2015. 1.21.
経済時計 資料
加藤 賢悟
計量経済分析
線形回帰の復習:(yi, xi), i = 1, . . . , nは独立同一分布に従っているとし,
yi = α + βxi+ ui,
という関係が成り立っているとする.ただし,E[x2i] < ∞, E[ui] = 0, E[u2i] <
∞とする.ui = yi− (α + βxi)であるから,(ui, xi), i = 1, . . . , nもi.i.d.であ る.このとき,βの最小二乗推定量は
β =ˆ
∑
i(xi− ¯x)(yi− ¯y)
∑
i(xi− ¯x)2 で与えられる.ただし,
¯ x = 1
n
n
∑
i=1
xi, ¯y = 1 n
n
∑
i=1
yi
である.これをすこし変形していくと, β = β +ˆ n
−1∑
i(xi− ¯x)ui
n−1∑i(xi− ¯x)2 となる.ところで,
n−1∑
i
(xi− ¯x)ui= n−1∑
i
xiui− ¯x¯u, n−1∑
i
(xi− ¯x)2= n−1∑
i
x2i − (¯x)2.
大数の法則を用いると,n → ∞のとき,
n−1∑
i
xiui → E[xp iui] = Cov(xi, ui), n−1∑
i
x2i → E[xp 2i],
¯
x→ E[xp i], ¯u→ E[up i] = 0.
E[x2i] − (E[xi])2= Var(xi)に注意すると,n → ∞として, βˆ→ β +p Cov(xi, ui)
Var(xi) .
ただし,Var(xi) > 0は仮定する.つまり,次の定理を得る.
定理1. Var(xi) > 0のとき,βˆがβの一致推定量である(つまり,βˆ→ βp と なる)ための必要十分条件は,
Cov(xi, ui) = 0,
となることである.
一般に,線形回帰において誤差項と説明変数は無相関と仮定する.その様 な場合,最小二乗推定量は一致推定量となる(さらに適当な仮定の下で漸近 正規性をみたす).ただし,経済分析において,説明変数と誤差項が無相関で あると仮定できないないしは仮定することが妥当でないケースがしばしばあ る.ところで,説明変数xiで
Cov(xi, ui) = 0
を満たすものを外性変数,
Cov(xi, ui) ̸= 0
を満たすものを内生変数とよぶ.xiが内生変数の場合,βの最小二乗推定量 は漸近バイアス
Cov(xi, ui) Var(xi) をもつ.これを内生性バイアスとよぶ.
例:同時方程式ある財のi期における需要量,供給量をそれぞれqdi, qisと し,その価格をpiとおく.このとき,次のような簡単な需要・供給モデルを 考える:
qdi = α0+ α1pi+ ui, qsi = β0+ β1pi+ vi.
ただし,
E[ui] = 0, E[vi] = 0, Cov(ui, vi) = 0
を仮定する.いま,需要方程式にのみ興味があるとし,α0, α1の推定を考え
る.均衡状態では
qid= qis= qi
であることに注意すると,上記2式を連立すると, pi= β0− α0
α1− β1
+ vi− ui α1− β1
と書ける(分母はすべて̸= 0と仮定する).すると, Cov(pi, ui) = −E[u2i]/(α1− β1) ̸= 0.
とくに,説明変数と被説明変数とが同時に決定されるような場合は,説明 変数が内生的となる可能性を考慮すべきである(エンゲル関数の推定もその 一例).
例:除かれた変数の問題:いま,説明変数がxiのほかにziがあって, yi= α + βxi+ γzi+ ui, E[ui] = 0, Cov(xi, ui) = 0,
が成り立っているとする.ところで,何らかの理由でziが観測できない(例: 個人の能力)ので,xiのみ説明変数に用いて回帰してしまったとする.この とき,
yi = (α + γE[zi]) + βxi+ [γ(zi− E[zi]) + ui] = α′+ βxi+ vi, であって,
Cov(xi, vi) = γ Cov(xi, zi). 右辺はγ ̸= 0, Cov(xi, zi) ̸= 0なら̸= 0.
