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PDF 測度論的確率論 2015 Kengo Kato

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(1)

Kolmogorovの拡張定理が成り立たない例

作成:加藤賢悟1 協力:今泉允聡 

Wegner (1973)に従い,Kolmogorovの拡張定理が成り立たない例を構成する. 外測度と内測度. LをRのLebesgue可測集合の全体とする.1次元Lebesgue測度λに 対して,外測度λと内測度λを,任意のA ⊂ Rに対して,

λ(A) = inf{λ(B) : B ∈ L, A ⊂ B}, λ(A) = sup{λ(C) : C ∈ L, C ⊂ A} と定義する.E ∈ Lをλ(E) < ∞とし,A ⊂ Eとすると,

λ(E \ A) = λ(E) − λ(A) である.

Vitali集合. x, y ∈ [0, 1)に対して,

x ∼ y ⇔ x − y ∈ Q

と定義すると,∼は同値関係をなす.この同値関係に関する各同値類から代表元を集め た集合をV とおく(厳密には選択公理を使っている).集合V はVitali集合 と呼ばれる.

Vitali集合はLebesgue非可測である.まずこの事実を証明する.

Theorem 1. V /∈ L.

各r ∈ Rに対して,写像Tr: [0, 1) → [0, 1)を

Tr(x) = x + r − ⌊x + r⌋

と定義する(⌊x⌋はx以下の最大の整数である).つまり,Tr(x)はx + rの小数部分である. Lemma 1. E ∈ L, E ⊂ [0, 1)なら,任意のr ∈ [0, 1)に対して,λ(Tr(E)) = λ(E).

Proof. 次の事実は認める(証明は難しくない):A ∈ Lなら,任意の x ∈ Rに対して, x+A := {x+y : y ∈ A} ∈ Lであり,λ(x+A) = λ(A). A = E ∩[0, 1−r), B = E ∩[1−r, 1) とおいて,A = r + A, B = r − 1 + Bとおくと,A, B ∈ Lより,A, B ∈ Lであり, λ(A) = λ(A), λ(B) = λ(B). 一方,Tr(E) = A∪ B (排反な和)であるから,Tr(E) ∈ L であって,

λ(E) = λ(A) + λ(B) = λ(A) + λ(B) = λ(Tr(E)) を得る.

1東京大学大学院経済学研究科.〒113-0033東京都文京区本郷7-3-1. E-mail: [email protected].

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(2)

Proof of Theorem 1. 仮にV がLebesgue可測なら,Tr(V ), r ∈ Q ∩ [0, 1)はLebesgue可測 集合であって,λ(Tr(V )) = λ(V ) = α (say). V の定義より,Tr(V ), r ∈ Q ∩ [0, 1)は排反で あり,∪r∈Q∩[0,1)Tr(V ) = [0, 1). ゆえに,α > 0なら,λ([0, 1)) =r∈Q∩[0,1)λ(Tr(V )) = ∞ であり,α = 0なら,λ([0, 1)) =r∈Q∩[0,1)λ(Tr(V )) = 0となり,いずれにしても矛盾が 生じる.従って,V /∈ Lである.

写像Trの性質はあとでも使うので,次の補題にまとめておく. Lemma 2. 各r ∈ Rに対して,Trは全単射であり,Tr1 = Tr. Proof. x, y ∈ [0, 1)に対して,Tr(x) = Tr(y)なら,

x − y

| {z }

(−1,1)

= ⌊x + r⌋ − ⌊y + r⌋

| {z }

整数

であるから,x = yである.ゆえにTrは単射であり,Tr([0, 1)) = [0, 1)より,全射でもあ る.次に,x ∈ [0, 1), y = Tr(x)とすると,

Tr(y) = y + r − ⌊y + r⌋ = x − ⌊x − r⌋ − ⌊x − ⌊x − r⌋⌋. 場合分けにより,最右辺は= xであることがわかる.

Kolmogorovの拡張定理が成立しない例の構成. S = [0, 1) \ V として,S上のσ-fieldと して,

S = {B ∩ S : B ∈ B([0, 1))}

を考える(B([0, 1))は[0, 1)に含まれるRのBorel subsetsの全体である).SNをSの可算 直積とし,SNをSNのcylinder σ-fieldとする.さらに,各n ∈ Nに対して,(Sn, Sn)上 のp.m. µnを次のように構成する.

Q= {r1, r2, . . . }

とおいて,Jn = {r1, . . . , rn}, TJn(x) = (Tr1(x), . . . , Trn(x)) と定義する.写像TJn は B([0, 1))/Bn可測である(BnRnのBorel σ-fieldである).次の命題を示す.

Lemma 3. λ(TJn1(Sn)) = 1.

証明に,Lebesgue測度に関する次の有名な事実を用いる.

