第5章
産業拠点地区における産業振興施策の展開
1
産業拠点地区振興の基本的な考え方
本市は,宇都宮,瑞穂野,清原の3工業団地の整備やテクノポリス計画の推進などに積
極的に取り組むことにより,工業都市として発展してきた。しかし,企業活動のグローバ
ル化の進展など経済環境の変化に伴い,生産拠点の再編・集約や廃業等により,市内の製
造業は,事業所数をはじめ,従業者数,製造品出荷額等がいずれも減少傾向にある。また,
経済活動や雇用に占めるサービス業の比率が高まる「サービス経済化」の進展に伴い,工
業団地等における企業立地の動向は,進出業種が多様化している。
一方,デジタル家電を中心に生産拠点の「国内回帰」の動きが活発化してきており,今
後も,高付加価値製品の研究開発・生産拠点は国内に,労働集約型製品の生産拠点は海外
へ,といった生産拠点の国内と海外の棲み分けがますます進展することが予想される。
こうした動向を踏まえ,本市産業の牽引力となる活力あるものづくり産業を集積するた
め,既存工業団地などの産業集積地を産業拠点地区として設定し,各地区の企業立地促進
や産業支援機能の方向性を示すものである。
産業拠点地区振興の基本的な考え方については,以下のとおりとする。
① ものづくり産業の集積維持・強化
「ものづくり都市」として今後とも持続的に発展していくため,既に工業団地に立地
している企業の生産・研究開発拠点としての事業継続の支援や,住工混在地域の立地企
業の移転促進,成長産業の誘致などの取り組みにより,既存の3工業団地をはじめ,東
谷・中島地区,宇都宮テクノポリスセンター地区への多様なものづくり産業の集積維持・
強化に努める。
② 非製造業の立地への柔軟な対応
産業構造の変化に対応した多様な産業活動により,都市の活力を創出するため,産業
拠点地区における事業所支援サービス産業等の非製造業の企業立地については,地域経
済の活性化や雇用の創出の観点から,産業拠点地区の立地環境や立地業種などを考慮し,
柔軟な対応を図る。
③ 個性ある産業拠点の形成
北関東地域及び広域都市圏の中核都市として発展していく上で,産業拠点地区間での
役割分担や連携を図りながら,産業拠点地区における産業集積や地域資源,立地環境な
どの地区の特性に応じた企業の誘導や高度な産業支援機能の充実により,個性ある産業
2
産業拠点地区の区分
第4次宇都宮市総合計画改定基本計画(平成15年2月)の「都市空間整備方針」にお
いて位置づけられている3つの『拠点』のうち,『産業拠点』の既存工業団地(宇都宮
工業団地,瑞穂野工業団地,清原工業団地)をはじめ,現在,都市再生機構が整備を進
めている東谷・中島地区(インターパーク宇都宮南),『都市拠点』の宇都宮テクノポリ
スセンター地区に加え,広域都市圏の中心地として多様な産業が集積する拠点となる都
心地区を対象として,地区の特性に応じ「産業拠点地区」を区分し,産業の集積や支援
機能の充実を図る。
ものづくり産業拠点地区
宇都宮工業団地・瑞穂野工業団地・清原工業団地
高度研究機能集積地区
宇都宮テクノポリスセンター地区・清原工業団地
複合機能型産業拠点地区
東谷・中島地区(インターパーク宇都宮南)
産業情報交流拠点地区
都心地区(中心地区・JR宇都宮駅周辺地区)
産業拠点地区
①
都市拠点
ア 都心地区 イ 宇都宮テクノポリスセンター地区 ウ JR雀宮駅周辺地区
②
産業拠点
ア 東谷・中島地区 イ 宇都宮・瑞穂野・清原工業団地
③
観光・文化・アメニティ拠点
ア 観光拠点 イ 文化・アメニティ拠点
3
産業拠点地区の現状と課題
地区名
ものづくり産業拠点地区
<宇都宮工業団地・瑞穂野工業団地・清原工業団地>
高度研究機能集積地区
<宇都宮テクノポリスセンター地区・清原工業団地>
現
状
