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Ocean Bottom Seismographic Observation at the Fukutoku-okanoba Submarine Volcano †

Azusa NISHIZAWA, Tomozo ONO**, Heiji SAKAMOTO**,  Yoshihiro MATSUMOTO**and Yasuo OTANI**

Abstract

An ocean bottom seismographic (OBS) investigation was carried out to obtain seismic character-istics around the Fukutoku-okanoba, one of the active submarine volcanoes on the southern end of the volcanic front of the Izu-Ogasawara (Bonin) arc. 

Crustal structure was estimated by seismic refraction survey using an airgun and OBS system.

First arrivals were hardly detected within an offset of 10 km in several record sections, although an airgun with large capacity of 4000 inch3 was used. This suggests that there are low wavespeed materials  and/or  seismic  wave  attenuated  zone  beneath  the  topographically  depressed  region around the Fukutoku-okanoba submarine volcano.

The seismicity in and around the Fukutoku-okanoba region was low during the observation peri-od  from  Jun.  28  to  Aug.  1,  1999.  Most  of  the  hypocenters  were  located  outside  of  the  OBS  array and  they  were  distributed  in  the  connected  region  between  the  Ogasawara  Ridge  and  Mariana Ridge.  Many  microearthquakes  with  monotonic  frequency  of  7-14  Hz,  so-called  long  period  event (LPE) popular in volcanic regions, were recorded at several OBSs but independently.

† Received 2001 December 26th. ; Accepted 2002 March 22th.

* 海洋研究室 Ocean Research Laboratory.

** 沿岸調査課 Coastal Surveys and Cartography Division.

1.はじめに

福徳岡ノ場は東京から南へ約 1,300 km,南硫黄 島の北北東約 5 km の位置にある,伊豆・小笠原 弧の火山フロント南端部上の海底火山であり

(Fig.  1),この付近の海底火山のうちでも特にた びたび活動を繰り返している.1904 年,1914 年 には海底火山活動が活発化し,一時期それぞれ新 火山島を形成した(小坂 1991,岩渕等 1994,土 出等 1999).その後 1950 年頃からは海底での火山 活動を示す変色海域がほぼ常時認められるように

なり,1986 年 1 月 18 日頃からその活動が再び活 発化し,同月 20 日には新島の生成が認められた.

しかしその後火山活動は急速に衰え,同年3月に は新島も海中に没した.以来変色水はたびたび確 認されている(Photo  1)が,活発な活動はなく 現在にいたっている.

一 方 , 太 平 洋 海 盆 北 部 に 展 開 さ れ て い る NOAA/PMEL(Pacific  Marine  Environmental Laboratory)のハイドロフォンアレイでは,火山 性微動が 1998 年 5 月以降 1999 年 12 月までに断続 的に延べ 30 日間観測されており,その震源が福

徳岡ノ場や北硫黄島近傍の南北 500 km,東西 300 kmの領域であると推定している(Smithsonian Institution,  1999)が,対応するような明瞭な火山 活動はこれまでに確認されていない.

1999 年夏に海上保安庁水路部では火山噴火予 知調査の一環として,この福徳岡ノ場近傍におけ る現在の海底火山活動を把握するために,海底地 形,反射法および屈折法地震波速度構造,地震活 動,地磁気,重力等のさまざまな調査を行った.

ここでは,主に海底地震計を用いた観測から得ら れた上部地殻の地震波速さ構造および地震活動の 結果について報告する.

2.調査

調査は,1999 年 6-7 月に海上保安庁水路部の測 量船「昭洋」による火山噴火予知調査の際に行わ れた.1998 年に就航した新測量船「昭洋」には 特殊搭載艇(愛称マンボウ II)が装備されており,

危険な火山付近ではあらかじめプログラムされた 命令に従って無人で海底地形,水温,採水などの 調査が可能である.福徳岡ノ場を中心とした約 2 km の領域内では,マンボウ II に搭載されている 音響測深機(エコートラック MkII 型:送信周波 数 24 kHz)による海底地形調査が行われた(小 野等,2002).この領域外においては「昭洋」に 搭 載 さ れ て い る マ ル チ ビ ー ム 音 響 測 深 機 SeaBeam2112 により精密水深および後方散乱強 度の測定を行った.マンボウ II と SeaBeam の水 深データから得られた海底地形図を Fig. 2 および Fig.  3 に SeaBeam から得られた海底音響画像を Fig. 4 に示す.

Fig. 1 Tectonic  map  around  the  Izu-Ogasawara (Bonin)  island  arc  system.  The  bathymetry  data are  obtained  mainly  by  SeaBeam  system  of Hydrographic  Department,  Japan.  Small  circles are  epicenters  with M ≧ 2  and  depth  ≦ 50 km by JMA during 1926 - 1998 July. Green squares are epicenters with M ≧ 5 during 1980-1990 (data from  National  Geophysical  Data  Center  (NOAA) earthquake  database).  Focal  mechanisms  of  the earthquakes  shallower  than  50  km  during  1977-2001  Mar.  are  by  the  Harvard  centroid-moment tensor (CMT) catalog. 

