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Takeda Martian Soil Reiew 2009

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(1)

大きな天体の分化した内部より流出した溶岩が表面をおおい、大気や水と反応した物質が存 在する火星で、農業をするに適した土壌を確保するには。

 バイキング探査機が火星に着陸して最初に撮っ た写真は赤茶けた石の散らばる砂漠のような風影 であった[photo 1-1]。

 さらにグロ−バルな地形に目を向ければ、大 きなクレ−タの分布する地形は月とあまり変った ところでない。地球からでも大接近の時には観察 できる極冠や、長大なマリネリス渓谷などは、火 星の特徴を示すものとして見逃せない[photo 1-2]。最近の探査では、特異な地域での面白い 物質の発見や、地下にある水の存在を示す地形 など多くの発見はあるが、赤茶けた岩の分布する 砂漠のような火星像は変わらない。このような天 体表層で植物を育てる土壌は得られるのであろう か。ここでは主に表面物質より探ってみる。 火星表面の特徴

[photo 1-2]マリネクス渓谷の画像(NASA 提供)。

火星の表層物質と農業用土壌

宇宙農業サロン

[photo 1-1]火 星 に 着 陸 し た バ イ キ ン グ 探 査 機 に よ り は じめて送られて きた火星の風景

(NASA 提供)。

(2)

 エコンドライトと呼ばれる分化した隕石のな かでも、小惑星ベスタから来たといわれる隕石が 主流である。実はこの他のエコンドライトの中に 8 個の奇妙な隕石があり、ベスタより別の一つの 天体に由来するものではないかと言われ出した。 1973 年から 1977 年にかけてのことである。 その一つ、シャ−ゴッタイトは古い分類ではユ− クライトの一種であり、長石がマスケリナイトと いう非晶質物質となっているものであった。これ らの隕石は南極からインド、エジプト、フランス にわたる遠く離れた所から集められた。

 これらの隕石は三つのグループに分類され、そ れぞれのグループに、最初に見つかった町の名前 が名付けられた。インドのシャーゴッティ、エジ プトのナクラ、フランスのシャシニーである。隕 石種の名前は、それぞれの隕石名の後に "ite" を つけて、シャーゴッタイト、ナクライト、シャシ ナイトと言う。[photo 2-1]はシャーゴッタイ トに属するザガミ隕石の写真である。

 ナクラ隕石が何時できたかを種々の年代決定法 で測定した結果によると、普通の隕石と比べ、生 成年代はきわめて若く、十三億年ほど前と考え られる。このような若い年代はナクライトだけで なく、シャーゴッタイトおよびシャシナイトでも 確認された。シャーゴッタイトについてはもっと 若い年代 (約 1 億 8000 万年前)も提出されて

いる。三種の隕石とも生成年代がきわめて若いと いうことは、つまり供給源の天体は、少なくとも このころまでマグマ活動の続いていた、地球ほど ではないが、大きな天体でなければならない。後 で述べるように地球に似ていて大きい天体といえ ば、金星と火星だ。上記の隕石はバイキング探査 機の測定した火星表面の岩石組成とも似ていると いわれるが、このようなことが言われ出したのは、 もっと後に南極からこの種の隕石が見つかってか らである[photo 2-2]。

 この三種のシャーゴッタイト (S)、ナクライト (N)、およびシャシナイト (C) は、若い年代だけ でなく、その鉱物・岩石学的な特徴と化学組成が 関連していて、同じグループとして扱われてきた。 今ではこの頭文字をとって SNC( スニック ) 隕 石と呼ばれている。SNC 隕石のもう一つの重要 な特徴は、いわゆるマグマの底に積った、集積岩 がもっているのと同じような組織を示すことであ る。すなわち、マグマの中から結晶ができ、それ が重力により沈み積るとき、一定の方向を向いた ことを示す。岩石薄片の写真 ( 直交ポーラー ) で は左右に延びている[photo 3-2]。普通このよ うな組織があれば、重力のある大きな天体ででき たことを物語る。SNC 隕石のこのような特徴は、 普通の隕石と異なるので、研究者の注目をあびて いた。

[photo 2-1]ザガミ隕石の切断片。右上の破片より 岩石薄片がつくられた。

特異な分化した隕石

[photo 2-2]南極ではじめて発見された火星隕石 ALH77005 の切断面(国立極地研提供)。

(3)

 これらの隕石の特徴をその岩石薄片を観察する ことでつかんでみよう。

●S(シャーゴッタイト)

 シャ−ゴッタイトは褐色を少し帯びた鉄とカ ルシウムに富む輝石と透明な斜長石を主な鉱物と して含む[photo 3-1]。この種の隕石にある長 石という鉱物は、岩石顕微鏡で偏光にして観察す ると真っ黒になる[photo 3-2]。これは長石の 光に対する性質がガラスと同じになっている事を 示す。このような長石をマスケリナイトと呼んで いる。マスケリナイトは強い衝撃を受けている隕 石中に見つかっているので、これは強い衝撃波が 通ったということに他ならない。その斜長石の化 学的な特徴はそのカルシウム/ナトリウム含有量 がほぼ同じであることである。これらの共通の特 徴より同じ天体から隕石の衝突によりはじきださ

れ、地球に来たものと考えられるようになった。  この SNC 隕石と呼ばれる三種の隕石同志の親 戚関係は、 ベスタという小惑星から来たといわれ る隕石グループの親戚関係よりはずっと弱いもの である。SNC 隕石の中の S とユークライト隕石 の方がむしろ関係が深かった。

 ベスタから来た隕石で見られたアルミニウムと カルシウムの関係をみてみると、直線よりはずっ とはなれた所に分布している[図 3-3]。さらに 細かく調べてみると、ユークライトよりは異なる 点が幾つかある。輝石の結晶の出る過程も、普通 のシャーゴッタイトではピジョン輝石と同時に、 カルシウムの多いオージャイトという輝石が結晶 し、しかも全体が固まる末期には、鉄に富むよう な化学的組成変化をしている。輝石の中にニッケ ルが少量含まれているのも、普通の隕石と異なる。 金属の鉄が少しでも含まれていれば、ニッケルが

モアマ ビンダ

Y-75032

シャーゴッタイト

CaO重量%

Al2O3重量%

00 5 10 15

5 10 15

[図 3-3]シャーゴッタイト隕石のカルシウム−アル ミニウム重量%の関係を、ベスタからの隕石(モアマ、 ビンダ、Y-75032 など)と比較。

[photo 3-1]ザガミ隕石の岩石薄片を平行光で観察。

[photo 3-2]同じ薄片を偏光で観察(横幅は 3.3mm)。

(4)

ほとんどこの金属相に入ってしまう。ニッケルが 輝石に入っているということは、金属鉄ができる ほど、還元状態が強くなかったということである。 少し酸化的な雰囲気になっていた。

●N(ナクライト)

 ナクライトはほとんど普通輝石からなり、カン ラン石も 10%くらい含む[photo 4-1][photo 4-2]。南極隕石からも大きな試料が見つかった。

●C(シャシナイト)

