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1990年代公共投資政策の評価

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2

1990 年代公共投資政策の評価

三井清

要 旨

本稿の目的は,1990 年代の公共投資政策を効率性の観点から評価するこ とである.公共投資政策を効率性の観点から評価するためには,社会資本整 備の生産活動に対する効果に加えて,生活環境に対する効果も評価すること が重要である.生産活動と生活環境の両面に与える効果を評価する手法とし て,本稿では Roback[1982]の枠組みを所得課税が存在するケースに拡張し た枠組みを採用する.その拡張された枠組みでは,社会資本整備の限界便益 を評価するとき,地代(あるいは地価)関数だけでなく,税収関数の推定結 果を用いて評価することになる.

(2)

地価関数と税収関数を推定する.そして,その推定結果を用いて,1985 年 時点と 1994 年時点における分野別社会資本の限界便益を都道府県ごとに比 較することで,1990 年代の公共投資政策を評価する.

(3)

1

はじめに

公共投資政策には,大別すれば短期的な景気対策としての側面と,長期的 な資源配分の効率性を高める側面がある.そして,景気循環の局面により重 視される側面は変化する.たとえば,景気が後退して失業率が高まっている ような局面では,公共投資が雇用を創出する効果の重要性が増すことになる. ただし,景気対策の側面の重要性が高い時期であったとしても,長期的な観 点からの効率性を犠牲にすることは,できるかぎり避けるような政策が望ま しいことはいうまでもない.したがって,1990 年代のように短期的な政策 効果の重要性が高まった時期の政策を事後的に評価する場合でも,短期的な 効果に加えて長期的な効果を評価することも重要である.そこで本稿では, これら 2 つの政策効果のうち,長期的な資源配分の効率性の観点に着目して 分析を行う.

1990 年代の公共投資政策あるいは社会資本整備政策はどのような特徴を もっていたのであろうか.1990 年代の公共投資政策の第 1 の特徴は,生活 基盤型社会資本整備よりも生産基盤型社会資本整備を優先したということで ある.第 2 の特徴は,都市圏よりも地方圏の社会資本整備を優先する政策が 採用されことである.すなわち,地方圏における生産活動を活性化するとい

う側面を重視する公共投資政策が選択されていたわけである1)

生産活動の活性化が重要な政策課題であったとしても,生活基盤型社会資 本を整備することで生活環境の質を向上させることとのバランスをとりなが ら公共投資政策が進められることが望ましい.とくに,所得水準が上昇する とともに,生活環境を改善することに対する人々のニーズが相対的に高まる と考えられる.したがって,1990 年代のように高い所得水準が達成された

(4)

段階における公共投資政策を効率性の観点から評価するためには,社会資本 整備の生産活動に対する効果に加えて,生活環境に対する効果も評価するこ とが重要である.

生産活動と生活環境の両面に与える効果を評価する手法として,本稿では Roback[1982]の枠組みを所得課税が存在するケースに拡張した枠組みを採 用する.そして,その拡張された枠組みでは,社会資本整備の限界便益を評 価するとき,地代(あるいは地価)関数だけでなく,税収関数の推定結果を 用いて評価することになる.

計測の対象とする期間は 1981 年から 1998 年までである.そして,1981 年から 1998 年までの都道府県のパネルデータを,1980 年代(前期)と 1990 年代(後期)に分けて,それぞれの期間について地価関数と税収関数を推定 する.そして,その推定結果を用いて,1985 年時点と 1994 年時点における 分野別社会資本の限界便益を都道府県ごとに比較することで,1990 年代の 公共投資政策を評価する.なお,社会資本の分野としては生活基盤型,第 2 次産業基盤型の 2 つに着目する.

その推計から得られた主な結果は,1994 年時点における生活基盤型社会 資本の限界便益はどの地域においても正であり,1990 年代における生活基 盤型社会資本の整備を優先することで効率性を高めることができたというも のである.とくに,地方圏よりも都市圏における生活基盤型社会資本の限界 便益が大きいので,都市圏における生活基盤型社会資本に重点を置いた整備 を進めることで効率性を改善できたことになる.第 2 次産業基盤型社会資本 の限界便益は 1985 年時点ではプラスであり,とくに東京における限界便益 が大きくなっている.しかし,1994 年における第 2 次産業基盤型社会資本 の限界便益は東京を含めて低下しており,1990 年代後半における第 2 次産 業基盤型社会資本への重点化を弱めることで効率性を高められたことになる.

(5)

地価関数と税収関数の推定を行う.第 6 節では,その推定結果を用いて 1985 年と 1995 年時点での分野別社会資本の地域別の限界便益を推計し, 1980 年代と 1990 年代における社会資本の限界便益を比較検討する.そして, 第 7 節で議論をまとめる.

2

分野別社会資本の地域間配分の特徴

1960 年から 1998 年までの分野別社会資本整備の推移を図表 2 1 と図表 2 2 で概観しよう.社会資本は生活基盤型,第 2 次産業基盤型,防災基盤型, 第 1 次産業基盤型の 4 つの分野に分類する.なお,それぞれの分野の社会資 本は,内閣府[2002]のデータを用いて次のように定義する.すなわち,生活 基盤型社会資本は「公共賃貸住宅」,「下水道」,「廃棄物処理」,「水道」,「都 市公園」,「文教」の合計,第 2 次産業基盤型社会資本は「道路」,「港湾」, 「航空」,「工業用水」の合計,防災基盤型社会資本は「治山」,「治水」,「海 岸」の合計,第 1 次産業基盤型社会資本は「農業」,「漁業」の合計である. ある分野の社会資本の(ある期間における)増加率が他の分野の社会資本 より大きいとき,その分野の社会資本が(その期間に)重点的に整備されて

いると呼ぶことにする.そして,「(1+増加率)の対数値」は「対数値の増

分」と一致する.そこで,分野別社会資本の対数値を描いた図表 2 1 を見る と 1960 年代は第 1 次産業基盤型社会資本整備に重点が置かれ,1960 年代半 ばから 1970 年代半ばまで第 2 次産業基盤型社会資本整備に重点が置かれ, 1970 年代は生活基盤型社会資本整備に重点が置かれていた.そして,1980 年代はどの分野の社会資本整備も抑制されるようになるとともに,各分野間 の社会資本整備がほぼ同様のテンポで進められた.それに対して,1990 年

代には第 2 次産業基盤型社会資本整備に重点が置かれるようになった(図表

2 2).

次に,地域間の社会資本整備の推移をデータで確認するために,都市圏の 分野別社会資本の占有率の推移を図表 2 3 と図表 2 4 で確認してみよう.な お,都市圏とは東京,埼玉,千葉,神奈川,愛知,大阪,京都,兵庫,福岡

であり,地方圏とはそれ以外の道県である2).また,ある分野の社会資本の

(6)

たものである.