・「サービス経済化」の進展に伴い,工業
団地における立地企業の動向は,サー
ビス業をはじめとする非製造業の進出
が増加している。
・その他,立地環境や立地企業などによ
り,以下の固有の問題が生じている。
①宇都宮工業団地
・遊休施設や施設用地を活用した非製造
業系の企業立地ニーズへの対応が求め
られている。
・工場等の移転後の施設用地に,産業廃
棄物処理業の立地が増加している。
・生産施設の拡大に伴い,工場立地法の
基準で必要とする緑地の確保が困難に
なっている。
②瑞穂野工業団地
・施設用地の区画が狭く,成長企業の生
産施設等の拡大が困難な状況になって
いる。
③清原工業団地
・高度技術産業が集積しており,本社機
能や研究開発機能を集約化している企
業が多数存在している。
・とちぎ新事業創出促進基本構想(平成
12年7月策定)において「高度研究機
能集積地区1」に位置づけられている。
・栃木県の産業支援機関(栃木県産 業振
興センター,栃木県産業技術センター
など)や,高度技術産業が集積してい
る。
・宇都宮テクノポリスセンター地区の分
譲価格(約7万円/㎡)は製造業にと
っては高値感があり,企業の立地に影
響があると考えられる。
・近隣工業団地も含め,生産,研究機能
の集約化などに伴い,従業員数が年々
増加しており,朝夕の通勤時における
交通渋滞が発生している。
課
題
・国内に集約しつつある高付加価値製品
の生産施設の工業集積地域として,工
業団地を維持していく必要がある。
・立地企業が連携し,工業団地としての
一体的な取り組みが必要である。
・栃木県の産業支援機関の集積を活用し
た企業立地の促進が求められている。
・高度技術産業の集積維持,及び本社機
能,研究開発機能の集約化への対応が
必要である。
・交通渋滞の緩和対策が必要である。
地区名
複合機能型産業拠点地区
<東谷・中島地区(インターパーク宇都宮南)>
産業情報交流拠点地区
<都心地区(中心地区・JR宇都宮駅周辺地区)>
現
状
・福田屋百貨店の立地を契機として,商
業店舗やアミューズメント施設の立地
が進み,交通渋滞が懸念されており,
これ以上の大規模工業流通施設地区 へ
の大型商業施設の立地は,交通渋滞対
策や商業集積の観点から課題が多い。
・工場や物流・業務施設は,倉庫,研修
所が各1社ずつ立地し,今後,工業系 で1社立地の見込みはあるが,依然と
して工業・物流系企業の立地が低迷し
ている状況にある。
・東谷・中島地区に立地意向を示す物流業
や製造業は,分譲価格(6~7万円/㎡) に高値感を感じている。
・都心地区内に立地する企業は,ほとん
どの業種で減少傾向にある。
・都心部の居住人口は,減少傾向にある。
・商店等が密集している大通りにおいて
空き店舗が多く商店街の通行量は減少
傾向にある。
・JR宇都宮駅東口地区においては,清
原工業団地等が立地する高度技術産業
ゾーンの玄関口としての立地特性を活
かし,高次な都市機能や業務機能の充
実強化,産業支援機能の導入を検討し
ている。
課
題
・集積した商業施設と共存し得る複合的
な機能を有する工業・流通業務団地と
して,企業立地の促進や支援機能の充
実を図る必要がある。
・都心地区の特性に応じた企業の集積や,
産業振興につながる高次な都市機能・
業 務 機 能 の 充 実 強 化 を 図 る 必 要 が あ
4
産業拠点地区における産業振興の方向と施策
地区名
ものづくり産業拠点地区
<宇都宮工業団地・瑞穂野工業団地・清原工業団地>
高度研究機能集積地区
<宇都宮テクノポリスセンター地区・清原工業団地>
産業振興方向
ものづくり産業の集積を維持するととも
に,団地内企業の連携強化を図る。
高度技術産業の集積維持及び研究開発機
能 の よ り 一 層 の 集 積 促 進 を 図 る と と も