 シャシナイトにはシャシニーと最近砂漠で見つ かった隕石がある。92%くらいカンラン石を含 む岩石である[photo 4-2]。少量の輝石の中に ケルスート閃石を含む。この閃石という名前が示 すように、この鉱物は角閃石の一種である。隕石 の中には角閃石は非常に稀である。地球には水を 含んだ角閃石が変成岩などにごく普通に産出する ので、この岩石は地球的なものに近いといえる。

 1995 年までに、合計 12 個の SNC 隕石が ある[表 4-3]。その後、リビア砂漠の Dal al Gani などより 多くの SNC 隕石が見つかり、 2001 年で総計 30 個を超し、現在では数十個 にもなる。

[photo 4-1]ナクラ隕石の岩石薄片写真 (平行ポー

ラー)。 [photo 4-2]シャシニーの薄片写真(三河内岳博士)。

  名前Shergotty Zagami QUE94201 LEW88516 Y793605 EET79001 ALH77005 Nakhla Lafayette Gov.Valadares Chassigny ALH84001

     分類

S-basalt(玄武岩) S-basalt(玄武岩) S-basalt(玄武岩) S-basalt(玄武岩) S-basalt(玄武岩)

S-basalt(玄武岩),+ ol-pyx S-ol-pyx岩(レルゾライト) N-単斜輝石岩

N-単斜輝石岩 N-単斜輝石岩

C-dunite(カンラン岩) 斜方輝石岩?

重量(Kg)

 4.00 18.00  0.012  0.013  0.018  7.90  0.48 40.00  0.80  0.16  4.00  1.90

発見/落下

落下 落下 南極隕石 南極隕石 南極隕石 南極隕石 南極隕石

落下 発見 発見 落下 南極隕石

1865

1962 1995 1891 1995 1980 1978 1911 1931 1958 1815 1993

表8-5-2 火星からの隕石

[表 4-3]火星からの隕石(1984 年まで)。

(5)

 SNC 隕石の火星起源説が強力にとなえられる ようになったのは、この種の南極隕石が発見さ れたことによる。アラン・ヒルズ ALH77005

[photo 5-1、2]は 1977 年、日米合同の隕石 探査チームにより南極で見つけられた。西南極は ビクトリアランドのアラン・ヒルズ近くの裸氷上 で発見された。この隕石は半分に切断され、その 半分は日本に持ち帰られた。その切断面[photo 2-2]にはショックで溶けた暗色の部分が見られ る。

 次に ALH77005 よりもっと大きなエレファ ント・モレイン近くで発見された南極隕石が見つ かり、1984 年では小惑星のベスタから来たの ではという隕石のダイオジェナイト (D) に似た ものも見つかったが、1993 年には生命の痕跡 があるのではと言われた火星隕石となった。  ALH77005 は、南極ではじめて発見された 火星隕石であるが、発見当初は火星からのもの という説は出されていなかった。シャーゴッタイ トに似た組織のところもある[photo 5-1]。地 球の玄武岩質の岩石に似ている部分もあり、輝 石、カンラン石、斜長石から成る。岩石を切断 し、薄く研磨すると、[photo -5-2]のような結 晶質の組織が見えてくる。地球の石と違うところ は、この隕石の斜長石はシャーゴッタイトと同じ ように、マスケリナイトというガラスに変わって

いることである。斜長石の組成はシャーゴッタイ トと同じく、カルシウムとナトリウムがほぼ半々 に入ったもので、ベスタからの隕石とも月とも異 なっている。輝石は、地球の石のようにカルシウ ムの多いものと少ないものがある。共存する輝石 を使う地質温度計により、結晶した時の温度が摂 氏 1150℃と推測された。

 これまでのシャーゴッタイトと違うところは、 カンラン石を含み、輝石もマグネシウムに富み、 カルシウムの少ないものがある点である。このよ うな鉱物組合せは地球の岩石のレルゾライトとた いして変らないのでレルゾライト的シャーゴッタ イトと呼ばれる。今ではレルゾライト的隕石とも よばれる事もある。

 この隕石の他の部分の組織を見たとき、この隕 石が地球的であり、普通のコンドライトやベスタ からの隕石と異なるもう一つの重要な点は、カン ラン石および輝石に、1 パーセント以下ではある が少量のニッケル(NiO)が含まれることである。 普通の隕石の酸化還元状態では金属鉄が析出する ほど還元的であるので、ニッケルはほとんど金属 鉄に合金として取り込まれる。ニッケルがカンラ ン石などに残っているということは、酸化状態に あるわけで、大気があるような大きな惑星表層の 状態に近いところでできたことを暗示している。 酸化的な雰囲気できたという点では、ナクライ トおよびシャシナイトでも同じである。鉄も金属 南極で見つかった SNC 隕石

[photo 5-1]南極ではじめて発見された火星隕石 ALH77005 のシャーゴッタイトに似た部分の岩石薄 片の顕微鏡写真。

[photo 5-2]火星隕石 ALH77005 の岩石薄片の顕 微鏡写真。低カルシウム輝石とカンラン石(オリーヴ 色)を含む部分。

(6)

鉄がないだけでなく、より酸化された三価の鉄を 含む鉱物がある。チタンを含む磁鉄鉱が、シャー ゴッタイトにもナクライトにも含まれる。磁鉄鉱 は二価と三価と両方の原子価の鉄を含むので、こ れがあるということは、普通の隕石より酸化状態 になっていたことを物語る。これは大気があった 大きな惑星なのではないかという可能性も示唆し ている。大きな惑星は前に述べた若い年代ともあ う。

 さらにこの隕石が、地球の石に似ているのは、 鉱物組成だけでなく、微量元素の量についても いえる。高温になると逃げやすい揮発性元素、地 球の核をつくっている鉄に集まりやすい元素など 多種類の微量元素は、その生まれた環境とその後 の進化の違いにより異なった分布をするので、生 まれた天体の違いを判定するのに使われる。特に ウランとカリウム、希土類元素などがこの目的に 適している。地球のマントルを作っている岩石と

ALH77005 隕石は[図 6-1]のようによく似 た分布をしている。希土類元素の分布も、HED 隕石のように単純ではなく、曲がりくねった複 雑なパターンを示す。これらの特徴は、地球化学 者によれば、大きな惑星内部の圧力の高いところ で部分的に溶融するとつくられる、ということに なっている。

 地球に似ているといっても、ALH77005 隕 石は溶融皮殻をもつ、大気圏外から到来した 隕石である。大きな惑星といっても、地球よ りは火星の方により似ていていいはずである。 ALH77005 隕石はシャーゴッタイトに似てい るが、その輝石の化学組成はシャーゴッティ隕石 よりマグネシウムに富んだものである点はすでに 述べた。

 1979 年にやはり南極で発見された 7.9kg も あるシャーゴッタイトは、マックマード基地近く のエレファント・モレインで発見された[photo

[ 図 6-1]火 星 か ら 来 た と い わ れ る レ ル ゾ ラ イ ト 的 隕 石

(ALH77005)と地球のマントル の岩石(超塩基性岩)の微量成分 の相関関係(原図はテネシー大学ハ リー・マックスイーン教授による)。

亜鉛

カリウム

コバルト

ルビジウム

ヒ素

カドミウム トリウム

カリウム

セレン

ウラン

インジウム

タイウム

アンチモン

地 球

の 超

塩 基

性 岩

ALH77005

1 10 100 1ppm

0.1ppb 10 100 0.1%

0.1 1ppb 10 100 1ppm 10 100 0.1%

(7)

