地域安全学会論文集
被災者の生活再建支援を目的にした
被災者のセグメント化と行政対応戦略の検討手法の提案
-東日本大震災で被災した名取市の事例-
Proposal of Disaster Survivors Segmentation and
Strategizing of Local Government Response for Life Recovery Supporting
- A Case of Natori City Affected by the 2011 Great East Japan Earthquake Disaster -
佐藤 翔輔
1,立木 茂雄
2,松川 杏寧
3Shosuke SATO
1, Shigeo TATSUKI
2and Anna MATSUKAWA
31東北大学 災害科学国際研究所
International Research Institute of Disaster Science, Tohoku University
2同志社大学 社会学部
Department of Sociology, Doshisha University
3同志社大学 研究開発推進機構
Organization for Research Initiatives and Development, Doshisha University
This paper aims to improve life recovery support system of disaster survivor based on target marketing method which is survivor segmentation. Multiple correspondence analysis and hierarchical cluster analysis was applied to the questionnaire survey data by Natori city on disaster survivors. The results were the followings: 1) Survivor’s attributes and current situation arrange intersection of decision make of housing rebuilding and, life recovery score and physical-mental stress. 2) And, the categories clustered life difficulty, re-housing difficulty, elder husband and elder wife, outside of the prefecture, outside of the city and other. 3) Survivors Segments consisted of need of heavy support, support of housing rebuilding, light follow-up and cooperation with the government of outside the city.
Keywords: life recovery support, social marketing, survivors segmentation, questionnaire survey, multivariable analysis
1.はじめに
2011年に発生した東日本大震災の特徴の一つは,大規 模な犠牲者が発生したと当時に,住まいや生活が失われ, 「生活再建」を余儀なくされた被災者が大量に発生し,
かつ広域的に分散して居住している1)ことが挙げられる
であろう.全壊した住家は,岩手県・宮城県・福島県を
合わせて122,539棟であり2),この数の数倍もの人が,家
を失った人数ということになる.民間賃貸住宅の借り上 げ仮設住宅(以下,借り上げ仮設住宅)の戸数は,供給 された全応急仮設住宅の半数以上であり,これまでの災 害で主流であったプレハブ建設仮設住宅(プレハブ仮設
住宅)の戸数を大きく上回った3).複数世帯が集合的に
居住しているプレハブ仮設住宅とは異なり,借り上げ仮 設住宅は一般的な民間賃貸住宅であるために,当該被災 市町村の内外に広域的に分散している.
被災者対応を行う行政の視点に立てば,この大量で広 域的に分散している被災者の支援が容易でないことは想 像に難くない.東日本大震災の被災地では, 被災者の生
活・健康面のケア,引きこもりや孤独死の防止,被災者
の生活再建支援を目的にした訪問活動が行われている4)
5).しかし,前述のように,借り上げ仮設住宅の居住世
帯が多く存在するために,この訪問活動にヒト・カネ・ 時間といった莫大な資源を要している現状がある. このような背景があってか,仙台市では,被災世帯に 対して質問紙による郵送調査および訪問面接調査によっ て現況の把握を行い,「日常生活」における支援の必要 性の有無と「住まいの再建」に対する支援の必要性の有 無の2軸で評価を行い,2×2の層に被災世帯を分類し,両 面で支援が必要な約360世帯(全体の約4%)の被災者を
重点的に支援する方策を講じた(2014年3月時点)5).こ
れは,コトラーによるソーシャル・マーケティング理論
におけるターゲット・マーケティングの考え方6)に対応
市が行った,2軸の視点から支援を重点化する層を同定し たプロセスは,まさに被災者群をセグメント化して,セ グメントを選択した行為そのものである.ターゲット・ マーケティングは,ニーズを満たしてないセグメントを 見つけたり,セグメントに対応した個別のサービスを提 供できる点で合理的な方法であると言える.被災者を適 切にセグメント化することができれば,任意のセグメン トに対して重点的・個別的,言い換えれば被災者支援と いう行政対応を戦略化できることが期待できる. 実際の被災者対応では,行政においてヒト・カネ等の 資源が潤沢でないことは容易に想像される.被災者群を セグメント化することで,生活再建を行うにあたって, 各セグメントが,重点的に支援しなければならないセグ メント(被災者)なのか,そうでないセグメント(被災 者)なのか,とった優先順位を検討することが可能にな る.対応の優先順位を決めることができれば,限られた 資源を集中的に投下することで,被災者支援の対応を戦 略的に行うことができると考える.
本研究では,被災者支援という目的を達成するために, 一つの被災自治体が対応する被災者の群をセグメント化 する方法に関する検討を行うことを目的とする.既往研 究においては,阪神・淡路大震災の被災者を対象にして, 生活復興状況に関する社会調査の結果を用いて類型化
(セグメント化)を行った研究がある7).これは「震災
の体験が転機となったか」と「震災の体験の意味付けが 肯定的なのか,否定的なのか」によって被災者群を3類型 に分けることができるというものである.この分析は, 被災者と,被災者それぞれによる震災の体験の捉え方と の関係を中心にした議論であるため,生活再建支援を目 的にして被災者のセグメント化を試みるという本論の立 ち位置とは異なる.前述したように,仙台市は「日常の 生活」「住まいの再建」の支援の必要性の有無という2つ の視点でセグメント化を行っているが,このような評価 方法に対する妥当性の検証も必要になろう.大量の被災 者群について,複数の視点を考慮して,より客観的なセ グメント化を実践し,そのセグメントに応じてどんな支 援やサービスがあり得るのかを考察し,被災者をセグメ ント化することの有用性の有無を明らかにすることを本 論の目的する.
