動物を感染症の脅威から救う
大学院獣医学研究科 准教授
今内
こ ん な い
覚
さとる
(獣医学部共同獣医学課程)
専門分野 : 感染免疫学
研究のキーワード : 感染症,免疫,生体防御,ワクチン,創薬
HP アドレス : http://www.vetmed.hokudai.ac.jp/infectiousDiseases01.html
何を目指しているのですか?
病原体の侵入に対して宿主動物は 免疫によって対抗します。しかし、細 菌、ウイルスおよび原虫などが原因と なる感染症の中には、予防や治療が困 難な感染症がまだ数多くあります。こ れは、病原体が免疫回避や撹乱を引き 起こし病態が進行することにあります。 これらの感染症に対し有効な治療薬や ワクチンを開発するためには、病原体 と宿主の相互作用を解明することが重 要です。本研究室では、動物に大きな被害を起こすウイルスや原虫の病態メカニズムを解明することで新しい治療薬やワクチン の開発に取り組んでいます。また、これらの病原体を運ぶダニに対するワクチン開発につ いても研究を進めています。
どのようなものを使って、どんな実験をしているのですか?
どのような動物の病気が、実際の野外でどのように問題 になっているかを自分の目で 確かめるように努めています。 現在、日本を含めた世界中の ウシ、水牛、ヤギなどの家畜 や野生動物から血液や試料を 採取し、どのような感染症が 流行しているかについて分子 疫学調査を行っています。同 時に、病原体がどのような機 序によって宿主の免疫から逃 れているかを遺伝子レベルか
出身高校:北海道北見北斗高校 最終学歴:北海道大学大学院
獣医学研究科
病理
― 152 ― ― 153 ―
ら明らかにします。得られた結果を基に治 療薬やワクチンを開発、実際に動物に投与 し、その効果について検討しています。
一方、アフリカ等では、ダニによって種々 の感染症が引き起こされ問題となっていま す。たった一匹のダニに刺されることで、 ウシが死亡する感染症もあります。そこで ダニの唾液中の成分を解析し、病原体伝播 機序を解明することで、ダニの吸血を阻害 し感染症の伝播をも防ぐワクチン開発を海 外の研究機関と共同で行っています。
何を目指しますか?
日本での口蹄疫の被害は記憶に新しいと 思います。このように畜産資源を脅かす要 因の筆頭は感染症の蔓延で、特に甚大な被 害をもたらす悪性感染症の制御は世界共通 の悲願です。世界中には、まだ予防法や治 療法がない動物の感染症が多くあります。 それらの制御法の樹立は容易ではありませ んが、家畜を感染症の脅威から守るワクチ ンや治療薬の開発を目指しています。良い
研究成果が得られれば、日本だけではなく発展途上国の食資源確保にもつながるはずです。 また、愛玩動物や貴重な野生動物の命を救うことも可能となります。現在の研究は、色々 な疾病を同時に治す治療薬の開発も目指しています。
参考資料
研究内容:http://www.mcip.hokudai.ac.jp/TLO/pdf/12-1_hokudai01.pdf 研究風景:http://www.youtube.com/watch?v=6CJO9wwTs-0
― 152 ― ― 153 ―