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人間文化学部紀要第13号21 34 給食の提供・資料の配布及び管理栄養士の介入が大学生の食意識・食行動に与える影響Prefectural University of Hiroshima

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(1)

県立広島大学人間文化学部紀要 13,21-34(2018)

給食の提供・資料の配布及び管理栄養士の介入が

大学生の食意識・食行動に与える影響

森脇 弘子

*1

,吉田  友

*2

,岡野 理沙

*2

,宮岡 香歩

*2

,北原 千紘

*2

菊谷 遥香

*2

,戸松美紀子

*3

,辻   文

*1

,杉山 寿美

*1

Ⅰ.緒言

 健康日本21(第二次)1)の目標の一つに「利用者に応じた食事の計画,調理及び栄養の評価,改善

を実施している特定給食施設の割合の増加」があげられ,給食を通じた食生活の改善効果が期待され ている。さらに特定給食施設の栄養管理に関する通達2 )では,給食を「利用者が正しい食習慣を身に

付け,より健康的な生活を送るために必要な知識を習得する良い機会」と位置付け,栄養に関する知 識の普及を行うことや,献立の組み合わせに配慮することが示されるなど,給食を手段とした健康へ の取り組みが進められている。また,学校においても給食は実際に味わい,体感できる「生きた教材」 とされ,毎日繰り返しだされる給食により望ましい食事の摂り方の習慣化が図られている3)。永嶋の

研究4)において管理栄養士が学校・家庭・地域などと連携し,生きた教材である学校給食などを通じ

て,食に関する指導を行うことは大きな意義があると示されている。このように給食を通じた食生活 の改善効果・食育の効果が期待されている。

 近年,日本人のエネルギー比率をみると,脂質エネルギー比率が増えている。また,食品群別摂取 量をみると10年前と比較し,肉類の摂取量は増加している一方,米・加工品や魚介類,野菜類の摂取 量は減少している。つまり,米を中心とした主食,魚を中心とした主菜,野菜やキノコ,海藻,イモ 類などを使った副菜を組み合わせた日本型食生活が失われつつあることが考えられる。大学生など, 若年層は他世代と比較し,脂質エネルギー比率が高く,魚・野菜の摂取量が低い5)。これは生活習慣

発症の一因となり,憂慮すべきことである。

 そこで,日本型食生活の推進をめざし,大学生を対象とし,米・魚・野菜を使った給食を継続的に 提供することにした。また,給食の継続的な提供に加え,提供する給食のレシピや調理に関する情報 などの食知識を記載した資料を配布した。さらに,給食の継続的な提供・資料の配布に加え,管理栄 養士が介入した。これらの介入により,食意識(食嗜好や摂取意欲)・食行動に与える影響について 検討することを目的とした。

Ⅱ.研究方法

1 .対象者

 A大学の平成24年度の新入生210名(栄養士養成系の学科を除く)を対象とし,研究参加者を募集 した。その結果,本研究に参加の意思を示した学生35名(男子 8 名,女子27名)をA群とした。平 成25年度の新入生198名(栄養士養成系の学科を除く)を対象とし,研究参加者を募集した。その結

1 県立広島大学

2 元県立広島大学

(2)

果,本研究に参加の意思を示した学生40名(男子 0 名,女子40名)をB群とした。平成26年度の新入 生196名(栄養士養成系の学科を除く)を対象とし,研究参加者を募集した。その結果,本研究に参 加の意思を示した学生40名(男子 0 名,女子40名)をC群とした。

2 .倫理的配慮

 研究参加者の募集の際には,得られたデータは本研究の目的以外には使用されず,参加の同意は任 意でありその同意はいつでも撤回できること,データのコード化により個人が特定できないよう処理 すること等を書面と口頭で説明し,同意書の提出をもってインフォームドコンセントを受けた(県立 広島大学倫理委員会承諾番号12HH001号)。

3 .介入方法

 A群の介入 1 回目は平成24年10月から15回, 2 回目は翌年 6 月から14回,それぞれ週 2 回給食の提 供を行った。B群の介入 1 回目は平成25年11月から15回, 2 回目は翌年 6 月から14回,それぞれ週 2 回給食の提供および資料の配布を行った。C群の介入 1 回目は平成26年11月から15回, 2 回目は翌年

6 月から14回,それぞれ週 2 回給食の提供・資料の配布及び管理栄養士の介入を行った。解析対象者 は,参加者のうち,提供した食事の喫食回数が 6 割以上で,かつ介入前後の調査票を全て提出した女 子とし,A群では16名(有効回答率45%),B群では26名(有効回答率55%),C群では22名(有効回 答率56%)の計64名であった。

4 .調査方法

 自記式のアンケート調査を介入 1 回目の前と介入 2 回目の後(以下,「介入前」「介入後」とする) に行った。内容は,①基本属性(身長,体重等)②食意識(米・魚・野菜に対する食嗜好・摂取意欲) ③食行動(習慣的摂取量)④米・魚・野菜の摂取量を増やすために必要な支援・環境についてである。  身長,体重の調査は対象者の自己申告により行った。食嗜好についてはVAS(Visual Analogue Scale)6)を用いた。VASは紙面上に114㎜の直線を配置し,その左端を「大嫌い」,真ん中を「ふつ

う」,右端を「大好き」とし,現在の米・魚・野菜に対する嗜好を任意の箇所にチェックさせた。現 在の摂取意欲及び米・魚・野菜を摂取するために必要な支援・環境については自由記述とした。習慣 的摂取量については,19歳学生および成人において妥当性が認められている7)食物摂取頻度調査票

FFQgVer.3.58)を用い,エネルギー,主要な栄養素,食事バランスガイドにおける各料理区分のサー

ビング数,食品成分表の18食品群のうち日本型食生活の主要な指標になりうる米・野菜・魚の摂取量 について調べた。

 また,提供する給食が喫食者の満足できるものとなっているか評価するため,給食の提供ごとに食 事の楽しみ,ご飯・汁物・主菜・副菜の美味しさ,喫食状況について自記式のアンケート調査を計29 回( 1 回目介入全15回 + 2 回目介入全14回)行った。