図表 2 3 を見ると,第 2 次産業基盤型社会資本の都市圏占有率は 1970 年 ころまで高まっていったが,それ以降は 1990 年代前半の一時期を除いて低 下傾向が続いた.生活基盤型社会資本の都市圏占有率は 1975 年ころまで高 まったが,それ以降は一貫して低下傾向にある.図表 2 4 を見ると,第 1 次 産業型社会資本の都市占有率は,1960 年以降一貫して低下してきている.

2) 沖縄は 1974 年までのデータが存在しないので除いてある.

55 (%)

50 45 40 35 30 25 20

1960 65 70 75 80 85 90 95 (年)

生活基盤型 第 2 次産業基盤型 図表 2 2 分野別社会資本ストック割合 20

19

18

17

16

15

14

1960 65 70 75 80 85 90 95 (年)

生活基盤型 第 2 次産業基盤型 防災基盤型 第 1 次産業基盤型 図表 2 1 分野別社会資本(対数値)

出所) 内閣府『日本の社会資本――世代を超えるストック』(2002)より作成.

(7)

防災基盤型社会資本の都市圏占有率は 1965 年ころまでは上昇していたが, それ以降その都市圏占有率は基本的に低下してきている.

3

社会資本整備の社会的便益評価に関する実証研究

社会資本整備にする既存研究を包括的に概観した上で,この研究分野を展 望した文献としては,岩本[2005],Batina and Ihori[2005]などがあるが,

35 (%)

30

25

20

15

10

1960 65 70 75 80 85 90 95 (年)

防災基盤型 第 1 次産業基盤型

図表 2 4 分野別社会資本の都市圏占有率⑵

65 (%)

60 55 50 45 40 35 30

1960 65 70 75 80 85 90 95 (年)

生活基盤型 第 2 次産業基盤型

図表 2 3 分野別社会資本の都市圏占有率⑴

(8)

ここでも本稿との関連性の深い論文に重点を置きながら簡単に概観する. 社会資本整備の社会的便益を評価する既存の研究は,生産力(あるいは生 産性)に対する効果を測る研究,生活環境の質に対する効果(と生産力に対 する効果の両方)を測る研究の 2 つに大別することができる.第 1 の生産力 に対する効果を測る研究は,さらにマクロ生産関数と地域生産関数のどちら に着目するかで 2 通りに分類できる.マクロ時系列データを用いた社会資本 の生産力効果の実証分析としては,米国に関する Aschauer[1989]の研究を

契機として多くの研究が蓄積されている3).これらの研究の争点となったの

は,社会資本の整備が不十分であったことが 1970 年代と 80 年代の米国にお け る 経 済 成 長 が 低 迷 し た 原 因 で あ っ た か ど う か と い う 点 で あ っ た. Aschauer により示された社会資本の整備が生産性を向上させる効果が大き いという計測結果は,社会資本の不足と経済成長の低迷との関連性に対する

人々の関心を高めることになった4)

わが国におけるマクロ・生産タイプの研究としては,すでに 1970 年代に おける Nose[1973]や 1980 年代における Asako and Wakasugi[1984]による 研究がある.しかし,1990 年代に入ると岩本[1990]をはじめとして,浅子 ほか[1994],奥野ほか[1994],三井・太田[1995],吉野・中島[1999]など多

くの研究が行われるようになった5).それらの結果はおおむね社会資本が生

産性の向上に寄与しているというものである.そして,多くの実証研究に共 通する結果は 1970 年代においては社会資本が民間資本に対して相対的に不 足していたというものである.それに対して,1980 年代に関しては,社会 資本が民間資本に対して相対的にやや過剰であるとする結果から,ほぼ適切 な水準であったという結果が多い.1990 年代に関しては,研究の重点が地 域データを用いた分析に移ったこともあり研究の蓄積が少なく,その水準が 過大か過小かを評価できるような研究の蓄積が進んでいない.

地域別社会資本データを用いた民間部門の生産性に与える効果に着目する

実証研究としては Mera[1973]を嚆矢として,Costa [1987]や Munnell

3) Aschauer[1989]以前の業績としては Ratner[1983]がある.

4) 欧米におけるこの分野のサーベイとしては Sturm[1998]が有用である.

(9)

[1990] な ど 多 く の 研 究 が 蓄 積 さ れ て い る.Munnell [1990] は Aschauer [1989]がマクロ時系列データを用いた場合には確認できた社会資本の生産性 を改善する効果が,米国の地域データを用いた場合には確認できないことを 示した.その理由は社会資本の生産性に与える効果が他の地域にスピルオー バーしてしまう効果が存在するからではないかとしている.

Mera[1973]はわが国の都道府県のデータをいくつかの地方ごとに集計し て推計することで,生産性効果の存在を確認している.スピルオーバー効果 の存在により生ずる推定上の問題を,データをある程度集計することにより 回避しているわけである.その後の地域データを用いた研究で得られている ほぼ共通した結果は,大都市圏の社会資本の生産性を向上させる効果は大き いのに対して,地方圏においてはその効果が小さいというものである.その 後のわが国の地域データを用いた実証分析としては,堀[1987],浅子ほか [1994],三井・太田[1995],大河原・山野[1995],岩本ほか[1996],土居

[1998],吉野・中島[1999],三井[2003],亀田・李[2008]などがある6)

第 2 の生活環境の質に対する効果(と生産力に対する効果の両方)を測る 先行研究について概観しよう.社会資本が生活環境を改善する効果をもつな らば,それは個人の生活環境を形成する要因の 1 つと見なすことができる.

したがって,ヘドニック法(Rosen[1974])と資本化仮説を応用した Roback

[1982]による地域環境の評価方法が,社会資本の生活改善効果の測定に応用 されるのは自然な展開であった.これらの評価法は,環境要因の便益をキャ ピタライズした地代(および賃金)と環境要因との関係をヘドニック関数と して推定し,推定されたパラメータから個人が効用関数上で評価する環境要 因の限界便益を評価するという方法をとる.したがって,社会資本に関する 変数をヘドニック関数における説明変数として見なすことができるかぎり, Roback 流の分析は社会資本による生活環境改善効果の測定に容易に応用で きることになる.

(10)

欧米における研究では社会資本ストック値そのものを対象としてはいない が,公共サービスの効果を環境要因の 1 つとして測定した Gyourko and Tracy[1991]による研究がある.わが国の応用例としては下水道整備率や道 路延長などの実物単位で測られた各種の社会資本の評価額を測定した加藤 [1991],赤井・大竹[1995],岡崎・松浦[2000]などがあるが,これらの研究 で使用された社会資本データは貨幣単位のデータではないために,社会資本 の便益は生産力効果に関する既存の研究と直接比較できる形では計測されて いない.一方,井出[1999],田中[2001],三井・林[2001],林[2003],遠藤 [2003],赤木[2004],小林[2008]の研究は,Roback の議論を応用するとと もに,生産力効果の測定に使用される社会資本データと同様のデータを用い て実証分析を行っている.

