ミクロ経済学 HW3 解答
濱田高彰
∗平成 28 年 12 月 25 日
1 確認
1.1 消費者余剰
消費者の効用最大化問題は以下のように書ける1)。
(P) max
X,m v(X) + m s.t. pX + m ≤ I
目的関数uはX, mに対し厳密に増加であるから、最適解においてはpX+ m = Iが成立する2)。
これとX ≥ 0、m ≥ 0より、消費者の効用最大化問題は以下のように書き換えられる。
(P
′
) max
X v(X) + I − pX s.t. Ip ≥ X ≥ 0
ここで目的関数をf(X) = v(X) + I − pXとおく。fの性質として、v′′<0より、任意のx ∈R+
についてf
′′<0である。つまりfは狭義凹関数である3)。 ここで内点解の場合を考えると、最大化の一階条件は
f′(X) = 0 ⇔ p = v′(X) (1)
となる。f は狭義凹関数であるから、(1)式を満たすXは問題(P
′)の一意な最適解である4)。また v′′<0より関数v′は単調減少であるから、逆関数(v
′)−1が存在し、(1)式より問題(P′)の解は
X= (v′)−1(p) (2)
と分かる。ここで内点解のケースでの最大化の一階条件((1)式) を解釈してみよう。まず左辺pは
∗
質問・誤 植 等 が あ れ ばTAのメ ー ル ア ド レ ス([email protected])にご 連 絡 く だ さ い 。 1)
この問題はKKT条件を用いて解くこともできる。その解法については最後の付録にまとめたので、そちらも参照されたい。
2)
厳密に示すには、背理法の仮定により最適解においてpX+ m < Iが成り立っていると仮定し、矛盾を導く。具体的には、予 算 制 約 を 満 た し 、か つ よ り 効 用 が 高 い 消 費 プ ラ ンが 存 在 す る こ と を 示 せ ば 良 い 。
3)
関数g: R → R が狭義凹関数であるとは
∀x, y ∈ R(x ̸= y), ∀t ∈ [0, 1], tg(x) + (1 − t)g(y) < g(tx + (1 − t)y)
と なる こ とで あ る。また1次元の 関 数gに関し てgが 狭義 凹 関数 で ある こと の 十分 条 件は 、任意 のx∈ R について g′′(x) < 0と な る こ と で あ る 。
4)
一般 に 狭 義 凹 関 数g: R → R について、g′(a) = 0な るaが 存 在す れ ば 、gはaで 最 大 と な り、その 解 は一 意 で あ る 。
「財1単位を追加するごとにかかる金額」であり、右辺v
′(X)は「財をXからもう1単位増やした 際に得られる便益(限界便益)」である。これらが一致していない場合、消費量を増減させることで 効用を上げることが可能であり、最適な消費量であるならこれらが一致している必要がある5)。また (1)式を見ると、消費者の所得Iが入っていない。これは財の需要量が所得に依存しないことを意味 し、財の需要に対する所得効果が0である。これが準線形効用関数がもたらす性質である。
以上は内点解の分析であるが、この問題には端点解のケースが存在する。従って、以下でそれぞれ のケースがどのような条件の下で起こるのかを特徴づける。
(i) : 内点解のケース
まず内点解を仮定する。この時、解は(2)式によって与えられ、制約集合の内部に存在しているは ずだから、0 < (v
′)−1(p) < Ipが満たされている必要がある。v
′
が単調減少であることから、v
′(0) > v′((v′)−1(p)) > v′(Ip)を得る6)。逆関数の定義よりv′((v′)−1(p)) = pだから、この関係式はv′(0) > p > v′(Ip) · · · (∗)であると分かる。この条件(∗)は、解が内点解であるための必要条件である。 一方、条件(∗)は十分条件であることも示される。今条件(∗)が成り立っていると仮定する。この 時、v
′(0) − p > 0かつv′(Ip) − p < 0であり、これらはfの定義より、f′(0) > 0かつf′(Ip) < 0であ る。今fは連続関数であるから、中間値の定理より7)、f
′(X) = 0
を満たすXが存在し、I
p > X >0 を満たす。これは(1)より内点解の存在を意味する。
以上より、条件v
′(0) > p > v′(Ip)は解が内点解であるための必要十分条件である。 (ii) : 端点解(X = 0)のケース
まずX = 0が最適解だとする。この時X = 0から消費量を微小に増やしても、効用は改善する ことはない。つまりf
′(0) ≤ 0である必要がある。 次にf
′(0) ≤ 0だとする。v′ が厳密減少関数であるから、任意のX ∈ [0,
I
p]についてf
′(X) = v′(X) − p ≤ v′(0) − p = f′(0) ≤ 0、つまりf′(X) ≤ 0が言え、f は区間[0,Ip]内で非増加関数であ
る。従ってf はX = 0で最大となる。 以上からf
′(0) ≤ 0、つまりp ≥ v′(0)が満たされていることは、X = 0が最適解であることの必 要十分条件である。
5)(1)
式を書きかえた1 =
v′(X)
p という条件も、以下のように解釈できる。右辺は「1円を追加的に財に費やした際の効用の増
