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哲研レジュメ20081111doc 最近の更新履歴 京都大学哲学研究会

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2008/11/11 哲研レジュメ  ミシェル・フーコー『監獄の誕生』

第一部 身体刑 第二章 身体刑の華々しさ

担当:門林

◆身体刑の重要性

「フランス大革命までは、1670年の王令が処罰義務の一般形式を支配してきた。その王令の規定していた 懲罰の段階はこうである。『死刑、証拠留保をともなう拷問、有期のガリー船における漕刑、鞭打ち、加辱刑、追 放』。したがって、身体刑の占める大きな役割が見てとれる。」

「大仕掛けで厳粛な死刑執行のときだけでなく、これらの付加的な身体刑の形式においても、身体刑は刑罰制 度におけるそれの意味合いを明示していたのだった。つまり、いささかなりとも厳粛なあらゆる刑罰は、それ 自体に何らかの身体刑的なものを保持していなければならなかったのである。」

◆身体刑とは何か

「身体刑は1つの技術なのであり、それは法律ぬきの極度の狂暴さと同一視されてはならないのである。刑罰 は、身体刑になるためには次の三つの主要な基準に合致する必要がある。」

① 刑罰は、評価と比較と段階づけを行いうる、ある量の苦痛を生み出さなければならない。

② 苦痛を生じさせるには規則がともなう。

③ 身体刑は一種の祭式を構成する。

「刑罰としての身体刑は、身体へのありとあらゆる処罰を包括しているわけではない。というのは、それは分 化したかたちで苦痛を生み出すことであり、刑の犠牲の刻印のために、また処罰する権力の明示のために組織 される祭式であって、自分の立てた原則を忘れ自己統御を失ってしまうような司法権力の激怒のすがたでは ないのである。身体刑の≪極端さ≫には、権力の一つの経済策全体がもりこまれている。」

◆秘密にされた手続き

○フランスなどのヨーロッパ諸国(イギリスを除く)では、判決に至るまで、犯罪訴訟の手続きは、公衆およ び被告人自身には秘密にされていた。

「告発者が誰であるかを知りえず、承認を忌避するに先立って証言の意味を知りえず、訴訟の最終地点まで無 罪の弁明を行いえず、訴訟手続きの適法性を証明するためであれ、もしくは根本的には被告側に参与してもら うためであれ、弁護士をもらえないのだった。他方、司法官のほうは、偽名による告発を受け入れてもよく、被 告人に訴訟内容を隠してもよく、詭弁を弄した尋問を被告人に行ってもよく、ほのめかしの手をとかってもよ かった。」

「だが、訴訟手続きが秘密のままにされているとはいっても、罪の真実を確証するために、いくつかの規則が 遵守されていなければならない点には変わりはなかった。」

「以上のとおり、文書本位で、秘密保持を旨とし、しかも証拠を組み立てるため厳密な規則に従っている、刑事

(2)

上の証拠調べは、被告人なしで真実を生み出しうる装置である。」

◆自白の二重の両義性

○第一の両義性

自白は証拠の1つでしかない⇔自白は、他のいかなる証拠よりも優れている。

○第二の両義性

自白は「自発的」であるべき⇔自白を入手するために強制権が行使される。

◆拷問について

○拷問は、真実を探究するための身体刑として作用する。

○きちんと規定された手続きにしたがう。

○拷問を命じる裁判官と拷問される容疑者との間にある一種の決闘。

容疑者は、「段階的に過酷なる一連の試罪法に服して、『忍耐強く抵抗する』場合にはそれに打ち勝ち、白状 すればそれに負けることになる。ところが他方、裁判官の方でも、拷問を課すことは危険をおかすことにな る(しかもそれは容疑者が死ぬ事態に直面する懸念だけにとどまらない)、彼は自分の集めたいくつかの 証拠という賭金を危険にさらすのである、というのは、規則にもとづいて、被告人が『忍耐強く抵抗し』白状 しない場合にはやむをえず職を辞す定めになっているのだから。」

○真実を生み出す祭式 と 処罰を課す祭式 が対等に営まれる。

「すでに集めた手掛りをもとにして処罰を始める一方では、この最初の刑罰を活用して、まだ欠けている残 りの真実を引出す。」

「身体刑において尋問される身体こそは、懲罰の適用地点ならびに真実強奪の場を構成する。」

◆刑の執行

○身体を通して組み合わされるこの2つの祭式の連動作用が、刑の執行そのものにおいても続行される。

○身体は「犯罪が行われたことを白状し、自らその犯罪を犯したことを申し述べ、自らのうちに、自らのうえ に犯罪の刻印があることを示し、懲罰の操作を耐え忍び、その効果をもっとも華々しいやり方で明示するの である」

