はめ込みψ= (N, h) : Σ→S21×Rで,N: Σ→S21⊂L3が沈め込み,すなわち,dN が各点で線型同型と なるものを考える.ψについて,H2×Rの場合と同様にhyperbolic Gauss mapを定め,それが特別な場合 には調和となることを示す.
まず,u̸= 0であることを示そう.
補題4.3. N が沈め込みである場合,u̸= 0である.
Proof. u= 0なる点が存在したとしよう.⟨dψ, η⟩= 0 =⟨N, η⟩より,
⟨Nz,Nˆ⟩=⟨N¯z,Nˆ⟩= 0,
⟨N,Nˆ⟩=0 (4.2)
である.dN は線型同型より,Nu とNv は一次独立だから{N, Nu, Nv}はL3 を張る.よって,式(4.2)よ りNˆ = 0が分かる.すると,u= 0なる点で,η= (0,0) となりη が単位法ベクトルであることに矛盾する.
ゆえに,N が沈め込みであるときには,u̸= 0である.
以上のことから,uの正負と曲面の向きを対応づけられる.以降は u >0 となる向きを標準的な向きとし よう.
さて,
ξ= 1
u(η+N) : Σ→N3 と定めると,ξは
N3={x∈L4|⟨x, x⟩= 0, x0>0} に値をもつことが分かる.これを示そう.まず,ξが光円錐に入るのは
⟨ξ, ξ⟩= 1
u2(⟨η, η⟩+ 2⟨η, N⟩+⟨N, N⟩)
= 1
u2(−1 + 1) = 0
となるからである.次にξの第1 座標が正であることを示そう.まずO(1,3)⊂GL4 を,L4 の擬計量を保 つ行列の集合としよう.さらにO+(1,3)⊂O(1,3) を特にH3 を保つような行列の集合とする.O+(1,3)の 行列はH3 だけでなく,N3 も保つ.
ここでη∈H3 の第1座標は正だから,ある A∈O+(1,3)で,A(1,0,0,0)⊤ =η となるものが存在する.
するとAx=ξとなるような,x∈L4がとれる.このとき,
−1
u=⟨ξ, η⟩=⟨(1,0,0,0)⊤, x⟩=−x0
となり,xの第1 座標x0>0が分かる.ゆえに,ξ∈N3が得られる.
特に,ξの第4座標は常に 1であるから,ある写像G: Σ→H2⊂H3を用いて,ξ= (G,1)∈L3×Rと 表せる.
定義4.4. 上のように得られた G: Σ→H2 をψ: Σ→S21×Rのhyperbolic Gauss mapとよぶ.
H2×Rの場合と同じようにこのξが調和となる場合があることを示そう.
定理 4.5. CMC 1/2 はめ込み ψ: Σ → S21×R で,N が沈め込みであるものを考える.このとき ψ の hyperbolic Gauss mapG: Σ→H2は,その正則点の集合がΣの稠密開部分集合のとき,調和写像となる.
Proof. いま,
⟨Gz, Gz⟩=⟨ξz, ξz⟩
=⟨ξz,1
u(ηz+Nz) + (1
u )
z
uξ⟩
=⟨ξz,1
u(ηz+Nz)⟩
=⟨1
u(ηz+Nz) + (1
u )
z
uξ, ξz− (1
u )
z
uξ⟩
=⟨1
u(ηz+Nz),1
u(ηz+Nz)⟩
= 1
u2(⟨ηz, ηz⟩+⟨Nz, Nz⟩+ 2⟨ηz, Nz⟩) である.ここで,ηz,Nzは(4.1)により以下のように計算できる:
⟨ηz, ηz⟩=⟨−Hψz−2p
λψ¯z+AN ,−Hψz−2p
λψ¯z+AN⟩
=2Hp+A2,
⟨Nz, Nz⟩=⟨ (
1−2|hz|2 λ
)
ψz−2h2z
λ ψz¯+Aη, (
1−2|hz|2 λ
)
ψz−2h2z
λ ψz¯+Aη⟩
=−2h2z (
1−2|hz|2 λ
)
−A2, 2⟨ηz, Nz⟩=2⟨−Hψz−2p
λψz¯+AN , (
1−2|hz|2 λ
)
ψz−2h2z
λ ψ¯z+Aη⟩
=2Hh2z−2p (
1−2|hz|2 λ
)
であるから,
⟨Gz, Gz⟩=1 u2
(
2Hp−2h2z (
1−2|hz|2 λ
)
+ 2Hh2z−2p (
1−2|hz|2 λ
))
=1
u2(p+h2z) (
2H−2 + 4|hz|2 λ
)
=1
u2(p+h2z)(
2H−1 +u2)
式(C’.4)より
=p+h2z H =1 2 より
=Q
が成り立つ.ただし,QはψのAbresch-Rosenberg differentialである.Qは正則であるので,
⟨Gz¯z, Gz⟩= 0
である.これは,Gの正則点においてGz¯z がH2 に接する成分をもたないことを表す.仮定よりGの正則 点の集合はΣの稠密開部分集合だから,Gz¯z の連続性よりΣ全体で Gz¯z はH2 に接する成分をもたない.