分」、左辺は「1円を追加的に貨幣として蓄えておいた際の効用の増分」であり、最適な消費量ではこれらが一致している必要があ
る 。 6)
技 術 的 で あ る が 、vの 定 義 域 はR+で あ る か ら 、X = 0に お い て 通 常 の 微 分 は 定 義 で き な い 。こ こ でv′(0)は 厳 密 に は 片 側 微 分 を 意 味 し て お り、この 場 合 は 右 側 か ら 近 付 け るこ と か ら 、右 側 微 分 と 呼 ば れ る 。
7)
実数 上 の区 間[a, b]におい て 定義 され る連 続関 数 につ いて 、f(a) > f (b)を満 た すな らば 、f(a) > l > f (b)を満 た す任 意のl に 対 し て 、f(c) = lを満 た すcが 区間[a, b]内に 存 在 す る 。
(iii) : 端点解(X = Ip)のケース まずX =
I
p が最適解だとする。この時X = 0から消費量を微小に減らしても、効用は改善する ことはない。つまりf
′(I
p) ≥ 0である必要がある。
次にf
′(Ip) ≥ 0だとする。v′ が厳密減少関数であるから、任意のX ∈ [0,
I
p]についてf
′(X) = v′(X) − p ≥ v′(Ip) − p = f′(Ip) ≥ 0、つまりf′(X) ≥ 0が言え、fは区間[0,Ip]内で非減少関数であ
る。従ってf はX =
I
pで最大となる。
以上からf
′(I
p) ≥ 0、つまりv
′(I
p) ≥ pが満たされていることは、X= I
p が最適解であることの必 要十分条件である。
なお、上のそれぞれのケースで(より厳密には、任意のpに対して)解は一意に定まる。これにつ いては、図や数式を用いて各自確かめてみてほしい。以上より、消費者の財の需要関数Xd(p, I)は 以下のようになる。
Xd(p, I) =
I
p if v
′(Ip) ≥ p > 0 (v′)−1(p) if v′(0) > p > v′(Ip) 0 if p ≥ v
′(0)
(3)
また(i)から(iii)のケースは以下のように図示できる。
0 f
X f
0
(0) f
0
( I
p )
I
p (v
0
) 1
(p)
図 1: (i) 内点解
0
X f
0
(0)
f 0
( I
p )
I
p f
図 2: (ii) 端点解:X = 0
0 f
X f
0
(0) f
0
( I
p )
I
p
図 3: (iii) 端点解:X =
I p
さて、今財の需要関数が導出できたわけだが、需要関数(3)式を見てみると、例えば条件式v
′(Ip) ≥ pに関して、pがどのような領域にあるかは不明瞭である。よって、任意の所得Iに対してあるpˆ(I) ∈ R+が存在して、需要関数は以下のように書き直せるとす。
Xd(p, I) =
I
p if pˆ(I) ≥ p > 0 (v′)−1(p) if v′(0) > p > ˆp(I) 0 if p ≥ v
′(0)
(4)
またpˆ
′(I) ≤ 0である。
需要関数の条件式について
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需要関数の条件式に関して、いきなり上記のような表現に書き換えたが、本来なら証明が必要 である(その際に少々技術的な仮定が必要である)。ここでは具体的な証明には踏み込まないが、 簡単に述べると、h(p) = v
′(Ip)−pという関数を定義した時、任意のp ≤ ˆp(I)についてh(p) ≥ 0、 任意のp > p(I)ˆ についてh(p) < 0となるようなp(I)ˆ が存在すれば上の書き換えは成り立つ。 この問題の仮定を満たし、かつこのようなp(I)ˆ が存在するような便益関数v(X)を以下に2つ 提示した。余力のある人はぜひ解いて確かめてみてほしい。
補足問題 1.1. v1(X) =
√1 + X − 1、v2(X) = log(1 + X)とする。 (a) v1とv2に関して、v(0) = 0、v′(X) > 0、v′′(X) < 0を示せ。
(b) hi(p) = vi′(Ip) − p(i= 1, 2)とする。limp→0hi(p)、limp→∞hi(p)、limp→0h′i(p)、h′′i(p) を計算し、関数hi(p)の形状を検討せよ。
(c) ˆpi(I)がhi(ˆpi(I)) = 0を満たすとする。pˆi(I)が存在するとき、pˆ′i(I) < 0であることを示せ。
✒ ✑
(2) 逆需要関数をpd:R+→ [0, v′(0)]と定義する8)。この時(4)式より逆需要関数は
pd(x) =
v′(x) if p(I)ˆI > x ≥ 0
I
x if x ≥
I ˆ p(I)
(5)
となる。消費者が価格pで財をX単位購入する際の消費者余剰(CS)は以下のように定義される。 CS =
∫ X 0
pd(x)dx − pX (3)今所得は十分に大きいという仮定から、 I
ˆ
p(I) は十分に大きくなる。つまり(5)式より、この仮定 は我々が逆需要関数がpd(x) = v
′(x)
であるとみなして分析することを可能にする。この時、消費者 余剰CSは
CS =
∫ X 0
v′(x)dx − pX
= v(X) − v(0) − pX
= v(X) + (I − pX) − (v(0) + I)
