http://ie.lbl.gov/toi.html
アイソトープ手帳
代表的な核種
原子核・素粒子物理では、検出器の較正用に さまざまな「密封線源」がよく利用される。
核種の違い
ー 放射線の違い
α線、β線、γ線、中性子線 ー 放射線のエネルギーの違い
エネルギー較正
Particle Data Bookより
アルファ崩壊: 強い相互作用
Z
A
X
ZA−2−4Y
24He
質量数が200を超えるような 重い原子核における重要な崩壊
なぜ4Heなのか?
4Heの束縛エネルギー = 28.3 MeV
原子核の束縛エネルギー
B(Z,A) / A
A~60 で最大
~ 8.7 MeV
~ 7.6 MeV
B Z , A=Z M H N M n −M A , Z
核子当たりの束縛エネルギー B(Z,A) / A
・ A ~ 60 あたりで最大
・ A > 16 で約 8 MeV
7.6 < B/A < 8.7 MeV
91
231Pa : 33.807 MeV
90
229Th : 29.587 MeV
90
228Th : 26.772 MeV
H : 7.29 MeV
2
3He : 14.93 MeV
2
4He : 2.43 MeV
92
232U : 34.611 MeV
アルファ崩壊
Q =m
i A , Z −m
f A−4, Z −2−m
4,2
Q =B( A−4, Z −2)+B(4,2)−B( A , Z )
B A , Z =Z M H−u A−Z M n−u−
M p−u =6.8 MeV /c2
M n−u =8.1 MeV /c2
M H−u =7.3 MeV /c2
B(4,2)=2 (7.3 MeV)+2(8.1 MeV)−2.425
92
232
U
91231Pa H −6.5 MeV
92
232
U
90229Th
32He −9.9 MeV
92
232
U
90228Th 5.4 MeV
4
Heの大きな束縛力(小さな質量偏差) → アルファ崩壊が起きる理由
B(4,2)=28.4 MeV92
232
U
91231Pa H−6.5 MeV
92
232
U
90229Th
32He −9.9 MeV
92
232
U
90228Th 5.4 MeV
Mass excess (質量偏差)の値
NUCLEAR WALLET CARDS より抜粋クーロン障壁とトンネル効果
92
232
U
90228Th 5.4 MeV
通常アルファ崩壊でアルファ線は 4~9 MeV 程度の
運動エネルギーを得る。 裳華房テキストシリーズ
「原子核物理学」より
重い原子核では
~ 25 MeV
4~9 MeVの運動エネルギーでは
25 MeV のクーロン障壁を越える事は出来ない 量子論
トンネル効果
アルファ崩壊の半減期: Table of Isotope から
核種 半減期 アルファ線のエネルギー Qα 核種 半減期 アルファ線のエネルギー Qα
トンネル効果によるアルファ崩壊の理解
アルファ崩壊の崩壊率 ω
ポテンシャルの壁とぶつかる回数 n 1回の衝突あたりの壁を通り抜ける確率 T
原子核の半径 R
原子核内でのアルファ粒子の速度 v
=n T n= v
2 R
崩壊率とアルファ粒子のエネルギー Qα の間の関係(ガイガー-ヌッタルの法則)
ln =ln v
02 R 8
R Z M c
2ℏ c −4 Z
M c
22 Q
Qα の-½乗に比例
核種 半減期 Q
α
212Po 3×10-7 s 8.8 MeV 236U 4.47 × 109 year 4.2 MeV
核種 半減期 Q
α
212Po 3×10-7 s 8.8 MeV 236U 4.47 × 109 year 4.2 MeV
ベータ崩壊: 弱い相互作用
n pe
−
eQ=mn−mp−me
Q=1.293−0.511MeV=0.782 MeV
Particle Data Book より
平均寿命 885.7 ± 0.8 s
原子核中でも中性子崩壊は起こる。
Z
AX ZA1Ye−e
Q=mX−mY−me
Q=M X−M Y (原子の質量)
(原子核の質量)
MX=mXZ me
M Y=mY Z 1me
MX−MY=mX−mY−me
27
60Co2860 Nie−e
β