7-1]。EET79001 はその略号である。一つの 面白い点は、この隕石には岩石学的に組織の違 う部分が二つあり、互いに層をなして接触して いる[photo 7-1]。一つの部分は古くから知ら れているシャーゴッタイトと同じであり、もう一 方は ALH77005 隕石と同じような部分である。 この両者が一面を境に接していて、一方が生成し た後、もう一方が生成したことが明瞭に示されて いる。このような面を火成岩的接触面という。こ の接触面の存在により、今まで知られていた二 種のシャーゴッタイトは、同じ天体で同じような 火成過程でできたことが証明される。地球上の遠 くはなれた南極、インド、アフリカなど別々の場 所に、違った年に落下した隕石に、このような深 い関連のある鉱物が見つかるとは、この隕石が来 た母天体は同じものだとあらためて感じさせる。

EET79001 の中に含まれる鉱物の特徴は、今 まで見つかったシャーゴッタイトと同じものであ ることがわかった。

 この隕石の切断面を見ると[photo 7-1]、一 つの面を境にして接している (A と B) が組織の 違う二つの部分も、この二つの部分の輝石の化学 組成変化を見ると、同じマグマからの一連の結晶 分化の過程でできるような変化を示す。すなわち 一方の A の部分は ALH77005 に似てマグネシ ウムに富みカンラン石と輝石を含む。もう一方の B の部分は、古くから知られているシャーゴッタ イトに似ていて、もっと鉄に富む輝石の化学組成 変化を示し、カンラン石はなくて斜長石を含む。 この 2 つの南極産隕石は、その後火星起源説を となえるのに重要なデータを提供した歴史的隕石 である。

[photo 7-1]南極エレファント・モレーンで回収さ れた隕石 EET79001 試料の切断面。右下のふちに そって違う岩石種との接触面がみえる(NASAS 提 供)。

[photo 7-2]EET79001 中 の 岩 相 A、B、C の 分 布を示す。

(8)

 火星表面の探査はローバーなどで行われたが、 まだサンプルリターンは遠い先のことである。も し、SNC 隕石が火星から来たのであれば、我々 はすでに火星の石を手にしていることになる。 はたして、SNC 隕石は火星の石なのだろうか。 SNC 隕石が火星から来たという仮説は、いまま で個別の理由づけはたびたび述べてきたが、ここ でもう一度これまでの話をまとめて火星起源説の 根拠を箇条書にしてみよう。後で述べる火星起源 説の強力な証拠となった希ガス同位体組成につい ては、後で詳しく述べる。

∼火星起源説の証拠∼

a.13 億年という若い世代に固化して岩石と なった。マグマから重力の存在のもとに結 晶が出、沈積した火成岩的な組織を持つ。 b. カルシウムに富む輝石およびカンラン石の

存在など、高圧で部分溶融したマグマの特 徴を持つ。

c. 酸化的雰囲気を示す鉱物の存在しているこ と、および水を含む鉱物の存在しているこ と。

d. コンドライトなどの隕石にはない微量元素 の含有量。

e. 希ガスの存在量がバイキング探査機の測定 値と似ている。

 これらの個別の証拠をつなぎ合わせてみると、 大きな母天体で分化してできたという起源が浮び 上がってくる。最初から問題であった若い結晶化 年代について考察してみよう。太陽系の歴史のな かで、13 億年という最近までマグマが小さな天 体でつくられていたと考えるのは非常に困難なこ とである。今まで紹介した「創成期の石」といわ れるベスタ起源の隕石は、45 億年の生成年代を もつ。これらの隕石など火成岩的隕石は太陽系初 期に小天体が形成されてすぐ後に、短寿命の放射 性元素の崩壊による熱、あるいは集積による熱で、 小天体の表面が少し溶けたためにできたものがほ とんどである。13 億年以前までの長い間こんな 火成活動が続けられるには、保温効果のある大き な天体である必要がある[図 8-1]。ウラン、ト リウム、カリウムなどの長寿命の放射性元素の崩 壊による熱が蓄積される必要がある。SNC 隕石 が地球以外の天体からきたものとすると、火成活 動が長く続いたと思われる天体は火星と金星であ る。バイキング探査機によりはじめて撮影された 火星表面には火山岩のような石がちらばっていた

[photo 1-1]。 SNC 隕石の火星起源説

火星

水星 ベスタ 惑星

の直 径 

︵地 球=

︶ 1

火山活動の継続期間 (億年以前)

(現在) 0 10

20 30

46 40 1.0 0.2 0.4 0.6 0.8

1 地球

金星

[図 8-1]天体の大きさと活動年代。

(9)

 火星のタルシス地方にある大きな盾状の火山 では、十億年くらい前まで火山活動があり、溶 岩が流れ出ていたといわれる[図 9-1]。これは オリンパス火山の溶岩流の表面にできた隕石衝 突クレーター[photo 9-2]の数などから推定さ れた年代である。金星については、どんな岩石が あるのかよくわからないが、太陽からの引力にさ からって金星から地球に隕石をもたらすことは考 えにくい。金星の火山活動については次の章で述 べる。小さな母天体で 13 億年前でも火成岩が つくれるためには、母天体の表面に大きな隕石を 衝突させ、衝突による熱で溶けた岩石の層をつく ることしか考えられない。コンドライト隕石の中 にも十数億年前に衝突により溶けて、年代測定に 使われる同位体時計がリセットされているものも 見つかっている。しかし、重力の弱い小天体では SNC 隕石に観察されている重力のもとでできる 集積岩的組織の存在をうまく説明できないなどの 多くの難点がある。ユレイライト隕石の中の集積 岩的組織と思われるのもあるが、結晶成長の仕方 ではできるのではという提案もある。

 パリの国立自然史博物館の故ポール・ペラス教 授は、SNC 隕石のアルゴンの同位体組成を使っ た生成年代測定の結果、古い年代を示す痕跡もあ るという。天体が同じかどうかを見つけるのに、 同位体組成は重要な情報である。SNC 隕石の間 には、分化の最初にあったストロンチウムという

元素の同位体組成に大きな差があることで、この 衝突による溶融説は都合が悪いとされている。一 度に衝突で溶けた液からは、このような大きい同 位体組成の差をつくることは難かしいとされてい る。45 億年前に最初の分化が起きて以後、複雑 な溶融と分化を 28 億年前から 14 億年前まで 繰り返し、こうしてできたマグマの源から 13 億 年前にマグマができて、そこから結晶が固化した というモデルが、同位体比を説明するにはよいと されている。これはストロンチウム以外の同位体 についてもいわれている。

 このような複雑な火成活動の歴史を示すには、 火星ぐらいの大きな天体である必要があるとされ ている。希土類元素などの微量元素の存在度も、 大きな天体の内部で複雑な分化を繰り返し、高圧 下のもとで地球のマントルのような源の物質が部 分的に溶融してできたものであると考えると、う まく説明できるらしい。