5 .集計・解析方法

(3)

た。データ解析,統計処理にはPASW Statistics17.0(SPSS)を使用し,有意水準は 5 %未満とした。  摂取意欲や米・魚・野菜を摂取するために必要な支援・環境などの自由記述式のアンケートの集計 はKJ法9)を用いた。

6 .提供した給食の内容

 全29回の給食の献立を表 1 に示した。給食の献立はA,B,C群で同じ内容のものを提供した。本 研究は米・魚・野菜に対する食意識(食嗜好・摂食意欲)と食行動(習慣的摂取量)の変化を検討す ることを目的としているため,季節の魚や野菜を可能な限り取り入れ,主食(米80g),汁物(塩分 濃度0.6%),主菜(魚80g),副菜(健康日本21の目標である野菜の摂取量350g/日の約 1 / 2 にあた る180g以上)を基本とした。

表 1.提供した給食の献立

回 1 回目介入 2回目介入

第 1回 ごはん さつまいもの味噌汁 ごはん 大根の味噌汁

鰈の煮つけ 野菜のバター炒め 赤魚の煮つけ ピーマンの炒め物 第 2回 ごはん  菜の花となめこの味噌汁 ごはん 玉ねぎの味噌汁

鮭のとろろ蒸し筑前煮 鰈の煮つけ ピーマンとナスの炒め物

第 3回 ごはん 大根の味噌汁 ごはん 玉ねぎの味噌汁 秋刀魚の塩焼き 白菜と厚揚げの煮物 とびうおの塩焼き 根菜の煮物 第 4回 ごはん 白菜のクリーム煮 ごはん 茄子の味噌汁

鰆の香草パン粉焼き 温野菜サラダ 鰹のたたき 根菜の煮物

第 5回 ごはん 豚汁 ごはん 茄子の味噌汁

カマスの塩焼き 小松菜のお浸し 鯵の塩焼き 新玉ねぎとグリンピースの卵とじ 第 6回 ごはん 里芋と白ねぎの味噌汁 ごはん 茄子の味噌汁

赤魚の煮つけ 野菜炒め 鮭のグリル ブロッコリーとトマトの炒め物

第 7回 ごはん大根葉の味噌汁 ごはん 大根の味噌汁

鯵の塩焼き 大根と厚揚げの煮物 太刀魚の塩焼き 野菜ときのこのバター炒め 第 8回 ごはん 野菜と鰆のカレー ごはん 冬瓜の味噌汁

鰈の煮つけ ゴーヤチャンプル 第 9回 ごはん 玉ねぎとじゃがいもの味噌汁 ごはん 里芋の味噌汁

秋刀魚の塩焼き 野菜ソテー 鰯の塩焼き キャベツと人参の煮物 第10回 ごはん 菜の花と玉ねぎの味噌汁 ごはん 玉ねぎの味噌汁

鯖の塩焼き ごぼうの卵とじ 鮎の塩焼き キャベツとベーコンの煮物 第11回 ごはん 大根とごぼうとねぎの味噌汁 ごはん 茄子の味噌汁

鯵の塩焼き ピーマン炒め 赤魚の煮つけ ゴーヤチャンプル・とうもろこし

第12回 ごはん菜の花の味噌汁 ごはん 茄子の味噌汁

鰈の煮付け 煮物 太刀魚の香草パン粉焼き 野菜のトマト炒め

第13回 ごはん かぶの葉の味噌汁 ごはん 玉ねぎの味噌汁

鰤の照り焼き 野菜の煮物 かぶの酢の物 鮎の塩焼き 野菜の炒め物 きゅうりの酢の物 第14回 ごはん 海鮮・野菜鍋 ごはん 玉ねぎの味噌汁

うなぎのかば焼き ピクルス 第15回 ごはん 小松菜と大根の味噌汁

カマスの塩焼き 筍と昆布の煮物

 提供した給食 1 食あたりの栄養素量等を表 2 に示した。給食の給与栄養目標量は,日本人の食事摂 取基準(2010年版)10)を基に設定し, 1 日当たりの推奨量または目標量の 1 / 3 を給食での給与栄養

(4)

量を採用した。提供した給食は食品成分表2010を基に栄養計算した。実際に提供した給食 1 食あたり の栄養素量等はおおむね給与栄養目標量と合致していた。エネルギー,カルシウム,鉄,レチノール 当量が給与栄養目標量よりやや低く,ビタミンCは給与栄養目標量の約 2 倍であった。

表 2 .提供した給食 1 食あたりの栄養素量等

(平均±標準偏差) 栄養素量等 給与栄養目標量 エネルギー (kcal) 594 ± 89 600 たんぱく質 (%E) 21.2 ± 4.1 20

脂質 (%E) 20.8 ± 8.9 20 ~ 30 炭水化物 (%E) 56.7 ± 7.1 50 ~ 70 カルシウム (mg) 202 ± 71 217

鉄 (mg) 3.4 ± 0.7 3.5 レチノール当量 (μgRE) 184 ± 158 217 ビタミンB1 (mg) 0.32 ± 0.09 0.30

ビタミンB2 (mg) 0.37 ± 0.12 0.33

ビタミンC (mg) 62 ± 29 33 食物繊維 (mg) 5.7 ± 1.2 5.7以上 食塩相当量 (g) 2.5 ± 0.6 2.5以下

7 .資料配布

 B・C群に全29回,資料配布を行った。今日のメニューや給食の栄養素等,主菜・副菜のレシピや 調理に関する知識,食材に関する知識を記載したものを給食前に毎回配布した。

8 .介入した管理栄養士の教育内容

 C群に行った全29回の管理栄養士の教育内容を表 3 に示した。給食に使われている食材,旬の魚・ 野菜について,料理のデモンストレーション,魚の食べ方などの話を給食時に毎回,集団教育を行っ た。また,個別に話しかけ,質問に答えた。

