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内生性バイアスと操作変数法 計量経済学 鹿野研究室 note24

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Academic year: 2018

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(1)

担当:鹿野(大阪府立大学)

2013 年度後期

はじめに

前回の復習

 操作変数法(IV):OLSに代わる推定法。

 二段階最小2乗法(2SLS):複数の操作変数を統合。

今回学ぶこと

 識別条件:複数の内生変数がある場合のIV推定。

 需要曲線・供給曲線のIV推定。

 テキスト該当箇所:11章。浅野・中村(2010)の8章も参照。

1 識別条件:複数の内生変数と操作変数

1.1

丁度識別・過小識別

 重回帰モデル

Yi = α + β1X1i+ β2X2i+ β3X3i+ ui (1) に関し、一つ目の変数だけ外生、それ以外は内生変数であるとする。

E(ui) = 0, E(uiX1i) = 0

= 外生

, E(uiX2i)  0, E(uiX3i)  0.

= 内生

(2)

⊲ IV推定を行うための条件は?

⊲ 適当な推定量を当てはめたときの残差を、一般的に

ˆui = YiYˆi= Yiα − ˆˆ β1X1i ˆβ2X2i ˆβ3X3i (3) と表す。

 丁度識別:いま、二つの操作変数Z1iZ2iが観測されるとする。 E(uiZ1i) = 0, E(uiZ2i) = 0

= 内生

. (4)

1

(2)

⊲ ∴推定に利用可能なモーメント条件は、次の4つ。 E(ui) = 0 1

n



ˆui= 0, (5)

E(uiX1i) = 0 1 n

ˆuiX1i = 0, (6)

E(uiZ1i) = 0 1 n



ˆuiZ1i= 0, (7)

E(uiZ2i) = 0 1 n



ˆuiZ2i= 0. (8)

未知数(係数)の数= 4、方程式の数= 4推定量は、(5) ∼ (8)式の解で一意に定 まる!⇒αˆˆβ1βˆ2ˆβ3を解けば、 を得る。

⊲ 推定したい回帰係数の数と同じ数のモーメント条件が作れ、結果として推定が実行 可能となることを、 と呼ぶ。

もしXi jがすべて外生的だったら?⇒モーメント条件が4つ作れるので、これも丁 度識別。この場合、解としてOLS推定量を得る。

 過小識別:もし操作変数がZ1iだけならば?⇒4つ目のモーメント条件(8)式が成立せず、

「未知数の数= 4 >方程式の数= 3」。

⊲ ∴αˆˆβ1ˆβ2ˆβ3を解けない。この状況を、 と呼ぶ。 推定 以前の、いわば「問題外」の状況。

⊲ 操作変数が一つも存在しないときは?⇒「未知数の数= 4 >方程式の数= 2」で、や はり過小識別。

(講義ノート#11、説明変数同士の線形関係)も、過小識別の一種。 1.2

過剰識別

 過剰識別:操作変数がZ1iZ2iZ3iの三つあれば?⇒(5) ∼ (8)式に加え、さらにモーメ ント条件

E(uiZ3i) = 0 1 n

ˆuiZ3i= 0 (9)

が使える!贅沢な状況。

「未知数の数= 4 <方程式の数= 5。これを と呼ぶ。

(講義ノート#23)により、すべての操作変数を利用。

⎪⎪

⎪⎪

⎪⎪

⎪⎪

X2i

−−−−−−−−−−OLS

X1i,Z1i,Z2i,Z3i

Xˆ2i

X3i

−−−−−−−−−−OLS

X1i,Z1i,Z2i,Z3i

Xˆ3i

YiX1i, ˆX2i, ˆX3iOLS. (10)

注意:X1iは外生変数なので、操作変数の一部として扱う。

 Remark:識別条件・まとめ。

(3)