 大気の存在と高い酸素分圧が SNC 隕石の酸化 還元状態とうまく合う点についてはすでに前節で 述べた。バイキング探査機の送ってきた火星表面 の赤茶けた色を見れば[図 1-1]、これは火星の 表面の環境に似ている。イデングサイトという地 球の岩石によく見つかる鉱物の角閃石、および水 を含んだ相の存在も、火星のような天体だと都合 がよい。これは、前にも述べたカンラン石や輝石 にニッケルが存在するような酸化状態とも整合性

[photo 9-2]火星で最も大きいオリンポス火山の溶 岩流と火山性カルデラ(NASA 提供)。

[図 -9-1]火星タルシス地方にある火山の分布を示す 地質図。赤色が火山(NASA 提供)。左上の火山がオ リンポス火山。

(10)

がある。チタンを含んだ磁鉄鉱とチタン鉄鉱が共 存するような酸化状態の強い環境である。別の言 い方をすれば、酸素分圧の高い状態で結晶したと いうことは、地球のような天体に近く、月および ベスタからの隕石とは著しく異なることを示して いる。酸素分圧が高いということは、大気の存在 をも示唆することで、揮発性元素の存在度も高い ことが予想される。酸素同位体比も地球のものと 少し異なり、地球外からきた隕石であるという証 拠も、これが地球の石ではなく、火星のようなも のに近いものだということを示唆している。  火星の表面の化学組成はバイキング探査機によ り測定されたが、揮発性成分を除いた組成を比べ ると、月の溶岩とも似ているが、シャーゴッタイ トに非常によく似ている[図 10-1]。このよう な証拠をあげていくと、SNC 隕石はあたかも火 星からきたことが確認されたように思われる。し かし、惑星科学者のすべてがこれに同意している わけではない。

 火星起源説にはまだまだ不完全な論理づけし かできていないところがある。火星の石を火星 の引力にさからって脱出させるためには、約毎秒 5km の脱出速度を与えなければいけない。この ような速度を隕石の衝突によって掘り起こされた

岩石に与えることは、非常に難しいとされている。 これだけの速度を与えるためには、火星の地表 下にある永久凍土を衝突による熱で溶かし、気化 して爆発させて、それによって火星の石をはじき 出すとか、それとも隕石を斜めに衝突させて火星 の石をはじき飛ばすとか、特別の隕石衝突を考え なければならない。火星には隕石衝突クレーター に永久凍土の存在を示す花弁状クレーターは知 られている[photo 10-2]。この強烈な隕石衝 突が起こると、その鉱物には非常に強い隕石衝突 のショックの跡が残されていなければならない。 シャーゴッタイトにはマスキリナイトが存在す る。南極産のシャーゴッタイトは 30 ∼ 80GPa という強いショックの圧力がかかった跡がある。 しかし、SNC 隕石のうちナクライトにはショッ クの証拠は残っていない。火星の重力圏から岩石 を脱出させるには、よほど大きな隕石が火星表面 に落下する必要がある。

[図 10-1]月のソイルとバイキング探査機の分析した 土の化学組成の比較。

[photo 10-2]花弁状の噴出物のある火星のクレー ター(NASA 提供)。

月 火星

Fe Ti Ca K Si Al

0 5 20 50 100

10 1

0.10.5

70

(11)

 ∼南極で回収された隕石∼

  こ の 新 し い 南 極 か ら の SNC 隕 石

(EET79001)の研究で、もっとも決定的な火 星起源説の証拠と思われるのは、 NASA・ジョン ソン宇宙センター(JSC)の D・ボガード博 士らにより測定された希ガスの存在度であろう。  この隕石に含まれる気体の成分が火星のもの と一致するという[図 11-1][図 11-2]。この 隕石の来た天体は、地球クラスの大きな星 ( 太陽 系では金星か火星 ) だったと考えられていたこと はすでに述べた。このため、ボガード博士は母天 体の素性をはっきりさせられないかと、 この隕石 にわずかに含まれているヘリウム、アルゴンなど 5 種類の希ガスを質量分析器で詳しく分析した。 ショックで溶けた液に火星の大気が入り、それが 固まってガラスとなった時、ガスをとじこめたと 考えられる。

 その分析の結果、米国のバイキング探査機が観 測した火星の大気のデータや地球大気、普通の隕 石のデータと比べると、 36Ar と132Xe の同位体

の比、84Kr と 132Xe の同位体比[図 11-1]お よび 5 種類の希ガスの構成比[図 11-2]の直 線上にのるなどが火星の特徴と一致した。このた め同博士は、この隕石は 13 億年前に火星の表面 で溶岩が噴出して固まった岩だったが、約 1 億 8 千万年前に巨大な隕石落下のショックで一部の 破片が火星からはじき飛ばされた、と結論してい る。太陽のまわりを回っていた破片は、約二百万 年前に別の隕石と衝突。その際に破片はさらに細 かくくだかれ、その一部が地球に落下したらしい。 SNC 隕石にとり込まれた火星大気

[図 11-1]火星隕石中の希ガス同位体の存在比を隕石

(コンドライト、ユークライト)と月、火星、金星と 比較した図(原図は NASA/JSC ドン・ボガードによ る)。

[図 11-2]火星隕石中にとじ込められた希ガスと火星 大気中の希ガスの比較(原図は NASA/JSC ドン・ボ ガードによる)。

金星

地球

火星 ユークライト

コンドライト

84Kr/132Xe 36Ar/132Xe

300.3 100 300 1000 3000 10000

1 3 10 30

粒子数の対数/cm3

CO2

N2 40Ar

34Ar 20Ne 84Kr

132Xe

火星隕石中のガラス

火星大気の希ガス

9 9 11 13 15 17

11 13 15 17

(12)

 火星表面の物質については、火星の赤い色が 何によるのかの原因追及と関連づけられ、反射 スペクトルの研究が惑星探索時代の幕開け以前 より行われた。それによると火星の赤色の反射ス ペクトルには鉄隕石の風化した土に近いことが提 案されていた。バイキング探査機が最初に送って きた映像もこの赤い色をした火星の風影であった

[photo 1-1]。

 火星表面の化学組成が最初に測定されたのは バイキング探査機による。その着陸 2 地点の化 学分析は放射性アイソト−プを線源とするガンマ 線により照射して出てくる蛍光X線のエネルギー 測定により行われた。これを数値で示したものを

[表 12-1]に示してある。この結果は月の海と 同じ玄武岩質のものであった。

 火星表面の他の地域の化学組成は、マーズ・パ スファインダーやマーズ・エクスプロレーション のローバーにより測定された[表 12-1]。火星 上の地理的位置はよくわからないが、火星隕石の 化学組成は重要な情報である。火星隕石が実在す る岩石試料であるので、地球上の研究室にある大 型の精密装置で微量成分も含め化学組成が得られ る利点はあるが、どこから来たかわからないのが 不利な点である。

 火星の表土でなく、大きな岩塊の化学組成の方 が、風化していない岩石の化学組成を与えてくれ る。しかし、問題なのはこのような岩石の表面に も、遠くから飛んできた粉塵が附着しているので、 これも化学組成を変化させる。