= u(X, I − pX) − u(0, I) (u(X, m) = v(X) + mより)
となる。これは消費者余剰が「市場取引による効用の増分」であることを意味している。
消費者余剰というシンプルなフォームで以て消費者の便益を表現できることは、我々にとって分析 上非常に都合がよい。しかし一方で、「所得が十分に大きくなければ、消費者余剰では取引における 消 費者 の 効 用 の 増分 を 表 現 で きな い 」とい う 点 も お さえ て お き た い。消 費 者 余 剰 を用 い た 厚 生 評価
8)
値 域 を[0, v′(0)]と し て い る 理 由 は 、「 関 数 」が 定 義 で き る た め の 工 夫 で あ る 。(2)式 を 見 て み る と 、X = 0と い う 消 費 量 は 、v′(0)以 上 の 全 て の 価 格pの 下 で 実 現 す る 。そ れ ゆ え 逆 需 要「 関 数 」を 考 え る 際 、x= 0に 対 し て た だ1つ の 要 素 を 対 応 さ せ る 必 要 が あ り、その た め に 地 域 を 制 限 し て い る 。
を行う背後では、準線形の仮定だけでなく、所得が十分に大きいという仮定も必要である。
1.2 生産者余剰
(1)生産者の利潤最大化問題は以下のように書ける。
maxX pX − C(X) s.t. X ≥ 0
まず内点解の場合を考え、目的関数をXについて微分し、最大化の一階条件を求め整理すると
p= C′(X) (6)
を得る。C
′′>0より、利潤関数(π(X) = pX − C(X))は狭義凹関数であるから、(6)を満たすX は一意な最適解である。またC
′′>0
より関数C
′
は単調増加であるから、逆関数(C
′)−1
が存在し、 解は
X= (C′)−1(p) (7)
と分かる。ここで内点解のケースでの最大化の一階条件((6) 式)を解釈してみよう。この式の左辺 pは「追加的に財を1単位生産することから得られる売り上げの増分」であり、左辺C
′(X)は「こ
の財をXから追加的に1単位生産した際にかかる費用(限界費用)」である。消費者の議論と同様 に、これらが乖離している状況では、生産を増減させる誘因をもち、最適な生産量においてはこれら が一致している必要がある。
以上は内点解の分析であるが、この問題には内点解でないケースが存在する。従って、以下でそれ ぞれのケースがどのような条件の下で起こるのかを特徴づける。
(i) : 内点解のケース
消費者の問題とほぼ同じなので省略する。内点解が存在するための必要十分条件は、β = limX→∞C
′(X) と書くと、C
′(0) < p < βである(Check!)。 (ii) : 端点解(X = 0)のケース
消費者の問題とほぼ同じなので省略する。X = 0が最適解であるための必要十分条件は、C
′(0) ≥ pである(Check!)。
(iii) : 解が存在しないケース
以上の分析の中で、β ≤ pとなる場合については分析されていないが、このケースでは解が存在 しないことが示される。
今β ≤ pを仮定する。β = limX→∞C
′(X)であり、C′は厳密増加関数であることから、任意のX に関してp ≥ β > C′(X)が言える。これは、任意のXでp > C
′(X)
、つまりπ
′(X) > 0
を意味す
る。従ってπは厳密増加関数であるから、このケースでは解が存在しない
9)
。
ただし、βが無限大の場合、任意のpに対してp < βとなるから、解は常に存在することに注意 されたい。
以上の分析から、生産者の財の供給関数X
s(p)
は以下のようになる。
Xs(p) =
0 if C
′(0) ≥ p > 0 (C′)−1(p) if β > p > C′(0) ∞ if p ≥ β
(8)
ただし、β = limX→∞C
′(X)
である。
(2)まず逆供給関数をps:R+ → [C′(0), β)と定義する。この時(8)式からps(x) = C′(x)となる。 生産者が価格pで財をX単位販売する際の生産者余剰(P S)は以下のように定義される。
P S= pX −
∫ X 0
ps(x)dx
(3) ps(x) = C′(x)であるから、
P S = pX −
∫ X 0
C′(x)dx
= pX − C(X) + C(0)
= pX − C(X) − (p0 − C(0))
= π(X) − π(0) (π(X) = pX − C(X)より)
となる。
1.3 競争均衡と総余剰
(1)競争均衡においては、消費者の財の需要量と生産者の財の供給量が一致する。つまり、競争均衡 価格p
∗
の下では
Xd(p∗) = Xs(p∗) (9)
が満たされている。
(2)総余剰をT Sと書くことにする。この時、総余剰の定義から
T S= CS + P S =
∫ X 0
pd(x)dx −
∫ X 0
ps(x)dx (10)
9)
解が 存 在 し な い ケ ー ス が 出 て く る よ う な 費 用 関 数 は 、解 析 的 に 存 在 す る 。例 え ばC(X) = X + e−X−1で あ る 。た だ し 、e は 自 然 対 数 で あ る 。
と書ける。ここでまず総余剰の最大化の条件を求める。ここでは内点解を仮定する。よって(10)式 をXで微分し最大化の一階条件を求め整理すると
