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小川紘一著「国際標準化と事業戦略 日本型イノベーションとしての標準化ビジネスモデル」

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Academic year: 2018

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2011.5.27. no.261

書籍紹介

小川紘一 著 白桃書房 刊

「国際標準化と事業戦略

 

  日本型イノベーションとしての標準化ビジネスモデル

 本書は、国際標準化において日本企業が直面する課題を 分析し、日本企業の新たな勝ちパターンを再構築するため の方向性を示すことを目的に著されたものです。知的財産 権とは、権利者に対して一定期間、排他的独占権を与える ことによって、人に自由に使わせることに条件を付けるブ レーキである一方、標準化とは、工業製品などの品質・形 状・寸法を標準にしたがって統一することによって互換性 を高め、誰にでも自由に使わせるアクセルであり、これら を巧みに組合せた事業戦略が求められています。

 そこで本書では、PC、ネットワーク、携帯電話、デジ タルカメラ、DVD・Blu-ray、メモリーカード、太陽光発 電など多くの具体的な事例に基づいて、歴史的な市場の移 り変わりや、各々の代表的な企業が用いた事業戦略を紹 介し、その勝ちパターンを標準化ビジネスモデルの一般 理論として体系化しています。その中で、DVD、液晶パ ネル、太陽光発電セルなどは、いずれも日本を代表するプ ロダクトイノベーションであり、日本企業が標準化を先導 したにもかかわらず、グローバル市場で大量普及が始まる とともに、日本企業は急速にそのシェアを落としてしまっ ています。

 この敗因の一つに、伝統的な日本企業の組織能力と、製 品アーキテクチャーによるものが考えられています。日本 は広い分野において基礎研究から、部品・材料の開発技術、 そして、製品組立てに至るまでの製造技術をすべて持って いる技術大国であるがために、各製品の部品間の相互依存 性が大きく、標準化が介在し難いものとなっています。一 方で、部品間の相互依存性が小さい製品が標準化されると、 NIES/BRICs 諸国企業などの参入による急速な巨大市場 の興隆によって、日本企業は撤退の道を歩まざるを得なく なってしまっているのです。

 特許の質と量が企業収益に結びつきやすかった 20 世紀 前半や、素材産業や医薬品産業のように一つの特許が市場 を独占できることとは異なり、電機産業などにおいては、 単一の製品であっても数百〜数千の特許が刷り込まれてい るため、特定企業による事業の独占は実質的に不可能にな り、研究開発投資が生み出す特許も、クロスライセンスや パテントプールによって価値が小さくなってしまっていま す。このような時代の中で生まれた新たな勝ちパターンの 代表例が、PC、インターネットや携帯電話産業に見られ るような、国際分業におけるコア部品をブラック・ボック ス化し、知的財産で独占化しながらグローバル市場を支配 するというビジネスモデルだったのです。また、デジタル カメラやメモリーカードのように、日本企業の組織能力を 生かしたビジネスモデルによって市場競争を勝ち抜いた分 野もあることが紹介されています。

 これらの成功例を踏まえた上で、多くの特許を有する日 本企業が優先すべき知的財産戦略の一つに、特許権侵害摘 発の機能の強化を行うことによって、特許の価値を高める など知財マネージメントの強化があります。また、標準化 によって自由に使わせる一方で、コアとなる部分について はブラック・ボックス化し、知的財産によって技術進化の 方向を独占するという巧みな知恵が必要となっています。  これまで日本企業によって多くの革新的な製品が生み出 されていることは、疑いようのない事実であります。本書 を通じて、今後グローバル市場においても日本企業が競争 力を維持していくために、行政側が担うマクロな標準化政 策と企業側が担うビジネスモデルや知財マネージメントを 連携させた、日本企業の得意技を生かした新たな標準化シ ステムを生み出すきっかけになればと思います。

参照

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