井出[1999]は Roback モデルにおける,企業の利潤がゼロになるという均 衡式(賃金式),個人の効用水準が地域間で一定になるという均衡式(地価 式)に人口決定式を加えた構造方程式を推計している.そして,大都市圏に おける生活関連社会資本ストックに対する人々の満足度が,非大都市圏と比

較して大きいといった推計結果を得ている7)

田中[2001]は社会資本が(生産力に与える効果を除いた)生活環境の質を 改善する効果のみを抽出して推計している.そして,生活基盤型社会資本の 限界便益が生産基盤型の限界便益と比較して大きいといった結果を得ている.

三井・林[2001]では,地域間で 1 人当たり税額が異なる場合の限界便益を とらえるために,地代関数を税額に関して解いた式の推定結果を用いて社会 資本の限界便益を推計している.そして,1995 年時点における評価におい て,産業基盤型より生活基盤型の社会資本の限界便益が他分野の限界便益よ り高いといった結果が得られている.また,遠藤[2003]においても,三井・ 林[2001]と同様の手法を用いつつ,異なる社会資本データで実証することで ほぼ同様の結果を得ている.

林[2003]は,Roback のモデルに Brueckner[1982]の議論を応用して,地 方政府の予算制約式などを考慮するときは,地代関数の社会資本に関する微 係数がゼロとなることがその社会資本の水準が効率的であるための条件であ

(11)

るという結論を導いている.そして,地代関数を推定した結果から,生活基 盤型社会資本の水準が近畿以外の地域では過小であるといった結果を得てい る.また,小林[2008]は,林[2003]の理論的な結果を用いつつ,時点が変化 することで分野別社会資本の水準の効率性の時間的な変遷を検証している. そして,社会資本が「過小」と判定される地域が時間とともに減少し,生活 基盤型社会資本は全体的に「過小」であり,産業基盤型が都市的と考えられ る地域で「過小」であるといった結果を得ている.

4

課税システムと資本化仮説を用いた限界便益評価

本節では,資本化仮説に基づく Roback 流の分析を用いて,社会資本整備 の政策評価を行う.Roback の分析には,①消費者が同質的であること,② 移住コストがゼロであること,③プロジェクトが小規模であること,④居住 地と勤務地は同一(職住一致)であること,⑤税制は一括固定税であること, などの前提が置かれている.しかし,日本の所得税制度と地方税制度を考え るとき,税制度が一括固定税であるとする想定は現実との乖離が大きい.そ こで,これらの前提のなかで,本稿では所得課税が存在するケースに

Roback[1982]の議論を拡張する8)

地域iに居住する個人の効用関数はU(x,h,G)と表され,合成財(基準

財)x,1 人当たり住宅面積h,および,地域iに存在する社会資本Gから

便益を得るものとしよう.ここで,各個人の効用関数の形は地域とはかかわ りなく同一と仮定し,各財の消費量は地域内では同一であるとする.各個人

は地域内で非弾力的に 1 単位の労働を供給し,その対価として賃金wを得

る9).地代をr,非労働所得をI,税額をTとする.なお,非労働所得I

居住地から独立であり10),各地域に居住する個人は地域間で共通の課税シ

ステムT=T(w)に直面しているとする.そのとき,地域iに居住する個

8) この議論は基本的に三井[2008]に基づくものである.なお,Roback[1982]で労働供給時間が 固定的であると想定されているにもかかわらず,労働所得課税と一括固定税が実質的に同一でな い理由は,勤務地を選択することで労働所得水準を変化させることができるからである. 9) 労働供給が非弾力的であるにもかかわらず課税システムが一括税でない場合について検討する

意味があるのは,社会資本の限界便益を評価するときに賃金の変化についても考慮するからであ る.

(12)

人の可処分所得をd,可処分所得関数をd=d(w)と表すことにすれば,

d(w) ≡w+IT(w) (2.1)

であるから,地域iに居住する個人の予算制約式は,x+rh=dとなる.

そして,地域iにおける各個人の間接効用関数は,予算制約のもとでの効用

最大化の条件から,(2.2)式のように表すことができる.

v=v(d,r,G) (2.2)

ここで,個人の地域間の移住は自由であり移住の費用はゼロであると仮定 する.移住費用がゼロであるから,各個人は特定の地域に居住することに

よって得られる可処分所得d,地代r,および地域社会資本水準Gの組み

合わせを考慮しながらより高い効用が得られる地域へと移住することになる.

したがって,個人の移動が止まる均衡(=移住均衡)では,どの地域に居住

しても同じ効用が得られることになるので,

v(d,r,G) =u (2.3)

と均衡を特徴づけることができる.ここでu は均衡における全国均一の効

用水準である.

地域iにおける合成財は地域内の企業によって生産される.簡略化のため

に地域内の生産サイドの問題は代表的企業の最適化問題によって与えられる

としよう.生産用地lと労働者数N(=地域iの個人の数)を生産要素と

する代表的企業の生産関数は,当該地域の社会資本Gの影響を受けるもの

とする.したがって生産関数はX=F(l,N,G)と表現される.そして,費

rl+wNを最小化する問題から費用関数C=C(w,r,G,X)を導出する

ことができる.さらに,生産技術に民間部門における規模に関する収穫一定 を仮定すると,単位費用関数

c=c(w,r,G)

C(w,r,G,X)

X

(2.4)

(13)

は 1 であるから

c(w,r,G) = 1 (2.5)

という関係が市場均衡において成立することになる.

以上は課税システムT=T(w)が考慮されている以外,資本化仮説を応

用した Roback 流の標準的な理論設定と同じである.そして,課税システム

を考慮した場合には,社会資本Gを追加的に増加させたときの限界便益が

地代関数に加えて(個人 1 人当たりの)税収関数を用いることでとらえるこ とができることを確認しよう.

個人の土地需要関数をh=h(d,r,G)とおけば,ロワの恒等式を用いる

とともに,

v

d(w),r,G

=v

d(w),r,G

1−T'(w)

を考慮すると,(2.6)式のようになる.

1 −T' (w)

v

d(w) ,r,G

v

d(w) ,r,G

=h

d(w) ,r,G

(2.6)

移住均衡の条件v

d(w),r,G

=u を全微分すると,

v

dw+v

dr+v

dG= 0

である.なお,v≡v

d(w),r,G

である(j=w,r,G).そして,Gの増加

による効用の増加を所得の増加として測った値をp

と表せば,p

=

vv

なので

v≡v(d,r,G)

,

p

=

1 −T' (w)

v

v

= −

1 −T' (w)

dw

dG +h

dr

dG (2.7)

である.