10)
pd(X) = ps(X) (11)
を得る。またpd(X) = v
′(X)
、ps(X) = C
′(X)
であることから、∂
2T S
∂X2 <0が確認でき、TSは狭義凹
関数である。つまり(11)式を満たすXが存在すれば、それは総余剰を最大にするXである。以下で は、競争均衡下でこの取引量が実現することを示す。今、消費者の需要量Xd(p)は、価格pを所与に した時の消費者の効用最大化問題の解であることに注意すると、逆需要関数よりp = v
′(Xd(p)) = pd(Xd(p))を満たす。同様にXs(p)は、価格pを所与にした時の生産者の利潤最大化問題の解であ ることに注意すると、逆供給関数よりp = C
′(Xs(p)) = ps(Xs(p))を満たす。これらから、競争均 衡価格p
∗
の下で
pd(Xd(p∗)) = p∗= ps(Xs(p∗)) (12)
であることが分かる。競争均衡下での財の取引量をX
∗
とすると、(9)式より、X
∗= Xd(p∗) = Xs(p∗) であるから、(12)式より
pd(X∗) = ps(X∗)
を得る。これより、競争均衡における取引量X
∗
は、(11)式で得られるXと一致していることが分 かる。
1.4 余剰分析について
【Q1】神取道宏[著]『ミクロ経済学の力』のp168からp174までを参照。
【Q2】競争均衡は総余剰を最大化するという観点では優れているが、「みんなが同じように得をでき るか」といった公平性の観点からは望ましくない可能性がある。より一般的には、競争均衡はムダの ない(パレート)効率的な資源配分を実現してくれる
11)
が、その資源配分は極めて不公平な配分でさ え実現しうるということである。Aさんが言いたかったのは以上の点である。
2 標準
2.1 部分均衡分析
奥野正寛[編]『ミクロ経済学演習』の解答を参照。
10) ここ で は
d dX
∫X 0
f(x)dx = f (X)
と い う「 微 積 分 額 の 基 本 定 理 」を 用 い る こ と で 一 階条 件 が 導 出 で き る 。 11)
厚生 経 済 学 の 第1基 本 定 理
2.2 課税と経済行動
以下、内点解のみを考慮して分析する。
税がない場合:消費者・生産者の効用・利潤最大化問題の一階条件はそれぞれ以下のようになる。
p = a − bX (13)
p = d + eX (14)
同時に(13)は逆需要関数、(14)は逆供給関数である。 (i)財1単位につきtの従量税
(消費者)財1単位ごとにtだけ支払わなければならないのだから、X単位購入する場合、tX追加 的にかかることになる。別の言い方をすれば、消費者はp+tという価格に直面していることになる。 今v(X) = aX −
b 2X
2
であるから、効用最大化問題は以下のように書ける。 maxX,m
(
aX − b 2X
2
)
+ m s.t. (p + t)X + m ≤ I
最大化の一階条件はp+ t = a − bXである。課税前((13)式)と比べると、財を追加的に1単位購入 する際の費用の増分がtだけ増加しているので、同じ市場価格に対して課税後は需要量が減少する。 また逆需要関数がp= a − bX − tとなることから、消費者への従量税によって、逆需要曲線は下方 にシフトすることが分かる。
(生産者)消費者と同様tX追加的にかかる。この時生産者はp − tという価格に直面していること になる。今C(X) = dX +2eX2であるから、利潤最大化問題は以下のように書ける。
maxX (p − t)X −
(
dX+ e 2X
2)
最大化の一階条件はp − t = d + eXである。課税前((14)式)と比べると、追加的に1単位販売する ことから得られる売り上げの増分がt分だけ減少するので、同じ市場価格に対して課税後は供給量が 減少する。また逆供給関数がp= d + eX + tとなることから、生産者への従量税によって、逆供給 曲線は上方にシフトすることが分かる。
(ii)財の取引価格に対してτ の従価税
(消費者)例えばτ = 0.05である場合、これは価格の5%分、つまり0.05p分価格に上乗せされるこ とを意味している。つまり消費者が直面する価格は(1 + 0.05)pである。これよりτの従価税が課さ れる場合、消費者が直面する価格は(1 + τ )pである。この時効用最大化問題は以下のように書ける。
maxX,m
(
aX −2bX2 )
+ m s.t. (1 + τ )pX + m ≤ I
最大化の一階条件は(1 + τ )p = a − bXである。課税前((13)式)と比べると、追加的に1単位購入 するためにかかる費用の増分がτ p分だけ増加しているので、同じ市場価格に対して課税後は需要量 が減少する。また需要関数がp =
1
1+τ(a − bX)となることから、消費者への従価税によって、逆需
要曲線は下方にシフトすると同時に、傾きがより緩やかになることが分かる。
(生産者)生産者は(1 − τ)pという価格に直面することになる。よって利潤最大化問題は以下のよ うに書ける。
maxX (1 − τ)pX −(dX+e 2X
2)
最大化の一階条件は(1 − τ)p = d + eXである。課税前((14)式)と比べると、追加的に1単位販売 することから得られる売り上げの増分がτ p分だけ減少するので、同じ市場価格に対して課税後は供 給量が減少する。また逆供給曲線はp=