Lemma 4. E ∈ L, λ(E) > 0とする.このとき,あるϵ > 0が存在して,E − E := {x − y : x ∈ E, y ∈ E} ⊃ (−ϵ, ϵ)となる.

Proof. Dudley (2002, Proposition 3.4.3)を参照せよ.

2

(3)

Proof of Lemma 3. λ([0, 1) \ TJn1(Sn)) = 0を示せばよい.TJn1(Sn) = ∩ni=1Tri1(S) =

ni=1Tri1([0, 1) \ V ) = ∩ni=1([0, 1) \ Tri1(V ))より,

[0, 1) \ TJn1(Sn) = ∪ni=1Tri1(V ) = ∪ni=1Tri(V )

であるから,λ(∪ni=1Tri(V )) = 0を示せばよい.そのためには,任意のLebesgue可測集 合E ⊂ ∪ni=1Tri(V )に対して,λ(E) = 0を示せばよいが,Lemma 4より,E − Eが開区 間を含まないことを示せば十分である.

F = ∪ni=1Tri(V )とおくと,F − F の各要素は,

xi− ri− (xj − rj) − ⌊xi− ri⌋ + ⌊xj − rj⌋ (xi, xj ∈ V ; i, j = 1, . . . , n)

の形をしている.これが有理数になるのは,xi− xj ∈ Qのときのみであるが,V の定義 より,xi= xjである.従って,

(F − F ) ∩ Q = {−ri+ rj − ⌊x − ri⌋ + ⌊x − rj⌋ : x ∈ V, i, j = 1, . . . , n} であるが,右辺は有限集合である.従って,E − E (⊂ F − F )は開区間を含みえない.

ここで,

Sn= {B ∩ S : B ∈ Bn, B ⊂ [0, 1)n}

と表せることに注意して(証明省略),写像µn: Sn→ [0, 1]を,A = B ∩ Sn, B ∈ Bn, B ⊂ [0, 1)nに対して,

µn(A) = λ(TJn1(B)) と定義する.

Proposition 1. µnは(Sn, Sn)上のwell-definedなp.m.である.

Proof. µnがwell-definedなことのみ示す.B1∩ Sn= B2∩ Sn, Bi ∈ Bn, Bi⊂ [0, 1)n (i = 1, 2)のとき,λ(TJn1(B1)) = λ(TJn1(B2))を示せばよい.このとき,

B1△B2:= (B1\ B2) ∪ (B2\ B1) ⊂ [0, 1)n\ Sn

であり,一方,λ(TJn1([0, 1)n\ Sn)) = λ([0, 1) \ TJn1(Sn)) = 0であって,B1△B2 ∈ Bnより,TJn1(B1△B2) ∈ B([0, 1))であるから,λ(TJn1(B1△B2)) = 0である.従って, λ(TJn1(B1)) = λ(TJn1(B2))である.

以上で,目標である次の定理を述べる準備が整った.

Theorem 2(Wegner (1973)). {µn: n ∈ N}はKolmogorovの整合性条件をみたすp.m.’s の族であるが,

µ(A × S × S × · · · ) = µn(A), ∀A ∈ Sn, ∀n ∈ N (*) をみたす(SN, SN)上のp.m. µは存在しない.

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(4)

Proof. {µn: n ∈ N}が整合性条件をみたすのは明らか.(*)をみたす(SN, SN)上のp.m. µ が仮に存在するとして,矛盾を導く.ここで,Dn= TJn([0, 1))∩Snとおくと,TJn([0, 1)) ∈ Bnであるから,Dn ∈ Snである.そこで,An = Dn × S × S × · · · ⊂ SNとおくと, An∈ SN, An⊃ An+1 (∀n ∈ N)である.

n=1An= ∅

を示す.実際,仮に∩n=1An̸= ∅ならば,あるx ∈ [0, 1)が存在して,任意のnに対して, TJn(x) ∈ Snが成り立つ.これは,任意のr ∈ Qに対して,Tr(x) ∈ S, i.e., x ∈ Tr1(S) が成り立つことを意味するが,Tr1 = Trであったから,結局,

x ∈ ∩r∈QTr(S) を意味する.しかし,

r∈QTr(S) = ∩r∈QTr([0, 1) \ V ) = [0, 1) \ ∪r∈QTr(V ) = ∅ であるから,矛盾が生じる.従って,An↓ ∅である.

いま,µを(*)をみたす(SN, SN)上のp.m.とすると,

µ(An) = µn(Dn) = λ(TJn1(TJn([0, 1))) = λ([0, 1)) = 1

となるが,µがp.m.であることと,An↓ ∅より,これは起こりえない.従って,(*)をみ たす(SN, SN)上のp.m.は存在しない.

参考文献

Dudley, R.M. (2002). Real Analysis and Probability. Cambridge University Press. Wegner, H. (1973). On consistency of probability measures. Z. Warsch. verw. Gebiete.

27 335-338.

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参照

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