Photo. 1  Discolored water observed on Mar. 6, 2001.

調 査 に お い て , 9 台 の 海 底 地 震 計 ( O c e a n Bottom  Seismograph:OBS)を福徳岡ノ場を囲む 領域に平均約 5 km 間隔で設置し(Figs. 2 and 3), そのうち 8 台で記録を得ることができた(Table 1).観測期間は 1999 年 6 月 28 日より 8 月 1 日まで の 35 日間であった.

地殻の地震波速さ構造を求めるための屈折法地 震探査では,人工震源として容量 4,000 inch3(65 リットル)のエアガン(BOLT 社 800CT)を使用 した.測線は,測量船が運航できない福徳岡ノ場 の直上を避けてかつ多方向の構造断面図が得られ るように,Fig.3 に示す 5 測線を実施した.全測 線において,エアガンは 30 秒,およそ 70 m 間隔 でショットしたが,測線 5 の実施中にエアガンの エアホースが破断したため測線を終了せざるを得 なくなった.測線長は 20-35 km である.エアガ ンの信号は,OBS で記録すると同時に,船から 曳航したハイドロフォンストリーマーからも反射 法地震探査のデータとして収録した.

用いた OBS は音響切離装置付の自己浮上式で あり,センサーとして固有周期 4.5 Hz の上下動地

震計 1 成分および水平動直交 2 成分,さらにハイ ドロフォンを有する.それぞれのセンサーの出力 は DAT(ディジタルオーディオテープ)上に 16 bit,100 Hz で記録される(篠原等,1993).測線 と OBS の位置測定および時計の校正は,GPS

(Global Positioning System)を用いて行った.

3.解析および結果 3−1 上部地殻構造

屈折法地震探査各測線に対する反射地震断面図 を Fig. 5 に示す.測線に沿って海底地形は大きく 変化し,最上部堆積層の厚さは局所的に異なって いることがわかる.各 OBS で得られたレコード セクションを Fig. 6 に示す.後述するように,多 くの OBS の記録はノイズが非常に大きく,得ら れたレコードセクションは必ずしも質の高いもの ではない.人工震源として用いたエアガンの容量 も 4000  inch3とかなり大きいにもかかわらず,初 動の到達距離はかなり小さいことが特徴的であ る.例えば OBS  FK6 の Line3 に対するレコード セクションにおいて,FK6 の北北東側ではオフ Fig. 2 Three  dimensional  view  of  the  seafloor  topography.  Bathymetry  data  were  obtained  by  SeaBeam  2112

system on S/V Shoyo and by Echo Track MkII on unmanned, radio controlled vehicle, Manbo II.

Fig. 3 Location of the Fukutoku-okanoba submarine volcano (inside blue square), OBSs (asterisks) and refraction profiles (thick lines) on the shaded bathymetry.

Fig. 4 Sidescan  image  around  the  Fukutoku-okanoba  area.  The  blank  areas  of  the  Fukutoku-okanoba  and Minami-iwo-jima on the image are data gaps and areas producing strong backscatter are shown in dark tone.

The data were obtained by SeaBeam 2112 system on S/V Shoyo. 

セット約 7 km で初動が中断している.FK1,  3,  4 の直下,FK2 の東側および FK5,  9 の西側でも同 様な記録が得られており,カルデラ状の地形の内 側では全体的に地殻上部に低速度あるいは地震波 を減衰させる物質が存在することを示唆する.

各 OBS で得られたレコードセクションから 2 次 元波線追跡法(Zelt  and  Ellis,  1988)を用いて,

各測線に対して観測走時および振幅の情報を計算 値と比較することにより,P 波速さ構造モデルを 推定した(Figs.  7-11).最上部層の厚さは反射地 震探査の結果を参照して構造モデルに入力した.

その速さは正確に決めることはできないが,その 下に存在する P 波速さ 2-4 km/s 層からの屈折波の 走時を説明するためには,1.6-2.0 km/s の範囲で あると推定される.2-4 km/s 層は,速度勾配の 大きい上部と小さい下部の 2 つに分けられ,厚さ は全体で 1-2 km である.

Line1,3,および 4 において,初動が距離 10 km 以内で中断するレコードセクションを説明す るためには,海面より深さおよそ 1.5-2 km に低速 物質を置くことによって可能となる.低速度の値 は決めることができないが,Line1 の FK2 の東側 の距離 10-20 km で得られた信号が低速域内部を 伝播してきたと仮定すると,測線下に P 波速さ 2.4 km/s 程度の物質の存在が推定される.このモ デルから計算された理論記象を Fig.12 に示す.