状況 推定法 過小識別 係数の数 モーメントの数 推定不可能 丁度識別 係数の数 モーメントの数 IV 過剰識別 係数の数 モーメントの数 2SLS

⊲ OLSIVは基本的に、モーメント条件(直行条件)から成る「 」。

⊲ 操作変数は、内生性によって失われたモーメントを補完する働き。

⊲ OLSの内生性バイアス(講義ノート#22)を、「間違ったモーメントを使ったことに よるバイアス」と解釈できる。

2 需要曲線・供給曲線の IV 推定

2.1

市場均衡モデルの構造型と誘導型

 市場均衡モデルの構造型表現:ある財の、市場iにおける均衡条件下の需要曲線・供給曲 線を次式で表す。

需要曲線: Yi = α0+ α1Xi+ ui, (11) 供給曲線: Yi = β0+ β1Xi+ vi. (12) ... 同時方程式モデル(講義ノート#22)の代表的な例。

Xiは均衡価格、Yiは均衡数量。上式は、 の需給曲線。

上式を (こうぞうけい)と呼ぶ。両辺に(比較静学の意味で)内生変数 XiYi。内生変数同士のフィードバック構造を示した、経済学上の意味を持つ表現。

(ui,vi)は、次の仮定を満たす確率的な誤差。

E(ui) = E(vi) = 0, E(u2i) = σ2u, E(v2i) = σ2v, E(uivi) = 0. (13)

 誘導型:XiYiを解き、係数と項を整理すると

均衡価格: Xi= −

0β0) (α1β1)

1

(ui

vi)1β1)

i

= γ1+ ǫi, (14)

均衡数量: Yi= β0+ β1γ1

2

+ vi+ β1ǫi

i

= γ2+ ξi. (15)

⊲ 構造型両辺の内生変数を、すべて解き切った表現。これを (ゆうどうけ い)と呼ぶ。経済理論上無意味だが、データの発生メカニズムを簡潔に示した表現。

⊲ ∴分析者が観測する取引データ(Xi,Yi)は、需要サイド・供給サイドで発生した無意 味なノイズ(ui,vi)の塊に過ぎない!

2.2 OLS の同時性バイアス

 Remark:観測された取引データ(Xi,Yi)を散布図に描くと?⇒図1

各点(Xi,Yi)は、二つの誤差(ui,vi)で絶えず変化する の実現値。

(4)

A

Y

X

S1

S2 S3

S3

D1 D2

D3 D4

B

Y

X

1:均衡価格Xiと均衡数量Yiの散布図

右下がりの需要曲線or右上がりの供給曲線を推定する「つもり」で、散布図に回帰 直線をフィットさせれば

b = SXY SXX =

1 n−1SXY

1 n−1SXX

= sXY

s2X . (16)

... このOLSで、需要曲線の傾きα1と供給曲線の傾きβ1、どちらが推定されるのか?

 ここで、需要と供給のブレの、相対的な大きさを定義。 c = σ

2v

σ2u+ σ2v =

供給側の分散 分散の総和

, 0 < c < 1. (17)

⊲ 供給曲線が、より大きくブレる⇒c = 1に近づく。

⊲ この表記を使えば、均衡価格Xiと数量Yiの共分散Cov(Xi,Yi)と、Xiの分散Var(Xi) に、次式の関係。(証明⇒今回の補足資料参照)

Cov(Xi,Yi) =c(α1β1) + β1 Var(Xi) Cov(Xi,Yi)

Var(Xi) = cα1+ (1 − c)β1. (18)

 同時性バイアス:均衡の取引データでYiXiに回帰したOLSの確率極限は、

plim b = , (0 < c < 1). (19)

⊲ ∴このOLSは、需要曲線の傾きα1と、供給曲線の傾きβ1 を推定し てしまう!∴双方に関し、一致推定量とならない。

cの定義(17) ⇒供給の分散が大きいとα1寄り、需要の分散が大きいとβ1寄りの値

が推定される。

証明:(16)式の確率極限をとれば、(18)式より plim b = plim sXY

plim s2X =

Cov(Xi,Yi)

Var(Xi) = cα1+ (1 − c)β1. (20)

(5)

A

Y

X

S(Z1)