操作変数法:一般に説明変数が内生的であるような線形回帰モデルを考 える.
yi= α + βxi+ ui, E[ui] = 0, Cov(xi, ui) ̸= 0. このとき,
• 誤差項uiには相関してなくて,
• 内生変数xiには相関している 変数ziがあったとする.つまり,
Cov(zi, ui) = 0, Cov(zi, xi) ̸= 0.
このような変数ziを操作変数とよぶ.操作変数ziが与えあれらたとき,回帰 式の両辺とziの共分散を取ると,
Cov(zi, yi) = β Cov(zi, xi) + Cov(zi, ui) = β Cov(zi, xi)
すなわち,
β = Cov(zi, yi) Cov(zi, xi). さらに,
E[yi] = α + βE[xi], より,
α = E[yi] − βE[xi] = E[yi] − Cov(zi, yi) Cov(xi, zi)E[xi]. ここで注意すべきなのは,
Cov(zi, yi), Cov(zi, xi), E[yi], E[xi]
はすべてデータから一致推定量を構成することが可能で,α, βの表現におい て上記の量の代わりにその一致推定量を代入すれば,α, βの一致推定量が得 られる.
具体的には, β =ˆ
∑
i(zi− ¯z)(yi− ¯y)
∑
i(zi− ¯z)(xi− ¯x), ˆα = ¯y − ˆβ ¯x. これらを,α, βの操作変数推定量と呼ぶ.
以下,βˆの性質を調べる.簡単な計算から, β = β +ˆ n
−1∑
i(zi− ¯zi)ui
n−1∑i(zi− ¯z)(xi− ¯x).
データはすべてi.i.d.で,適当なモーメント条件を仮定する.すると, 分母→ Cov(zp i, xi).
一方,
n−1∑
i
(zi− ¯zi)ui= n−1∑
i
zicui− ¯zcu, z¯ ci = zi− E[zi].
中心極限定理を使うと,
√n¯zcu¯→ 0, np −1/2∑
i
zicui → N(0, E[(zd icui) 2]).
従って, √
n( ˆβ − β)→ N(0, E[(zd icui)
2]/(Cov(zi, xi))2). 簡単のために,分散均一性
E[u2i | zi] = σ2u を仮定すると,
√n( ˆβ − β)→ N(0, σd 2uVar(zi)/(Cov(zi, xi))2).
漸近分散の推定:上の漸近分布の結果をβの信頼区間の構成に使うには, 漸近分散を推定する必要がある.ここで,
Var(zi), Cov(zi, xi)
はそれぞれ
Var(zˆ i) = 1 n
n
∑
i=1
(zi− ¯z)2, Cov(zˆ i, xi) = 1 n
n
∑
i=1
(zi− ¯z)(xi− ¯x)
で推定できる.
Var(zˆ i)→ Var(zp i), Cov(zˆ i, xi)→ Cov(zp i, xi). また,σu2は
ˆ σ2u= 1
n
n
∑
i=1
ˆ
u2i, ˆui= yi− ˆα − ˆβxi= yi− ¯y − ˆβ(xi− ¯xi)
で推定できる.実際,
ˆ
u2i = (ui− ¯u − ( ˆβ − β)(xi− ¯xi))2
= u2i + ¯u2+ ( ˆβ − β)2(xi− ¯xi)2− 2(ui− ¯ui)¯u − 2ui( ˆβ − β)(xi− ¯xi),
だから,
ˆ σu2 = 1
n
n
∑
i=1
u2i + op(1)→ σp 2u.
従って,漸近分散を
V = σu2Var(zi)/(Cov(zi, xi))2
とおくと,V は
V = ˆˆ σ2uVar(zˆ i)/ ˆCov(zi, xi)
で推定できる.
Vˆ → V.p よって,
Vˆ−1/2√n( ˆβ − β)→ N(0, 1)d だから,q ∈ (0, 1)に対して,c1−q/2を
P (|N(0, 1)| ≤ c1−q/2) = 1 − q となるようにとると,区間
[ ˆβ − c1−q/2
√V /n, ˆˆ β + c
1−q/2
√V /n]ˆ
はβの近似的な1 − q信頼区間を与える.実際,
P (β ∈ [ ˆβ − c1−q/2
√V /n, ˆˆ β + c
1−q/2
√V /n])ˆ
= P (| ˆV−1/2√n( ˆβ − β)| ≤ c1−q/2) → 1 − q.