◆身体刑の法律的―政治的な機能

○犯罪(法律違反)は、法を布告し主張する人間の権利に対する侵害となる。重罪は、直接の犠牲者以外に君 主を人格的・身体的に傷つけるものであった。

「国王は自らの人格に加えられた対決への報復を求めねばならない」

「処刑の儀式の目的は、あえて法を侵そうとした臣下と、自己の力を強調する全能の君主との間の力の不均 衡を最大限に浮かび上がらせることが主であって、釣り合いを回復することは従なのだ」

○権力の本質的な優越性への誇張された肯定が存在する。

○身体刑は司法の回復を行うのではなく、権力の挽回を行っていた。

○身体刑が司法の実際面にかくもしっかり組み込まれているのは、それが真実を明示するもの、しかも権力を 運用するもの、だからである。

○真実と権力の相関関係はありとあらゆる処罰機構の核心にとどまっている。

(3)

◆身体刑が存続し得た外的理由

○労働力(人間の身体)が、大工業制の型の経済組織のなかで付与されるような効用をも商品価値をももた ない、一つの生産体制の影響

○身体への≪蔑視≫が死に対する一般的な態度に関係している点

○生物学的な状況(猛威をふるう病気と飢餓による大被害、悪疫による周期的な大量死、幼児の恐ろしく高い 死亡率、生物と経済の不安定な均衡 etc…)のために、死は日常的なものにされ、生活全体の中に採り込ま れていた。

◆≪極度の残忍性≫の二重の役割

① 刑罰と犯罪のつながりの根本(真実の華々しさを保証する。完了しつつある証拠調べの祭式。) 罪人の身体への処刑の儀式の際に屈辱と苦痛の形式を借りてそれを再現する。

身体刑が処罰の対象の現実性を確証する。

② 犯罪に対する懲罰の激昂状態(権力の華々しさを保証する。統治者が凱歌をあげる儀式。)

統治者に加えられる挑戦の暴力でもある≪極度の残忍性≫を圧倒し、それを制圧し、極端さの、それを消し 去る極端さの点でそれに優越する。

→「いずれ19世紀の処罰の実務は、真実を求める≪澄み切った≫調査と、処罰から完全にぬぐい去るわけ にはいかない暴力との間に、可能な限りの最大限の距離を設けようと勤める事になろう。」

◆身体刑における民衆の役割

≪残忍きわまりない≫のが恥ではなかった刑罰から、

≪人間的な≫ものであるとの名誉を主張する懲罰へ。        →配布資料参照 (p60~67)

◆処刑台上での言説

○処刑の祭式によって、自分の有罪性を自分で公にしなければならなかった。

○「刑の執行時になると、死刑囚は発言の機会を与えられるが、それは自分の潔白を表明するためではなく自 分の罪と死刑宣告の正しさを証拠立てるためのものであった」

○≪死刑囚の断末魔語録≫の存在

「皆さん、恐ろしい、恥さらしな嘆かわしい私の所業を聞いてください。それは私の思い出が呪わしいアヴ ィニョンの町で、人間味をなくした私が、友愛の神聖な権利を踏みにじって、やってのけた所業です」

→当時の世俗的道徳観に酷似しているので、その真実性は信用しかねる。

○「司法は自分の拠り所が真であると証拠立てるために、こうした信用しがたい記録類を必要としていた。こ のように、司法の裁定は、これら事後のあらゆる≪証拠≫ によって固められていた。」

○しかしながら、

「死刑囚は大々的に誇示される自分の犯罪の広がりによって、時としては、彼の遅ればせな後悔の念の表明 によって英雄扱いされていた」

「罪を悔い、判決を承認し、自分の犯罪を神と人々に詫びる死刑囚の姿が明らかにされると、人々は彼が罪 から清められたと考えた。彼なりに一種の聖人として死ぬのだ、という次第である。」

○これらの物語が下層階級にとって読みものになっていたが、それらの刷り物(ビラ)のたぐいは、まったく

(4)

別種の犯罪文学が発達するにつれて姿を消した。

 →犯罪が賛美される文学の発達 例)暗黒小説からキンシー、『オトラントの城』からボードレールまで

○力点が、権力との身体本位の対決(身体刑の執行地点、犯行や自白の叙述)から、犯人と捜査する者との知 力の戦い(ゆっくりした探索過程、捜査の局面)へ移っていく。

→「かつて犯罪者をとりまいていたあの華々しい輝きは、この探偵文学によって別の社会階級へ移し替えら れる。新聞雑誌もまた、その日常的な三面記事のなかで、軽罪とその処罰を、叙事詩的な英雄らしさのない 灰色の単彩描法で取り上げるだろう。分割が行われたのである。民衆は犯罪にたいする過去の誇りを棄てな ければならず、偉大な殺人行為は賢者の沈黙の営みと化したのである。」

参照

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