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ソーシャル・ビジネスの評価の在り方

-インドの事例から社会開発へのインパクトを測定する 吉備国際大学、外国語学部

橋本由紀子 概要

本研究の目的は、社会開発におけるソーシャルビジネス(SB)の役割とその評価の在り方を探求するものである。

今回は特にインドの都市廃棄物管理に焦点を当て、社会的側面からごみ収集者の生活向上と都市衛生改善に関して、

自治体と組合の協働システムと、この分野で急に活躍が期待されはじめた民間セクター(SB)の役割と効果、社会へ のインパクトを比較し、廃棄物管理に最適なシステムの考察を行う。また、SB の効率性、評価を現地調査に基づき 実施・分析し、より効果的な SB の評価の在り方を探求する。調査結果から、SB 方式はごみ収集者の収入増と地域の 環境衛生改善に有望な方式であるが、規模の観点から自治体と組合の連携による対象地域拡大の要素も必須であるこ とが判明した。SB 起業家は主に女性が多く、単なる組合員時よりも収入が向上し、女性の社会的地位も向上したと 評価している。また、SB 方式がサービスの質の向上、地域の意識化に有効であるとの意見が多かった。しかし、廃 棄物処理問題は、多様な文化的社会的要因を含み官民(地方自治体と SB による)パートナー方式が有効である可能 性もある。これらに関しては今後の研究課題である。

キーワード:ソーシャルビジネス、インドの都市廃棄物管理、ごみ収集者組合と自治体の協働 問題の所在:都市廃棄物激増と管理

インドは急速な経済発展と都市人口集中のため、

一般家庭ゴミと産業廃棄物のいずれもが急増してい る。2011 年のインド国勢調査によれば、人口 12 億 1,000 万人のうち、都市部の住民は 31.16%で、その 割合は増加の一途をたどっている。しかし、予算不 足や制度上の弱点、一般市民のごみ問題に対する無 関心のために、廃棄物管理の状況は劣悪で、都市周 辺での野放しの廃棄物投棄は公衆衛生や環境に深刻 な問題をもたらしている。大都市での一般廃棄物排 出量は、年率 1.33%で増加すると予測され、2047 年までに廃棄物排出量は、年約 2.6 億トンになる予 測である。都市ごみの種類は、堆肥化可能な有機物

(果物・野菜くず、残飯)、リサイクル可能物(紙、

プラスチック、ガラス、金属など)、 有害物質(塗 料、殺虫剤、薬品)、 固体廃棄物(生理用ナプキン、

使い捨て注射器)があり、都市部の多くで発生元の ゴミの保管能力が不足し、ゴミが分別なしで収集さ れ、処分場に捨てられている。さらに、ごみ収集は 道路沿いで行われ、未許可の屋外収集所がいたると ころで作られ、衛生面、交通上の危険性が懸念され ている。最近は NGO や民間部門の支援(企業の CSR)

を受けて、ニューデリー、ムンバイなど大都市で、

戸別収集が導入されている。しかし、周辺の環境衛 生の悪化は深刻さを増すばかりである。

「きれいな清潔な国インド」キャンペーン

モディ新首相は 2019 年 10 月 2 日までに都市集中が もたらす廃棄物増加や衛生設備の不備が健康に与え る悪影響を解決するために同キャンペーンを達成す ると宣言した。その骨子は、*清潔なトイレの普及

*科学的な廃棄物処理整備、*民間セクター(ソー

シャルビジネス)の参入促進(競争原理の導入)で ある。インドにおける SB の歴史は浅く、インドの SB の 68%が設立以来 5 年未満であり、年収益は約 90%

が 5000 万円以下である。(Beyond Profit 2010 survey)しかしながら、2009 年と比較し 2010 年に は約 3 分の1の SB 企業で 50%収益増を報告している。

このように SB を促進した場合の、産業の事業性、雇 用増加、ステイクホルダー利益、社会問題解決に大 いに役立つと期待されていることがうかがえる。

ソーシャルビジネスの定義(経済産業省 2007): ソーシャルビジネスの定義は、社会的課題の多様性 と深刻度,経済発展や社会発展の水準,主体の成熟 度,経済社会システムの多様性に起因し、分野や国 ごとで異なる。本稿では、以下の日本の経産省の定 義を採用する。経産省は「様々な社会的課題を市場 として捉え,その解決を目的とする事業であり、『社 会性』『事業性』『革新性』を要件とし、社会課題の 解決、経済活性化や雇用の創出に寄与する効果が期 待される、としている。『社会性』とは、解決が求め られる社会的課題に取り組むことを事業活動の使命 とし、社会問題解決に貢献が期待できる。『事業性』

とは、社会課題解決というミッションをビジネスの 形に表し,継続的(ビジネスとして成立し慈善事業 ではない)に活動を進めていく。『革新性』とは、新 しい社会的商品・サービスや,提供の仕組みを開発・