1
1−τ(d + eX)となることから、生産者への従量税によって、
逆供給曲線は上方にシフトすると同時に、傾きがより急になることが分かる。 (iii)固定額Tの一括税
(消費者)価格や消費量に関わらず税が徴収されるので、消費者が直面する価格はpのままである。 Tの一括税がある場合の効用最大化問題は以下のように書ける。
maxX,m
(
aX −2bX2 )
+ m s.t. pX + m + T ≤ I
1.1(1)と同様に解くと、一階条件はp = a − bX であり、課税前((13)式)と同じである。ここから 逆需要曲線にも変化がないことが分かる。
(生産者)消費者と同様、生産者も直面する価格はpのままである。利潤最大化問題は以下のように 書ける。
maxX pX −
(
dX+ e 2X
2)
− T
1.1(2)と同様に解くと、一階条件はp = d + eXであり、課税前((14)式)と同じである。ここから 逆供給曲線にも変化がないことが分かる。
最後に、従量税・従価税が課された場合の逆需要曲線(D)・逆供給曲線(S)の変化を図示しておく。
0
D S p
X t
t S
0
D 0
図 4:
(i)従量税0 p
X D
D 0 S S
0
e
1
e
b
b
1+
図 5:
(ii)従価税2.3 従量税と従量補助金
(1)均衡価格:200、均衡取引量:50
(2)消費者余剰:2500、生産者余剰:3750、総余剰:6250
0 p
X 300
200
50 CS
PS
50
p=3X+50
p=300 2X
図 6: 政府の介入がない場合
(3) 1単位あたり30の従量税が消費者に課された場合、消費者の直面する価格はp+ 30となり、
逆需要曲線が下方に30だけシフト、つまりp= 270 − 2Xとなる12)。一方で生産者が直面する価格 はpであり、逆供給関数はp= 3X + 50と変わりはない。以上より均衡価格・取引量を導出し、そ れぞれが直面する価格を計算すると、結果は以下のようになる。
均衡価格:182、均衡取引量:44、消費者価格:212、生産者価格:182
(4) 1単位あたり30の従量税が生産者に課された場合、生産者の直面する価格はp − 30となり、逆
供給曲線が上方に30だけシフト、つまりp= 3X + 80となる13)。一方で消費者が直面する価格はp であり、逆需要関数はp= 300 − 2Xと変わりはない。以上より均衡価格・取引量を導出し、それぞ れが直面する価格を計算すると、結果は以下のようになる。
均衡価格:212、均衡取引量:44、消費者価格:212、生産者価格:182
(5) (3)(4)から分かることは、税金の負担者によって変わるのは市場価格のみであり、均衡取引量・消
費者価格・生産者価格は同じであるという点である。また、税負担者に関わらず取引量と直面する価 格が同じであるということは、消費者余剰・生産者余剰も負担者によらず同じであることが分かる。 このことについて、図を用いてみてみよう。
税の負担者に関わらず消費者の直面する価格は212であり、その下での取引量は44であるから、 消費者余剰は図4の横線の領域(CS)であると分かる。また生産者の直面する価格は182であり、そ
12)2.2(i)を 参 照 。 13)2.2(i)
を 参 照 。
0
X 300
CS
PS
50
p=3X+50
p=300 2X
44 182
212
GS
DWL
図 7: 従量税がある場合
の下での取引量は44であるから、生産者余剰は図4の縦線の領域(PS)であると分かる。
さらにグレーの領域は、税収を表しており、政府余剰(GS)と呼ばれる。さて、ここで総余剰は、 消費者・生産者・政府のそれぞれの余剰を足し合わせたものであるが、それらの総和が課税前(図3 の総余剰(CS+PS))に比べて、小豆色の領域分だけ減少していることが分かる。この余剰の損失 分を死荷重と呼び、従量税は総余剰を減少させることが見て取れる。このように、従量税は非効率性 を生み出す(総余剰を減少させる)ことが分かる14)。
(6) 1単位あたり30の補助金が消費者に与えられた場合、消費者の直面する価格はp − 30となり、
逆需要曲線が上方に30だけシフト、つまりp= 330 − 2Xとなる。一方で生産者が直面する価格は pであり、逆供給関数はp= 3X + 50と変わりはない。以上より均衡価格・取引量を導出し、それぞ れが直面する価格を計算すると、結果は以下のようになる。
均衡価格:218、均衡取引量:56、消費者価格:188、生産者価格:218
(7) 1単位あたり30の補助金が生産者に与えられた場合、生産者の直面する価格はp+ 30となり、
逆供給曲線が下方に30だけシフト、つまりp= 3X + 20となる。一方で消費者が直面する価格はp であり、逆需要関数はp= 300 − 2Xと変わりはない。以上より均衡価格・取引量を導出し、それぞ
14)
この 結 果 は 従 量 税 に よ る も の だ が 、従 価 税・一 括 税 に つ い て はど う だ ろ う か 。今 す ぐ 自 分 で 分 析 し て み て ほ し い 。
れが直面する価格を計算すると、結果は以下のようになる。