2.調査およびデータ
本研究では,東日本大震災で被災した名取市において 実施された,被災者を対象にした質問紙による「現況調 査」のデータを用いることにする.同調査の概要は次の とおりである;
1) 調査名:平成 27年名取市被災者現況調査(以下,
現況調査).
2) 調査目的:被災者の生活再建を総合的かつ効率的に 実施するための基礎資料とする.
3) 調査主体:名取市(調査協力:著者らからなる研究 プロジェクトチーム).
4) 調査方法:郵送自記入式.
5) 調査対象(居住形態):応急仮設住宅(プレハブ建 設仮設住宅,県借り上げ民間賃貸住宅)に居住する 全世帯.被災時に名取市に居住していた世帯(調査 時点で,市外居住世帯を含む)と被災時に市外に居 住していた世帯で調査時点において名取市内に居住 している世帯.
6) 調査対象(年齢):調査時点で満 18歳以上(平成
9年1月1日以前生まれ).実際には,一部18歳未
満での回答者がいた.
7) 調査期間:2015年1月13日~3月4日.1月26日
にお礼状兼催促ハガキを送付し,2月 5日までに未
返送の世帯には,2月19日に調査票を再発送した.
8) 調査票:世帯全体の状況をうかがう世帯票(両面 1
枚,2ページ)と,満18歳以上の世帯構成員個々人
に状況をうかがう個人票(両面 2枚,4ページ)の
2種類からなる.世帯票は1票で,個人票は市で把
握している最大の世帯構成員人数よりも若干多い 6
枚を同封した.
9) 世帯票における調査内容:世帯票の表面は,市で把 握している世帯情報を出力したものである.誤って いる箇所があれば,朱書き等で訂正をしてもらうか たちをとった.項目は,家計(収入,支出,預貯金, ローン・負債)の増減,主な世帯の収入,家計収支 の満足度,被災時における地震保険加入の有無,家 族中に体・心・未就労などの心配な構成員の有無. 10) 個人票における調査内容:住まいの再建方針,住ま いを再建する上で気がかりなこと,住まいを再建す る上で重要視すること,市からの広報の到達状況, 近所づきあいの状況,現在住んでいるまちの様子, 市民と行政や市民同士の関係に対する考え方,心身 ストレス,震災発生前後の職業,支援員による訪問 有無の必要性,仮設集会所やサロンの利用状況.以 降の内容は,阪神・淡路大震災における兵庫県の生 活復興調査で採用された生活復興感に関する項目で ある:生活充実度,生活満足度,震災体験に対する
評価,重要他者との出会いの有無,1年後の生活の
見通し.
11) 回収状況:市が把握している被災者(今回の調査対
象者)1,533世帯,3,513名に発送し,世帯で72.2%,
個人で56.1%の回収率となっている.
本調査はサンプリングにもとづく標本調査ではなく全 数調査である.
生活復興感 8)は,生活満足度,生活充充実度,1年後
の暮らしの見通しからなる.生活満足度として,毎日の くらし,ご自分の健康,今の人間関係,今の家計の状態,
今の家庭生活,ご自分の仕事の計 6項目について 5件法
ライカート尺度(1.大変不満である~5.大変満足して いる)で尋ねている.また,生活充実感については,忙 しく活動的な生活を送ること,自分のしていることに生 きがいを感じること,まわりの人びととうまくつきあっ ていくこと,日常生活を楽しくおくること,自分の将来 は明るいと感じること,元気ではつらつとしていること,
家で過ごす時間(逆項目),仕事の量,といった 8項目
について 5件法(1.かなり減った~5.かなり増えた)
で問い合わせる.最後に 1年後の見通しについては,今
よりも生活がよくなっていると思うかどうか,について
5件法ライカート尺度(1.かなり良くなる~5.かなり
悪くなる)で質問している.尺度の得点としては,それ ぞれの下位尺度ごとの合計得点を用いた.
心身ストレスは8),最近1ヶ月についてこころのスト
レスに関する 6項目(気持ちが落ち着かない,寂しい気
持ちになる,気分が沈む,次々よくないことを考える, 集中できない,何をするのもおっくうだ),からだのス
トレスに関する 3 項目(動悸がする,息切れがする,胸
がしめつけられるような痛みを利用した.回答は「1.ま
である.それぞれのストレスごとに第 1主成分得点をス
トレスの指標とした.
3.被災者のセグメント化
現況調査のデータを用いて,被災者をセグメント化す るためには,被災者(ケース)と,属性や回答内容(変 数カテゴリ)との対応関係を見なければ,各セグメント にどんな被災者が存在しており,どんな支援をすべきか を検討することはできない.そこで,現況調査のデータ におけるすべての変数を対象にして,多重コレスポンデ ンス分析によって解析し,被災者(ケース)と,属性や 回答内容(変数カテゴリ)との布置関係を分析・考察す ることにした.また,被災者のセグメント化においては, 階層クラスター分析(以下,クラスター分析) を用いる ことにした.現況調査データのうち,連続量として算出
される生活復興感得点と心身ストレスは離散化する(5
等分)ことで,多重コレスポンデンス分析の実行を可能
にしている.各 5 段階で,数値が高い方から++,+,
±,-,--とラベリングしている(例:生活復興感+ +)
具体的な分析手続きは,次のとおりである:
1) 本稿では.個人票のデータセットを用いて被災者の
次元
2
カテゴ
リ
ウェイト
次元
1
カテゴリウェイト
クラスター1
クラスター2
クラスター3
クラスター4
クラスター5
クラスター6
クラスター7
住まいの再建方針 クラスターの重心位置
住まいの再建方針: 決まっている
住まいの再建方針: 決まっていない
生活復興感:高 心身ストレス:低
生活復興感:低 心身ストレス:高
1
2
3
4
5
6
7
図1 多重コレスポンデンス分析によるカテゴリの布置関係
クラスター1 クラスター2 クラスター3 クラスター4 クラスター5 クラスター6 クラスター7 住まいの再建方針 クラスターの重心位置 住まいの再建方針:
決まっている
住まいの再建方針: 決まっていない 1
2 3
4
5
6
7
生活復興感--
生活復興感++
心身ストレス--
心身ストレス++
生活復興感:低 心身ストレス:高
生活復興感:高 心身ストレス:低
次元
2
カテゴ
リ
ウェイ
ト
次元1カテゴリウェイト
図2 多重コレスポンデンス分析によるカテゴリの布置関係
セグメント化を行う.データセットの整備に当たり, 世帯票のデータを,当該の世帯構成員の世帯票デー タに結合する.世帯票データと個人票データは,1 対多の関係にある.