 マーズ・パスファインダーに搭載したアルファ 線スペクトロメーターによる分析で、バイキング により分析されたよりも、より Si に富む岩石の 分析値がマックスイーンらにより報告されている

([図 13-1]NASA 提供)。これらの分析結果を 地球の安山岩と比較し、火星には地球にあるよう な安山岩を生じるような火成活動があったとする のも、まだ早すぎる結論であろう。岩石の表面に 付着している塵の化学組成の補正法に問題がある こと、土石流の源地域の岩石の成因についても、 まだまだ不明の点が多いからである。

 表面の新鮮な岩石の分析をするには、表面に附 着している粉や風化した層を削り取る事が重要で ある。このような試みは、NASA のマーズ・エ クスプロレーション・ローバーの 2 台のうちの 一つ、スピリットによりなされた。スピリット は今まで探査した地域の反対側にあるグーセフ

(Gusev)クレーターの中の岩石を分析した。こ の地域はアルカリ岩地域といわれる特別な火山岩 の分布する地域である。

火星表層岩石の化学組成

[表 12-1]火星表面物質の化 学組成と、コンピュータでモ デル計算された火星表面の鉱 物混合物の化学組成(重量百 分 率 )。Toulmin ら(1977) および McSween ら(2006) に よ る。*FeO と し て 計 算。

**SO3の重量%。 SiO2

TiO2 Al2O3

Cr2O3

Fe2O3

FeO* MnO MgO CaO Na2O K2O SO2

Cl P2O5 S

試料 Adirondack

酸化物 スピリット 化学組成 バイキング実測値 Yogi

パスファインダー

S1 S3 U1 混合物

推定値

42.8 1.0 + 20.3 −

− − 5.0 +

0.0 6.5 0.6 −

− 43.9

0.8 5.5 18,7 −

− − 8.6 5.6

0.1 9.5 0.9 −

− 44.7

0.8 5.7 18.2 −

− − 8.3 5.6

0.1 7.7 0.7 −

43.6 0.9 6.9 18.4 −

− − 9.0 5.6

0.0 7.3

− −

− 45.4 

0.46 10.9  0.60 3.02 15.2  0.41 12.8  7.49 2.79 0.06 0.09 − 0.52 0.30

45.7 10.8 0.7 0.1 − 16.5 0.4 5.1 6.3 4.7 0.7 4.3 0.7 0.5

**

(13)

 スピリットは大きなクレーターを 2 年半もか けて探査したが、「アディロンダック」という名 前を付けられた変質してない表面を持った岩石

[photo 13-2]を選び、表面のほこりをブラッ シングではらい、表面をさらに削って、アルファ 粒子 X 線スペクトロメーターで分析した。分析 値は[表 12-1]に他の地域の分析値と比較して 示した。

 地質学者は溶けたマグマの固まった火成岩を、 その中に一般的に多く含まれるシリカ (SiO2) に 対するカリウムとナトリウムの量で分類する。グ スタフ・クレータの岩石は、このカリウムやナ トリウムの量が多い種類のものであった。他の機 器の観測から、この種の岩石にはカンラン石を含

むことがわかっており、カンラン石を含むシャー ゴッタイトという火星隕石に似ている。地質学的 な知識によると、この種の岩石は火星のマントル の深いところで部分溶融したマグマがあまり変化 しないで固まったものと考えられる。火星ではこ の種の岩石は、はじめて発見された。

 この岩石の化学組成の特徴を示すため、シリカ に対し、カリウムとナトリウムの酸化物 (K2O、 Na2O) の量をプロットしたものを[図 13-3] に示す。比較のため火星の他の岩石や地球の岩石 の値もプロットされているが、グスタフ・クレー タの岩石はアルカリ岩とサブアルカリ岩を区別す る緑色の線の左に分布している。

[図 13-1]マーズ・パスファインダー探査機のローバー により測定された火星表面の岩石の分析値(NASA 提 供)。

[photo 13-2]火星探査機ローバーのスピリットによ り分析された岩石「アディロンダック」(NASA 提供)。

地球 火星

南極隕石

バイキング表土 表土

パスファインダー岩石 安山岩

安山岩

鉄/ケイ素

カルシウム/ケイ素

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

玄武岩

[図 13-3]火星岩石の化学組成。シリカ(二酸化ケイ 素)に対し、カリウムとナトリウム酸化物の重量%を プロットしてその特徴を示す。  

サブアルカリ質 アルカリ質

火星隕石 安山岩 表面 玄武岩

安山岩

パスファインダー岩石

(ダストなし)

二酸化ケイ素 (重量%)

ナトリウム+カリウム (酸化物重量%)

0 3 6 9

35 45 55 65 75

グーセフ岩石種 アディロンダック

その他

(14)

 火星表面に分布する原物質はマグマの固まった 火成岩であるが、火成表層の特異な環境による変 成過程により形成された物質も探査機でとらえら れている。このような変成過程による物質は、わ れわれのもっとも得やすい表層物質なので、火星 農業を行う上には見逃せないものである。地球表 層ではいわゆる風化作用により土壌が形成される が、火星ではそうとは限らない。考えられる幾つ かの変成過程と、実際に探査機で見出された物質 をつくった過程とを比較して、どのような変成過 程が支配的であったかを理解しよう。

 水の存在と活動による風化が、化学的、鉱物学 的に表面物質を変化させる重要な過程と考えられ るが、探査機による観察は、時間的、場所的な種々 の地域的過程が大きな影響を及ぼしていることを 示している。

 地域的な過程とは、熱水作用、火山活動、蒸発 作用、隕石の衝突と風による侵蝕などである。こ れらの過程を考慮に入れて、火星の風化変成過程 を、火星の地理的、歴史的な関係で見てみると三 つの大きな変成過程が浮かび上がってくる。  時代的に一番古いノアキアン紀には、水と炭酸 ガスに富んだ大気での粘土化する風化過程が支配 的であった。次のヘスペリアン紀には、水はとぼ しくなり、火山活動によってもたらされた硫酸塩

の関与した酸性の風化があった。現在のような第 三の時代には、水は霜とか霧のような状態で反応 するのみの冷たく乾燥した状態で、強度の酸化状 態での風化が起こっているとみられる。このよう な状態では、鉄の酸化物−水酸化物や非晶質物質 ができるようなことになる。初期の粘土層の形成 については表層の土壌の節で述べるので、ここで は第 2 期の石膏や赤鉄鉱を含む地層の話から始 める。

 北極の極冠をかこむ砂丘には、水によって形 成される硫酸塩鉱物の濃集している地域がある ことをコンパクト予備探査撮像スペクトロメータ

(CRISM)が見つけた。[photo 14-1]の擬似 カラーの像は、硫酸塩鉱物である石膏の存在量を 示す波長の強度を示す。明るい部分には暗い部分 よりもより石膏が多く分布する。石膏は白っぽい 色をした鉱物であるが、砂丘の暗い色の部分に多 く存在する。