地域iの企業の労働需要関数をN=N(w,r,G),土地需要関数をl=

l(w,r,G)とおけば,単位費用関数にシェパードの補題を用いてc

=

NXc

=l

Xが成立する.なお,c≡c(w,r,G)である(j=w,r,G).

(14)

≡Cも,c(w,r,G)=1 を全微分して,上記の関係を用いれば,

C=−N

dw

dGl

dr

dG (2.8)

と表すことができる.したがって,Gを増加させたときの地域iの限界便益

MBGは(2.7),(2.8)より,

MBG=Np

C=NT' (w)

dw

dG

+ (Nh+l)

dr

dG (2.9)

となる.そして,地域iの土地の供給量をLとおけば,土地市場の均衡条

Nh+l=Lより,

MBG=NT' (w)

dw

dG

+L

dr

dG

=N

dT

dG

+L

dr

dG (2.10)

という便益評価のフォーミュラが得られる.たとえば,一括固定税の場合は

T'(w)=0 であるので,よく知られているように地代関数の推定結果と土地

面積を用いて限界便益をとらえることができることになる.しかしながら, 限界税率がプラスであるような課税システムのもとで限界便益を推計するた めには,地代関数に加えて税収関数も推定する必要が生じることになる.

このような結果が得られた直感的な理由は次のようなものである.社会資 本を増加させたときの環境改善や生産性向上(の結果としての賃金上昇)の 便益は,効用水準が変化しないという条件のもとでは,地代の上昇という形 で相殺されることになる.したがって,地代の上昇から社会資本増加の便益 をとらえられるというわけである.しかしながら,限界税率がプラスである 場合は,その分だけ所得の変化でとらえられる便益が過小になる.したがっ て,税収の増加を考慮する必要が生じるのである.

(15)

ミュラ(2.10)による近似の程度は高いことが示されている.また,Kane-moto[1988]では,やはり所得課税が存在しない一般均衡の枠組みのもとで 分析することで,規模の大きいプロジェクトの場合はフォーミュラ(2.10) は便益を過大に推計するという結果を導いている.さらに,三井[2008]では, 特殊ケースについてではあるが,所得課税が存在するもとでも Kanemoto と同様にフォーミュラ(2.10)が,規模の大きいプロジェクトの便益を過大 評価することを示している.以上のように,フォーミュラ(2.10)には一般 均衡的な枠組みのもとでは,バイアスが生じるとともに過大評価になる傾向 があることには十分留意する必要があるが,以下ではフォーミュラ(2.10) を用いて公共投資政策の効率性の観点からの評価を試みる.

5

地代関数と税収関数の推定

第 4 節の議論より,社会資本の限界便益を推計するため,社会資本が追加

的に増加したときの地代rの増分(drdG)と税収Tの増分(dTdG)

を推計する必要がある.なお,これからは時点(年)を表す添え字tを明示

的に表記する.以下では,都道府県データを用いて推計を行うが,地代r

に関する都道府県ベースでの信頼性の高いデータを得ることが困難であるこ とから,地代関数の替わりに地価関数を推定する.

t年の地域iの地価Pと地代rの間には,tのみの関数(t)と地域ごと

に異なる定数µを用いて

r

P

=(t)µ(t,i) (2.11)

という関係が成立することを仮定する.そして,(t,i)を土地の資本化率

(capitalization rate)と呼ぶことにする.なお,利子率iと地代の成長率θ

が一定であるとすれば,t年の地域iの地価Pと地代rの間には,

P=

r

iθ (2.12)

(16)

殊ケースに対応している.

都道府県の地価は安東ほか[1991]にならって,内閣府『国民経済計算年 報』のストック編参考表の「土地の資産額の都道府県別内訳(民有地)」の なかの「総資産額」を,総務省「固定資産の価格等の概要調書」の土地・都 道府県別表のなかの「民有地地積」で除すことによって都道府県の平均的な 民有地価格を求める.

使用するデータは 47 都道府県のデータを 1981 年から 1998 年までの 18 年 にわたってプールしたパネルデータである.そして,サンプルを 1981 年か ら 1989 年までの前期と 1990 年から 1998 年までの後期の 2 つに分割して推

定する.また,推定の対象となる回帰式は,クロスセクション方向をi,時

系列方向をtという添字でインデックス化される.なお,この推定は均衡体

系(2.4)と(2.5)が成立しているという前提に依存しているため,推定に 使用されるデータが観測された 1981 年から 1998 年までの各期でそのような

均衡が成立していると仮定している11)

推定のために地価関数の関数形を

lnP=α+∑αlnG+∑α

lna

+αD+e (2.13)

と特定化する.ここで,Gは分野jの(地域i,時点tにおける)社会資

本であり,Gで生活基盤型社会資本を,Gで第 2 次産業基盤型社会資

本を表すことにする12).また,aは前年の「住民基本台帳」の都道府県別

人口,aとa

はそれぞれ前年の「固定資産の価格等の概要調書」の土地・

都道府県別表の民有地地積(宅地)と民有地地積である.タイム・ダミー

Dを考慮しているのは地域間では共通であるが毎年変化するu とマクロ・

ショックをとらえるためである.また,撹乱項eに関してはe=η+ε

いう仮定をおいて推定を行う.ここで,ηεはともに互いに独立で分散

は均一であるとする13).なお,(2.11)の前提のもとでは,(t,i)は定数項

αとタイム・ダミーDがとらえている.

11) 移住均衡が成立していることを,人口移動が急速に進んでいる状態にある経済に想定するこ とには問題がある.しかしながら 1970 年代後半以降の日本においては各都道府県の転入超過数 もその絶対値が小さくなってきており人口移動のスピードが低下している.したがって,移住均 衡を前提として現実のデータを解釈することの妥当性が増していると考えられる.

(17)

税収関数についても地価関数と同様に

lnT=β+∑βlnG+∑β ln

a +

βD+e (2.14)

という関数型を採用する.税額Tについては,個人に課される当該年の所

得税(申告所得税,源泉所得税)と翌年の地方税(道府県民税,市町村民税,

事業税)の和を人口で割ったものである14).なお,データの詳しい説明は

補論 1 で行う.

図表 2 5 には地価関数の推定結果がまとめられており,図表 2 6 には(1 人当たり)税収関数の推定結果がまとめられている.どちらも固定効果モデ ルとランダム効果モデルのモデル選択に関する Hausman 検定(特定化テス ト)の結果から固定効果モデルが選択されている.なお,これらの表ではタ

イム・ダミーの係数αの推定値と地域ダミーの係数(固定効果)ηの推定

値の報告は省略している.