表 3 .C群の管理栄養士による教育内容

回 1 回目介入 2回目介入

第 1 回 給食の魅力について 介入 1回目の振り返り

第 2回 配膳図について 質問に答えて,おたよりに沿って

第 3回 給食の量と普段の食事の違いについて 魚の調理方法,魚の選び方

第 4 回 魚のアレンジ料理 1 盛り付け方について,薬味について 第 5回 旬の野菜,地元野菜について 魚のきれいな食べ方について 第 6 回 煮魚を作ってみよう1) 旬について

第 7回 焼き魚を食べよう 今日の献立の太刀魚について

第 8 回 魚のアレンジ料理 2 煮魚を作ってみよう 11) 第 9 回 味噌汁を作ってみよう1) 旬の野菜について 第10回 給食で食べている食事の量について 鮎の食べ方について 第11回 質問に答えて,おたよりに沿って 煮魚を作ってみよう 21) 第12回 質問に答えて,おたよりに沿って 夏バテについて

第13回 照り焼き,酢の物を作ろう まとめ

第14回 魚のアレンジ料理 3 まとめ,土用の丑の日について 第15回 まとめ

(5)

Ⅲ.結果

1 .対象者の属性

 対象者の属性を表 4 に示した。A,B,C群間で,年齢,身長,体重,BMI,身体活動レベル,居 住形態に差はなかったが,所属学科にのみ差があり,A群では経営学科が 7 割であったのに対して, B群では国際文化学科が 9 割,C群では国際文化学科が 7 割であった。身長や体重は平成23年度の国 民健康栄養調査の同年代の女子(19歳女性:身長157.1±4.6cm,体重51.2±5.5kg),平成24年度の同 調査の同年代の女子(19歳女性:身長157.7±5.2cm,体重47.1±5.5kg)及び平成25年度の同調査の同 年代の女子(19歳女性:身長158.9±4.8cm,体重52.7±7.1kg)と比べ大きな差はなかった。

表 4 .対象者の属性

(平均値±標準偏差)

A群 B群 C群 p値1)

(n=16) (n=26) (n=22)

 年齢 (歳) 18.6 ± 0.5 18.6 ± 0.6 18.5 ± 0.5 0.692  身長 (cm) 155.7 ± 5.6 158.4 ± 5.3 156.4 ± 4.8 0.292  体重 (kg) 49.5 ± 6.9 50.6 ± 6.6 51.5 ± 6.5 0.539  BMI (kg/m2) 20.4 ± 2.2 20.1 ± 2.4 21.0 ± 2.3 0.299

身体活動レベル (Af) 1.83 ± 0.36 1.93 ± 0.43 1.89 ± 0.5 0.579 Ⅰ(人) 5( 31%) 3( 12%) 6( 27%)

Ⅱ(人) 5( 31%) 14( 54%) 10( 45%) Ⅲ(人) 6( 38%) 9( 35%) 6( 27%) 居住形態

 自宅 (人) 12( 75%) 18( 69%) 19( 86%)  自宅外 (人) 4( 25%) 8( 31%) 3( 14%) 所属学科

 国際文化学科 (人) 4( 25%) 24( 92%) 16( 72%)  経営学科 (人) 12( 75%) 0( 0%) 6( 27%)  経営情報学科 (人) 0( 0%) 2( 8%) 0( 0%) 1)Kruskal-Wallis検定

2 .喫食アンケート

 喫食アンケート結果を表 5 に示した。 提供した給食は,A,B,C群において全ての者が「とても 楽しみ」「やや楽しみ」と回答していた。ご飯・汁物・主菜・副菜のおいしさについてはほぼ全ての 者が「おいしい」「ややおいしい」と回答していた。喫食状況については 8 割以上の者が「全部食べた」 と回答しており,残食は少なかった。

3 .食嗜好の変化

(6)

表 5 .喫食アンケート結果

A群(n=16) B群(n=26) C群(n=22) 合計(n=64)

人数 % 人数 % 人数 % 人数 %

食事は楽しみでしたか とても楽しみ 380( 95.5 ) 481( 76.8 ) 582( 99.1 ) 1,443( 89.6 )

やや楽しみ 18( 4.5 ) 145( 23.2 ) 5( 0.9 ) 168( 10.4 )

あまり楽しみでない 0( 0.0 ) 0( 0.0 ) 0( 0.0 ) 0( 0.0 )

楽しみでない 0( 0.0 ) 0( 0.0 ) 0( 0.0 ) 0( 0.0 )

合計 398( 100.0 ) 626( 100.0 ) 587( 100.0 ) 1,611( 100.0 )

ご飯はおいしかったですか おいしい 378( 94.3 ) 553( 88.2 ) 583( 99.5 ) 1,514( 93.8 )

ややおいしい 22( 5.5 ) 71( 11.3 ) 3( 0.5 ) 96( 5.9 )

あまりおいしくない 1( 0.2 ) 2( 0.3 ) 0( 0.0 ) 3( 0.2 )

おいしくない 0( 0.0 ) 1( 0.2 ) 0( 0.0 ) 1( 0.1 )

合計 401( 100.0 ) 627( 100.0 ) 586( 100.0 ) 1,614( 100.0 )

汁物はおいしかったですか おいしい 353( 91.7 ) 545( 86.9 ) 580( 98.8 ) 1,478( 92.4 )

ややおいしい 30( 7.8 ) 70( 11.2 ) 7( 1.2 ) 107( 6.7 )

あまりおいしくない 2( 0.5 ) 11( 1.8 ) 0( 0.0 ) 13( 0.8 )

おいしくない 0( 0.0 ) 1( 0.2 ) 0( 0.0 ) 1( 0.1 )

合計 385( 100.0 ) 627( 100.0 ) 587( 100.0 ) 1,599( 100.0 )

