下位 10%点の マ ネジャ
ー
の 間の業
績 差 が10
% 未 満で あり,
マネ
ジャー
の能 力 差が業 績に 与える影 響は限
定
的であっ た.
元々 の業 績の変 動が 大 きい貢 献 利 益につ い ては,
マ ネジャー
の違い に よっ て大 き な 業 績 変 動が 起 こる と推 定 され た
.
ま た
,階層
線 形モ デル で推 定 したマネ
ジャー
毎の 推 定 値 を 用い て,
「マネ
ジャー
の個 人 差 を規 定 する 要 因」を 探 索した
,
その 結果,
以 下の2
点を発 見した.
(
1
) マネ
ジャー
の キャ リア(経 験 した職 能 )は, マ ネジャ
ー
の業績
を管
理 する能 力と有 意に関係 する,
店 舗の運営に直 結 す る販 売と 生 産 の
2
つ の職 能の経 験の 有 無は, マ ネジャー
の人件費
や 売 上 高,
利 益を管
理する能 力 と有 意に 関係 してい た.
特に,
生産の みを経
験し て いるマ ネジャー
は 販 売のみ を経 験 したマ ネジャー
や,
販 売・
生 産 両職 能を経 験 したマ ネジ ャー
よ り も有 意に人件費
が 高 く・
労 働生産 性が低い,
ま た, 両 職 能 を 経 験 し たマネ
ジャー
は販 売の み を経
験したマ ネ ジャー
よ り も売 上 高が高 く,
販 売・
生 産 ど ち らか の みを 経 験 し たマネ
ジャー
よ りも 貢 献 利 益が 高い.
(
2
) マネ
ジャー
の 年 齢は,
マ ネジャー
の業績
を管理する能 力 と有意
に 関係 する.
マ ネジャ
ー
の意
思決 定 が反映 されに くい 材 料費
以外の コ ス ト,
売上高,利
益 指 標につ い て,
マ ネ ジャ
ー
の 年 齢 が 高い ほ どコ ス ト が高く, 売 上 高 と利 益が低い
. .
6 . 2 研 究
の貢 献 ・限 界
本 研 究の結 果 は
,
研 究 課 題を 明 ら か にするこ と に よ る 理 論的 貢 献お よ び管
理会 計 研 究の 方 法 論に対 する貢
献 を 持つ,
第1
に,
本 研 究の 結 果 は,
マネ
ジャー
の個人差 とビ ジネ
ス a ニ ッ トの 意 思 決 定 や業績
との関
係に関
す る 理 論 予 測につ い て, 実 証 的 証 拠 を示 し た.経
済 学べ一
ス の研 究では,個
人 差 が 業 績に与える影 響は限 定 的であるこ とが想 定 され ,分析
の際に は誤差
とし て扱
わ れ てい た.
リソー
ス・
べ一
ス経
営 学 を理論べ一
ス と した 研 究では,
人 的資
源 が 業 績に大 き な影響
を 与え るこ と を 想 定 す る もの の,
実証研 究で は,
特定
の個
人 属性以外の個 人 差 を 誤差
として
扱
わ れ てい た.
そのた めこれ らの 研 究の前 提 条 件で あ る 「個入差は業績
に大きな影 響 を 与 え ない(与え る)」 とい うことに対 する実証的 証 拠は提示 さ れ てこなかっ た.
本 研 究で は,
実証 的課題とし て残さ れ てい たマ ネジャー
と業 績の 関係を定 量 的に示 した,
特 に,
マ ネジャー
の 個 人差
は業 績に有 意 な 影 響を 与 え る こと, そ し て(その 大き さは業 績指
標に よっ て異 なる が)こ の 影 響は誤 差 と し て無視
でき ない ほ ど大きな 場 合があ るこ と を 示 し た,
第 2
に,
コ ス トや 売上高
に 対 し てマ ネジ ャー
が 与 え る影 響 を 数 値で表 現 し た本 研 究の成
果は,
マ ネジャ
ー
の個 人 差 が 意 思 決 定・
業 績 に7
え る 影 響一
株式 会社ドンクの店舗デー
タ を用いた定量 的検証一
業 績 評 価 や イン セ ンテ ィ ブ報 酬 とい っ た
管
理会
計の幅
広い研 究 文 脈に対 す る 応 用 可 能 性を持つ.