 硫酸塩鉱物に富んだ地域がいくつか分布してい ることは、マース・エクスプレスの低解像度カメ ラでも撮像されていたが、CRISM はその中の一 地域を撮った。石膏は水を含む鉱物であるが、砂 丘の石膏は、水からその場で出来たのではないだ ろう。火山岩の噴出物が堆積したり、細粉化され たものにあるカルシウムを含む鉱物が、火山の噴 出ガスに含まれる硫黄成分が水に溶かされ硫酸と なり、カルシウムと結びつき石膏となる。岩石の 硫化鉄も分解されて硫酸をつくることも考えられ る。火山活動の温泉水のようなものからも石膏は できる。地上のローバーによっても硫酸塩鉱物が 岩石に含まれることが検出された。鉄の硫酸塩鉱 物のジャロサイトも発見された。

 過去にあった水の関与する地質学的作用でで きた鉱物として注目されたのが、マース・エク スプロレーション・ローバーのオポチュニティー で発見された、いわゆる 「 火星のブルーベリー 」 と名づけられた球状物質である[photo 15-1、 15-2]。玉の直径は大きくても5mm 位であり、 マフィンの中のブルーベリーのように岩石に含ま れているが、色は青でなく灰色である。

[photo 14-1]北極の砂丘に見つかった硫酸塩鉱物の 石膏の部分を示す。マース・エクスプレスの CRISM の撮像した疑似カラー像。

火星表層での変成過程

(15)

 石膏やブルーベリーが地層をなしているから といって海からの堆積物とは限らない。層状の堆 積物があることはマース・ルコネサンス探査機の 高解像度科学探査カメラでも撮影された。北極の 層状堆積物を侵蝕してできた大きな狹谷、シヤス マ・ボレアレの断崖の頭に層状の堆積物が観測さ れた。[photo 15-3]のように底が暗色で、上 に層状堆積物が見られる。この堆積物は水による 堆積ではなく、氷の白っぽい層と、砂丘の堆積物 の互層のようであり、火星気候変化を物語るもの として興味がある。

 多くの玉が表面に散らばっている写真[photo 15-1]はローバーのオポチュニティーがヴィク トリア・クレーターから 200m 位のふちで撮っ た。このようなベリーは、着陸地点のイーグル・ クレーターで最初に見つかっていた。しかし両地 点の間では見られなかった。着陸地点付近ではベ リーは表面に散らばっているだけでなく岩の中に 埋もれているのもあった[photo 15-2]。

 このベリーの玉は鉄の酸化状態などを調べる測 定機で、赤鉄鉱という3価の鉄の酸化物であるこ とがわかっている。このような球は地球上でも見 つかっており、水を含んだ岩石の中でできること が知られている。鉄を含んだ鉱物が水にひたされ 硫化鉄−水酸化鉄鉱物のゲータイト FeO(OH) と なり、それが水分を失い赤鉄鉱となることも提案 されている。火星のそのような地層でできたもの が隕石の衝突により掘り起こされたり、風化した りして地表に散らばったと思われる。

 このような赤鉄鉱は偶然に見つかったものでは ない。この探査以前の軌道船によるスペクトル観 測により、オポチュニティーの着陸地点であるメ リディアーニ平原一帯のオクラホマ州位の広さに 赤鉄鉱の分布している事が見つかっており、ここ が着陸地点に選ばれたという経緯がある。しかし、 この地域の岩石は火山岩であり、海底でできた堆 積岩ではないことを指摘しておきたい。

[photo 15-1]オポチュニティー探査機で撮像された 火星のブルーベリー(NASA 提供)。

[photo 15-2]岩層の中に埋もれているブルー・ベリー

(NASA 提供)。

[photo 15-3] 星の層状堆積物。シ ヤ マ ス・ ボ レ ア レ 峡谷の断崖に観察さ れた。マース・ルコ ネサンス探査機によ り 撮 像 (NASA 提 供)。

(16)

 惑星物質進化論によれば、火星の溶岩は月や水 星と本質的には変らないものといえる。火星表土 の玄武岩的な化学組成が、そのまま玄武岩的な鉱 物組合わせを示すものであるかと言うと、そうで はない。これらは土壌の分析値であり、それはか なり風化した産物であるからである。

 この分析値が実際にどんな鉱物組合わせであ るかは別に検討しなければならない。熱力学的な 計算で表面鉱物の組合わせを研究する方法は、表 面温度が低く、大気の圧力も低い火星の場合には 適用困難であった。この場合バイキング研究チー ムによってとられた方法は、既知の多くの鉱物の 化学組成を貯えたデータベースより幾つかの化学 組成の似た鉱物を取りだし混合して、もっとも分 析値とよく合う鉱物の組合わせの量比を求めると いうものであった。 この結果得られた火星のこの 地点での鉱物組合わせは [表 16-1]に示すよう に玄武岩の風化してできる粘土鉱物で、スメクタ イト (Smectite) と呼ばれるグル−プに属する 3 つの鉱物が、考えられている。その化学式も表に 示す。この結果は石膏の存在が示されてない点で、 SNC 隕石の中に発見されたものと一致しない。  これらの鉱物は、溶岩流地域の表面に限られた ものであり、地中深くにいくと風化してない岩石 など、表面と変ったものとなってくる。方解石や 石膏は、炭酸ガス大気や永久凍土に水を含む火星 のような惑星に特徴的なものである。

 火星表面物質の化学組成から、スメクタイト・ グループに属する粘土鉱物の存在は推定された が、実際に粘土の存在を示すデータは観測され たのであろうか。NASA のマース・ルコネサン ス探査機に搭載された 2 つの測定機の像を合成 することにより、ニリ・フオッサエ地域に粘土を 含む地層が分布していることを見つけた[photo 17-1]。

 この地域は火星ではもっとも古い地表のあ る地域で、粘土は湿った地域にあり生物学的営 みにとって大切なので注目されていた。photo 17-1]はこの地域につきコンパクト予備探査撮 像スペクトロメータ(CRISM)と高解像度撮像科 学装置(HiRISE)の両方の像を合成してつくら れた映像の一部を示したものである。この映像で 2 種の主要鉱物が検出された。カンラン石と粘土 鉱物である。

 カンラン石は始源的な玄武岩に特徴ある鉱物 で、この鉱物に富む地域は、図では赤で示されて いる。粘土に多くある鉱物は緑で示されている。 2 つの測定装置で共通に観測された地域は左上に 示されているが、巾は約 5km である。この最上 図の 3 つある青い四角のうち、右下の図は、粘 土がもっとも多い地域の拡大図であり、数メー トルサイズの小さな多角形のブロックに割れてい る。粘土の多い層は、その上の岩石が侵蝕された ところに表れている。これらの像は古い時代の火 星の気候を反映しているものと思われる。

[表 16-1]火星表面の鉱物と混合比。式の中の n は 任意の量の水分子を示す。* 少量の鉱物。混合比は 〔表 12-1〕の右端の混合物の推定値の計算に用いた比。 ノントロナイト