主菜はおいしかったですか おいしい 374( 93.3 ) 434( 69.4 ) 566( 96.4 ) 1,374( 85.2 )

ややおいしい 23( 5.7 ) 148( 23.7 ) 20( 3.4 ) 191( 11.8 )

あまりおいしくない 3( 0.7 ) 38( 6.1 ) 1( 0.2 ) 42( 2.6 )

おいしくない 1( 0.2 ) 5( 0.8 ) 0( 0.0 ) 6( 0.4 )

合計 401( 100.0 ) 625( 100.0 ) 587( 100.0 ) 1,613( 100.0 )

副菜はおいしかったですか おいしい 338( 84.1 ) 465( 75.7 ) 568( 97.1 ) 1,371( 85.6 )

ややおいしい 60( 14.9 ) 131( 21.3 ) 17( 2.9 ) 208( 13.0 )

あまりおいしくない 4( 1.0 ) 16( 2.6 ) 0( 0.0 ) 20( 1.2 )

おいしくない 0( 0.0 ) 2( 0.3 ) 0( 0.0 ) 2( 0.1 )

合計 402( 100.0 ) 614( 100.0 ) 585( 100.0 ) 1,601( 100.0 )

全部食べましたか 全部食べた 365( 91.0 ) 503( 80.6 ) 575( 98.0 ) 1,443( 89.5 )

1 ~ 2割残した 35( 8.7 ) 113( 18.1 ) 11( 1.9 ) 159( 9.9 )

3 ~ 4割残した 1( 0.2 ) 7( 1.1 ) 1( 0.2 ) 9( 0.6 )

5割以上残した 0( 0.0 ) 1( 0.2 ) 0( 0.0 ) 1( 0.1 )

合計 401( 100.0 ) 624( 100.0 ) 587( 100.0 ) 1,612( 100.0 )

1)A群とB群とC群それぞれにおける全29回のアンケートの有効回答の数 2)合計にばらつきがあるのは欠席者や回答に欠損があったため

表 6 .介入前後の食嗜好の変化1 )

(平均値±標準偏差,単位:㎜)

A群 B群 C群 群間比較

介入前 介入後 p値 介入前 介入後 p値 介入前 介入後 p値 p値4)

米 31.3 ± 30.5 34.7 ± 26.1 0.6882) 33.5 ± 21.9 40.8 ± 18.6 0.0073)** 36.7 ± 26.6 45.7 ± 18.6 0.0063)** 0.709

魚 21.4 ± 28.9 23.0 ± 26.3 0.8752) 18.3 ± 26.0 30.0 ± 20.5 0.0022)** 25.6 ± 24.5 45.1 ± 13.9 <0.0012)** 0.120

野菜 10.3 ± 30.8 27.6 ± 27.7 0.0952) 22.7 ± 23.8 26.8 ± 21.9 0.2822) 25.6 ± 24.3 43.3 ± 15.9 0.0013)** 0.122

*p<0.05, **p<0.01

1)Visual Analogue Scale法による 2)t検定

(7)

4 .摂取意欲の変化

 対象者の介入後の摂取意欲の変化を表 7 に示した。KJ法により分類したところ,回答内容は「向上」 「変化なし」「その他」の 3 つとなった。

 米ではA,B群で「変化なし」が最も多く,各々 7 名(53.8%),16名(72.7%)であった。C群では「向 上」が最も多く10名(55.6%)であった。その具体的な回答内容としては「もっと米を食べていいん だと思った」や「毎食食べようと思うようになった」などがあった。

 魚では,A, B,C群間で有意な差が認められた(p=0.029)。A, B,C群ともに「向上」が最も多く, A群では11名(84.6%),B群では14名(63.6%),C群では22名(100.0%)であった。「向上」の具体 的な回答内容として,「苦手意識がなくなった」や「食べようという意識が高まった」「自分で料理し て食べたいと思うようになった」「魚は夕食しか食べないけど昼食にも食べようと思った」などがあっ た。

 野菜でもA,B,C群ともに「向上」が最も多く,A群では11名(78.6%),B群では19名(79.2%), C群では15名(75.0%)であった。具体的な回答内容として「野菜不足に気づき,もっと食べようと 思った」や「沢山食べようとするようになった」「 3 食ともにもっと食べようと意識するようになった」 などがあった。

 つまり,摂取意欲の変化は,米についてはC群に,魚・野菜についてはA,B,C群ともに向上して いる者が多かった。

表 7 .介入後の摂取意欲の変化1 )

A群 B群 C群 合計 p値2)

人数 ( % ) 人数 ( % ) 人数 ( % ) 人数 ( % )

米 変化なし向上 57 ( 38.5 )( 53.8 ) 16 ( 72.7 )6 ( 27.3 ) 10 (8 ( 55.6 ) 21 ( 39.6 )44.4 ) 31 ( 58.5 ) 0.165

その他 1 ( 7.7 ) 0 ( 0.0 ) 0 ( 0.0 ) 1 ( 1.9 )

魚 変化なし向上 11 ( 84.6 ) 14 ( 63.6 ) 22 ( 100.0 ) 47 ( 82.5 )2 ( 15.4 ) 6 ( 27.3 ) 0 ( 0.0 ) 8 ( 14.0 ) 0.029*

その他 0 ( 0.0 ) 2 ( 9.1 ) 0 ( 0.0 ) 2 ( 3.5 )

野菜 変化なし向上 11 ( 78.6 ) 19 ( 79.2 ) 15 (2 ( 14.3 ) 5 ( 20.8 ) 5 ( 75.0 ) 45 ( 77.6 )25.0 ) 12 ( 20.7 ) 0.459

その他 1 ( 7.1 ) 0 ( 0.0 ) 0 ( 0.0 ) 1 ( 1.7 )

