第 11期 プ ロ ・ ナ ト ・ ン ー ラ ・ フ ァ ン ド 勣 成 成 果 報 告 書 ( 2002)
名古屋束部丘陵地のトウキョウサンショウウオの生息調査
ネイチャークラブ東海
篠田陽作・原田秋男・秋田貢・小川英作
The habi t at r es ear c h of Tok y os ans houo i n t he eas t em hm of N agoy a
Nat ur eCl ub Touk ai
Yous ak u Shi noda, Ak i o Har ada, Mi t ugu Ak i t a, Ei s ak u Ogawa.
要約
トウキョウサンショウウオの生息域は海抜約 300mまでの里山や雑木林、水田などの近くです。 しかし近年その様な地域は都市化で開発され、ほ とんどが生息出来なくなっています。 10年程前に 愛知県のトウキョウサンショウウオの生息調査を 行なった後、生息地域の開発が進んで既になくな った所も見られるので、今回再確認の為に名古屋 市東部の開発の進んでいる場所の調査のみ限定し て行ないました。やはり高速道路や宅地の造成な どにより失われた部分と、周囲の環境の変化の為 に生息出来なくなった場所があり、これから開発 される予定地になっている場所もあり絶滅も時間 の問題かと思われます。
はじめに
今回の調査では特に都市化の進んでいる地域を 調査しましたが、それらの中で10年前から生息が 続いている場所は、公園であったり湿地として保 全や保護されている場所であったり、名古屋市の 緑地保全地域や公園予定地として開発から逃れた 所のみで、それ以外のところではほとんど生息で きる環境はなくなっていました。このことから今 後保護するならば早めに生息を確認し、その場所 を保護地域の指定や市民の保全活動で囲い込みを する必要があるのではないかと思いました。
調査方法について
基本的には十年前に生息が確認された場所の再 確認を行ないました。ほとんど名古屋市内ですが、 さらにその周囲で生息の可能性がある場所を一部 調べました。2月の始めから3月にかけての産卵時 期に、湧水や水たまりのある場所を全て探しなが ら確認をする作業によって生息を確認しました。 しかし一度では見落としや産卵のタイミングに合 わない場合もあるので、同じ場所を少なくても2 週間ぐらいの時間差をつけて2度から3度確認に廻 りました。場所により水温や気温に幅があり、か なり産卵の時期に幅があるのではないかと思われ ました。今回は卵の確認作業のみで時間がなかっ たですが、今後このような生息環境や産卵の条件 などの調査も行なっていく必要があると思いま す。
最初の予定では2名での調査をしていましたが、 調査地域内にある水溜まりや湧水など意外に数が あり、さらに2名の応援を得て終了する事が出来
ました。実際に直径30c m程の水溜まりや、わず かな窪地の草の間などでの産卵も見られ、逆にそ のような意外な場所の卵は盗難にあわず残ってい ました。今回の調査では地元でトウキョウサンシ ョウウオの保護や保全に関わっている、平和公園 自然観察会や名東自然クラブ、大森自然観察会、 束山自然観察会などの方々の協力もいただきまし
た。
調査結果について
今回の調査では実際の調査地点は18ケ所です。 その中で今回確認出来たのは6ケ所で、10年前に 確認できて今回確認できなかった場所は3ケ所で す。今回新たに確認出来た場所はなく、特に4年 前に生息場所のデーターが流出して、その翌年に 大量の卵が盗難に遭ってから、毎年同じ業者とみ られる卵の盗難が続いているので、全体の個体数 が減っているのか卵の数も少ないのが気にかかり ます。さらに各生息地間の交流が隔絶されてしま い交配の条件がせまくなったのか、卵塊の中の卵 の数も少なくなっているような状態です。このま まではいずれ絶滅の心配もあり、今後各生息地間 の個体の交流を人の手で行なう必要もあるのでは と考えられます。各生息地は完全に飛び地状態で、 個体交流は全く出来ない状態です。種の保存のた めにも組織的にそれらの問題を考え、実行する事 が今後必要です。そのためにも今回の生息状態の 確認はその第一歩として意味のある作業であると 思われます。今後は愛知県全体での再調査と卵の 数や成体の数の調査、その生息地を今後の開発か ら守るための方法や、交流をさせる場合のソーン ニングの設定など色々な作業が必要だと思われま す。本格的な保護と保全のためのプロジェクトを 始めないと手遅れになります。
