別紙 1-1
I 高周波(誘導加熱)溶解
原理と特徴:交流電源に接続されたコイルの中に金属を入れると、金属が自己 発熱(誘導加熱(a))する。容器(るつぼ)中で金属を溶解させて合金 を作製できる(b)(c )。
長所:電磁力で溶湯(溶融合金)が自動的に撹拌されるので均一な合金が作製。 大量の合金の作製に適す。
短所:溶湯がるつぼと反応して、不純物が取り込まれる恐れ。(ジルコニウムのよ うな高活性金属では、汚染が特に顕著)
(a) (b) (c)
別紙 1-2
II アーク溶解
原理と特徴:二つの電極間で放電させることによって形成された高温のプラズ マを熱源とし金属を外側から加熱(外熱式)する。金属は水冷され た銅製鋳型(ハース)のみと接触。
長所:容器と反応しないので、高活性金属(ジルコニウムなど)の溶解が可能。 少量の高純度合金の作製に適す。
短所:大量の金属混合物をアーク溶解しても、水冷ハースに接する金属は温 度が低く未溶解のままで、合金化しない。
他方、少量の金属混合物ならば、アーク溶解で 一挙に合金化する。こうして得られた合金を母
合金と言い、母合金を多数集めて再溶解し、所 定の大重量の合金を作製する。
アーク溶解で母合金化できる最大の重量は、 96年論文の場合、井上氏によれば約26gという ことである。
アーク溶解の模式図 電極棒
プラズマ
水冷銅ハース
下の図は、銅製鋳型の断面の模式図を 示す。この図では溶融金属を流し込むの は楔形の穴で、楔形の試料が作製され る。穴の形状を円柱形にすれば、円柱形 のバルク金属ガラスが作製。
別紙 2-1 高周波溶解 - 銅鋳型鋳造法
上の図は、高周波電源に接続されたコイ ルの中におかれた透明石英管中の母合 金が溶融している様子を示す。(Inoue. et.al. Mater.Trans.JIM.36(1995)1276
母合金が溶融したら、石英管に圧力を かけて、石英管の下部の小さな穴(ノズ ル)を通して溶融合金を噴射させる。
(この部分は液体急冷でアモルファスリ ボンを作製する方法と共通。噴射した溶 融合金を高速回転するロールに衝突さ せてリボン試料を作製
。)
アーク溶解・吸引鋳造法の模式図
別紙 2-2 アーク溶解・吸引鋳造法
高周波溶解-銅鋳型鋳造法は溶融合金と石英管が反応して、合金中に酸素や シリコンが溶け込み、結晶が生成しやすい。そこで、汚染の少ないアーク溶解法 が採用された。アーク溶解吸引鋳造法は、駆動部(ピストン)がアーク溶解の鋳 型の一部を構成するが、これを下方に移動することによって溶融合金を鋳造さ せる。アーク溶解法は合金低部が未溶解と言う原理上の欠点があるが、吸引鋳 造法ではこれを克服する工夫はなされていない。欠点を克服しようと試みたのが 傾角鋳造法やキャップ鋳造法である。