*p<0.05 1)KJ法による 2)χ2検定による

3)無回答の人数は記載していない

5 .食行動の変化

 対象者の介入前の習慣的摂取量を表 8 に示した。エネルギー及び栄養素の習慣的摂取量はA,B, C群間に差はなかった。国民健康・栄養調査の同年代の者と比べると,エネルギー及び脂質の摂取量 がやや多かった。食事摂取基準(2010年版)と比較すると,脂質の摂取量が目標量の20~30%Eに 対しA群では31.5%,B群では32.0%,C群では31.9%,食塩の摂取量が目標量の7.5g未満に対し,A群 では9.2g,B群では8.1g,C群では8.1gとやや多かった。カルシウム,鉄,レチノール,ビタミンB1・

(8)

表 8 .介入前の習慣的摂取量

(平均値±標準偏差) 栄養素等 A群 B群 C群 p値1)同年代の女性の 食事摂取

(n=16) (n=26) (n=22) 平均摂取量2) 基準3)

エネルギー (kcal) 1,811 ± 356 1,908 ± 538 1,867 ± 431 0.963 1,803 ± 497 1,950 たんぱく質 (g) 63.6 ± 17.1 62.3 ± 20.2 66.8 ± 19.2 0.713 66.3 ± 21.3 50 脂質 (g) 64.0 ± 17.1 68.6 ± 21.8 67.3 ± 21.5 0.876 62.7 ± 23.5 43~65 炭水化物 (g) 238.3 ± 42.0 254.0 ± 69.9 241.4 ± 48.3 0.883 236.2 ± 76.1 243~317 たんぱく質 (% E) 13.9 ± 1.8 13.0 ± 1.6 14.2 ± 1.9 0.038

脂質 (% E) 31.5 ± 4.2 32.0 ± 3.3 31.9 ± 4.1 0.856 31.1 ± 7.1 20~30 炭水化物 (% E) 54.6 ± 4.9 55.0 ± 4.0 53.9 ± 4.8 0.621 54.0 ± 8.2 50~65 カルシウム (mg) 517 ± 260 548 ± 243 528 ± 251 0.887 431 ± 207 650 鉄 (mg) 6.8 ± 2.2 6.5 ± 2.1 6.9 ± 2.3 0.908 6.8 ± 2.5 10.5 レチノール当量 (μgRE) 571 ± 203 505 ± 190 504 ± 164 0.691 451 ± 317 650 ビタミンB1 (mg) 0.91 ± 0.23 0.88 ± 0.27 0.92 ± 0.25 0.838 0.83 ± 0.39 1.1

ビタミンB2 (mg) 1.11 ± 0.36 1.09 ± 0.41 1.09 ± 0.37 0.957 1.05 ± 0.45 1.2

ビタミンC (mg) 92.9 ± 40.9 76.0 ± 38.0 73.2 ± 33.3 0.346 70 ± 57 100 食物繊維 (g) 12.0 ± 4.2 11.8 ± 4.0 11.4 ± 4.0 0.854 11.9 ± 5.0 18以上 食塩 (g) 9.2 ± 3.6 8.1 ± 2.7 8.1 ± 2.9 0.709 8.7 ± 3.3 7未満 1)Kruskal-Wallis検定

2)平成25年 国民健康・栄養調査による

3)日本人の食事摂取基準(2015年版)18~29歳女性,身体活動レベルⅡ,月経あり

 対象者の介入前後の習慣的摂取量の変化を表 9 に示した。エネルギー及び栄養素の習慣的摂取量に おいて,A群ではビタミンCのみ減少し(p=0.002),C群ではレチノール当量のみ減少した(p<0.001)。 食事バランスガイドにおける各料理区分のサービング数は,A群において果物が減少した(p=0.017)。 米・魚・野菜の食品群別摂取量については,A群において小魚が増加した(p=0.019)。B群では,エ ネルギー及び栄養素の習慣的摂取量,食事バランスガイドにおける各料理区分のサービング数と米・ 魚・野菜の食品群別摂取量において変化は見られなかった。

 対象者の介入後の習慣的な食品群別摂取量の変化を表10に示した。米・魚・野菜(緑黄色野菜・そ の他の野菜)ともC群に最も摂取量が増加した者の割合が多く,各々 50%・59%・50%・46%であっ た。摂取量が増加した者が過半数をこえていた群は,米においてはC群,魚においてはA・B・C群で あった。

表10.介入後の食品摂取量の変化

A群 B群 C群 p値1)

人数 ( % ) 人数 ( % ) 人数 ( % ) 米 変化なし増加 4 ( 25.0 ) 7 ( 26.9 ) 11 ( 50.0 )3 ( 18.8 ) 5 ( 19.2 ) 2 ( 9.1 )0.423

減少 9 ( 56.3 ) 14 ( 53.8 ) 9 ( 40.9 ) 魚 変化なし増加 8 ( 50.0 ) 13 ( 50.0 ) 13 ( 59.1 )4 ( 25.0 ) 1 ( 3.8 ) 1 ( 4.5 )0.137

減少 4 ( 25.0 ) 12 ( 46.2 ) 8 ( 36.4 ) 緑黄色野菜 変化なし増加 8 ( 50.0 ) 11 ( 42.3 ) 11 ( 50.0 )0 ( 0.0 ) 2 ( 7.7 ) 0 ( 0.0 )0.538

減少 8 ( 50.0 ) 13 ( 50.0 ) 11 ( 50.0 ) その他野菜 変化なし増加 7 ( 43.8 ) 9 ( 34.6 ) 10 ( 45.5 )0 ( 0.0 ) 1 ( 3.8 ) 0 ( 0.0 )0.742

(9)

県立広島大学人間文化学部紀要 

13

,21-34(2018)

(平均±標準偏差)

A群(n=16) B群(n=26) C群(n=22)

介入前 介入後 p値 介入前 介入後 p値 介入前 介入後 p値

栄養素等

 エネルギー (kcal) 1,811 ± 356 1,679 ± 331 0.0801) 1,908 ± 538 1,733 ± 363 0.0521)1,867 ± 431 1,758 ± 356 0.1941)