モンモリロン石 石ケン石 キーセライト* 方解石

ルチル

Nontronite Montmorillonite Saponite Kieserite Calcite Rutile

47 17 15 13 7 1

表8-16-2 火星表面の鉱物と混合比

鉱物名(緑字;化学式) 混合比

Na0.33Fe3+2(Si,Al)4O10(OH)2・nH2O (Na,1/2Ca)0.33(Al,Mg)2Si4O10(OH)2・nH2O (1/2Ca,Na)0.33(Mg,Fe2+)3(Si,Al)4O10(OH)2・4H2O MgSO4・H2O

CaCO3

TiO2

火星表層の土壌

(17)

 これらの粘土層がどのような変性過程でできた かは、すでに述べた。その出来た時代は、火星初 期の湿潤な時代だったので、そのような水と炭酸 ガスの関与した過程が提案されている。しかし、 これらの粘土層がどのような粘土鉱物で出来て いるかのデータはとられていない。火星の状態で どのような粘土鉱物が存在するかは予想されてい る。

 マースエクスプレス OMEGA で検出された粘 土の赤外スペクトルによくあう粘土鉱物は、鉄に 富んだノントロナイト、マグネシウムに富む石ケ ン石、アルミニウムに富むモンモリロナイトだと いう。これらの鉱物は[表 16-1]に化学式が書 かれているバイキングの表土に想定された鉱物で もある。鉱物にはタルクや蛇紋石グループの鉱物 があげられている。

 このような粘土がある土壌が植物を育てるのに 適しているかどうかは、今の段階では判らない。 有機物の存在も期待できないことも加味すると、 これらの粘土層がただちに農業に役立つと考える のは早すぎる。粘土鉱物の同定には粉末 X 線回 折が適しているが、火星探査機に搭載するより、 サンプルリターンの方が魅力的である。表層岩石 の粘土化の方が着陸地点によらない基地設計がで きる。

 火星変成過程の最後の段階は現在の火星表面の ように、強度に酸化的で、冷たく乾燥した条件で の非常にゆっくりした風化である。霜や酸性の霧 のように気体と固体、固体と水の薄い膜による反 応である。結果として非晶質物質や鉄の酸化物− 水酸化物が生じるであろう。

 火星隕石の中にもその記録をとどめているも のもある。SNC 隕石の火星起源説に関連したも う一つの発見は、元 NASA・ジョンソン宇宙セ ンターのジム・グディング博士らにより発表され た。彼らは走査型電子顕微鏡で EET79001 隕 石試料を調べ、火星表面の水が関与した産物と思 われる、方解石と石膏を発見した。この塩に似た 鉱物は、多分火星表層にあったこの岩石のすきま に、水が存在していた時形成された鉱物粒と考え られる。南極の氷の中か表面でできたものではな い。方解石は、炭酸カルシウムであり、[photo 18-1]のような形をしている。

 粒状の炭酸カルシウムは、原子比にして 14 ∼ 15%のマグネシウムを含むと同時にリンも少量 含む。別の所にある 10 ∼ 20 ミクロンの純粋 な炭酸カルシウムは、短冊状か針状の硫酸カルシ ウムと密に共存しているという。石膏は 1 分子 の硫酸カルシウムと 2 分子の水を含む。この方 解石と石膏は、この隕石があった天体上で、水に

[photo 17-1]火星のニ リ・フォッサエ地域に発 見された粘土層の分布図。 マース・ルコネサンス探 査機の 2 つの測定器によ る合成像(NASA 提供)。

水のあったことを示す 火星表面の鉱物

(18)

よって引き起こされる化学作用が起こっていたこ とを明瞭に示す証拠である。これらの鉱物は鉄を 含まないので、これが風化してできた酸化鉄を含 んでいるかどうか解らない。これは地球上の風化 のように、鉄の酸化物ができてさびるような風化 とは異なることを示している。イギリスの、オー プン大学のイアン・ライト博士と共同研究者は、 NASA のグディングからもらった方解石の炭素 と酸素の安定同位体組成を分析した。この組成 は、地球上によくある石灰岩や、それに関連し た炭酸塩鉱物のものとも一致しなかった。これは EET79001 隕石中の炭酸塩鉱物が地球外でで きたという説を支持している。

 方解石中の炭素の同位体組成も SNC 隕石の一 つ、ナクライトの試料で測定されたものに、驚く ほど似ている。この発見の意味するところは、火 星の大気を固定する鉱物がちゃんとあること、方

解石が炭酸ガスの、また石膏が水のかくれた貯蔵 庫となっていることである。

 バイキング探査機が火星のクリュセ平原に着陸 し、最初に送って来た写真[photo 1-1]には、 赤茶けた風化した火星表面が写っていた。このバ イキングの測定した火星表面の風化物の化学組成 も、玄武岩の風化した粘土鉱物と硫酸塩鉱物でよ く説明できることとも一致して面白い。 火星表面 には、大気の一部が凍った水や、炭酸ガスがある ことが考えられていた。このような環境では十分 炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物ができる可能性がある。 火星にはもちろん極冠には固体になった水や炭酸 ガスがある。かつてひととき、永久凍土が溶けた 水が大洪水のように流れ、谷がきざまれた跡があ る。塩のような鉱物があるのが当然な自然環境で ある。

[photo 18-1]火星隕石の割れ目に発見された方解石と石膏の結晶。走査型電子顕微鏡の写真。Carb: 方解石(炭 酸カルシウム)、Sulf: 石膏(硫酸カルシウム+ 2 分子の水)。元 NASA ジム・グディング博士の好意による。

(19)

 火星から来た隕石や火星で探査が行われた地 域は、月などに比べても若い時代の産物であっ た。これらのみから、火星の原始地殻が形成さ れた時代のことを考えるのは困難であった。と ころが、もともと HED 隕石の一種、ダイオジェ ナイトと分類されていた、主に斜方輝石よりなる 隕石が、火星初期の地殻で形成されたものである 事が分かって以後、火星から来たこの隕石は世界 でもっとも注目される物質となった。この隕石の 中に発見された火星での生命活動の痕跡、それに 続くマーズ・パスファインダー、マーズ・グロー バル・サーベイヤーによる火星探査の成果は、火 星についての謎をさらに多くした。この話題の隕 石を見てみよう[photo 19-1]。さらにこの部 分を拡大してみると、パンケーキ状の円盤が斜方 輝石の割れ目に張り付いたように見える[photo 19-2]。円盤の周辺には黒いリングがあり、拡 大してみると小さな磁鉄鉱の結晶が連なって見 え、硫化鉄鉱物ガイギエライトも伴っている。  この炭酸塩鉱物は、他の火星隕石に発見された Ca の化合物ばかりでなく、 Mg,Fe などよりな り、組成変化の著しいものばかりである。 1996 年 7 月、NASA のデーブ・マッケーらによりサ

イエンス誌上に公表された、火星に微小な生命体 が存在した可能性を提案した証拠は、この炭酸塩 鉱物部分に残されたものであった。その真偽は別 にして、この論文は、もっとも近代的な固体惑星 物質科学的手法が駆使されている。

 生命の存在の可能性と関連して議論されるの は、かって火星には洪水があったとか、海があっ たとかの提案である。マーズ・パスファインダー でもこのような洪水の跡と考えられる写真が公表 されている([photo 19-3]NASA/JPL 提供)。 この写真に見られる一方向に傾いた岩石の写真 は、大規模な土石流のようなものとして理解でき 火星初期の物質と海仮説