業 績 評 価 に 関 す る理論的考察
で は, マ ネ ジャー
の努 力の差が どの 業 績 指 標に現れ, どの程 度の
影 響を 与 え るのか, っ ま り
業
績 指 標の正 確 性 と感 度に関 する情
報が,
イ ン セ ンテ ィブの設 計に おい て重要 である とされてきた(Banker
andDatar
1989
).
し か しなが ら,
こ の よ う な情
報 を得る こ と は困難
で あ る.
その た め業
績 評 価に関 する実 証 研 究の ほ と ん ど は 「どの 指 標 が 管 理 可 能か」,
つ ま り業 績 指 標の 正確 性 まで しか考 慮せずに検証 を 行っ て きた
、
本 研 究で は アー
カ イバ ル デー
タ を 用い て 「どの 指 標の どの ぐ らい の割 合がマ
ネ
ジャー
の 違い に よっ て変 動 する か」 を 推 定 し た.
こ の推 定 値 は 業 績 指 標の感度
に関 する情
報であると言 える.
こ の情 報を用い ること でマ ネ ジャー
の業績
評価に お ける 正確 性 と感 度に関 す る 理 論 をよ り精緻
に検
証で きる と考
え ら れ る、
図
2 今 後
の研 究の 方 向 性: マ ネジャー
の 能 力を規
定す
る要因の検 証第
3
に, 本 研 究で は コ ス トや 業 績に対 するマ ネ ジャー
の個人差の 予 測 値 を,
業 績を管
理する 能 力の代 理 変 数 と して用い,業績
を管理する能 力 を 規 定 す る個 人の特性 に関 す るさ ら なる分 析 を 行っ た.
本 研 究の よ うに, まずマ ネジャー
の 個人差と業績
の関係
を推 定 した 上で,
業 績に影 響を与 える要 因 を検 証 す るこ とで,
マネ
ジャー
は業績
に どの程 度の影 響 を 与え るのか を 明 ら かに した上で
,
どの よ うな特 徴を持つ 従 業 員 を 採 用 す れば よい の か, どの よ うなキ ャ リアを積ま せれ ばよい の か , といっ た よ り実践
的 な研 究課題 を検 証 するこ とがで きる.
本 研 究で検
証 した 年 齢 やキャ リア 以 外にも,先
行 研 究で用い られてきた個 人 属 性の代
理変 数 (例 え ば,
知 識・
ス キル
・
能 力・
その他 (KSAOs
)や 教 育,
性 格, モチベー
シ ョ ンや コ ミッ トメン ト(Cherian
and Farouq2013
)な ど)とマ ネジャー
の業績
を管理す る能 力の関 係を検
証 するこ と が 有 用で あ ると考
え られ る(図 2 )
.
第
4
に, 本 研 究は階 層 線 形モ デル を 用い た検証が管理会 計 研 究にとっ て有
用 で あ るこ とを示した
,
とい う意 味で方 法 論 に お け る 貢 献 を もつ.新
井ほ か (2014
)は, シ ミュ レー
シ ョ ンを 用いて
,
階 層 線 形モ デルの管
理会 計研究に おける有 用 性 を 提 唱し た.
本 研 究は実 際のデー
タで の分 析を 通 し て,階
層 線 形モ デル の管理 会 計 研 究での有
用性を 示 し, 彼 らの主 張を補
強す
る.管
理 会 計研究で用い ら れ るデー
タ,特に企 業 内の ア
ー
カイバ ル デー
タ に は多
くの 場 合,
部 署,
部 長,
課,
課長
とい っ た 階 層 構 造が存在
す る.
こ の よ うな組織
の階
層 構 造 を 分 析 に 取 り込 むこと で よ り精 緻 な 分 析,
もしくは これ ま で になかっ た視 点か らの新
たな分
析 を 行 うこ とが でき る可 能 性 がある,
本 研 究は
, 1
社の デー
タを 用い た 分 析であ る 点に限 界が あ る.
本 研究で は,
同一
の業 績 責 任 を 有し,
同一
の マ ネ ジ メン ト・
コ ン トロー
ル・
シ ス テム によっ て コ ン トロー
ル される多 くの マ ネジャー
の サン プル を 用いた た め,
マ ネ ジャー
の職 務 や 組 織シ ス テム に関 する要 因が コ ン トロー
ル さ れ た状
態で, マ ネジャー
の違いが業 績に与え る影 響の大
き さを定 量 的に推 定 すること が 出 来た.
し か しな が ら,
こ の よ うな 研 究 上の 利 点は,
研 究の 限 界 と表 裏一
体の 関 係に あ る.
