2007年 5 月 14 日 京都大学 尾池和夫総長
工学部 7 号館改修工事に対する公開要望書
京都大学農学研究科生物資源経済学専攻院会
私たち,京都大学農学研究科生物資源経済学専攻院会(以下院会と略)は,農学研究科生物資源経済学 専攻に在籍する大学院生全員が会員として所属する組織です.院会は「会員の諸要求の実現,研究と生活 の諸条件の改善ならびに会員相互の交流」(院会規約第 2 章より)を目的とし,専攻と交渉を行い、合意の もとにさまざまな事務的計画や作業への協力を行ってきました。
現在、生物資源経済学専攻の教員及び院生は、農学部本館の改修工事に伴い、2006 年 4 月より 3 年間の 予定で工学部 7 号館の一部に仮移転を行い、研究活動を行っております。院会は、農学部本館の改修工事 が終了する 2009 年 3 月まで工学部 7 号館に「仮移転」し、農学部本館に恒久的な「本移転」を行うとい う専攻との約束の下に、工学部7 号館への移転を了承し、かつ、移転計画の作成や荷物の梱包作業といっ た諸作業に協力をしました。
3年間という長期の仮移転は農学研究科の他専攻と比較して著しい長期間にわたるものです。さらに、農 学研究科による突然かつ度重なる移転先等計画内容変更への対応、研究環境の維持のために院会が要した 努力、移転にともなう作業や専攻司書室閉鎖などの個々の院生に対して課された負担は膨大なものでした。
ところが、今年 3 月に、工学部 7 号館の改修工事が本年度中に行われ、別施設への移転を行わなければ ならないという「事実」が院生に伝えられました。3 年間の工学部7 号館への仮移転という前提がある以 上、院会として別施設への再度の仮移転を了承することはできません。わたしたち院会では、臨時総会を 開催し、院生の総意として、現段階での工学部 7 号館からの再度の仮移転に反対すること、および一切の 作業への協力を拒否することを決議しました。
この間、二回にわたり農学研究科長と話し合いを持った結果、以下のことが明らかになりました。
1. 農学研究科は、工学部 7 号館を農学部本館からの仮移転先として決定する際に、京都大学が進めている、 長期間にわたる「キャンパスの再配置計画」に伴う改修工事計画のリストのなかに工学部 7 号館が入って いたことを認識していた。しかしながら、通常時に認められる予算を考えると、3年間の間に改修工事が行 われるという予想ができなかったほどその優先順位は低かった。平成 18 年度の補正予算で認められた改修 工事費用は、通常時の予算を考えると予想できないほど莫大なものであった(奥村現研究科長の話では 5 から 6 年分相当)。
2. 農学研究科は、工学部 7 号館を管理する本部施設環境部と 3 年間の契約で工学部 7 号館の使用許可をと っているのではない。単年度ごとに使用許可をとることが通例になっている。農学研究科は、上記1にも あげた理由から、本部との間で 2006 年から 3 年間工学部 7 号館を使用することで合意ができていると認 識しており、単年度ごとの使用許可申請は、形式上のものであると認識していた。
3. 農学研究科は、本部の描く再配置計画の全体的構想やタイムスケジュール、それらが農学研究科以外の 各部局に及ぼす影響、現在各部局が抱える問題や対応策について把握できていない。本部の再配置計画へ の対応は各部局が個別に行っている。
私たちが強調したいことは、今回の問題が農学研究科内部のみの問題ではなく、キャンパス再編という 過程に生じたより幅広い問題であるということと、この問題の根源は、補正予算の金額が予想を大幅に上 回る「予定外」のものだったということにある、ということです。
農学研究科は幅広い計画とその運用実態の全体像を把握することなく、個別的な対応に終始しているわ けですが、このことは決して農学研究科のみに責任が帰せられるべき特殊な問題ではないでしょう。キャ ンパス再配置計画の遂行に当たっては、本部と各部局との間で個別にトップダウンのやり取りが交わされ るのみであり、このことがすなわち、農学研究科を初めとした各部局に対し、全体的展望を持てないまま での場当たり的対応を強いていると考えられます。
こうした旧態依然とした枠組みは、予定外の事態に対応することは出来ません。無理に対応しようとす れば、より弱い立場のものに対し個別部局内でのトップダウンによる矛盾の押し付けが繰り返されるだけ です。予定外の出来事に対する対処方法が、すべての矛盾を院生に押し付けるという解決方法でよいので しょうか。私たちはこのような解決の道に、決して賛成できません。それは単に私たち大学院生自身にと って負担であるという意味だけからではなく、予定外の事象に向き合うときに「契約」を盾に、一切の実 態を無視し、一方的に物事を押し進めるというあり方が、「学知」を生み出す場、高等教育機関としてあま りにも不適切であると考えるからです。
いかに契約が単年度であったとしても、本部は農学研究科が 2006 年 4 月から 3 年間の間農学部本館の 改修に伴う仮移転先として工学部 7号館を使用していることを当然認識しているはずです。それにもかか わらず、本部は工学部 7号館の改修工事計画を向こう2年間凍結することをしませんでした。それどころ か、私たちの把握する限り、ただの一度の状況調査、ヒアリングすらおこなわれていません。私たち大学 院生は押せば動く荷物ではありません。
平成 18 年度の補正予算で認められた改修工事予算は,農学研究科にとって予想外のものであったように、 他の部局、そして、改修工事計画を立案した本部にとっても予想外のものであったと考えられます。改修 工事に伴う移転計画は、それが大学内での建物の貸し借りという形で行われる場合、その影響は単に改修 工事が行われる当該部局の範囲内にとどまるものではありません。限られた施設の中で改修工事計画を実 行していく以上、予定外の規模の改修工事を突然行えば、学内に混乱が生じることは明らかです。工学部 7 号館の問題は従来の枠組みによる処理方法の破綻をはっきり示すものといえます。私たち院会は、今回の ような問題を解決するためには、全体計画を担当する本部と影響を受ける各部局そして建物を利用する院 生、こうした当事者間同士で話し合いを行いその問題を解決していく新たな枠組みが必要であると考えま す。
<要望>
生物資源経済学専攻院会は、工学部 7 号館の改修工事の延期を求めるとともに、工学部 7 号館の改修工事 に伴い発生した問題について、京都大学執行部の責任において、改修工事計画の責任機関,農学研究科, 生物資源経済学専攻院生との間で話し合いの場を設定し、話し合いの中で解決策を決定する枠組みを設置 していただけるよう要望します。
尚、この要望書に対する回答を、遅くとも 5 月 25 日までに農学研究科長にお伝えくださるよう、お願い 申し上げます。
以上