2) 現況調査のデータにおけるすべての変数カテゴリ (以下,カテゴリ)を対象にして,多重コレスポン デンス分析を実行する.
3) 多重コレスポンデンス分析によってケース,カテゴ
リともに算出される次元1と次元 2のカテゴリウェ
イト,オブジェクトスコアを対象に,それぞれクラ スター分析を実行する.被災者に対する支援を念頭 におけば,被災者という個人を単位にした支援,被
災世帯という世帯を単位にした支援の 2種類で捉え
る必要がある.そこで,ケースのクラスター分析に おいては,2)で得られたオブジェクトスコアをその まま個人を単位として行うものと,2)で得られた結 果を世帯単位で平均値(世帯ごとのオブジェクトス
コアの平均値)を求めて行うものの 2種類で解析す
る.前者を個人クラスター,後者を世帯クラスター と呼ぶことにする.
4) カテゴリのクラスター分析の結果について,クラス ターに含まれる複数のカテゴリを考察し,その特徴 について論ずる.
5) 3)で得られているケースのクラスター(個人クラス
ター及び世帯クラスター)と,カテゴリのクラスタ ーの対応関係を考察し,各ケースクラスターの特徴 を論ずる.
4)5)の結果を踏まえて,適切と思われる支援戦略の 案を提起する.
4.結果・考察
(1) カテゴリに関する分析
前章に挙げた 1)~3)の分析手続きによって得られた
結果のうち,カテゴリのカテゴリウェイトの布置関係を
散布図にしたものと,同散布図の概要を述べるためにプ
ロットのラベルを除いた図も併せて示す(図1,図2).
また,図 1では表示されるカテゴリのラベルが多数であ
るために,表示するラベルを半分ずつに分けたものを図
3に示した.図 1と図 2では,クラスター分析によって
分類されたカテゴリ群をクラスター1~7に分けて示して
いる.図 1・図 2の全体的な傾向は,次のように読み取
ることができる.図 1・図 2 では,「住まいの再建方
針:決まっている」が第2象限(図 1・図 2左上)に,
それと対をなす方向に「住まいの再建方針:決まってい
ない」が第4象限(図 1・図 2右下)に位置している.
また,これら 2つのカテゴリと直行するように,「生活
復興感++」「心身ストレス-」が第1象限(図1・図2
右上)に,「生活復興感--」「心身ストレス++」が
第3象限(図 1・図 2左下)に位置している.これらの
カテゴリを手がかりにすれば,調査時点で住まいの再建 方針が決まっているか・否かと,生活復興感や心身スト
レスといった生活に関する主観的評価尺度の 2軸空間の
中に各カテゴリが布置していると読み解くことができる. このような結果は,仙台市が被災者を「住まいの再建」 に対する支援の必要性の有無と「日常生活」における支
援の必要性の有無の 2軸で分類している状態(前述)5)
に符合している.
次に,各カテゴリの布置関係を考察するために,クラ
スターごとに該当したカテゴリの一覧にしたものを表 1
に示す.下記に各クラスターの特徴を述べる.