 たんぱく質 (g/1,000kcal) 34.7 ± 4.6 35.4 ± 4.7 0.5441) 32.4 ± 4.1 33.9 ± 3.9 0.0851) 33.5 ± 9.6 31.3 ± 7.7 0.2791)

 脂質 (g/1,000kcal) 35.0 ± 4.6 34.8 ± 4.7 0.8731) 35.5 ± 3.7 34.8 ± 4.4 0.5511) 33.8 ± 10.8 30.2 ± 8.0 0.1311)

 炭水化物 (g/1,000kcal) 132.5 ± 12.1 131.7 ± 13.0 0.8241) 134.0 ± 9.8 133.6 ± 11.0 0.9011)121.1 ± 24.3 118.0 ± 21.2 0.4061)

 カルシウム (mg/1,000kcal) 275 ± 109 294 ± 105 0.3011) 278 ± 62 294 ± 53 0.2611) 265 ± 126 261 ± 87 0.8181)

 鉄 (mg/1,000kcal) 3.8 ± 0.9 3.6 ± 0.6 0.1961) 3.4 ± 0.6 3.4 ± 0.6 0.8491) 3.5 ± 1.1 3.3 ± 0.9 0.3701)

 レチノール当量 (μgRE/1,000kcal) 314 ± 85 282 ± 93 0.1691) 261 ± 86 273 ± 86 0.4671) 119 ± 40 105 ± 32 0.0001)**

 ビタミンB1 (mg/1,000kcal) 0.49 ± 0.06 0.49 ± 0.07 0.8772) 0.47 ± 0.06 0.47 ± 0.08 0.5742) 0.46 ± 0.13 0.41 ± 0.10 0.0651)

 ビタミンB2 (mg/1,000kcal) 0.60 ± 0.12 0.61 ± 0.12 0.6182) 0.55 ± 0.09 0.57 ± 0.08 0.4442) 0.55 ± 0.19 0.51 ± 0.14 0.1501)

 ビタミンC (mg/1,000kcal) 51 ± 18 38 ± 15 0.0021)** 39 ± 17 38 ± 16 0.8551) 37 ± 17 34 ± 16 0.3741)

 食物繊維 (g/1,000kcal) 6.5 ± 1.6 6.0 ± 1.5 0.1861) 6.2 ± 1.4 5.9 ± 1.4 0.2751) 5.7 ± 2.0 5.5 ± 1.7 0.5821)

 食塩 (g/1,000kcal) 5.0 ± 1.5 5.0 ± 1.0 0.5351) 4.3 ± 1.1 4.2 ± 0.8 0.5141) 4.1 ± 1.4 4.2 ± 1.4 0.5571)

食事バランスガイド

 主食 (SV/1,000kcal) 1.9 ± 0.3 1.9 ± 0.3 0.4121) 1.8 ± 0.4 1.9 ± 0.4 0.5061) 1.71 ± 0.30 1.74 ± 0.37 0.6642)

 副菜 (SV/1,000kcal) 2.2 ± 1.1 1.8 ± 1.0 0.0612) 1.6 ± 0.9 1.5 ± 0.9 0.5692) 1.55 ± 0.76 1.42 ± 0.51 0.4392)

 主菜 (SV/1,000kcal) 3.2 ± 0.8 3.1 ± 0.9 0.6931) 2.6 ± 0.9 2.9 ± 0.9 0.2491) 3.06 ± 1.24 2.72 ± 1.05 0.2852)

 牛乳・乳製品 (SV/1,000kcal) 0.9 ± 0.8 1.1 ± 1.0 0.2151) 0.9 ± 0.5 0.9 ± 0.4 0.5121) 0.82 ± 0.81 0.78 ± 0.71 0.6432)

 果物 (SV/1,000kcal) 0.4 ± 0.4 0.2 ± 0.2 0.0172)* 0.3 ± 0.3 0.3 ± 0.3 0.8372) 0.27 ± 0.37 0.27 ± 0.40 0.9932)

 菓子/嗜好飲料 (SV/1,000kcal) 2.1 ± 1.1 2.3 ± 1.1 0.6281) 3.3 ± 1.2 3.0 ± 1.3 0.1981) 2.55 ± 1.45 2.33 ± 1.40 0.3512)

米・野菜・魚の変化 米

 米類(めし) (g/1,000kcal) 155.4 ± 49.7 142.5 ± 65.0 0.4391) 131.5 ± 53.7 142.7 ± 53.4 0.2511)134.3 ± 30.2 124.4 ± 37.9 0.2012)

野菜

 緑黄色野菜 (g/1,000kcal) 46.4 ± 24.7 38.3 ± 24.5 0.2151) 36.3 ± 22.8 38.9 ± 24.7 0.5751) 32.5 ± 13.7 31.3 ± 15.4 0.7331)

 その他の野菜 (g/1,000kcal) 73.1 ± 36.3 61.9 ± 37.7 0.1952) 54.8 ± 37.4 49.5 ± 37.9 0.3892)127.7 ± 8.9 127.4 ± 6.5 0.8641)

 魚介類(小魚除)(g/1,000kcal) 24.8 ± 18.4 21.8 ± 14.7 0.2791) 20.3 ± 14.8 24.1 ± 13.4 0.2021) 23.8 ± 21.3 24.8 ± 15.9 0.8151)

 小魚 (g/1,000kcal) 0.6 ± 1.1 1.5 ± 1.7 0.0192)* 1.0 ± 1.4 1.5 ± 1.5 0.2612) 1.1 ± 2.0 1.6 ± 1.7 0.1682)

*p<0.05, **p<0.01 1)t検定

(10)

6 .米・魚・野菜の摂取量を増やすために必要な支援・環境

 米・魚・野菜の摂取量を増やすために必要な支援・環境についての回答結果を表11に示した。KJ 法により分類したところ,回答内容は,「食物へのアクセス」,「情報へのアクセス」,「支援不要」,「そ の他」の 4 つとなった。大学生が望ましい食生活を送るため,必要としている支援・環境を検討する ため,A,B,C群の合計を示した。