本管理会計学第24巻 第1号
研 究は 理論 的予測 を 検 証 す る 定量 的
実
証研 究で あ り,高
い内 的 妥 当 性 を 有 す る一
方で 外的
妥
当 性は低く,
この 結 果 を どの 程 度 他の企業,業
界に一
般 化できる か は 明 ら か で はない.
これ は1
社のデー
タを 用いた定 量 的 研究 に 共 通する限 界で あ る (Bol
et al.
2010
; Bouwens andKroos
2011 ;Campbe112008
;Matsumura
andShin
2006
).
個 人差
, 特に組 織内の マ ネジ ャー
の 個 人 差に 注 目 した研 究は
,
ま だ緒につ い たばか り であ り,
先 行 研 究が非 常に 少ない (Lazear
et al. 2015
).
与 え ら れ た責任
や 権 限 が 異 なる他の 組 織において も,個
人差の 効 果が存 在 するの か,存
在 する場合 ,
どの 程 度の 大 き さ なの か等を検 証
す
る 研 究が望ま れ る.
謝 辞
研 究
機
会とデー
タを提 供い ただい た 株 式 会 社 ドン ク に感 謝 申し上 げ ま す.
ま た,本論
文の作 成に あ た り,
計3 名
の 匿名の レ フ ェ リー
の先
生方か ら大 変丁寧かつ 貴 重な ア ドバ イス を 頂き まし た
,
ここに記し て感 謝 申し 上げます,
なお
,本
研究は2013
年 度メル コ 学 術 振 興 財団 研 究 助 成 を受 けて行っ た 研 究 成果 の一
部です
.
注 1
234
5 6
7
経
営 者 とはCEO ,
CFO
な どの トッ プ・
マ ネジメ ン トを指
す.
組 織 内のマネ
ジャー
とは経 営 者以外の管理職, 特 にビジネス ユ ニ ッ トの 管理者とし,
以 後マ ネ ジャー
と表 記 する.
労働 生 産 性 は,
付加価
値/人件 費=
(売 上 高・
売上高 原価
)1
人件 費で計 算され る.
こ こ で の退職金 は, 退職に伴 う公休 買い 上げの 金 額 を 指 す
.
半 数 弱 (
47
%)が2
店 舗 以上 に所 属 し て いた(異
動の 平 均 は. 651
回,
標 準偏
差. 831,
最 小0
回,最
大4
回).
こ の よ うな異
常
サ ンプル は開 店 直 後 (もし く は準 備 期 間 )や 閉 店 直 後 (もし くは閉 店処 理期 間 )とい っ た,
営 業が な さ れ て い ない 期 間のもの で あ る.
売
上の 変 動 を 所 与 とし た コ ス トは よ り低い ほ うが好ま しい た め, ロ ス,
人 件費
.材
料 費,総 費 用の推 定 値は低い ほ ど能 力が高い と解 釈で き る
,一
方,
コ ス トの 変 動 を 所与 と し た売上高の
変
動, 利 益は高
い ほ うが 好 ま しい た め,
売 上 高,
労 働 生 産 性,
貢献利
益の 推 定 値 は 高い ほ ど能 力が高
い と解
釈でき る.
生産の み を 経 験 したマ
ネ
ジ ャー
と販 売の み を経
験したマネ
ジャー
の間
の差 を 確 認 す るため
,
基準 となる カ テ ゴ リを1,
すな わち販売の みを 経 験し たマ ネジャー
と し た検
証を 行っ た.
その結 果,
生 産の み を経 験 したマ ネジャー
は 販売のみ を 経 験 し たマ ネジャー
よ り も有
意に高
い こ とが 示 され た (p
<. 01
).
参 考 文 献
A
。th。ny ,R .
N
, J.
Dea
・d
・n,
d
R .
F .
V
・n・iL
l965・ Manag
・m ・nt・C
・n・r・1 靭
翩 ・・伽 ・祕 R・ ・伽9
・・ Homewood
,IL
:Irwin.
新 井 康 平
・大浦啓
輔・
加 登 豊. 2014.
「顧 客 収 益 性の 統 計 的 分 析:管
理会 計 研 究へ のマ ルチ レベ ル分析の適 用 可
能
性」原 価 計 算 研 究38
(2
):78 −88.
ドキュメント内
The Japanese Association of Management Accounting NII-Electronic Library Service
(ページ 43-60)