1) クラスター1「生活困難」:現在の居住形態がプレハ ブ仮設住宅,性別としては女性,夫婦に加えて若干 名が家族となっている世帯もしくは独居(一人暮ら
し),年齢が65~74歳(前期高齢者)という属性カ
テゴリからなるクラスターである.収入は震災前に 比べて減少し,主な世帯収入が年金である.さらに は,家族の中に,体もしくは心の面で心配な人がい る.一方で,住まいの再建方針が決まっており,市 営や県営住宅,防災集団移転促進事業や土地区画整 理事業によって市内のどこかに住むことを予定して
クラスター1 クラスター2 クラスター3 クラスター4 クラスター5 クラスター6 クラスター7 クラスターの重心位置
1
7
生活復興感++
心身ストレス--
心身ストレス++
生活復興感:高 心身ストレス:低
次元
2
カ
テ
ゴ
リ
ウ
ェ
イ
ト
次元1カテゴリウェイト
クラスター1 クラスター2 クラスター3 クラスター4 クラスター5 クラスター6 クラスター7 クラスターの重心位置
1
7
生活復興感++
心身ストレス--
心身ストレス++
生活復興感:高 心身ストレス:低
次元
2
カ
テ
ゴ
リ
ウ
ェ
イ
ト
次元1カテゴリウェイト
図3 多重コレスポンデンス分析によるカテゴリの布置関係
いる.住まいの再建においては,新しい環境での近 所づきあいや,近くの知人や友人が多いことを重要
視している.市が発行している広報紙(広報紙「な とり」)や復興だより(「名取復興だより」),市
1 2 3 4 5 6 7
生活困難 再建困難 老老世帯 その他 県外 市外 内陸
プレハブ/借り上げ プレハブ 借り上げ
性別 女性 男性
夫婦+一人親 夫婦 夫婦(老老) 夫婦+両親 夫婦+両親+子ども 夫婦+親+他親族
夫婦+子ども+他親族 夫婦+子ども 夫婦+他親族 夫婦+親+子ども+他親族
独居 男親+子ども 自分+非親族
女親+子ども 兄弟姉妹 世帯構成その他
年齢 65~74歳 19~65歳 75歳以上 18歳以下
収入 収入- 収入± 収入+
支出+ 支出-
支出±
預貯金- 預貯金+
預貯金±
ローン・負債+ ローン・負債-
ローン・負債±
主収入:年金 主収入:給与
主収入:その他
家計・暮らせない 家計・満足
家計・なんとか 家計・不明
地震保険 地震保険なし 地震保険あり
家族心配:体 家族心配:未就労
家族心配:心 家族心配:その他
住まいの再建方針が決って
いるか 住まい再建方針・決まっている 住まい再建方針・決まっていない
再建方針・防災集団移転促進事業 再建方針・その他(市内)
再建方針・土地区画整理事業
希望居住:市営・県営住宅 希望居住:新築・購入 希望居住:民間アパート・貸家 希望居住:災害公営住宅に入居
希望居住:自宅を修繕 希望居住:決まっていない
希望居住:親族の家に同居
再建後の近所づきあい ローン組めるか心配 国・自治や位の支援必要 再建きがかりなし 二重ローンになること 災害公営住宅の申込方法が不明
利便性低くなること 再建資金が工面できるか 原発・放射能の影響 物件の探し方が分からない 災害公営住宅の入居時期が不明
再建資金が不明なこと 適当な物件が見つからない災害公営住宅に関する情報が少ない
家賃が不明なこと 集合住宅になること
子どもが新しい馴染めるか 希望の住まい入れるか
どうしたらいいか不明・不安 現地に戻りたくない 障がい・体の心配な家族がいること
知人・友人が多いこと 生活の便がよいこと 子どもの学校が変わらないこと仕事に都合がよいこと 希望する災害公営住宅に入居できること
現地または近いこと場所であること 環境が良いこと
戸建てであること 治安がよいこと
先祖墓近い重要 現在の住まいに近いこと
家賃が安いこと 災害に対して安全なこと 建物が上部であること
広報紙読む 広報紙読まない
広報紙知らない
復興だより読む 復興だより読まない
復興だより知らない
災害FM聞いてる 災害FM聞かない
災害FM知らない
ブログ読む ブログ読まない
ブログ知らない
震災前世間話人・多 震災前世間話人なし
震災前世間話人・少 震災前世間話人・中
震災後世間話人・中 震災後世間話人なし 震災後世間話人・多
震災後世間話人・少
震災前趣味人・少 震災前趣味人なし 震災前趣味人・多
震災前趣味人・中
震災後趣味人・少 震災後趣味人なし 震災後趣味人・多
震災後趣味人・中
まちのつきあい・中 まちのつきあい・ゼロ
まちのつきあい・多 まちのつきあい・少
ゴミ出し・共和主義 ゴミ出し・行政依存
ゴミ出し・自由主義
まちづくり・共和主義 まちづくり・行政依存
まちづくり・自由主義
自治会活動:行政依存 自治会活動:自由主義
自治会活動:共和主義
健康・悪い 健康・良い
健康・ふつう
震災前・自営業 震災前・パート・アルバイト 震災前・農漁業 震災前・団体職員 震災前・会社員(事務)
震災前・無職(退職者も) 震災前・その他職業 震災前・公務員 震災前・会社員(労務)
震災前・学生
震災後・無職(退職者も) 震災後・自営業 震災後・農漁業 震災後・団体職員 震災後・会社員(事務)
震災後・パート・アルバイト 震災後・公務員 震災後・会社員(労務)
震災後・その他職業 震災後・学生
支援員必要性・あり(定期) 支援員必要性・あり(連絡時のみ)
支援員必要性・なし
仮設集会所・過去1回 仮設集会所・なし 仮設集会所・ほぼ毎日
仮設集会所・週1回
仮設集会所・月1回
サロン・週1回 サロン・なし サロン・ほぼ毎日
サロン・過去1回 サロン・月1回
被災・閖上 被災・相互台 被災・下増田 被災・県外 被災・県内市外 被災・館腰
被災・増田 被災・高館 被災・手倉田
被災・増田西 被災・不明 被災・名取が丘
全壊・全焼 大規模半壊
半壊・半焼
生活復興感-- 生活復興感- 生活復興感++
生活復興感±
生活復興感+
心身ストレス± 心身ストレス--
心身ストレス+ 心身ストレス-
心身ストレス++
カテゴリクラスター
訪問支援員の必要性 住まいの再建方針
り災判定
生活復興感
心身ストレス 主収入
主観的な健康状態
震災前の主たる職業
震災後の主たる職業
仮設集会所の利用頻度
サロンの利用頻度
被災時(震災前)に居住して いた地区
世間話をする人の数
趣味・サークルをともにする 人の数
まちの様子
ゴミ出しに対する考え方
まちぢくりに関する考え方
自治会活動に対する考え方 家計の満足度
希望する居住形態 家族中に心配な人の存在
住まい再建の際のきがかり
行政からの情報の入手状況 住まい再建において重要な こと
世帯構成
ローン・負債 預貯金 支出
の災害 FM からの情報を入手している.震災前後に おいて世間話や趣味をともにする人も存在している. 市民と行政の関係に対する考え方としては,ゴミ出 し,まちづくり,自治会活動では共和主義(市民に よる協働の積極的な関与を重視する主義)が該当し ている.震災発生前は自営業もしくは無職で,震災 発生後の現在は無職が該当している.市が行ってお る支援員の訪問は定期での訪問を希望している.仮 設集会所や街なかにある被災者向けの交流スペース
「サロン」9)は,以前に 1回利用している.被災時
の地区としては閖上地区が該当している.中でも特 徴的なのは,住まいの再建方針が決まっているにも 関わらず,生活復興感が低く,心身ストレスが高い ことから,このカテゴリクラスターを「生活困難」 とした.