[photo 19-1]南極のアラン・ヒルズで回収された火 星隕石 ALH84001 の切断面。斜方輝石を主とする 隕石で、生命活動の痕跡を残す可能性があるものとし て話題を呼んだ(NASA 提供)。

[photo 19-2]左図の一部を拡大した写真。まわりに 黒い磁鉄鉱の微結晶がある(NASA 提供)。

[photo 19-3]マーズ・パスファインダーで撮像され た洪水の跡と考えられる写真(NASA 提供)。

(20)

るもので、ゆうゆうと水をたたえた大河が流れて いたのではない。火星表層の永久凍土の中に閉じ 込められていた水が、火山活動か隕石衝突による 一時的な高温期に、急激に溶けて、流体と一緒に 土砂が流れたものと理解される[photo 20-1]。 グローバル・サーベイヤーに搭載した高解像度カ メラや分光器が、火星全球の詳細な地図と物質分 布図をつくろうとしている。

 火星の過去になんなんと水をたたえた海があっ たとしたら、火星初期の地殻をつくっていた岩石 が水で分解され、石灰岩や堆積岩を多量につくっ たと考えられる。これらを覆って新しい時代の溶 岩流が流出したとしても、大きな衝突クレーター の形成で、どこかにその一部が露出しているはず である。

 物質進化の進んでいないベスタからの隕石や 月でさえ、45 億年の年代を持つ真の結晶質岩石 は少数しか残っていないのに、海のあった火星に 45 億年の年代を保持している ALH84001 が 生き残っているのは、両立しがたい事実である。 グローバル・サーベイヤーで、高解像度撮影され たマリネリス峡谷のガケに見られる層状の岩石の 分布([photo 20-3], NASA/JPL 提供)も、 デカン高原の洪水玄武岩とする説と堆積岩とする 両説がある。今後の探査結果を注目したい。  北半球北部に海があったと解釈できる地形、あ る地層から水が流れ落ちたような小規模な地形

[photo 20-2]、堆積作用でできた地形が報告さ れている。オデッセイ探査機の中性子線スペク トロメーターにより、水の分布図が得られつつ ある 。NASA の 2001 火星オデイッセイ探査 機で観測された、中くらいのエネルギーを持っ たエピサーマル中性子強度の火星全休図[photo 21-1]である。 この中性子の強度の弱い地域 は、濃いブルーで示されているが、この地域は水 素従って水が、土壌中に濃集されている事を示し ている。

[photo 20-3]マリネリス峡谷の崖に見られる層状の 岩石の分布(NASA 提供)。

[photo 20-2]ある地層から水が流れ落ちたような小 規模な地形(NASA 提供)。

[photo 20-1]火星表面の水が流れた跡を示す写真

(NASA 提供)。

(21)

 火星隕石は火星についての直接的なデータを与 えてくれ、火星がその故郷だということを示す証 拠は数多くあるが、火星の試料の実物が地球に持 ち帰られる日まで、火星起源の決着はつきそうも ない。惑星物質進化論から SNC 隕石をみる時、 何が言えるのであろうか。大きな天体で分化した 物質であり、大気の存在の下で風化したような鉱 物を含む点[図 8-20-2]では月よりもっと進化 した天体の物質であることが言える。

 惑星の物質進化からすると、月や水星の溶岩流 よりは一段ランクの上の進化度を持つものと提案 したい。

 21 世紀前半には火星からの試料持ち帰りも実

現し、地球以外の惑星鉱物研究も現実のものとな ろう。しかし、これまで話してきたように現在で も火星から来たのではないかといわれる隕石を、 既に我々は手にしている。これらがもし本当に火 星の石であったとすれば、それから火星の化学組 成について今でも学ぶことができるはずである。

[photo 21-1]オディッセイ探査機で観測された、水の分布に関連した中性子の強度分布図(NASA 提供)。

[図 21-2]火星表層の物質と大気、水との 反応でできる鉱物。

硫酸カルシウム CO2

H2O 火星表層

炭酸カルシウム

(22)

 火星の表面にどんな物質がどこに分布してい るかを、火星探査の結果と火星から来た隕石の 研究結果より見てきた。このような知識から、人 類が将来火星で生活する時に、必要な食物を育 てる土壌が得られるかどうかを考えてみる。現在 JAXA の山下雅道教授を中心に、宇宙農業につ いて会合がもたれている。この会合は宇宙農業サ ロンと呼ばれており、どのような食物が火星に適 しているか検討している。

 火星農業で作付けする植物は、火星での食料を 何にするかによる。宇宙農業サロンで検討されて いるカイコのさなぎを食べるにはカイコを育てる 桑の木を植える土壌が必要であり、イモ類の栽培 にも十分な深さまでの土壌が必要となる。これら の植物が生育できる土壌であれば、他の野菜類も 栽培可能であろう。

 火星基地を何処に建設するかはまだ決まってい るわけではないが、よい土壌がある所を選択の基 準にするより、永久凍土の水を多量に得られる場 所の方が重要視されよう。現在までに探査された 地域には、かなり特殊な物質が分布していた。石 膏や赤鉄鉱のブルベリーを含む地層である。粘 土の分布する地域もあるが農業に適した粘土鉱物 を含むことは、確かめられていない。一般的に見 ると、火星隕石に見られるような火成岩が、レゴ リス的な表層をつくり、その物質破片の表面には スメクタクト的なものが出来ている描像が得られ る。

 このような表層物質はそのままでは農業に適し た土壌にはならない。地球で農学者が考える土壌 は、腐植土や多種の細菌や微生物を含む有機物に 富んだ物質である。火星で農業を行う際に留意し なければならないのは、できる限り地球の生物を 火星に持ち込まないことである。チッ素固定菌な ど限られた素性のよくわかった生物のみ利用する ことにしなければならない。

 土壌中にどのような有機物が存在すれば、地球 の土壌と同じような働きをするかは、、まだ十分 研究されていない。我々が現在考え得る最良の方

法として、腐植土可溶性成分の主要な有機物であ るフルボ酸を用いることを考えている。火成岩中 の鉱物で一番容易に分解され、粘土鉱物の主要成 分を得られる斜長石(カルシウム・ナトリウムを 含む鉱物)は、このフルボ酸で分解されることが 解っている。

 火星の岩石にもっとも似た地球の物質を、この フルボ酸などで分解して、土壌類似物質をつくり、 植物を生育する実験から始めるのが、宇宙農業の 第一歩と考えられる。今後の火星探査においても、 今まで用いられなかった X 線回折装置など、鉱 物同定に必要な装置を着陸機やローバーに搭載す る必要がある。

 本章作成にあたっては、東京大学大学院理学 系研究科地球惑星科学専攻の三河内岳博士に資 料など提供していただいた。火星農業については JAXA 山下雅道教授の主催する宇宙農業サロン からの情報によるところが多い。PDF ファイル 作成については一部 JAXA/ISAS の助成金によ る。ここに諸氏、JAXA に感謝いたします。

         武田 弘・矢沢 勇樹 将来の宇宙農業について

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