活用する。これらの活動が社会に広がることを通し て新しい社会的価値を創出する、と定義している。

インドの都市廃棄物管理システム

近年、インドの都市廃棄物管理システムは、地方自 治体と他セクターとのパートナーシップが推進され、

その型は 3 つに分類できる。1.地方自治体と民間

セクター(SB)の協働、2.地方自治体と地域コミ ュニティーの2主体協働、3.地方自治体、民間セ クター、地域コミュニティーの3主体協働である。

モディ新首相のキャンペーンのもと、民間部門(ソ ーシャルビジネス SB)が、都市部で料金徴収による 戸別収集を導入し、環境と雇用の両面での成果が期 待されている。

インドの現状:

いまだ国民の三分の一が絶対的貧困状態にある影の 面を持つインドにおいて事業性と社会性を同時に追 求し、「さまざまな社会的課題を市場としてとらえ、

その解決を事業的に目指す」SB 方式を導入すること は、まさに、期待される有望な形態であるとされて いる。

主要環境悪化要因である廃棄物の管理はインドでは、

少数派に属する特定の階層に偏り、清掃業は清掃人 カースト集団の伝統的な職業であった。また、農村 から都市部へ流入した貧困層が、インフォーマルセ クターを形成し廃棄物回収を行ったり、地方政府に 清掃人として雇用されている。機械化等による廃棄 物管理の効率化及び合理化は、これら人々の職を奪 うことにもつながるといわれていた。しかし、これ 以上ゴミ捨て場を増やすことが物理的に不可能で、

革新性を持った SB の方法論が期待されている。

(1) ジェンダーに配慮した廃棄物管理

従来、インドでは、家庭でごみを管理するのは女性 が多く、ウェイストピッカー(有価廃棄物回収人)

や手分別作業従事者も女性が多く、廃棄物管理とジ ェンダーは密接な関わりがある。従来、家庭廃棄物 や糞尿の清掃は女性の役割と考えられていたため女 性はコミュニティにおける環境問題を熟知し、改善 の方法や適切な廃棄物集積場の設置場所等、貴重な 情報を有している。廃棄物の収集、処理をサービス として提供するシステムが導入され、収集業務や掃 除業務が有償となった。業務にまじめに取り組む貧 困女性は作業効率が高いと評価され、貧困女性の収 入獲得機会を増加し、エンパワーメントにつなげる 観点から廃棄物処理への女性の参入推進は重要であ り、SB 起業家も女性の割合が増加している。廃棄物 の資源としての価値判断や再利用状況に関し、ジェ ンダー分析は分別やリサイクルの方法を決定する際 に必要な情報となる。廃棄物の収集、処理の改善を 含む都市環境改善事業を進める際には、ジェンダー の視点からの分析が必要となる。

(2) インフォーマルセクターへの対応

収集運搬過程では作業員が、最終処分場では、ウェ イストピッカーが有価物を収集・回収しており、こ のインフォーマルな経済活動は、経済に大きな比重 を占め、有価物を有効に循環させ、社会経済的観点

からも、貧困者に対し雇用機会や収入源を提供して いる。この有価物回収活動をフォーマルな廃棄物管 理システムの中に取り込む事例もある。インフォー マルセクターとの連携に向けた最終処分場管理者と ウェイストピッカーとの運営ルールの設定、ウェイ ストピッカーやインフォーマルな有価物回収人によ る組合設立への支援が重要との認識である。

その一方で、衛生知識の提供や健康被害予防用具・

用品の支援といった福利厚生の充実・労働環境の改 善も必須である。さらにはウェイストピッカーへの 職業訓練による代替生計手段の確保の支援の取り組 みも重要である。

写真1:ごみ捨て場で有価廃棄物を探し集めるウェ イストピッカー

*ウェイストピッカー:

有価廃棄物回収人を意味し、最終処分場や路上で、

非公式に廃棄物の中から有価物や動物のエサとなる 厨芥を集め生活の糧にしている。インドではカース トにより職業が固定化されているケースがあり、社 会の最下層の扱いを受けている。彼女らの労働環境 は劣悪で有害物質への暴露や病原菌との接触、呼吸 器、皮膚の疾患や鉛中毒、ガラスや釘によるけがも 多い。彼女らは資源の有効再利用に貢献しているに もかかわらず、重機の妨げになったり、転圧、覆土 作業の遅延を招き、排除されたり、非合法化される 傾向があった。現在では貧困層のセイフティーネッ トであるという認識が高まり、フォーマルな廃棄物 処理システムに位置づけ、福利厚生の充実・労働環 境の改善対策に力点が置かれるようになった。イン フォーマルセクターとの連携に向けた最終処分場管 理者とウェイストピッカーとの運営ルールの設定、

ウェイストピッカーの組合設立と統合である。それ ら取組により衛生知識の提供や健康被害予防用具・

用品の支給等の福利厚生の充実・労働環境の改善も 実現方向にあり、職業訓練等の実施により、代替生 計手段の確保を支援する等の取り組みもある。しか し多くの場合、労働環境は劣悪で、有害物質や病原 菌との接触も頻繁であり、胃腸、呼吸器、皮膚の疾

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