2) クラスター2「再建困難」:現在の居住形態が借り上 げ仮設住宅,性別としては男性,子どもが家族の中
にいる.年齢は,19~65歳で収入は震災前より増加
している.震災が発生したときは地震保険に入って いなかったり,家族の中に未就学者がいる.主観的 な健康は良好で,生活復興感が高く,心身ストレス も少ないにも関わらず,住まいの再建方針が決まっ ていないのが大きな特徴であることから「再建困 難」とした.住まいの再建方針が決まっていない背 景なのか,再建において気がかりなこととして,ロ ーンを組めるか心配,再建資金が工面できるか,再 建資金が不明なこと,加えて子どもの新しい環境に 移行することへの心配であること,震災発生前後の 職業がパート・アルバイトという非正規職であるこ とが影響していることが推察される.また,このク ラスターは,世間話をする人の人数や趣味をともに する人数が少なく,仮設集会所やサロンの利用もな いのが特徴的である.支援員の訪問は,連絡時のみ 必要か,まったく必要ないかが該当している. 3) クラスター3「老老世帯」:家族構成として,高齢者
同士の夫婦,かつ年齢が75歳以上(後期高齢者)と
なっていることから「老老世帯」とした.仮設集会 所やサロンをほぼ毎日利用するというカテゴリが該 当しているのが特徴的である.
4) クラスター4「その他」:家族構成に夫婦と両親から なる世帯.夫婦と他親族からなる世帯,震災発生後 は農漁業であるカテゴリが該当しているが,この他 の特徴がなかったため「その他」としている. 5) クラスター5「県外」:夫婦と両親と子どもからなる
家族で,収入と預貯金が増加し,地震保険にも入っ ており,現在の家計への満足度も高い.再建への気 がかりもなく,新築を購入したり.自宅を修繕する ことで再建を行うとしている.生活復興感も高い. 一方で,ここで特筆すべきは,被災時に県外にいた, 言い換えれば福島県に居住していたというカテゴリ が含まれる点にある.再建に気がかりなことして, 原発や放射能の影響が挙げられている.
6) クラスター6「市外」:被災時に市外に居住していた というカテゴリが該当している.希望する再建形態 は,民間アパートや貸家が該当している.再建に気 がかりなこととして,二重ローンになることのほか, 物件の探し方が分からない,適当な物件が見つから ないが該当している.市外からの居住者のせいか, 名取市からの広報紙や復興だよりに目を通していな いという,情報面でのハンディキャップがあること
も特徴的である.
7) クラスター7「内陸」:被災時に,名取市内の館腰地 区,手倉田地区,名取が丘地区に居住していたとい うカテゴリが該当している.これらの地区は,内陸 にある非津波浸水域の地区であり,揺れによって被 害を受けた被災者である.希望する再建の形態は災 害公営住宅であるが,名取市における現行の災害公
営住宅整備計画 11)では,閖上地区と下増田地区に
整備される災害公営住宅は,それぞれの地区にもと もと居住していた被災市民が優先的な募集の対象と なっている.それ以外の市民は,入居に関する優先 順位が低くなっていることから,再建においてきが かりなこととして,災害公営住宅の申込方法が不明, 災害公営住宅の入居時期が不明,災害公営住宅に関 する情報が少ない,希望する災害公営住宅に入居で きるかなどが挙げられていることが想像される. 先行研究において,名取市を中心とする借り上げ仮設 住宅の居住世帯と,すでに再建済みで借り上げ仮設住宅 への居住を経験している世帯,加えて仙台市の生活再建 支援員を対象にしたたエスノグラフィー調査では,借り 上げ仮設住宅世帯が再建する上での課題として,適当な 住宅が見つからない(災害公営住宅に当選しない),身 体面・精神面での健康の問題,単身者(独居)であるこ と,男性であること,母子家庭であること,障がいをも った家族がいること,震災で失業したことが挙げられて
いる 10).これらの要素の多くは,カテゴリクラスター2
「再建困難」に該当するほか,カテゴリクラスター1「生 活困難」にも一部該当している.先行する質的調査の結 果が計量的にも確認された.
(2) ケースクラスターとカテゴリクラスターの対応関係 ここでは,次の前節で述べた被災者の属性や回答状況 を表したカテゴリクラスターが,被災者にどう対応する
のかを考察する.前章に挙げた 1)~3)の分析手続きに
おいて,多重コレスポンデンス分析で得られたオブジェ クトスコアを,カテゴリ(被災者の属性,回答)のスコ
ア,ケース(個人,世帯)のスコアの布置関係を図 4の
上段に示す.図4の下段には,上段における 3つの散布
図からクラスターの概形と重心位置のみを抽出し,カテ
ゴリクラスターと個人クラスターを重ねたもの(図 3下
段の左側)と,カテゴリクラスターと世帯クラスターを
重ねたもの(図 4 下段の右側)を示している.これによ
り,ケースクラスター(個人,世帯)に,どのカテゴリ クラスターが該当するのかを視覚化している.言い換え れば,ケースクラスター(個人,世帯)とカテゴリーク ラスターを重ねあわせることで,各ケースクラスターが, 重なったカテゴリークラスター(「生活困難」「再建困 難 」 「 老 老 世 帯 」 「 県 外 」 「 市 外 」 「 内 陸 」 「 そ の
他」)に対応しているかが分かる.図 3におけるケース
のクラスターは,冒頭で述べた被災者のセグメントのこ とを表す.