表11.米・魚・野菜の摂取量を増やすために必要な支援または環境

米 魚 野菜

人数 ( % ) 人数 ( % ) 人数 ( % ) 食物へのアクセス 8 ( 21.6 ) 17 ( 34.7 ) 15 ( 30.6 ) 情報へのアクセス 1 ( 2.7 ) 15 ( 30.6 ) 14 ( 28.6 ) 支援不要 16 ( 43.2 ) 4 ( 8.2 ) 8 ( 16.3 ) その他 12 ( 32.4 ) 13 ( 26.5 ) 12 ( 24.5 ) 無回答を除外

 米については「支援不要」が最も多く,16名(43.2%)であった。次いで「食物へのアクセス」であり, 8 名(21.6%)であった。「食物へのアクセス」の具体的な回答内容には「大学にも給食があればい いけど,難しいので学食での支援が望ましい」や「おかずを充実させる」などがあった。

 魚については「食物へのアクセス」が最も多く,17名(34.7%)であった。「食物へのアクセス」 の具体的な回答内容には「魚の値段を安くしてほしい」や「学食のメニューを増やす」などがあった。 次いで「情報へのアクセス」であり,15名(30.6%)であった。「情報へのアクセス」の具体的な回答 内容には「調理法の教育」や「(魚の)さばき方講座を設けてくれたら嬉しい」などがあった。  野菜については,「食物へのアクセス」「情報へのアクセス」が最も多く,各々 15名(30.6%),14 名(28.6%)であった。「食物へのアクセス」については,学生食堂における支援を必要としている 者が多く,具体的な回答内容には「学食のメニューを増やす」や「学食でサラダをもっとだしてほし い」などがあった。「情報へのアクセス」についての具体的な回答内容には「野菜を多くとれるレシ ピがほしい」や「料理のバリエーションを学ぶ」などがあった。

Ⅳ.考察

1 .対象者について

 身長,体重から判断すると,日本の同年代の女性と同等であり,平均的な対象者である。

 居住形態をみると,自宅生の割合がA・B・C群ともに多くを占めており,自宅で保護者により食 事の準備がされている者は食行動の変容が難しいと考えられる。

2 .食意識の変化について

 C群において米に,A・B・C群において魚・野菜に対する摂取意欲の向上が見られた(表 7 )。また, B群において米・魚に対し,C群において米・魚・野菜に対する食嗜好の向上が見られた(表 6 )。食 意識の変化について,給食を提供するだけでなく,資料の配布,管理栄養士の介入をすることにより, さらに食意識の変化がみられることがわかった。管理栄養士が介入することで,直接話を聞いたり, 質問することができ,またデモンストレーションなどにより体験的に学べたことが,より食に興味関 心がわき,食意識が上昇したのではないかと考えられる。志垣らの研究11)においても,魚を食べる

(11)

より,魚の食嗜好が向上すると報告されている。給食での食経験,資料配布に加え,管理栄養士によ る調理方法の説明などにより,食嗜好がさらに上昇したのではないかと考えられる。

3 .食行動の変容について

 米・魚・野菜の摂取量の増加など,本研究で期待していた食行動の変容は見られなかった。石川ら の研究12)で,学童期の食環境がその後の食生活に大きく関わっており,学童期からの食習慣の指導

が必要だと報告されている。食行動の変容を変えるには,大学生や大人になるにつれ,食習慣が定着 し行動を変えることは難しいため,幼いころからの介入が必要であると考えられる。

 C群での管理栄養士の介入は,個人に対応するために給食時間中に対象者一人ひとりを回り,質問 を受け,個人に応じた対応をおこなった。また,希望者は野菜の収穫を行った。しかし,質問をし, 活動に参加する者は,一部の者に限られ,全対象者が行ったものではなかった。全員を対象とした料 理教室の開催など,行動を移すための実践的な取組みがなく調理技術を学ぶ機会が少なかった。米・ 魚・野菜の摂取意欲の向上が図れたことより,食を変えたいという意識はあるものの, 技術を学ぶ機 会が少なく,食行動の変容につながらなかった。また,自宅生が多く,自ら食材を選び,調理する環 境にないことも食行動の変容に結びつかない原因であると考える。若松の研究13)では,食行動の変

容には,自炊をする力がないと自分の食生活を改善することは難しく,大学生の食育を行うには食生 活を見直す学習だけでなく,調理技術を身につける調理実習を定期的に行うことが効果的だと報告し ている。

 以上のことから,学んだ食知識を対象者一人一人が実生活につなげることのできるように,管理栄 養士の介入に加えて料理教室の開催など,体験に基づいた食育が必要であると考える。

4 .米・魚・野菜の摂取量を増加させるために必要な支援・環境

 米・魚・野菜の摂取量を増加させるために必要な支援・環境については,全体をみると「食物への アクセス」が多かったが,「情報へのアクセス」「支援不要」「その他」と回答する者もおり,自由記 載からも居住形態を考慮した支援が必要なことがわかった。福田らの研究14)において,大学生にな

ると生活全般を自己管理するようになり, 大学生は食への心配りや関心が高まっているが,実践が難 しく食生活が好ましくない方向に進みやすい。また,情報を与えるだけでなく,限られた環境の中で, 調理の工夫や料理の選び方など食生活の改善につながる支援も必要であると報告している。これらの ことから,対象者の食行動の変容を促すためには,実践につながるよう個人の要望にそった食物への アクセス及び,情報へのアクセスが必要であると考えられる。

5 .研究の限界

 研究の対象者はA群16名,B群26名,C群22名と少なく,また,介入期間も 1 年間と短く,給食の 提供回数も 1 年間で29回と少ないため,結果を一般化するには限界がある。