今回の調査で簡単に生息していた場所の水の pHを計ってみましたが、平均で5−6の間ぐらい ですが中には4ぐらいの場所もあり、東海地方独 特の湧水型の湿地の水を利用していると思われま す。今後保護や保全をする時には、このような湿 地とー体としての保護や保全も有効な手段かと思 われます。今回確認出来なかった場所のうち一つ はバイパスエ事により生息地がなくなってしまっ た例でした。もう一つは生息地の沢の上流に大き な団地と病院が作られ、そのため沢の水がなくな り雨水のみが流れる状態となり、産卵期にはほと んど水がなく、たまに雨が降ると土砂が流れ卵が 埋まったり流されたりする状態で、今回は確認で きませんでした。
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もう一ケ所は昨年九月に束海地方を襲った集中 豪雨で土石流が発生し、産卵する沢仝体が埋まって しまい水流や湧水もなくなってしまった場所です。 このように災害や開発によって産卵場所がなく なった場合でも、その周囲50mぐらいの範囲に数 箇所の代替えの水のある場所を造っておくとそこ に産卵する場合もあります。今までも公園の造成 や道路の造成で産卵場所がなくなった場合には何 度も成功していますが、その場合卵を回収してよ り安全な場所に移す必要があります。その場合成 体になった個体を元の生息場所に戻す必要があ
り、やはり飼育する必要が出てきます。しかしど こまで人の手を掛けていいものか、そのあたりの 判断は非常に難しいものがあります。
今後の保全と保護について
今後はトウキョウサンショウウオの生息する地 域全体での生息調査と、その現状を参考とした総 合的な保護のためのアクションが必要だと思いま す。そのためにも各地域での活動をネットワーク する必要と、お互いの情報の交換や問題の解決の ための協力が必要と思われます。5年程前に愛知 県の環境部の自然保護課からの依頼で、宅地造成 地の中にあるトウキョウサンショウウオの生息地 を、そこから900m程離れた場所へ移動しました。 これは3年がかりで行ない現在も無事に生息して います。その時のノウハウを使えば、かなりの確 率でグループ仝体の移動が行なえると思います。 そのような手段や方法なども使い、今後真剣に保 護に乗り出さないと、個体数が繁殖の限界に近づ きつつあるような状態であると思われます。私た ちも個々に努力はしていきますが、自然保護協会 もトウキョウサンショウウオのフォーラムやサミ ットを考えていただけたらと思います。それとも 私たちが助成をいただいて行なう方が良いのでし ょうか。このあたりも今後の課題だと思われます。 トウキョウサンショウウオの保護や研究をなさっ ている方、是非ご連絡を下さい。一度皆さんとお 話がしたいと考えています。
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地 図 の 解 説
今 回 の 調 査 で は 名 古 屋 市 内 の 東 部 丘 陵 地 で の 生 息 調 査 を 行 い ま し た 。 10年 前 の 調 査 で は 周 辺 の 日 進 市 、 長 久 手 町 、 束 郷 町 、 尾 張 旭 市 な ど も 含 め て 行 い ま し た 。
① の マ ー ク は 1980年 以 前 に 確 認 さ れ て い た 場 所 で す 。
② の マ ー ク は 1922年 に 確 認 さ れ た 場 所 で す 。
③ の マ ー ク は 今 回 確 認 で き た 場 所 で す 。
① ② ③ と 並 ん で い る 場 所 は 20年 前 か ら 現 在 ま で 続 け て 確 認 で き て い る 場 所 で す 。
写真は今回確認できた現状の写真です。
① 東 山 地 区 で 発 見 の 卵 。
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⑤守山地区の雨池の産卵場所
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②束山地区で発見の成体
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④大森地区での生息地
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⑥平和公園での産卵場所
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⑦明徳地区での産卵場所 ⑧明徳地区の人工の産卵池
⑨明徳地区の人工の産卵池 ⑩猪高地区の産卵場所
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⑥猪高地区の産卵場所 ⑩猪高地区の湿地帯