+崩壊:
ZAX →
ZA−1Y +e
++ν
ep ne
eQ=mp−mn−me
Q=−1.293−0.511 MeV=−1.804 MeV 自然には起こらない
原子核中では
Z
AX ZA−1Yee
Q=mX−mY−me
M X=mXZ me
MY=mY Z −1me
M X−MY=mX−mYme
MX−MY−2 me=mX−mY−me Q=MX−MY−2 me
11
22Na1022Neee
Q=
11
22NA−1022NA−me
電子捕獲
Z
A
X e
−
ZA−1Y
e原子軌道を回っている電子を、
原子の中の陽子が吸収して中性子に変化
Z
AXe− ZA−1Ye
Q=M X−MY−Ben
n 番目の殻の電子の束縛エネルギー
ガンマ崩壊: 電磁相互作用
X線
Table of Isotop より
励起状態にある電子(原子)が 基底状態に遷移するときに
放出する光子
およそ eV ~ keV
励起状態にある原子核が 基底状態へと遷移するときに 放出する光子
およそ keV ~ MeV
長寿命の励起状態: アイソマー
アイソマー
半減期 2.8 時間の長寿命励起状態
その他に
ガンマ線の内部転換
励起した原子核がガンマ線を放出するかわりに電子を放出する過程
電子捕獲等により空孔ができる
・ 外殻の電子が空孔を満たして、特性X線を出す
・ 特性X線の代わりに、原子の励起エネルギーを電子1個に与える
→ 電子放出 (オージェ電子)
β+崩壊の例:
22Na
11
22
Na →
1022Ne + e
++ν
e原子中の電子と対消滅
e
++e
−→ γ + γ
γ線を2本放出
問
22Na のβ
+崩壊により生成されるγ線のエネルギーを求めよ。
22
Naのγ線スペクトル: NaI検出器による測定
22 Na
メスバウワー効果
原子の輝線・暗線スペクトル
http://www.s-yamaga.jp/nanimono/uchu/kousei-3.htm より抜粋
暗線と輝線の 波長は同じ
→ 再吸収可能
原子核による再吸収
原子核から放出されたガンマ線の、同種原子核による吸収は可能?
E '≃Ei−Ef
1− Ei−E f 2 M f
原子核の反跳を無視できず、ガンマ線のエネルギーは
原子核の反跳による影響
メスバウワー効果
特定の結晶では、ガンマ線放出時の反跳を 結晶全体
が受け止める。反跳は全く無視できるようになり、 ガンマ線の再吸収が可能となる。
無反跳のガンマ線放出・吸収
物質の構造によるガンマ線スペクトルの幅:
57Feの場合 Γ~4.6×10-9 eV
ガンマ線のエネルギーは E ~ 1.44×104 eV
E ~10
−13
1961年 ルドルフ・メスバウアー
ガンマ線の共鳴吸収についての研究とメスバウアー効果の発見
メスバウワー効果
http://www.rist.or.jp/atomica/data/fig_pict.php?Pict_No=08-04-03-06-02
無反跳放出された
ガンマ線のエネルギー
E '=E
1v c
E '−EE = v c =
4.6
1.44×10
−13
v= 4.6 1.4410
−13×3×1011mm/s v=0.1 m/s
ドップラー効果により
0.1 m/s 以上で動く線源から
放出されるガンマ線は再吸収されない
メスバウワー測定の例
付録
トンネル効果:詳しい導出
T=exp
−2∫
R R'
2 m
2 Z ' e2
r −E
1/ 2
dr
量子力学 WKB 近似を利用して
Z '=Z −2 R '=2 Z ' e
2
R=2 Z ' e E
2
B
G=−2
∫
R R '
2 m
2 Z ' e2
r −E
1/ 2
dr
G=
4 m Z ' e2R
1/2
cos−1
x−
x−x2
x= RR ' = E B r ∞ 1
2 m v
2=E= 2 Z ' e
2
R' v=
4 Z ' e2 m R'
G=4 Z ' e
2
v g x g x=cos
−1
x−
x− x2T=e−2 G G=4 Z ' e
2
v g x g x=cos
−1
x−
x− x2ポテンシャル障壁が大きい時
x≪1 G≃
2 m B R
2
B
E −2
=n T ≃ v0 R e
−2G
ln =ln