 提供した給食の喫食回数が 6 割以上で,介入前後の調査票を全て提出した女子を解析対象としたた め,脱落者の結果が考慮されていない。

Ⅴ.要約

 近年,給食を通じた食生活の改善効果・食育の効果が期待されている。そこで,A群は給食の提供, B群は給食の提供及び資料の配布,C群は給食の提供・資料の配布及び管理栄養士の介入を行い,食 意識・食行動に与える影響について検討した。

(12)

食行動の変容は見られなかった。C群は対象者の米・魚・野菜に対する摂取意欲・食嗜好が向上した が,B群と同様に食行動の変容は見られなかった。しかし,米・魚において摂取量の増加がみられた 者が半数以上いた。このことより,管理栄養士が介入を行うことで,対象者の食意識に好ましい変化 を与えることができ,半数以上の者に食行動の変容を与えることができるとわかった。さらに多くの 対象者の食行動の変容につなげるためには,対象者一人一人の実態に合わせた介入を行い,食意識を 食行動につなげるために料理教室など行い,調理技術を身につける機会を設け,体験に基づいた食育 や個人の要望にそった支援方法が必要であると考えられる。

 給食の提供・資料の配布及び管理栄養士の介入により,大学生の食意識が向上し,食行動の変容が みられた者が半数以上みられ,管理栄養士の介入は効果があることが明らかになった。

Ⅵ.謝辞

 本研究にご協力いただきました学生の皆様に御礼申し上げます。

Ⅶ.参考文献

1 )厚生労働省:健康日本21(第 2 次)国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針, p93-p101,http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf(2017.10.25アクセス) 2 )厚生労働省通達健康局がん対策・健康増進課長:特定給食施設における栄養管理に関する指導

及 び 支 援 に つ い て,http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/114632_17944454_misc.pdf (2017.10.25アクセス)

3 )文部科学省:食に関する指導の手引-第一次改訂版-学校給食を生きた教材として活用した食育 の 推 進,p196-p227,http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1292952.htm(2017.10.25 アクセス)

4 )永嶋久美子:栄養教諭の現状,川村学園女子大学研究紀要,17,115-133(2006)

5 )厚生労働省:平成25年国民健康・栄養調査報告,p74-p77,http://www.mhlw.go.jp/bunya/ kenkou/eiyou/dl/h24-houkoku.pdf(2017.10.25アクセス)

6 )大杉紘徳,田中芳幸,兒玉隆之,村田伸:感情状態評価としてのVisual Analogue Scale の応用, ヘルスプロモーション理学療法研究,4,137-141(2014)

7 )吉村幸雄,高橋啓子,開元多恵,國井大輔,小松龍史,山本茂:栄養素および食品群別摂取量 推定のための食品群をベースとした食物摂取頻度調査票の作成および妥当性,栄養学雑誌,59, 221-232(2001)

8 )吉村幸雄,高橋啓子:エクセル栄養君 食物摂取頻度調査FFQgVer3.5 ,(2012)建帛社, 東京 9 )田中博晃:質的データ分析法としてKJ法を行う前に,外国語教育メディア学会(LET)関西支

部メソドロジー研究部会2010年度報告論集,17-39(2010)

10)厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書:日本人の食事摂取基準(2010年版), (2010)第一出版,東京

11)志垣瞳,池内ますみ,小西冨美子,花崎憲子:大学生の魚介類嗜好と食生活,日本調理科学会誌,

37,206-214(2004)

(13)

11,8-12(2002)

13)若松法代:大学生の食生活実態と食育の課題,滋賀大学大学院教育学研究科論文集,15 ,131-136(2012)

(14)

Abstract

The efects of food service, material distribution, and

intervention by a nationally registered dietitian on university

students’ dietary awareness and eating behaviors

Hiroko MORIWAKI, Tomo YOSHIDA, Risa OKANO, Kaho MIYAOKA, Chihiro KITAHARA

Haruka KIKUTANI, Mikiko TOMATSU, Bun TSUJI, Sumi SUGIYAMA

Recently, an expectation that eating behaviors will improve through obtaining food services has developed. As such, Group A students received food services that comprised rice, vegetables, and ish; Group B received food services and materials about the nutrients and recipes of the food services; and Group C received food services, materials, and intervention that included lectures and demonstrations of how to make ish and vegetable dishes by a nationally registered dietitian in order to investigate their respective efects on dietary awareness and eating behaviors.

In Group A, willingness to eat fish and vegetables increased; however, there was no change in eating behaviors. In Group B, willingness to eat ish and vegetables increased, as well as a preference for rice and ish; however, similarly to Group A, there was no change in eating behaviors. In Group C, willingness to eat and preference for rice, ish, and vegetables increased. Moreover, at least half of the students increased their rice and ish intake.

表 5 .喫食アンケート結果 A群(n=16) B群(n=26) C群(n=22) 合計(n=64) 人数 % 人数 % 人数 % 人数 % 食事は楽しみでしたか とても楽しみ 380( 95.5 ) 481( 76.8 ) 582( 99.1 ) 1,443( 89.6 ) やや楽しみ 18( 4.5 ) 145( 23.2 ) 5( 0.9 ) 168( 10.4 ) あまり楽しみでない 0( 0.0 ) 0( 0.0 ) 0( 0.0 ) 0( 0.0 ) 楽しみでない 0( 0.0 ) 0( 0.0
表 8 .介入前の習慣的摂取量 (平均値±標準偏差) 栄養素等 A群 B群 C群 p値 1) 同年代の女性の 食事摂取 (n=16) (n=26) (n=22) 平均摂取量 2) 基準 3) エネルギー (kcal) 1,811 ± 356 1,908 ± 538 1,867 ± 431 0.963 1,803 ± 497 1,950 たんぱく質 (g) 63.6 ± 17.1 62.3 ± 20.2 66.8 ± 19.2 0.713 66.3 ± 21.3 50 脂質 (g) 64.0 ± 17.1 6

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