固定効果モデルにおける計測結果は地域ダミーが考慮されていることにな り,各地域に固有の要因で時間を通じて変化しない要因については,その地 域ダミーがとらえていると考えられる.なお,このようなパネル分析を行う ときには,地価関数と税収関数の関数型が時間を通じて同一であり,その係 数もタイム・ダミーの係数を除いては同一であるという前提を置いている点 には十分な留意が必要である.

地価関数の推定結果を見ると,生活基盤型社会資本は地価に対して正の効 果をもっているのに対して,第 2 次産業基盤型社会資本は負の効果をもって いる(図表 2 5).社会資本は,生活の利便性を高める一方で生活環境を悪化 させる側面も併せもっていると考えられる.生活基盤型社会資本に関しては, 生活の利便性を高める効果が生活環境を低下させる効果を上回っているとい うことである.それに対して,生産基盤型社会資本に関しては生活の利便性 を高める効果よりも,生活環境を悪化させる効果の方が高いという結果に

13) 撹乱項がe=η+εと 2 つのコンポーネントをもつ形で特定化される場合によく適用される モデルとしては,ηの固定された値に条件つきで推定する方法である固定効果モデル(fixed

ef-fects model)とηもランダムな撹乱項であるとする前提のもとで一般化最小二乗法を用いて推

定するランダム効果モデル(random effects model)がある.

(18)

なっている.

税収関数の推定結果を見ると,生活基盤型社会資本の税収に与える効果は, 1980 年代においてはほとんど観察されないのに対して,1990 年代において は正の効果が観察されている.生活基盤型社会資本の整備がその地域の人口 を増加させたり,所得水準を増加させたりすることを通じて,税収増に貢献 するようになったという結果になっている.第 2 次産業基盤型社会資本に関 しては,1980 年代でも 90 年代でも税収に対する正の効果をもっており,第 2 次産業基盤型社会資本整備が人口増あるいは所得増などを通じて税収を増

加させる効果をもっていることを示している(図表 2 6).

6

分野別社会資本の限界便益の推計

特定の地域においてどの分野の社会資本を重点的に整備すべきかどうかと

図表 2 5 地価関数(固定効果モデル):前期と後期 前期(1981 1989) 後期(1990 1998)

係数 標準誤差 係数 標準誤差

α 0.22** 0.09 0.16* 0.08 α −0.19*** 0.06 −0.26*** 0.05

α 1.58*** 0.13 1.61*** 0.11 α −0.57*** 0.07 −0.39*** 0.06 α −1.00*** 0.03 −1.06*** 0.03

AdjR 0.970 0.978

Hausman 0.000 0.000

注) タイム・ダミーの推定結果は省略している.***,**,* はそれぞれ 1%,5%,10%水準で有意であ ることを示す.

図表 2 6 税収関数(固定効果モデル):前期と後期 前期(1981 1989) 後期(1990 1998)

係数 標準誤差 係数 標準誤差

β 0.05 0.06 0.16** 0.07

β 0.13*** 0.04 0.17*** 0.04

β0.24** 0.09 0.05 0.10

β0.16*** 0.05 0.01 0.05

β0.17*** 0.02 0.20*** 0.02

AdjR 0.810 0.782

Hausman 0.000 0.000

(19)

いう政策的含意を得るために,分野別社会資本の限界便益を地域ごとに推計 しよう.

推定式の定式化から地価Pの社会資本Gに関する弾力性はαとなる.

また,同様にして,税収関数の定式化から税収Tの社会資本Gに関する

弾力性はβである.そして,(2.11)より地代rr=(t,i)Pと表され

るので,社会資本Gの限界的な増加が地代rに与える効果は

dr

dG

=αΩ(t,i)P G

(2.15)

である.同様にして,社会資本Gの限界的な増加が税収Tに与える効果

は(2.16)式のようになる.

dT

dG

=βT G

(2.16)

以上の(2.10),(2.15),(2.16)より,社会資本Gの限界便益は

MBG=N αT

G

+L

βΩ(t,i)P

G

(2.17)

と表されることになる.

図表 2 5 は地価関数の推定結果をまとめたものである.生活基盤型社会資

本に関する弾力性αはプラスであり,その値は 1980 年代より 1990 年代の

方が小さくなっている.生活基盤型社会資本の増加が地価を上昇させるとい う結果になっている.それに対して,第 2 次産業基盤型社会資本に関する弾

力性βはマイナスであり,その値は 1980 年代より 1990 年代の方が小さく

なっている.第 2 次産業基盤型社会資本の増加が地価を下落させるという結 果になっている.

図表 2 6 は税収関数の推定結果をまとめたものである.生活基盤型社会資

本に関する弾力性βは 1990 年代においては有意にプラスであるが,1980

年代においてはその有意性は低い.1990 年代においては,生活基盤型社会 資本の増加が税収を増加させるという結果になっている.また,第 2 次産業

(20)

1990 年代の方が大きくなっている.第 2 次産業基盤型社会資本の増加が税 収を増加させるという結果になっている.

1985 年時点と 1994 年時点における各地域の社会資本Gの限界便益

MBGを,(2.17)を用いて求めてみよう15).なお,限界便益を計算すると

きに用いる土地の面積は民有地だけを考慮している.したがって,社会資本 整備にともなって公的に利用されることになる土地は除かれた地価上昇だけ を便益としてとらえていることになる.すなわち,社会資本整備にともなっ て公的に利用される土地の機会費用は控除された後の(ネットの)便益を考

えていることになる16)

資本化率(t,i)の値については 0.5%,1.0%,1.5%という 3 つの値を

想定して推計結果を比較する17).図表 2 7 ⑴には,資本化率(t,i)=1.0%

のケースにおける,それぞれ 1985 年時点と 1995 年時点の限界便益の推計結

果がまとめられている.以下では主にこの(1985,i)=(1994,i)=1.0%の

ケースに基づいて,分野別社会資本の各地域における限界便益を比較検討し

よう.たとえば,1985 年時点の北海道の生活基盤型社会資本Gの限界便益

MBGが 2.0%であるということは,追加的にGについて 100 億円の整備

をしたときに,毎年 2.0 億円の便益が発生するということである.なお,こ の限界便益は維持管理費などを控除する前の限界便益である.また,社会資 本整備に必要な(たとえば公園を整備するときに必要な)土地の社会的費用 (たとえば地代)は,税収の減少などを通じてとらえられているので,この 限界便益は用地費用(たとえば地代)を控除した後の便益をとらえているこ とになる.

