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第 14 章 資産価格の決定
14.1 資産価格の意味
資産価格の決定: その資産が将来生む収益より資産価格が決定。
• フローである毎期の収益がストックである資産の価格を決める。
現在割引価値 (Present Discouted Value): 将来に得られる収益を現在の価値に直すこと。
• 同じ金額でも、現在と将来でお金の価値が異なる。
• 簡単に考えれば、お金には利子がつくから。
• 利子率 (r) が 3%だとすると、
– 現在の 10,000 円は 1 年経つと 10,300 円になる。
– 1年後の 10,000 円の現在の価値に直すと、利子分割引く必要がある。結果、 P V = 10, 000 × 1
1 + r = 1
1 + 0.03 = 9, 708
14.2 資産価格の決定
例、不動産の価格: 賃貸として貸出した際の収入 (D) より計算 (一定で毎年まとめて決済と仮定)。
• 1 年後の D 円の価値:1+rD
• 2 年後の D 円の価値:(1+r)D 2
• 3 年後の D 円の価値:(1+r)D 3
• 不動産の価値 (P ) は毎年生まれる賃料の現在割引き価値の合計として考えられるので、 P= D
1 + r + D (1 + r)2 +
D
(1 + r)3 + ... = D
r
• したがって、不動産の価格は将来にその不動産が生む収益と利子率が決定。
• ただしリスクがある場合は、利子率+リスクプレミアム (ρ) で割引く。 P = D
r+ ρ
上級ミクロ経済学:影山純二 例題 1: 大学近辺にあるファミリー向け不動産の家賃は年間 2,000,000 円ほどである。利子率+リ スクプレミアムを合わせた割引率が 5%だとすると、大学近辺のファミリー向け不動産の資 産価値はどれくらいかと推測できるか。
例題 2: 利子率が低下した際、不動産価格はどうなると考えられるか。
14.3 株価
株を買うことの意味: 企業に対する所有権の一部を買う。
• 経営に対して首を突っ込むことができる。
• 企業が得た利益の一部を配当として受け取る権利がある。
• 株価の上下により、利益を得る (損失を被る) こともある。
株価の決定: 値上り益+配当 (価格比): Pt+1Pt−Pt +DPtt (Pt: t期の株価、Dt: t期の配当)
• 裁定条件: 他の資産と比較して、リターンが等しくなるようにお金が動くので、 Pt+1− Pt
Pt
+Dt Pt
= r + ρ
• 配当が一定で、現在の株価が将来の株価に対して中立だと考えると Pt= D
r+ ρ 不動産の例と同じ。
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上級ミクロ経済学:影山純二
• 配当が異なる場合、裁定条件より、 Pt= Dt+ Pt+1
1 + r + ρ, Pt+1=
Dt+1+ Pt+2
1 + r + ρ したがって、
Pt=
Dt
1 + r + ρ+
Dt+1
(1 + r + ρ)2 +
Dt+2
(1 + r + ρ)3 + ... Pt=
!∞ i=0
Dt+i
(1 + r + ρ)i+1 結論: 株価は配当、利子率、リスクプレミアムで決定。
• とくに配当は企業の業績によって大きく変化するので、株価は将来の企業業績 (予想) に大きく影響される。
マクロ的影響: 株価が資産効果を通じて現在の景気に影響を与えることもある。 適切水準からの乖離: 美人投票と同じ原理で株価が決定することも考えられる。
• 自分が美人だと思う人に投票せず、他人 (社会) が見て美人だと思われる人に投票。
• 株も、株価が上昇しているから、(その理由は知らなくとも) 株を買うことが合理的に成 りうる。
• バブル
14.4 課題
1. ある土地から毎期 100 万円の地代が得られる。利子率が 4%のとき、その土地の合理的な値 段を計算せよ。ただし地代、利子率は将来にわたって一定であるとする。
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