図 4 の結果を考察するために,ケースクラスターとカ
テゴリクラスターの重なりを整理した結果として表 2を
作成した.表 2中の「◯」印は,該当するケースクラス
ターとカテゴリクラスターが重なっていることを示して
いる.表 2 には,各ケースクラスターに該当した件数
(ぞれぞれ,被災者の人数,被災世帯数)も示している.
表2における対応関係から,次の 4つの層(セグメン
図4 ケースクラスターとカテゴリクラスターの対応(バイプロット)
次元
2
次元1
次元
2
次元1
A
1
2
3
4
5
6
7
次元
2
カテゴ
リ
ウェイ
ト
次元1カテゴリウェイト
1
2
3
4
5
6
7
次元
2
オブジェ
ク
ト
ス
コ
ア
次元1オブジェクトスコア
1
2
3
4
5
6
7
次元1オブジェクトスコア
次
元
2
オブジ
ェ
クトス
コ
ア
個人
クラスター
カテゴリ
クラスター
世帯
クラスター
個人クラスター
×
カテゴリ
クラスター
世帯クラスター
×
1) 住まい再建支援層:個人クラスター1・2,世帯クラ
スター5・7が該当する.カテゴリクラスター7「内
陸」と 2「再建困難」が重なった被災者セグメント
である.いずれのカテゴリクラスターも,前述のよ うに住まいの再建が中心的な課題であったことから, このセグメントを「住まい再建支援層」とした. 2) 要継続支援層:個人クラスター3,世帯クラスター3
が該当する.カテゴリクラスター1「生活困難」と 2
「再建困難」が重なった被災者セグメントである,
生活と住まいの再建という大きな 2つの点で課題を
抱えているセグメントであることから「要継続支援 層」とした.このセグメントは,仙台市において重
点的に支援が行われた類型 5)の性質に対応している.
なお,一部で5「県外」も重なっている.
3) 経過見守り層:個人クラスター4・7,世帯クラスタ
ー2・6 が該当する.カテゴリクラスター4「その
他」,3「老老世帯」が重なった被災者セグメントで
ある.前節においてこれら 2つのカテゴリクラスタ
ーには大きな問題が見られなかった.一方で後期高 齢者が中心であるため,「経過見守り層」とした. 4) 市外連携支援層:個人クラスター6・7,世帯クラス
ター1・4 が該当する.カテゴリクラスター5「県
外」と 6「市外」が重なった被災者セグメントであ
る.県外や県内市外から移住してきた被災者特有の 課題が見られ,市外の自治体との連携が必須である と考えたため「市外連携支援層」とした.
セグメント化の妥当性や有用性を検証するために,セ グメントごとに,心身ストレスの得点,生活復興感得点
(いずれも前掲),復興過程感得点 11)の比較を行った
(図 5~7).復興過程感得点は,「これから,どのよう
に暮らしていけば良いのか,そのめどが立っている.」 「『生きることには意味がある』と強く感じる.」「そ の後の人生を変える出会いがあった.」「家族や親族, 友人の大切さを見直した」を「1.まったくそう思わな
い」~「5.まったくそう思う」の5段階で問った結果を
用いて主成分分析を行った得点(主成分得点)である.
なお,以上の主成分分析の結果,成分は 1個だけ抽出さ
れた.なお,以上の指標をセグメントごとに比較すると 同時に,多重比較によって,セグメント間に有意な差が 見られるかどうかを併せて検定した.これにより,セグ メント化が適切に行われているかどうかを検討した. 心身ステレス得点は,経過見守り層が最も高い(図 5).これは,経過見守り層に該当するカテゴリークラス ターに「老老世帯」が含まれていることから,心身スト レス得点が高い傾向を示していると考えられる.住まい
再建支援層の心身ストレス得点も高い(図 5).心身ス
トレス得点をセグメントごとに多重比較を行った結果, 経過見守り層と住まい再建支援層の間には,有意な差は
見られず,それ以外の組み合わせでは 5%水準で有意な
差が見られた.生活復興感得点は,住まい再建支援層が
最も低い(図 6).住まい再建支援層は,主にもともと
内陸に居住していたというカテゴリークラスター「内 陸」が該当しており,沿岸の被災者に比べて,災害公営 住宅等の住まい再建に関する公的支援が不足しているこ とが,生活復興感が低くしていることが考えられる.生 活復興感得点をセグメントごとに多重比較を行った結果,
いずれの組み合わせでも 5%水準で有意な差が見られた.
復興過程感も,住まい再建支援層が最も低い(図 7).
住まい再建支援層のみ,それ以外の 3つのセグメントと
5%水準で有意な差が見られた.
以上 3 つの指標に着目した場合,4つのセグメントご
との各指標の値には概ね有意な差が見られ,意味のある 差をもってセグメントに分けられており,セグメント化 に一定の妥当性があることを確認した.また,心身スト レス,生活復興感,復興過程感とも住まい再建支援層で ネガティブな傾向を示していることが明らかになった. これは,客観的に支援をターゲティングすることが可能 になるという本手法の有用性を示している.
(3) 各被災者セグメントの量的内訳と行政対応の戦略案
前節で導出した 4つの被災者セグメントの内訳(人数,
世帯数)を図8に示す. 最も課題が深刻な要継続支援層
は個人単位で 27.6%,世帯単位で 23.2%存在している.