図表 2 7 の推計結果を見ると,生活基盤型社会資本の限界便益MBG

1985 年時点では 2%から 5%程度の値になっており,1994 年時点では 3%か

ら 7%程度の値になっている.限界便益MBGは 1985 年より 1994 年にお

ける方が上昇しているとともに,地方圏より都市圏の限界便益MBGの値

がとくに大きくなっている.

第 2 次産業基盤型社会資本Gの限界便益MBGについて図表 2 7 を用い

15) 税収は GDP デフレータで実質化している.

(21)

図表 2 7 ⑴ 分野別社会資本の限界便益(その 1)

t=1985 年,1994 年,Ω(t,i)=1.0%

MBG MBG

1985 1994 1985 1994

北海道 2.0% 2.6% 0.7% 0.4%

青森県 2.7% 2.7% 0.3% 0.3%

岩手県 2.8% 3.3% 0.4% 0.3%

宮城県 2.7% 3.3% 1.2% 0.1%

秋田県 2.9% 3.1% 0.3% 0.3%

山形県 2.5% 2.9% 0.6% 0.4%

福島県 3.3% 3.6% 0.4% 0.2%

茨城県 2.5% 3.6% 0.9% 0.2%

栃木県 3.5% 5.0% 1.1% 0.2%

群馬県 3.2% 4.8% 1.1% 0.0%

埼玉県 3.6% 5.0% 0.9% −1.1%

千葉県 3.1% 4.5% 0.7% −0.9%

東京都 5.5% 7.5% 5.6% 2.2%

神奈川県 2.8% 4.3% 1.5% −0.9%

新潟県 2.9% 3.5% 0.4% 0.3%

富山県 3.6% 4.3% 0.9% 0.7%

石川県 2.9% 3.9% 0.7% 0.3%

福井県 3.0% 3.9% 0.6% 0.4%

山梨県 2.8% 4.5% 0.6% −0.2%

長野県 3.4% 4.8% 0.8% 0.8%

岐阜県 3.6% 5.2% 1.0% 0.1%

静岡県 4.3% 5.9% 1.3% −0.1%

愛知県 3.3% 5.2% 2.2% 0.8%

三重県 2.9% 4.3% 1.0% 0.5%

滋賀県 2.8% 3.4% 0.7% 0.0%

京都府 2.8% 4.0% 1.8% −0.3%

大阪府 3.2% 5.4% 2.8% 0.3%

兵庫県 2.8% 3.5% 0.8% −0.2%

奈良県 2.6% 3.4% 0.6% −0.2%

和歌山県 3.7% 4.7% 0.2% 0.0%

鳥取県 2.4% 3.0% 0.5% 0.2%

島根県 2.0% 2.7% 0.7% 0.5%

岡山県 2.9% 4.1% 1.0% 0.4%

広島県 2.8% 4.0% 1.2% 0.3%

山口県 2.7% 3.5% 0.7% 0.4%

徳島県 3.3% 5.1% 0.4% 0.2%

香川県 2.7% 4.3% 1.2% 0.7%

愛媛県 3.5% 4.4% 0.4% −0.1%

高知県 2.8% 3.2% 0.3% 0.0%

福岡県 2.3% 3.4% 1.0% 0.0%

佐賀県 2.4% 3.1% 0.8% 0.4%

長崎県 2.3% 3.2% 0.9% 0.4%

熊本県 2.7% 3.9% 0.8% 0.3%

大分県 2.9% 3.6% 0.7% 0.3%

宮崎県 2.7% 3.1% 0.5% 0.3%

鹿児島県 3.0% 3.3% 0.2% 0.1%

(22)

図表 2 7 ⑵ 分野別社会資本の限界便益(その 2)

t=1985 年,1994 年,Ω(t,i)=0.5%

MBG MBG

1985 1994 1985 1994

北海道 1.4% 2.2% 1.0% 0.7%

青森県 1.8% 2.3% 0.8% 0.8%

岩手県 1.9% 2.8% 0.8% 0.8%

宮城県 1.9% 2.7% 2.0% 1.2%

秋田県 1.9% 2.6% 0.8% 0.7%

山形県 1.7% 2.5% 1.1% 1.0%

福島県 2.2% 3.0% 1.0% 0.9%

茨城県 1.7% 3.0% 1.6% 1.3%

栃木県 2.4% 4.1% 2.0% 1.7%

群馬県 2.2% 3.9% 1.8% 1.2%

埼玉県 2.3% 3.9% 3.0% 1.7%

千葉県 2.0% 3.5% 2.0% 1.2%

東京都 3.8% 6.3% 8.7% 5.6%

神奈川県 1.9% 3.4% 3.0% 1.4%

新潟県 1.9% 2.9% 0.8% 0.8%

富山県 2.5% 3.7% 1.5% 1.4%

石川県 1.9% 3.2% 1.5% 1.4%

福井県 2.0% 3.2% 1.2% 1.1%

山梨県 1.9% 3.6% 1.1% 0.8%

長野県 2.3% 4.1% 1.6% 1.6%

岐阜県 2.4% 4.2% 1.7% 1.2%

静岡県 2.9% 4.7% 2.2% 1.4%

愛知県 2.3% 4.3% 3.4% 2.5%

三重県 2.0% 3.6% 1.6% 1.4%

滋賀県 1.8% 2.8% 1.6% 1.2%

京都府 1.9% 3.2% 3.7% 1.8%

大阪府 2.3% 4.4% 4.1% 2.5%

兵庫県 1.8% 2.8% 1.8% 1.0%

奈良県 1.7% 2.7% 1.8% 1.5%

和歌山県 2.4% 3.8% 0.9% 0.8%

鳥取県 1.6% 2.5% 0.9% 0.7%

島根県 1.4% 2.4% 1.0% 0.8%

岡山県 2.1% 3.4% 1.5% 1.1%

広島県 2.0% 3.3% 1.8% 1.2%

山口県 1.9% 3.0% 1.2% 0.9%

徳島県 2.2% 4.2% 0.9% 0.9%

香川県 1.9% 3.7% 1.6% 1.2%

愛媛県 2.3% 3.5% 1.0% 0.6%

高知県 1.8% 2.6% 0.8% 0.5%

福岡県 1.5% 2.8% 1.8% 1.3%

佐賀県 1.6% 2.6% 1.2% 1.0%

長崎県 1.6% 2.7% 1.4% 1.0%

熊本県 1.8% 3.2% 1.4% 1.0%

大分県 2.0% 3.0% 1.1% 0.9%

宮崎県 1.8% 2.6% 0.9% 0.8%

鹿児島県 1.9% 2.7% 0.8% 0.6%

(23)

