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シンプルプレゼンと生徒の出力を重視した授業実践 アクティブラーニング型授業導入の一つの試み

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Academic year: 2018

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……… 第46回関東理科教育研究発表会

 1 はじめに 昨年度まで「物理」の状況

筆者の勤務校では,ほとんどの生徒が4年生大学進学希望であり,7クラス280名の内,理系クラスは130 名程度が選択している。その130名の内,物理を選択する生徒は4,5年前は70 ~ 80名だったものが,今年 度は60名程度まで減少してしまった。また,教師間でも,生徒の間の評判でも,物理は難しく点数が取りに くいという評判が定着しているように思える。事実,定期的に行われる模試分析においても,物理は全科目 の中でも,最低に近い偏差値に定着してしまっている。

もちろん過去に於いても現在でも物理担当者はこの状況を打破すべく,課外やオリジナルの教材作成,実 験の改良などの様々な手立てを打ち出し実行してきたが,目立った効果を出すことはできなかった。 そこで,原点に立ち返り,最も多くの生徒に最も多くの時間を費やす授業の改革を試みることとした。 2 授業改善の目指しているもの

 解決すべき問題点として,2点に集中することとした。

(1)受験に耐えうる学力の養成。ただし,もちろん本番の試験で成果を試すことはできないので,模擬試験 の偏差値の向上で成果を判断することにした。

(2)生徒による授業の評判を上げることである。これは,昨年度から,大手予備校に依頼し生徒向け授業ア ンケートとその分析を行っているので,その評価によって成果を判断できる。もちろん,生徒にとって楽 な授業では無い。受験に役に立たないような授業は生徒は評価しない。本校では厳しいという評判の教師 が生徒に人気があるのは珍しいことでは無い。

 もちろん,物理の授業が目指すものは学習指導要領にもうたわれているが,上記の目標が達成される過 程で自然と満たされて行くはずである。

3 アクティブラーニング型授業を採用した理由

 上記の目標を達成すべくアクティブラーニング型の授業を試みたのは次の7点からによる。

(1)生徒の問題演習はそのまま受験対策であること。従来の座学の一斉授業では生徒自らが考え表現するこ とが無かった。授業で分かったつもりになっても,模擬試験で太刀打ちできないのは当然である。試験対 策のため,演習中心の課外を設定しているが,部活動や他教科の課外との兼ね合いもあり,多くの時間を 実施することはできなかった。

(2)板書とその書写を行わず,プレゼンとプリントで生徒に教材を提示する。従来の一斉授業で,生徒から は不評で教師としても問題を感じていたのが,板書とその書写である。生徒アンケート調査では,板書に 関しては矛盾する評価が現れた。つまり,速すぎると遅くて暇である,あるいは,内容が難しいと説明が くどい,等である。例えば,公式の導出過程もどこまで説明を記入するかは毎回悩みの種である。「tを 消去して」ですむ生徒もいれば,次ぎに「at を移項して」と書かなければならない生徒が並んで学習し ているのである。また,文献4によれば,他人が行った公式の導出を書写しても,ほとんど効果が無いと 言う研究もある。そこで,板書は全面的に廃止,PCを使ったプレゼンを行い,その画像資料は全て印刷 して配付し,生徒に書写を要求しないことにした。

(3)演習時間が確保できること。(2)を効果的に短時間で行うことによって,(1)の演習時間を確保できる。 従来の一斉授業では特に生徒の書写の不揃い等によって演習時間を確保することは不可能であった。 (4)生徒相互の磨きあいを活用できること。生徒は大変熱心でよく質問に訪れるが,教師の人数と時間には

当然制限があり,すべての希望に応えることはできない。そこで,理解の速い生徒は,そうで無い生徒へ 学習の援助を行うことを求めることにした。このことは生徒相互に良い影響があることが分かっている。

シンプルプレゼンと生徒の出力を重視した授業実践

アクティブラーニング型授業導入の一つの試み

       茨城県立鉾田第一高等学校 

海老澤 功

 

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千葉大会

教えられる生徒は当然であるが,教える生徒も曖昧に理解していた点がはっきりするなど学習効果がある。 そして,このことが授業中に行えるのは大きな効果が期待できると考えた。

(5)確認テストの効果。実際に問題が解けるまでには,何度も練習が必要である。授業で演習だけで済ませ たのでは,以前よりはましだが,大きな効果は期待できない。演習した直後に同じ問題であっても,考え て書くことは大変効果的であろうと考えた。

(6)家庭学習,自学自習の増進が期待できる。上記までの効果で授業時間内の生徒どうしの学習の雰囲気が 盛り上がれば,授業時間を超えてさらに学校外,家庭での学習に良い影響が波及していくことが想像に難 くない。

4 シンプルプレゼンの意義

 アクティブラーニング型授業については上記のように高い効果を期待していたが,なかなか実施に踏み切 れなかった。それは,この授業法の根幹である,短時間で効果的なプレゼンができなかったからである。全 面的なアクティブラーニング型授業以前にパワーポイントによるプレゼンを何度か試したが,生徒に寝られ てしまうのである。この授業形態に全面的に踏み切ったのは,昨年の関東大会の発表で文献5,6に出会っ たからである。現在もプレゼンは試行錯誤中であるが,作成の方向性が示されているので大いに不安を払拭 することができた。

5 現在の授業内容

 いくつかの文献を参考にして,現在は50分授業を次のような構成にして実施している。  (1)「予習確認テスト」実施

 (2)パワーポイントによる説明  (3)グループでの演習

 (4)演習問題の解説  (5)「確認テスト」の実施  (6)「確認テスト」の相互採点

当初,文献1,2,3の小林氏の方法をそのまま取り入れ実施する予定だったが,物理実験室の机の配置, その他の要因もあり,普通教室での実施とした。(1)「予習確認テスト」は小林氏の方法には無かったが, 機材の移動と設置する時間の兼ね合い,また効果的なプレゼンにはある程度の予習も必要なこともあり,途 中から導入した。文献4にも導入事例がある。リフレクションカードについては不定期の実施とした。 6 現在までの成果

昨年12月から物理基礎,今年度は4月から化学基礎と地学基礎で全面的に導入した。模擬試験については 実施していないが,7月末に昨年度と同様に大手予備校による生徒の授業アンケートを実施したところ,各 項目に渡って生徒の評価が上昇し,昨年度は学校全体ではほぼ最低に近い評価だったのが,平均を超えるこ とができた。直接生徒と話したところでは,現在の授業を継続して欲しいという意見ばかりであった。 7 今後の課題

現在,最も大きな問題はプレゼンとプリントの準備である。おそらくは習熟して行くしか無いのであろう が,残された時間は少ない。

8 文 献

○アクティブラーニング全般については

1)小林昭文「アクティブラーニング入門」産業能率大学出版部 2)小林昭文他「アクティブラーニング実践」産業能率大学出版部

3)小林昭文・成田秀夫「今日から始めるアクティブラーニング」学事出版

4)エドワード・F・レディッシュ 日本物理教育学会監訳「科学をどう教えるか」丸善出版 5)ガー ・レイノルズ「シンプルプレゼン」日経BP社

○今回の研究と発表の契機となったのは次の研究です。感謝申し上げます。

6)群馬県立藤岡中央高等学校 岡田直之「シンプルプレゼンのすすめ」第45回関東理科教育研究発表会会誌p26

参照

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