原子力と核融合
核分裂反応・核融合反応
核分裂により
より小さな A の原子核に 核融合により
より大きな A の原子核に
裳華房「原子核物理入門」より
核分裂
核が2個かそれ以上の分裂片に分かれる現象 何個かの中性子やガンマ線の放出を伴う1938年 ハーン、シュトラスマンにより発見
ウランに遅い中性子をぶつけ、バリウムの放射性が生成
自発分裂
核そのものが不安定
外部からの影響なしにおきる分裂
陽子数の増大によるクーロン斥力の増大が原因 自発分裂の確率 << アルファ崩壊の確率
自発分裂による寿命 238U 8×1015年
256Fm 2.63時間
誘起分裂
外部からのエネルギーの注入による起きる分裂 ex) 中性子の吸収による、原子核の励起
235 Uの中性子による核分裂
235
Un
236U 核分裂
分裂片の質量
熱中性子(~ 0.025 eV) ~90, ~140 非対称分裂 分裂片となる核は魔法数に近い核子数を持つ方が安定 A~120 あたりに魔法数に近い核子数の組がない
高エネルギー中性子 ~ 120 対称分裂に近づく 中性子のエネルギーを核変形に配分可能
真二つに分裂させる事も可能
裳華房「原子核物理入門」より
92
236
U
3894Sr
54140Xe2n
16 s
55
140
Cs
66 s 56140Ba
12.8 d57140La
40.2 h 58140Ce
2 m
39
94
Y
16.5 m 4094Zr
236 Uの典型的な非対称分裂
一次過程: 10-16 s 以下で起きる
余分な中性子が放出 即発中性子 安定な電荷分布へ遷移 即発ガンマ線 4He等の極く軽い核を放出
二次過程:
分裂片がβ崩壊により、安定核領域へ遷移 ガンマ崩壊や中性子放出を伴う場合もある
(遅延中性子) ベータ不安定核の寿命 0.1 s ~ 17年
核分裂によるエネルギー
236Uと分裂片核の核子一つあたりの結合エネルギーの差 ~ 0.9 MeV
→ 核分裂により 236 × 0.9 MeV ~ 212 MeV のエネルギーを放出
分裂片の運動エネルギー ~ 165 MeV
即発ガンマ線 ~ 7
即発中性子の運動エネルギー ~ 5
ベータ崩壊からのベータ線の運動エネルギー ~ 7 ベータ崩壊からのニュートリノの運動エネルギー ~ 10
二次ガンマ線 ~ 6
遅延中性子の運動エネルギー ~ 10
合計 ~ 210 MeV
ニュートリノ運動エネルギーは再利用が難しい → 236U一個の核分裂から 200 MeVが解放 ウラニウム核 1g あたりの放出エネルギーは
1
235 ×6×10
23
×200 MeV~0.5×10
30eV≃8×10
10J
1 eV=1.6×10−19 J
通常の化学反応によるエネルギー (3 ~ 4)×104 J/g
核分裂の機構: 液滴模型による理解
裳華房テキストシリーズ「原子核物理」より
z , 0= 1
z ∑
n=0∞
a
nz
nE
S= 1 2
5 a
22
a
SA
2/ 3核の変形 A → B を考慮にいれる a2
E
C= 1− 1
5 a
22
a
CZ
2A
−1/ 3変形によるエネルギー変化
E= 2
5 1−
a
C2 a
SZ
2A a
Sa
22
A
2/ 3 E=0 Z
2
A
cr=
2 a
Sa
C~50
E0
変形が加速x = Z
2
A /
Z
2A
cr核種
82
208
Pb
92 236
U
98 252
Cf
0.64 0.72 0.76
核分裂の機構:続き
B → C への変形 a4 の項が効く
ポテンシャル障壁を越えると、
C → D と変形がすすみ、核分裂が起きる
裳華房テキストシリーズ「原子核物理」より
核種 ポテンシャル障壁
235U 5.8 MeV 238U 6.3 MeV 239Pu 4.8 MeV
質量公式から
235U→236U (偶-偶核) 6.5 MeV
→ 遅い中性子で核分裂が起きる
238U→239U (偶-奇核) 4.8 MeV
→ 1.5 MeV 以上の中性子で核分裂が起きる
※ 235Uと238Uの自然界での存在比はそれぞれ0.7%、99.3%
連鎖反応と原子炉
235U→236U によって平均2.47個の中性子も同時に放出される。
この中性子がまわりの235Uに捕獲 → 核崩壊 → 中性子放出 → .... 連鎖反応
92
236U 3894Sr54140Xe2n
1回の核分裂あたりに生成された中性子のうち
平均1個が次の核分裂に使われる 235Uが存在する限り反応が続く 原子炉
平均1個以上が使われる 原子爆弾
裳華房テキストシリーズ「原子核物理」より
連鎖反応の制御
裳華房テキストシリーズ「原子核物理」より 裳華房「原子核物理学入門」より・ 核分裂で放出される中性子の平均エネルギー ~1 MeV
・ 238Uの核分裂閾値 ~1MeV
→ 連鎖反応は困難
・ 1 eV 以下の中性子に対して、235Uは反応しやすい
→ 中性子の減速が必要 1 MeV → 1 eV
・ 10 eV~1 MeVに大きな 238U(n,γ)反応
→ 235Uの連鎖反応のために抑制
原子炉の制御
中性子の冷却 1 MeV → 1 eV 中性子の冷却 1 MeV → 1 eV
熱中性子に対し(n,γ)反応断面積が大きい物質 カドミウム、ボロン等
炉心の制御
二次過程中に生成される中性子が 主な役割を果たす
核融合反応
軽い核の融合 → エネルギーが放出
クーロン障壁により、核反応が起きるのに十分な近距離に近づけない
星の内部: 熱エネルギーが十分高く、クーロン障壁を越え、核融合反応が起きている
dt
24Hen 17.6 MeV
dd
23Hen 3.27 MeV
dd tp 4.03 MeV
核融合に適した反応 Q値が大きい Zが小さい
2核子系の反応は反応断面積が小さい
(弱い相互作用による反応のみ)
断面積も大きいが、三重水素の供給に問題
核融合反応
dd
23Hen 3.27 MeV
dd tp 4.03 MeV
クーロン障壁の高さ
1
4
0e
2r ~
ℏ c
r ~
1
137
197 MeV fm
2 fm ~0.7 MeV
トンネル効果も考慮にいれ
1個の重陽子が ~ 0.1 MeV のエネルギーを持つ 温度 T = 10
9 K
熱核反応の断面積
E
exp −2 Z
1Z
2
v
E
相対速度の分布