図表 2 7 ⑶ 分野別社会資本の限界便益(その 3)

t=1985 年,1994 年,Ω(t,i)=1.5%

MBG MBG

1985 1994 1985 1994

北海道 2.5% 3.0% 0.4% 0.0%

青森県 3.7% 3.2% −0.3% −0.1%

岩手県 3.8% 3.8% 0.0% −0.2%

宮城県 3.6% 3.9% 0.4% −1.0%

秋田県 3.9% 3.6% −0.2% −0.2%

山形県 3.3% 3.4% 0.1% −0.1%

福島県 4.5% 4.3% −0.2% −0.5%

茨城県 3.4% 4.3% 0.1% −0.9%

栃木県 4.7% 5.9% 0.2% −1.3%

群馬県 4.1% 5.7% 0.4% −1.2%

埼玉県 4.8% 6.1% −1.3% −3.9%

千葉県 4.1% 5.5% −0.6% −3.0%

東京都 7.2% 8.8% 2.6% −1.2%

神奈川県 3.8% 5.3% 0.0% −3.2%

新潟県 3.9% 4.1% −0.1% −0.2%

富山県 4.7% 4.9% 0.3% 0.1%

石川県 3.8% 4.6% −0.1% −0.8%

福井県 4.0% 4.5% 0.1% −0.3%

山梨県 3.7% 5.5% 0.2% −1.2%

長野県 4.5% 5.5% 0.1% 0.0%

岐阜県 4.7% 6.2% 0.3% −1.0%

静岡県 5.6% 7.0% 0.4% −1.6%

愛知県 4.3% 6.1% 1.0% −0.9%

三重県 3.8% 5.0% 0.4% −0.4%

滋賀県 3.7% 4.1% −0.2% −1.3%

京都府 3.8% 4.8% 0.0% −2.5%

大阪府 4.1% 6.4% 1.6% −2.0%

兵庫県 3.7% 4.2% −0.1% −1.4%

奈良県 3.5% 4.1% −0.7% −1.9%

和歌山県 5.0% 5.6% −0.4% −0.8%

鳥取県 3.2% 3.5% 0.1% −0.2%

島根県 2.6% 3.1% 0.4% 0.2%

岡山県 3.8% 4.8% 0.4% −0.4%

広島県 3.6% 4.7% 0.6% −0.5%

山口県 3.6% 4.0% 0.3% −0.1%

徳島県 4.4% 5.9% −0.2% −0.4%

香川県 3.5% 4.9% 0.7% 0.1%

愛媛県 4.7% 5.2% −0.2% −0.9%

高知県 3.8% 3.8% −0.2% −0.5%

福岡県 3.0% 4.1% 0.3% −1.2%

佐賀県 3.1% 3.5% 0.3% −0.1%

長崎県 3.0% 3.7% 0.4% −0.2%

熊本県 3.5% 4.5% 0.3% −0.4%

大分県 3.8% 4.2% 0.2% −0.2%

宮崎県 3.6% 3.6% 0.0% −0.1%

鹿児島県 4.1% 3.9% −0.3% −0.5%

(24)

て検討してみよう.限界便益MBGは 1985 年時点では 0%から 5%程度の

値になっており,1994 年時点では−1%から 2%程度の値になっている.そ

して,限界便益MBGは 1985 年より 1994 年における方が低下していると

ともに,地方圏より都市圏の限界便益MBGはとくに大きく低下している.

資本化率(t,i)の値に関する感度分析をするために(t,i)=0.5%とし

たケース(図表 2 7 ⑵)と(t,i)=1.5%としたケース(図表 2 7 ⑶)を見て

みよう.これらを見ると,生活基盤型社会資本の限界便益MBGはどの

ケースを見てもプラスになっている.それに対して,生活基盤型社会資本の

限界便益MBGは,1985 年の都市圏に限定すれば,どのケースを見てもプ

ラスの値になっている.

以上の推計結果を前提として,1990 年代における生活基盤型,第 2 次産 業基盤型の地域間配分政策に関する評価を行ってみよう.まず,生活基盤型

社会資本の限界便益MBGは,1985 年と 1994 年の時点でともにどの地域

においても 2.0%以上の値を示している.したがって,その社会資本ストッ

ク全体に占める割合は,1980 年代以降ほぼ一に維持されていたが(図表

2 2),その整備にある程度重点を移すことで効率性を高められる余地があっ

たと考えられる.また,1994 年時点においては限界便益MBGの地域間格

差が拡大し,都市圏の方が地方圏よりもMBGの値が高くなっている.し

たがって,生活基盤型社会資本の都市占有率は 1980 年代以降低下傾向に あったが(図表 2 3),都市におけるその整備の重点を移すことで効率性を高 めることができたと考えられる.

第 2 次産業基盤型社会資本の限界便益MBGは,1985 年時点でも 1994

年時点においても多くの地域で小さな値になっている.しかし,1985 年時

点における東京の限界便益MBGは 2.6%と大きな値を示している.した

がって,1990 年代前半において都市圏を優先して第 2 次産業基盤型社会資 本整備が進められたことは,効率性を高める政策になっていたと評価できる. しかし,1980 年代以降において,全体として生活基盤型社会資本よりも第 2

次産業基盤型社会資本を優先して整備してきたが(図表 2 2),第 2 次産業基

盤型社会資本よりも生活基盤型社会資本の整備をより優先することで,効率 性を改善できたと考えられる.

(25)

推定にはいくつかの改善すべき点が残されている.そのなかの 1 つは,社会 資本整備が他地域に及ぼす便益(スピルオーバー効果)について考慮してい ないことだ.生活基盤型社会資本は他地域へのスピルオーバー効果が他分野 の社会資本と比較して小さいと考えられるので,スピルオーバー効果を考慮 しないことによる評価の歪みは小さいであろう.しかしながら,第 2 次産業 基盤型社会資本の場合は他地域に及ぼすスピルオーバー効果を無視すること はできない.また,第 1 次産業基盤型社会資本の場合も,他地域の環境を改 善する効果が存在するかもしれない.このようなスピルオーバー効果が大き い社会資本の分野に関しては,その限界便益が過小に推計されている可能性 について十分留意する必要がある.また,以上の政策評価は,長期的な効率 性の観点からのものであり,所得再分配の観点や短期的な景気(あるいは雇 用)対策的な観点は考慮していない点についても,留意する必要がある.

7

まとめ

本稿では 1990 年代の社会資本整備の結果として,分野別社会資本の限界 便益が 1994 年の時点において地域間でどのような水準になったかを検討す るために,資本化仮説を前提としたモデルに所得課税のシステムを考慮した 場合の限界便益の評価式を導出し,それを用いて分野別社会資本の限界便益 を地域間で比較した.

(26)

できることなどを前提にしている.また,企業の生産技術に関しては規模に 関する収穫一定という前提がおかれている.さらに,社会資本に関しては, スピルオーバー効果が存在しないことを前提にしている.これらの想定を一 般化した上で,分野別社会資本の限界便益を推計することは今後の重要な研 究課題であろう.