S(Z2) S(Z3)

S(Z4)

B

Y

X

2:均衡価格Xiと均衡価格Yiの散布図

2.3

需要・供給曲線のシフトによる

IV 推定

 モデルの拡張:もし生産者の技術要因Ziで すると、

需要曲線: Yi= α0+ α1Xi+ ui, (21) 供給曲線: Yi= β0+ β1Xi+ + vi. (22)

Ziは生産側に影響するが、需要側に一切影響しない変数。需要曲線の誤差とも無相関。 Cov(ui,Zi) = E(uiZi) = 0. (23)

∴需要曲線に関し、Ziは 。

⊲ 例:生産要素価格や気候、法的規制、技術水準の違いなど。

 RemarkZiが変動すると供給曲線はシフト、需要曲線は一定。⇒均衡点の散布図(Xi,Yi) において、右下がりの が浮かび上がる(図2)。

注意:需要曲線もZiでシフトしたら、需要曲線を識別できない。

⊲ ∴需要曲線だけに作用するシフト要因(家計所得や代替財・補完財価格など)が観 測できれば、供給曲線側も識別可能。

⊲ このアイディアを、推定に生かすには?

 需要曲線のIV推定:新たなモデル(21)式・(22)式の均衡価格、および需要曲線は 均衡価格: Xi= γ1+ + ǫi, η =

β2

1β1). (24) 需要曲線(再掲): Yi= α0+ α1Xi+ ui, Cov(ui,Zi) = 0. (25)

⊲ ∴Ziを需要曲線右辺のXiの操作変数に当て、α0α1 すればよい。(供 給のシフト要因が複数あれば、2SLSで。)

⊲ 計量経済学の「外生変数」、「内生変数」という言葉の由来は、ここにある。

(6)

 Remark:需要曲線・供給曲線のIV推定。計量経済学の「奥義」。

需要曲線の推定: させる操作変数で、IV2SLS)推定。

供給曲線の推定: させる操作変数で、IV2SLS)推定。

⊲ 需給の双方をシフトさせる変数は、操作変数として使えない。

 例:東京都中央卸売市場の取引データ(9つの市場×12か月)から、みかんの需要曲線を 推定。価格Xi、数量Yiは対数変換済み。∴需要の価格の弾力性を推定。

OLS 2SLS

係数 t値 係数 t

定数項 8.14 35.92 9.43 21.14

価格 -2.15 -27.15 -2.64 -15.95

大田ダミー 0.71 4.49 0.71 4.14 ...

多摩NTダミー -1.75 -8.41 -1.77 -8.33 修正済みR2 0.82 0.81

サンプル数n 108 108

⊲ コントロール変数:市場ダミー(築地をレファレンスとする)。

操作変数:「季節・気象条件は農産物の限界費用に影響するが、消費者の選好には影 響しない」と仮定。⇒「月(1=12=2...12=12)」と「月の2乗」を操 作変数とする2SLS推定。

推定結果:OLSは、需要曲線の傾き(弾力性)をやや過小評価している可能性。

注意:「冬になるとみかんを食べたくなる」消費者が多数ならば、「月」を操作変数 とするのは誤り。(需要曲線もシフトしてしまうため。)

まとめと復習問題

今回のまとめ

 操作変数法(IV)。内生性が疑われるとき、OLSに代わる推定法。

 二段階最小2乗法(2SLS)。操作変数が一つだけなら、IV2SLSは同値。

復習問題

出席確認用紙に解答し(用紙裏面を用いても良い)、退出時に提出せよ。 1. 次の需要曲線・供給曲線の構造型を考える。

需要曲線: Yi= α0+ α1Xi+ α1Zi+ ui, (26) 供給曲線: Yi= β0+ β1Xi+ vi. (27) Ziは需要曲線のシフト要因である。誘導型を求めよ。また、ここでIV推定できるのは、 需要曲線と供給曲線のどちらか?

2. どのような「実験」を行えば、需要曲線(需要量の価格に対する反応)をOLS推定でき るか?

参照

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