仙台市は,日常生活と住まいの再建ともに支援を要する
世帯の割合が 4%であるから,本調査対象者群の状況は
極めて厳しいものだということも分かる.個人と世帯で 市外連携層が最も多い点も特筆すべき特徴である.宮城 県の仙南に位置するベッドダウンである名取市は,県南 の亘理町や山元町,福島県からのアクセスが比較的容易 であったことから,このような層が多くなることは想像 に難くない.
以上の 4つのセグメントは,厳密に言えば被災者群を
相互排他的に区分するものではなく,あくまでオブジェ クトスコアによってクラスタリングされている.そのた め,例えは市外からの居住者であっても,要継続支援層 や住まい再建支援層に区分されるケースも存在する.そ こで,ここでまず市外連携支援層に着目し,対象者をも ともと名取市内に居住していた被災者か(市内),そう
でないか(市外)かに区分する.加えて,それ以外の 3
つのセグメントに一定の指標によって区分することを試 みる.まず,住まいの再建方針が決まっている・決まっ ていない(再建困難か否か)で区分する.住まいの再建 方針が決まっていれば,経過見守り層とする.住まいの 再建方針が決まっていない被災者について,生活困難か どうかを区分するために,ここでは生活復興感と心身ス トレスの得点を用いる.生活復興感が「--」「-」も しくは心身ストレスが「++」「+」である場合に生活
困難として区分する(OR 条件).このようなセグメン
ト化を行った結果を表3に示す.表 3に示したように,
市内・市外(市外連携支援層)によって,他のセグメン トを区分したのには次のような理由がある.市内出身の 被災者は,主に当該市の復興の進捗を勘案し,当該市の 制度や資源によって対応することが一般的である.一方, 市外からの被災者は,被災したことによって一時的に市 内に居住している人も少なくなく,元に居住していた市 町村の復興の進捗や制度によって求められる対応が大き く異なってくる.このことを念頭に置き,市内・市外の
内訳を数として把握するために表3を作成した.
もともと市内に居住していた被災者で最も多いのは,
経過見守り層の 52.5%と半数以上となり,市外から来た
被災者が最も多いのは,住まい再建支援層の 42.5%とい
低い対応層となる.最も優先的に対応すべきは,要継続 支援層である.要継続支援層において,住まいの再建に 関する課題に目処が立った段階で,住まい再建支援層の 対応にあたる.市外連携支援層について,当該の被災者 が元の居住市町村に戻る,もしくは名取市内に居住する かの意思確認を行った上で,元に居住していた市町村と 連携して対応すべき層である.このように,以上のよう な分析手続きを経ることで,総合的な視点で対応すべき 被災者の優先順位付けを行うことが可能になる. また,被災者の生活再建支援のメニューとして,就労 支援,こころのケア,コミュニティ形成支援,余暇活動
支援なども挙げられる.表 1を見ると,カテゴリークラ
スターの「生活困難」には無職であったり(震災後:無 職),震災を契機に収入が減少したり(収入-),心身 ストレスが高い(心身ストレス++,心身ストレス+) という特徴が,「再建困難」は家族の中に未就労者がい る(家族心配:未就労)という特徴があり,その対応メ ニューとして就労支援,こころのケアが考えられる.こ れらは上記セグメントで言えば,主に要継続支援層に該 当するものである.要継続支援層は,被災者支援を優先 的に行うべきセグメントであると同時に,就労支援やこ ころのケアが対応すべき施策であること分かる.要継続 支援層に該当しているカテゴリークラスターの「再建困 難」を見れば,周辺との交流が少ないためことから(表
1:まちのつきあいゼロ・少,仮設集会所(の利用):な
し,サロン(の利用):なし),コミュニティ形成支援 や余暇活動の支援が対応する.他方,同カテゴリカテゴ
リー内を見ると(表 1),「支援員(の訪問の)必要
性:なし」であったり,心身ストレスが高くない(心身 ストレス--,心身ストレス-)と層であることから, このセグメントにコミュニティ形成支援,余暇活動支援 は適していないとも考えられる.
以上のように被災者を一定の視点でセグメント化する
要継続 支援層
住まい再建 支援層
経過
見守り層 計
494 473 1,070 2,037 (24.3%) (23.2%) (52.5%) (100%)
63 65 25 153
(41,2%) (42.5%) (16.3%) (100%)
計 557 538 1,095 2,190
単位:人 市内
市外 (市外連携 支援層) 被災時の 居住地
表3 被災者セグメントの内訳(人数,市内・市外を基準にして)
図7 被災者セグメントの内訳(人数,世帯数,割合)
541
251
537
227
292
281
588
322
0% 20% 40% 60% 80% 100%
個人
世帯
要継続支援層 住まい再建支援層 経過見守り層 市外連携支援層
表2 ケースクラスターとカテゴリクラスターの対応関係の
整理にもとづく被災者のセグメント
1 2 3 4 5 6 7
生活 困難
再建 困難
老老
世帯 その他 県外 市外 内陸
1 ◯ 住まい再建支援層 234 12.0%
2 ◯ ◯ 住まい再建支援層 303 15.5%
3 ◯ ◯ ◯ 要継続支援層 541 27.6%
4 ◯ 経過見守り層 113 5.8%
5 ◯ 市外連携支援層 282 14.4%
6 ◯ ◯ 市外連携支援層 306 15.6%
7 ◯ 経過見守り層 179 9.1%
1 ◯ 市外連携支援層 216 20.0%
2 ◯ ◯ 経過見守り層 105 9.7%
3 ◯ ◯ 要継続支援層 251 23.2%
4 ◯ 市外連携支援層 106 9.8%
5 ◯ 住まい再建支援層 114 10.5%
6 ◯ 経過見守り層 176 16.3%
7 ◯ 住まい再建支援層 113 10.5%
世帯 クラスター
セグメント ケース数 比率
※個人計:1,958人,世帯計:1,081世帯
カテゴリクラスター
個人 クラスター
心身ストレス得点
図5 心身ストレス得点のセグメント群間比較(箱ひげ図)
図6 生活復興感得点のセグメント群間比較(箱ひげ図)
生
活
復
興感得点
復興過程感
得点
ことができれば,優先順位にもとづき,任意のセグメン トを選択し,個別的な支援を行う対応戦略を立案するこ とができる.