均衡価格:188、均衡取引量:56、消費者価格:188、生産者価格:218
(8) (6)(7)から分かることは、従量税の場合同様、補助金の受給者によって変わるのは市場価格のみ
であり、均衡取引量・消費者価格・生産者価格は同じであるという点である。また消費者余剰・生産 者余剰も受給者によらず同じである。このことについて、図を用いてみてみよう。
0 p
X 300
50
p=3X+50
p=300 2X
56 188
218
Subsidy
PS CS
DWL
図 8: 補助金がある場合
補助金の受給者によらず、消費者の直面する価格は188であり、取引量は56だから、消費者余剰 は図5の緑の領域であると分かる。また生産者の直面する価格は218であり、取引量は56だから、 生産者余剰は図5の青の領域であると分かる。
さらに斜線の領域は、政府の補助金(Subsidy)に対する支出額である。さて、この時、総余剰を どう評価できるだろうか。総余剰はCS+ P S − (Subsidy)であるが、この値は課税前の総余剰に比 べて赤線の領域だけ減少していることが分かる。つまり、補助金も従量税同様、非効率性を生み出す ことが見て取れる。
3 応用
3.1 需要の価格弾力性と死荷重
以下の2つの図を見てみよう。傾きの異なる2つの需要曲線を描き、それぞれ消費者にtの従量税 を課した場合を分析している。
0
D S
X t
D 0 DWL
X
p
X 0 p
0
t
図 9: 傾きが緩やかな場合
0
D S
X t
D 0 DWL
X
X 00 p
p 00
t
図 10: 傾きが急な場合
当初どちらも均衡価格p
∗
、均衡取引量X
∗
で均衡していたとする。そしてそれぞれに対してtの従 量税が課された際、需要曲線の傾きが緩やかな場合の方が死荷重が大きくなっていることが分かる。 しかし、ここでの議論はあくまで直感的なものであって、需要曲線の傾きだけで以て議論すること は適切でない。なぜなら、需要関数の傾きは、価格や数量の単位に依存して変化しうるからである。 そこで、価格や数量の単位に依存しない、「需要の価格弾力性」という概念が力を発揮する。ここで 需要の価格弾力性を思い出そう。今財の需要の価格弾力性をeと書くとすると、その定義は
e= −
∆x x × 100
∆p
p × 100 = − p x
∆x
∆p
であった。ただし、xは財の取引量、pはその財の価格である。これは「1%価格が変化した時に、需 要が何%変化するか」を示している。この定義から、我々が持つ「需要曲線の傾きが緩やかである
(急である)」という直感的なイメージは、「需要の価格弾力性が大きい(小さい)」という厳密な表 現に書き換えられることになる。これによって、「需要の価格弾力性が小さい(大きい)財は、課税 がもたらす死荷重も小さい(大きい)」ということが分かるだろう。
では、この性質を用いて、死荷重を小さく抑えるという観点から、実際にどのような財に課税すべき かを考えてみよう。問題文の表1を見たときに、比較的価格弾力性が低いのは、食料・電気水道・医 療などであると分かる。つまり、このような財に課税することが、死荷重を小さく抑えるという観点 から望ましい。そしてもう少し踏み込むと、これらの財は「生活必需品」であるという点である。他 の財を見てみると、衣服や家具、娯楽などといったある種のぜいたく品は、価格弾力性が高いことが 分かる。これらから漠然と見えてくるのは、「生活必需品に対して高い課税をするべき」だというこ とであう。
✓補足 ✏ 価格弾力性が小さい財により高い税率を設定すべきだとする考えは、ラムゼイルール(Ram-
sey Rule)と呼ばれ、最適課税理論の文脈で厳密に議論されてきた。上で見たように、このルー
ル は 効 率 性 の 観 点 で の み 語 ら れ る が 、実 は 公 平 性 の 観 点 か ら は 望 ま し く な い ル ー ル に なって い る。それは、必需品に高い課税をかけることは、その財の性質上、比較的所得の低い家計により 大きな負担を強いることになるからである。
一方で、ぜいたく品に大きな課税をすれば、公平性の問題は解消されそうだが、今度はより大 きな死荷重を生み出すことになり、非効率性が増してしまう。このような効率性と公平性の間に 存在するジレンマは「公平性と効率性のトレードオフ」と呼ばれ、このことは現実の様々なデー タからも確認されている。
✒ ✑
3.2 参入と規制
(1)まずn企業参入している場合の市場の供給関数を求める。各企業は同一の限界費用曲線C
′(x) = 20 + xを持ち、かつ全ての企業はプライステイカ―なので、企業i(= 1, 2, · · · , n)の供給量をXiと
書くとすると、任意の企業iはp= 20 + Xiを満たす水準で供給する。これより、市場全体の供給量 をXとすると、任意のp >20に対して、X =
∑n
i=1Xi = n(p − 20)が得られる15)。よって市場の 逆供給関数は
p= 1
nX+ 20 (15)
である。今逆需要関数は220−3Xだから、これらを連立することで 均衡価格:220 −
600
3+n1、均衡取引量: 200 3+n1
が得られる。これより、消費者余剰・生産者余剰・総余剰は以下のように計算できる。
CS = (
220 − (
220 −3 +6001 n
))
· ( 200
3 +n1 )
·1