に,産業支援機関の利用促進に努める。
産業振興施策
○ものづくり産業の集積促進
・工業団地への製造業の移転・集積を図
るため,各工業団地の立地環境や立地
業種などを考慮しながら,工業団地管
理団体と立地企業等による企業立地に
関する協定締結の促進や,地区計画2の
策定などにより,優れた魅力ある環境
を整え,企業立地の誘導を図る。
・工場跡地などの未利用地への製造業や
特 定 サ ー ビ ス 産 業3の 立 地 促 進 を 図 る
とともに,空き工場等の遊休施設の活
用促進について検討する。
○工業団地内企業の共同化事業の促進
・工業団地内の企業が連携して取り組む,
ゼロエミッション化や新製品開発など
の共同化事業を促進する。
○試験研究施設,マザー工場の集積促進
・次世代モビリティ産業などの試験研究
施設やマザー工場のより一層の集積を
促進するとともに,製造業,特定サー
ビス産業の立地促進を図る。
○産業支援機関の利用促進
・企業の新技術・新製品開発や技術高度
化などを支援する「栃木県産業技術セ
ンター」と,新事業や新分野への取り
組みなどを支援する「とちぎ産業交流
センター」が有する産業支援機能の利
用促進に努める。
2 地区計画は,特定の地区内において,良好な市街地環境の形成・保持のため,施設整備・建築物の 整備 ・
地区名
複合機能型産業拠点地区
<東谷・中島地区(インターパーク宇都宮南)>
産業情報交流拠点地区
<都心地区(中心地区・JR宇都宮駅周辺地区)>
産業振興方向
工業・流通・業務機能が調和した複合的
な 産 業 の 集 積 及 び 支 援 機 能 の 導 入 を 図
る。
交流機能や高度情報機能など高次な都市
機能や業務機能の集積を図る。
産業振興施策
○生産・物流・業務施設の重点的な立地
促進
・複合的な機能を有する工業流通業務団
地の実現,土地利用計画にふさわしい
業種の立地促進を図るため,都市再生
機構との間で企業立地に関するルール
を確立する。
・製造業,物流業,特定サービス産業の
立地促進を図るとともに,特に,中小
製造業の立地を誘導する。
○産業支援施設の整備検討
・複合的な産業集積の形成を促進するた
め,商業施設と相互に相乗効果が期待
で き る 見 学 可 能 な 工 房 等 の 生 産 機 能
や,生産機能と連携し たものづくり人
材育成機能などを有する産業支援施設
の整備の可能性についても検討を進め
る。
○事業所支援サービス産業の集積促進
・ソフト系IT産業,デザイン業などの
事業所支援サービス産業の集積を促進
するとともに,民間施設を活用したイ
ンキュベーション施設の整備を促進す
る。
○次世代産業人材の育成
・次世代の経営者に求められる経営能力
を高めるため,大学や民間教育機関等
との連携により,技術経営(MOT)
や経営学修士(MBA)などを修得で
きる経営者養成講座等の利用を促進す
る。
○産業情報交流機能の整備
・JR宇都宮駅東口地区において,市民
や国内外の一般消費者から専門家まで
幅広く対象として,次世代モビリティ
産 業 を は じ め と す る 地 域 産 業 へ の 理
解・関心の向上,人や情報の交流を促
進するための産業情報交流機能の整備
産業拠点地区位置図
中心地区
宇都宮工業団地
宇都宮テクノポリスセンター地区
清原工業団地
瑞穂野工業団地
東谷・中島地区(インターパーク宇都宮南)
東
北
自
動
車
道
宇都宮 I.C.
鹿沼 I.C.
東
北
新
幹
線
宇都宮環 状線
JR宇都 宮線
JR宇都 宮駅 東武宇都 宮駅
JR雀宮 駅
北関東自 動車道
宇都宮上 三川 I.C.
国
道
4
号
国
道
新
4
号
JR宇都宮駅周辺地区
産業情報交流拠点地区
複合機能型産業拠点地区
ものづくり産業拠点地区