5.おわりに
本稿では,被災者支援にターゲット・マーケティング の視点を応用することを意図して.被災者のセグメント 化を行うためにソーシャル・マーケティングの視点から, 名取市が実施した応急仮設住宅に居住する被災者の現況 を把握するために行った質問紙調査データに対する多変 量解析を行い,その可能性や有用性について論じた.本 研究の結論は,次のようにまとめられる:
1) 名取市に関係する被災者は,住まいの再建方針が決 まっているか否か,生活復興感とおよび心身ストレ
スの状況という 2軸で俯瞰的・大局的に捉えること
ができた.
2) さらに,調査対象者のプロフィールは,「生活困 難」「再建困難」「老老世帯」「県外」「市外」 「内陸」「その他」にクラスタリングできる. 3) 調査対象となった被災者群は,「要継続支援層」
「住まい再建支援層」「経過見守り層」「市外連携
支援層」の 4つのセグメントで捉えることができた.
これらのセグメントは,心身ストレス,生活復興感, 復興過程感において意味のある差を示し,セグメン ト化が妥当に行われているとともに,重篤なセグメ ントをターゲティングするのに有用であった.この ように被災者をセグメントできることは,被災者支 援という行政対応の戦略化が可能であることを意味 している.
今後は,ここでの被災者のセグメント化の外的妥当性 を検証するともに,それにもとづく被災者対応の具体的 な戦略案の設計と実装を行うことで,個別対応にもとづ く被災者を支援する効果的なプログラムの提案を試みる. 特に,具体的な対応戦略の設計においては,域内に存在 する様々な対応資源を整理したり,新たに追加検討する 必要があることから,今後,詳細な現場調査を実施した い.
謝辞
本研究は,(独)科学技術振興機構 戦略的創造研究 推進事業(社会技術研究開発)「借り上げ仮設住宅被災 者の生活再建支援方策の体系化」(研究代表者:立木茂
雄),東北大学災害科学国際研究所・平成27年度特定プ
ロジェクト研究(連携研究)「被災地における『見える 復興』広報活動の要件とは何か-東日本大震災における 復興広報の「受け手」の評価を通して-」(研究代表
者:佐藤翔輔),平成27年度三菱財団社会福祉事業・研
究助成「非集合的に居住する被災者の『見守り』 の実 態とその効果」(研究代表者:佐藤翔輔)によるもので ある.
参考文献
1) 田中聡,重川希志依,佐藤翔輔,柄谷友香,河本尋子:
名取市における借り上げ仮設住宅に居住する被災者の再 建過程に関する一考察,地域安全学会東日本大震災特別 論文集,No. 2,pp. 17-18,2013.9.
2) 総務省統計局:東日本太平洋岸地域のデータ及び被災関
係データ~「社会・人口(統計でみる都道府県・市区町
村)」より~,http://www.stat.go.jp/info/shinsai/
3) 重川希志依,田中聡,河本尋子,佐藤翔輔:借上げ仮設
住宅施策の住宅再建に関する考察-恒久住宅への円滑な 移行を目的とした住環境の分析-,住総研研究論文集,
No. 41,pp. 145-156,2015.3.
4) 佐藤翔輔,立木茂雄,重川希志依,田中聡:名取市にお
ける「被災者見守り活動」の実態に関する一次的分析,
地域安全学会東日本大震災特別論文集,No. 3,pp. 33-34,
2014.10.
5) 仙台市:仙台市被災者生活再建推進プログラム,2014.3.
6) フィリップ・コトラー:非営利組織のマーケティング戦
略-自治体・大学・病院・公共機関のための新しい変化
対応パラダイム-,第一法規出版,694pp. , 1991.9.(井関
利明 監訳)
7) 矢守克也,林春男,立木茂雄,野田隆,木村玲欧,田村
圭子:阪神・淡路大震災からの生活復興 3類型モデルの
検証-2003 年生活復興調査報告-,地域安全学会論文集,
No. 5,pp. 45-52,2003.11.
8) 兵庫県:阪神・淡路大震災からの生活復興調査 2005-パ
ネル調査結果報告書-,2006.
9) 名 取 市 : 常 設 サ ロ ン お よ び 移 動 サ ロ ン の ご 案 内 ,
http://www.citu.natori.miyagi.jp/soshiki/shinsaifukko/seikatsusa iken/node_21104
10) 立木茂雄(代表):平成26年度研究開発実施報告書 研究
開発領域「コミュニティがつなぐ安全・安心な都市・地 域の創造」 研究開発プロジェクト「借り上げ仮設住宅被 災者の生活再建支援方策の体系化」,印刷中
11) 名取市:名取市災害公営住宅整備計画,2013.2.
12) 立木茂雄,林春男,矢守克也,野田隆,田村圭子,木村
玲欧:阪神・淡路大震災被災者の長期的な生活復興過程
のモデル化とその検証:2003年兵庫県復興調査データへ
の構造方程式モデリング(SEM)の適用,地域安全学会
論文集,No. 6,pp. 251-260,2004.11.