2 = 60000 · ( 1
3 +n1 )2
P S = ((
220 − 3 +6001 n
)
− 20 )
· ( 200
3 +n1 )
·12 = 20000 ·
( 1
√n(3 +n1) )2
T S = CS + P S = 20000 · ( 1
3 +n1 )
(2) nの増加に伴って、CS、P S、T Sがどう変化するかを調べる。まずCSとT Sについてはn の増加に伴ってそれぞれの分母が減少していくことが明らかである。分母が減少していけば、値自体 は大きくなるので、CSとT Sはnに関して増加である。
次にP Sであるが、分母にある
√n(3 +n1)がnに関してどう変化するかが分かれば十分である。
15)
ここ で は す べ て の 企 業 が 同 じ 技 術 を 持って い る こ と に よ り、市場の 供 給 曲 線 が 単 純 な 形 で 表 現 さ れ る 。
今D(n) =
√n(
3 +n1)とおく。Dをnについて微分すると16)、 dD
dn = 1 2n
−1
2 ·
( 3 +1
n )
−√nn12 = √1n (3
2 − 1 2n
)
>0
となる。従って、P Sの分母はnの増加に伴って厳密に増加することになるから、P Sはnに関して減少である。
(3)今固定費用がないので、企業の利潤はP Sは全企業の総利潤と一致する。従って1企業分の利潤 をπと書くと
π = 1
nP S = 20000 ·
( 1 n(3 +1n)
)2
= 20000 · ( 1
3n + 1 )2
>0, ∀n
と分かる。つまり、どんなnを取ってきても利潤πは正であるから、この市場には企業が無限に参入し続ける ことになる。
では、企業が無限に参入してくるのに伴って、逆供給曲線はどのように変化するだろうか。(15)式 を見てみると、nが増えるに従って傾きが次第に緩やかになり、やがてp= 20になることが分かる。 従って 逆供給曲線は水平な形状へと近づいていく。
(4) (2)の結果から、
規制は生産者余剰の観点から望ましいが、消費者余剰、総余剰の観点からは非効率性を生み出す ことが分かる。まず生産者にとって規制がメリットになることをみてみよう。今n企業が参入してお り、価格p
∗
で市場が均衡しているとしよう。この時、新たに企業が参入してくると、同じ価格の下で より多くの供給がなされることになり(逆供給曲線の傾きが緩やかになり)、当初の均衡価格p
∗
の 下で超過供給が発生する。これによって市場の価格が下落する。新規企業が利潤を得ようと次々と市 場に参入していくのだが、この参入が以上のプロセスによって市場価格の下落を導き、結局は彼らの 余剰をなくしてしまうのである。以上を考慮すると、参入が規制されることによって、新規参入によ る価格の下落が防がれるわけだから、既存の企業は利潤を守ることができるのである。
一方消費者にとっては、新規参入が行われ価格が下落することが望ましい。さらに企業の参入に伴 い、財の生産における社会的な限界費用が低下するため、総余剰の観点からも参入は望ましい。従っ て、消費者余剰・総余剰の観点からは参入規制がないほうが望ましいと言える。
以上 が こ の 規 制の モ デ ル 分 析か ら 言 え る こと で あ る 。一 方で 現 実 に 目 を向 け て み る と、参 入 規 制 の 緩和 が 価 格 の 下落 を 引 き 起 こし 、各 企 業 の 営業 収 入 を 減 少さ せ る こ と で、不 当 な コ ス ト削 減 や 安 全対策を怠るなどといった問題も起きている(2000年貸切バス事業への参入規制緩和など)。そう いった点を考慮した時、必ずしも自由な参入を許すことが社会にとって常に良いかどうかは、別の経 済モデルによる分析や実証研究も踏まえた上で、慎重に議論する必要がある。
16)n
は 正 の 整数 で あ る が 、こ こ で は 構 わ ず 微 分 し て よ い 。
4 付録: KKT 条件と効用最大化問題
今f :Rn→R、gi :Rn →R、i= 1, · · · , mとし、f、giは一階連続微分可能であるとする。この 時以下の不等式制約下での最適化問題を考える。
(N LP) max
x∈Rn f(x) s.t. gi(x) ≥ 0, ∀i (16) 以上の問題に対し、KKT条件は以下のものである。
KKT条件(Karush-Kuhn-Tucker condition)
✓ ✏
ラグランジュ関数Lを以下のように定義する。 L = f(x) +
m
∑
j=1
λjgj(x)
(x, λ1, · · · , λm)に対する以下の条件をKKT条件という。
∂L
∂xk = 0, ∀k = 1, · · · , n (17)
λigi(x) = 0, ∀i = 1, · · · , m (18) gi(x) ≥ 0 ∀i = 1, · · · , m (19)
λi ≥ 0 ∀i = 1, · · · , m (20)
✒ ✑
問題(NLP)の極所最適解をx
∗
とする。一般に、ある制約に関する仮定(制約想定(constraint qual- ification))17)がx∗において満たされている場合、ある(λ1· · · , λm)が存在して、(x