同様に Line  3 では FK6 の北北東側の距離 10

km 以遠で得られた信号が低速域内部を伝播して きたと仮定すると,測線下に 3.2 km/s 程度の物 質の存在が推定される.Line4 では,現時点では 低速度の値を推定できていないが,海底面下およ そ 2 km に低速域をおくと,観測記象において初 動が見えなくなるオフセット値を説明することが できる.各測線について得られた P 波速さ構造モ デルを Fig. 13 にまとめて示した.

3−2 自然地震活動

観測期間中の地震活動の全容をつかむために,

OBS  FK4 の連続記録を作成した.Fig.  14 には上 下動地震計の出力例を,1 時間分の記録が 1 つの 直線上に並ぶように表示してある.およそ 26 分 毎に DAT レコーダ書き込み時の振動が記録され ている.7 月 4,5,7,8,9 日は構造探査のためのエ アガンの振動を記録している.

いくつかの OBS では,ほぼ 12 時間周期で記録 が飽和してしまう振動が記録されている. Fig.

15 には FK2 における 7 月 12 日と 13 日の 2 日間の 連続記録を示す.両日とも 3-7 時および 15-19 時

(GMT)の時間帯の記録が飽和している.振動の 原因が不明であるため,ここではこれをノイズと して分類する.このノイズが大きくなる時間帯と 海洋潮汐の変化との相関を調べた結果を Fig.  16 に示した.FK2 においてノイズが大きくなる時 刻は海面が上昇する時刻に対応している.一方,

Table 1

Fig. 5Single channel reflection records for the airgun-OBS refraction profiles. The data have been deconvolved and passed Butterworth bandpass-filtered from 30-150 Hz. The position of each profile is shown in Fig.3. Inverted triangles indicate position of OBSs.

FK7 ではノイズが大きくなる時間帯は海面が下 降する時に対応する.また,FK9 では海面が上 昇する時間帯にノイズが大きくなる傾向があるも のの観測期間を通して一様に相関が見られるわけ ではなく,各 OBS によって異なっていることが わかる(Fig.  16,  bottom).FK1 は観測期間全体 でノイズが大きいが,海洋潮汐の変動が小さくな る 7 月 7 日および 21 日のあたりではややノイズが 小さくなる傾向がある.OBS の各設置点におけ るカップリングが悪いために,潮汐の変化に起因 した局所的な流れが OBS を振動させることによ り,ノイズを発生している可能性もある.

観測記録の特徴として,火山域においてしばし ばみられる,単一周波数(約 7-14 Hz)の減衰波 形を示す,単独の OBS でのみ検知される微小な 振動がいくつもの OBS で検知されたことが挙げ られる.特に,福徳岡ノ場の中心部より北東へ約 5 km,水深 211 m の地点に設置された FK4 で最 も多く記録されていた(Fig.  17).この OBS の北 西数 100 m 以内には SeaBeam のデータから火口 と見られる地形が検出されており,その火山活動 に関連しているのかもしれない.

Fig.  17 で示した 7 月 11 日のノイズのやや大き な時間である 9h45m30s から約 10 分間の記録のス ペクトルを調べたものが Fig.  18 である.この記 録では,顕著ではないが 13 Hz 付近がやや卓越し

ているように見える.同時刻の他の OBS につい て同様にスペクトルをとると,FK1 では 5-6 Hz,

FK2 では 6-8 および 10 Hz,FK5 では 7 および 12 Hz, FK6 では 6 Hz に卓越周波数がみられ,OBS によってばらついている. Fig.  19 では FK9 での み観測された極微小なイベントの周波数成分を調 べた.イベント #1 と #2 では,7 Hz 付近が卓越 している.

比較的 S/N のよい OBS  FK2,FK5,および FK9 の記録に基づいて自然地震のイベントリス トを作成したところ,イベント総数はノイズとの 判別がつきにくい微小のものを含めて 170 個であ った.このイベントリストに基づいて各 OBS デ ータを編集し,波形験測プログラム WIN(卜部 及び束田,1992)を用いてP波及びS波の到着時 刻の読み取りを行った.各 OBS における S-P 時間 分布を Fig.20 に示す.複数台の OBS で検知され かつ S-P 時間が 10 秒以内のイベントはほとんどな かった.かろうじて震源決定が可能な S-P 時間が 10 秒近傍の地震記象の例を Fig. 21 に示した.

震源決定は Lienert et al. (1986) によってコーデ ィングされた HYPOCENTER を用いて行った.

P波の速さ構造モデルには,今回の航海で行った エアガンを用いた地震探査の結果を簡略化した構 造を使用した.震源決定時には,到着時刻の読み 取り誤差 0.1,  0.2,  0.3,  0.5 秒に対して重みをそれぞ Fig. 5 continued.