補論 1 データの説明

① 人口は自治省行政局『住民基本台帳人口要覧』のデータを用いている.

② 税額T=所得課税総額/人口であり,所得課税総額=道府県民税(個人

均等割+所得割)+事業税(個人)+市町村民税(個人均等割+所得割)+

申告所得税(申告納税額)+源泉所得税(源泉徴収税額)で求めた.道府県

民税,市町村民税と事業税は自治省『地方財政統計年報』,申告所得税 と源泉所得税は国税庁『国税庁統計年報書』に従った.

補論 2 資本化率の時系列変化について

資本化率(t)の値をどの程度の値で想定することが適切であるかについ

て検討しよう.(2.12)の特殊ケースでは資本化率(t,i)=iθとなるの

で,利子率と地代成長率の差をとらえることができれば,(t,i)の適切な

値の目安が得られるであろう.そこで,利子率iとしては長期国債(10 年

物)の応募者利回りを考え,地代成長率θに関しては GDP の当該年度より

6 年前から当該年までの 6 年間における平均的 GDP 成長率を代理変数とし て採用する.そのとき,長期国債の応募者利回りと GDP の成長率の差が資

本化率(t,i)の目安となる.これらの時系列を図示した図表 2 8 を見ると,

国債利回りと GDP 成長率の差は 1985 年では 0.6%であり,1994 年では 0.9%となっている.

補論 3 資本化率の地域間格差について

(27)

ば,限界便益を推計するときにその点を考慮する必要があろう.補論 2 では, 資本化率が国債利回りと GDP 成長率の差でとらえられるとすると考えたが, 国債の利回りに関しては地域間格差を考慮する必要がないとしても,GDP 成長率は県内総生産に置き換えて考える方がより適切な資本化率の目安が得 られるかもしれない.

そこで,県内総生産の前期(1980 年から 1989 年まで)と後期(1989 年か ら 1998 年まで)の平均成長率をまとめたのが図表 2 9 である.県内総生産 の全国計の前期と後期の平均成長率はそれぞれ 6.1%と 1.9%である.その 水準と比較すると,たとえば東京都などは前期の成長率は全国平均より高く, 後期の成長率は全国平均より低くなっている.したがって,このような県内 総生産成長率の地域格差が地代成長率の地域格差を反映しているとすれば, その格差を考慮して限界便益の推計を行うことでより正確な限界便益を求め られることになる.

たとえば,東京の限界便益を評価する場合は,前期に関しては低めの資本 化率を想定し,後期に関しては高めの資本化率を想定し,秋田県のように前 期と後期の県内総生産成長率の格差が小さい場合は,前期に関しては高めの 資本化率を想定し,後期に関しては低めの資本化率を想定する方がより正確 な限界便益を求められることになる.

10 (%)

8 6 4 2 0 −2

1981 83 85 87 89 91 93 95 97(年)

GDP成長率 国債利回り

国債利回り−GDP成長率 図表 2 8 GDP 成長率と国債利回り

(28)

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図表 2 9 県内総生産の成長率

1980 1989 1989 1998 1980 1989 1989 1998

北海道 4.6% 2.4% 滋賀県 7.9% 2.5%

青森県 4.9% 2.7% 京都府 5.1% 1.6%

岩手県 5.3% 3.1% 大阪府 4.8% 2.3%

宮城県 6.1% 3.0% 兵庫県 5.8% 1.8%

秋田県 4.1% 2.8% 奈良県 7.1% 2.4%

山形県 5.0% 2.5% 和歌山県 3.7% 2.0%

福島県 5.9% 2.7% 鳥取県 5.6% 2.1%

茨城県 6.0% 2.6% 島根県 5.1% 2.3%

栃木県 5.8% 2.0% 岡山県 5.5% 1.6%

群馬県 6.7% 2.3% 広島県 5.2% 1.6%

埼玉県 7.4% 2.5% 山口県 4.7% 1.8%

千葉県 7.4% 2.3% 徳島県 5.1% 2.5%

東京都 7.9% 0.7% 香川県 4.6% 2.7%

神奈川県 6.1% 1.8% 愛媛県 4.9% 2.5%

新潟県 5.1% 3.0% 高知県 3.9% 2.4%

富山県 5.2% 1.8% 福岡県 4.1% 2.6%

石川県 6.1% 2.4% 佐賀県 4.5% 3.0%

福井県 5.6% 2.4% 長崎県 4.9% 2.5%

山梨県 7.8% 2.0% 熊本県 5.3% 2.1%

長野県 5.8% 2.5% 大分県 5.0% 2.3%

岐阜県 5.7% 2.2% 宮崎県 4.9% 2.8%

静岡県 6.6% 1.8% 鹿児島県 4.9% 2.6%

愛知県 6.6% 1.8% 沖縄県 6.8% 2.7%

三重県 5.6% 1.6%

(29)

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図表 2 7 ⑴ 分野別社会資本の限界便益(その 1) ⑴ t=1985 年,1994 年,Ω(t, i)=1.0% MBG    MBG    1985 1994 1985 1994 北海道 2.0% 2.6% 0.7% 0.4% 青森県 2.7% 2.7% 0.3% 0.3% 岩手県 2.8% 3.3% 0.4% 0.3% 宮城県 2.7% 3.3% 1.2% 0.1% 秋田県 2.9% 3.1% 0.3% 0.3% 山形県 2.5% 2.9% 0.6% 0.4% 福島県 3.3% 3.
図表 2 7 ⑵ 分野別社会資本の限界便益(その 2) ⑵ t=1985 年,1994 年,Ω(t, i)=0.5% MBG    MBG    1985 1994 1985 1994 北海道 1.4% 2.2% 1.0% 0.7% 青森県 1.8% 2.3% 0.8% 0.8% 岩手県 1.9% 2.8% 0.8% 0.8% 宮城県 1.9% 2.7% 2.0% 1.2% 秋田県 1.9% 2.6% 0.8% 0.7% 山形県 1.7% 2.5% 1.1% 1.0% 福島県 2.2% 3.
図表 2 7 ⑶ 分野別社会資本の限界便益(その 3) ⑶ t=1985 年,1994 年,Ω(t, i)=1.5% MBG    MBG    1985 1994 1985 1994 北海道 2.5% 3.0% 0.4% 0.0% 青森県 3.7% 3.2% − 0.3% − 0.1% 岩手県 3.8% 3.8% 0.0% − 0.2% 宮城県 3.6% 3.9% 0.4% −1.0% 秋田県 3.9% 3.6% − 0.2% − 0.2% 山形県 3.3% 3.4% 0.1% − 0.1

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