∗; λ1· · · , λm) はKKT条件を満たす。これは、カラシュ・クーン・タッカーの定理と呼ばれている。これは、極所 解が制約想定を満たしておれば、KKT条件を満たすxを見つけることで、問題(NLP)の解の候補 を見つけることができることを意味する。
またf が凹関数、giが全てのiについて凸関数である場合、(x
∗; λ1· · · , λm)がKKT条件を満た せば、x
∗
は(NLP)の解である。カラシュ・クーン・タッカーの定理は、(NLP)の解であるための 必要条件を与えるものであるが、この条件は(NLP)の解であるための十分条件である。以下では この性質を用いて、1.1の効用最大化問題を解いてみよう。
(P) max
X,m v(X) + m s.t. I − pX − m ≥ 0 X ≥ 0, m ≥ 0
証明はしないが、目的関数は凹関数であり、制約関数は凸関数であるから、KKT条件を満たす(X, m) を見つけてこれれば、それが最適解である。
では初めにラグランジュ関数Lを以下のように定義する。
L = v(X) + m + λ(I − pX − m) + µ1X+ µ2m (21)
17)
ここ で は 詳 し く 述 べ な い が 、O.L. mangasarian (1879) Nonlinear Programingな ど が 詳 し い 。
ただし、λ、µ1、µ2はラグランジュ乗数である。この時KKT条件は以下の4つである。
∂L
∂X = 0 ⇔ v
′(X) − λp + µ1 = 0 (22)
∂L
∂m = 0 ⇔ 1 − λ + µ2= 0 (23)
λ(I − pX − m) = 0, µ1X= 0, µ2m= 0 (24) I − pX − m ≥ 0, X ≥ 0, m ≥ 0; λ ≥ 0, µ1≥ 0, µ2≥ 0 (25)
まず(23)(25)式から、λ= 1 + µ2>0と分かるから、(24)式より
pX+ m = I (26)
である。以下、µ1とµ2に関する場合分けを行う。 (i) : µ1 = 0 かつ µ2 = 0の場合
まず(23)式よりλ= 1であり、(22)式よりv
′(X) = pが得られる。v′′<0よりv′は単調減少関数 であるから、逆関数(v
′)−1
が存在して、X = (v
′)−1(p)
を得る。さらに(26)よりm= I − p(v
′)−1(p)
となる。
さて今(X, m; λ, µ1, µ2) = ((v′)−1(p), I − p(v′)−1(p); 1, 0, 0) · · · (∗)を得たが、条件(22)から(25) のうち、まだX ≥ 0とm ≥ 0を満たしているかは分からない。結論からいうと、これらを満たす ケースと満たさないケースの両方が存在する。よって次に、これらを満たすような条件を特定する18)。
X ≥ 0とm ≥ 0がどちらも成立しておればよいので、上で得たXとmを代入して整理すると
I
p ≥ (v′)−1(p) ≥ 0となる。ここでv′は厳密減少関数だから、それぞれをv
′
に代入するとv
′(0) ≥ p ≥ v′(Ip)を得る。以上は同値変形であるから、v
′(0) ≥ p ≥ v′(pI)を満たせばX ≥ 0とm ≥ 0が成 立することになり、(∗)は条件(22)から(25)全て満たすことになる。よって、v
′(0) ≥ p ≥ v′(Ip)の 時、X= (v
′)−1(p)、m= I − p(v′)−1(p)が最適解となる。 (ii) : µ1>0かつ µ2= 0の場合
まずµ1 >0と(24)より、X = 0を得る。つまり(26)からm= Iである。またµ2= 0と(23)式 より、λ= 1となる。この時X= 0と(22)よりµ1= p − v
′(0)を得る。以上より(X, m; λ, µ1, µ2) = (0, I; 1, p − v′(0), 0) · · · (∗∗)となることが分かる。
さて(∗∗)と、条件(22)から(25)を照らし合わせると、ここでは最後にµ1≥ 0を保証する条件を 求める必要があり、その条件はp ≥ v
′(0)
だと分かる。よってp ≥ v
′(0)
の時、X = 0、m= Iが最 適解となる。
(iii) : µ1= 0 かつ µ2>0の場合
まずµ2>0と(24)より、m= 0を得る。つまり(26)からX= I
pである。またµ1= 0、X = I
p及び
(22)式より、λ= v′(ppI)となる。ここでv′>0よりλ >0と分かる。さらに(23)より、µ2= v′(pIp)− 1
18)
別の 場 合 分 け で も 同 様 に(22)か ら(25)をす べ て 満 た す よ う な 条 件 を 特 定 す る こ と に な る 。
を得る。以上より(X, m; λ, µ1, µ2) = (Ip,0;v′(ppI),0,v′(ppI)− 1) · · · (∗ ∗ ∗)となることが分かる。 さて(∗ ∗ ∗)と、条件(22)から(25)を照らし合わせると、ここでは最後にµ2≥ 0を保証する条件 を求める必要があり、その条件はv
′(Ip) ≥ pだと分かる。よってv′(pI) ≥ pの時、X= Ip、m= 0が 最適解となる。
以上をまとめると、消費者の財の需要関数Xd(p, I)は以下のようになる。
Xd(p, I) =
I
p if v
′(Ip) ≥ p > 0 (v′)−1(p) if v′(0) > p > v′(Ip) 0 if p ≥ v
′(0)
(27)