ゆえに,Gは調和写像となる.
ξを介することで,CMC 1/2はめ込みψ: Σ→S21×Rのhyperbolic Gauss mapは必ずWeierstrass data をもつことが分かる(3.2節参照).
定理 4.6. CMC 1/2 はめ込み ψ: Σ → S21×R で,N が沈め込みであるものを考える.このとき ψ の hyperbolic Gauss mapG: Σ→H2 は,その正則点の集合がΣの稠密開部分集合であるとする.このとき,
調和写像GはWeierstrass data{Q, λu2}をもつ.
Proof. いま,
µ=2⟨Gz, Gz¯⟩
=2⟨ξz, ξz¯⟩
= 2
u2(⟨ηz, ηz¯⟩+⟨ηz, Nz¯⟩+⟨Nz, ηz¯⟩+⟨Nz, Nz¯⟩) であるから,これを定理4.5の証明と同様にして計算すると,
⟨ηz, η¯z⟩=⟨−Hψz−2p
λψz¯+AN ,−2¯p
λψz−Hψ¯z+ ¯AN⟩
=H2λ
2 +2|p|2 λ +|A|2
=λ
8 +2|p|2
λ +|A|2,
⟨Nz, N¯z⟩=⟨ (
1−2|hz|2 λ
)
ψz−2h2z
λ ψz¯+Aη,−2h2z¯ λ ψz+
(
1−2|hz|2 λ
)
ψz¯+ ¯Aη⟩
= (
1−2|hz|2 λ
)2
λ
2 +2|hz|4 λ − |A|2
=λ
2 −2|hz|2+4|hz|4
λ − |A|2,
⟨ηz, N¯z⟩=⟨−Hψz−2p
λψz¯+AN ,−2h2¯z λ ψz+
(
1−2|hz|2 λ
)
ψ¯z+ ¯Aη⟩
=−Hλ
2 +H|hz|2+2ph2z¯ λ
=−λ
4 +|hz|2
2 +2ph2¯z λ ,
⟨Nz, η¯z⟩=⟨ηz, Nz¯⟩
=−λ
4 +|hz|2
2 +2¯ph2z λ である.ゆえに,
µ=2⟨ξz, ξ¯z⟩
=2
u2(⟨ηz, ηz¯⟩+⟨ηz, Nz¯⟩+⟨Nz, η¯z⟩+⟨Nz, Nz¯⟩)
=2 u2
(λ
8 +2|p|2
λ − |hz|2+4|hz|4
λ +2ph2z¯
λ +2¯ph2z λ
)
=2 u2
(2
λ(|p|2+ ¯ph2z+ph2z¯+|hz|4) + (λ
8 − |hz|2+2|hz|4 λ
))
=4|Q|2 λu2 + 2
u2 (λ
8 −λ
4(u2+ 1) +λ
8(u2+ 1)2 )
Q=p+h2z と式(C’.4)より
=4|Q|2 λu2 + λ
4u2(1−2(u2+ 1) + (u2+ 1)2)
=4|Q|2 λu2 +λu2
4
となるので,{Q, λu2}はGのWeierstrass dataである.
CMC 1/2 はめ込みψ: Σ→S21×Rのhyperbolic Gauss mapGはWeierstrass data{Q, λu2} をもつこ とが分かった.ここで,2τ =λu2とおこう.これと式(C’.4),u >0 をあわせると,
λ=−2τ+ 4|hz|2>0, u=
√ τ
−τ+ 2|hz|2
が分かる.それではQ, τ を用いて(C’.1)と(C’.2)を書き換えてみよう.
補題4.7. hzz, hz¯z はQ, τ を用いて,
hzz=(logτ)zhz+Q
√−τ+ 2|hz|2
τ ,
hz¯z=−1 2
√τ(−τ+ 2|hz|2)
と書き表せる.
Proof. (C’.1)と(C’.2)をQ, τ を用いて書き換える.
hzz=(logλ)zhz−pu
= (
log2τ u2
)
z
hz−(Q−h2z)u
=(logτ)zhz−2uz
uhz−(Q−h2z)u
=(logτ)zhz+ 2hz
u (hz
2 +2p λh¯z
)
−(Q−h2z)u (C’.3)より
=(logτ)zhz+h2z
u +4p|hz|2
λu −(Q−h2z)u
=(logτ)zhz+h2z
u +Q−h2z
u (u2+ 1)−(Q−h2z)u (C’.4)より
=(logτ)zhz+Q u
=(logτ)zhz+Q
√ τ
−τ+ 2|hz|2, hz¯z=−Hλu
2
=−λu 4
=− τ 2u
=−1 2
√τ(−τ+ 2|hz|2)
となる.
この補題の式は,次の節において重要な役割を果たす.