• 検索結果がありません。

ARTE GRANDE の RVDIMENTA

ドキュメント内 João Rodriguez 『 ARTE GRANDE 』の成立と分析 (ページ 73-80)

DE GRÆCIS VERBIS

N, Ecce, nominandi, seu accusandi casum admittunt

5. ARTE GRANDE の RVDIMENTA

ARTE GRANDEのRVDIMENTA全体は第55葉表から80葉裏、そのうちの副詞の記述は第73葉 裏 か ら 76 葉 表 で あ る 。DE INSTITVTIONE GRAMMATICA と 同 様 に 、ARTE GRANDE の

RVDIMENTA も大きく二つに分かれ、前半は日本語の副詞の特徴の紹介とその語形成についての形態

論的な記述、後半はAlvarezの25分類をひきついで、30分類をしるしている。

5-1 冒頭

第73葉裏にある日本語の副詞の特徴は以下のとおりである。

¶ Tem esta lingoa muita abundancia de Adverbios, & que muito a o vivo explicam o modo das cousas, por que não somente tem Adverbios que mostram o modo da acção, mas outros

17 2「DE INSTITUTIONE GRAMMATICAとARTE GRANDE-1」でのべたように、Alvarezの八品詞 に「形容詞」はない。ここで言う「名詞」とは現代文法の「形容詞」のことである。

que mostram ate o som, ou estrondo, ou meneo, ou postura da cousa. De sua varia formação diremos algũa cousa.

ここでRodriguezは、「Tem esta lingoa muita abundancia de Adverbios, & que muito a o vivo explicam o modo das cousas19(この国語は副詞を甚だ豊富に持ってゐる。而もそれらは事物の状態を 極めて生々と表すのである)」と述べている。そして、生々と表すことのできる理由を、「não somente tem Adverbios que mostram o modo da acção, mas outros que mostram ate o som, ou estrondo, ou meneo,

ou postura da cousa(動き方を示す副詞があるばかりでなく、音や大音響、身振りやものごとの様子ま

でも示すものがある:馬場訳)」からだ、としている。

「音や大音響、身振りやものごとの様子までも示すもの」というのは、オノマトペ20に違いない。

Rodriguezはオノマトペを日本語の大きな特徴ととらえており、RVDIMENTAでは畳語50語の単語リ

スト(5-5参照)、CONSTRUIÇÃO(6-2-4参照)では35語の語義つき一覧に多くのオノマトペをあげ ている。「faramequ、bitamequ」などオノマトペの半分に「-mequ」のついた動詞にも二度ふれ、そし て、第74葉表では「Cororito、Cutto、Fatto、Xicato」などの語をとりあげている。

上記の「日本語の副詞」に関する記述の最後は、「De sua varia formação diremos algũa cousa(そ の色々な構造に就いて少しく述べよう)」でむすばれている。「少しく述べ」ているのは RVDIMENTA の前半のことで、日本語の副詞の語形成についてである。DE INSTITVTIONE GRAMMATICA の

RVDIMENTAでもその前半で語形成を示す四つの例文があげられていたが、ARTE GRANDEでの記

述の方がはるかにくわしい。そして、RVDIMENTAの後半は「De varios generos, & significações de Adverbios(副詞の種々なる種類と意義に就いて)」で、DE INSTITVTIONE GRAMMATICAを引き うつした副詞の分類である。引きうつしてはいるが、25 分類が 30 分類となっている。つまり、

RVDIMENTAにおけるRodriguezの独自性は、副詞の語形成を前半にくわしく取り上げていること、

そして、後半での副詞の分類を25から30にふやしていることだと言える。

前半に取り上げられている事象は、イ形容詞、および、ナ形容詞の連用形の副詞的用法、畳語の半分 に「-mequ」が接続してできた動詞、畳語の副詞のリスト、「-to」か「-do」におわる副詞、「畳語+-toxite」、 以上である。「「-to」か「-do」におわる副詞」というのは、語末の音形に注目した分類で、Téchn

grammatikの「ōsでおわる副詞」DE INSTITVTIONE GRAMMATICACONSTRVCTIONEにあ る「umでおわる副詞」、「oでおわる副詞」に対応している。

以下、前半におけるこれらの項目を一つ一つ見ていき、そのあと、副詞の30分類を分析していく。

5-2 イ形容詞の連用形

日本語の副詞の特徴を記述するにあたり、Rodriguez は「Primeiramente(第一に)」として、イ形 容詞をとりあげている。

ここでRodriguezは日本語のイ形容詞のことを「os vebos21 adjectivos acabados em, Ai, ei, ij, oi, ui

(アい、エい、イい、オい、ウいに終る形容動詞)」とし、その「raiz(語根)」が副詞として用いられ ると言っている。さらに、raizは日常会話では「o、ô、eô、u」で、書きことばでは「Qu」でおわると

19 「que muito a o vivo」のように「a」と「o」がはなれて表記されているのは、Rodriguezによる。

20 Rodriguezは「オノマトペ」を意味する用語をもちいていない。6-2-4にある、第113葉裏の記述を見て

名づけるなら、「‘よみ’の畳語」となろう。

21 「vebos」は「verbos(動詞)」の誤植であろう。形容詞を「verbo(動詞)」とする理由については、第2

言っている。つまり、イ形容詞の連用形を副詞だと言っていることになる。語例は、「Amo、Amaqu」

の2語があげられている。形容詞の派生形を副詞と認める考え方は、ラテン語文法の伝統と言えよう。

5-3 ナ形容詞の連用形

「Item dos verbos adjectivos acabados em Na, l. Naru, se formam Adverbios, em Ni(Na、又は、

Naru に終る形容動詞の語根も亦 Ni の形で副詞となる)」、つまり、ナ形容詞もイ形容詞と同様、その raizが副詞となるとし、「Aquiracani」を例としてあげて、raizの語形は「Ni」でおわると説明してい る。ナ形容詞の連用形を副詞だとしているのである。

もっともよく使われるものとして、以下のリストがあげられている。

Richiguini 律儀に Inguinni 慇懃に Fitasurani 一向に

Nauozarini なほざりに Tamasacani たまさかに Foguaini 法外に

Quiuni 急に Niuacani 俄かに Arauani 露はに

Notoroni のとろに Voboroni 朧ろに

Firani 平に Carini 仮に Carisomeni 仮初に

Tonni 頓に

Tocanni 等閑に Tocan Naqu 等閑無く Tocan Note 等閑無うて Quiacuxinni 隔心に Quiacuxin Naqu 隔心無く Quiacuxinnote 隔心無うて

「Tocan Naqu、Tocan Note」、「Quiacuxin Naqu、Quiacuxinnote」は、「Tocanni」、「Quiacuxinni」

の否定の形である。この 4 語以外はすべて「-ニ」でおわっている。しかし、「-ニ」でおわっていて も「Firani、Carini、Carisomeni、Tonni」などナ形容詞でない語もまざっている。「形容動詞の語根も 亦Niの形で副詞となる」と言いながら、それだけでなく、「-ニ」でおわる副詞、そして、関連する否 定の語までをあげているのだ。

5-4 畳語の半分+-mequ

Rodriguezは、副詞の中にはduplicadoがある、と言っている。duplicadoというのはdoubleという ことで、つまり同じ形式の言語要素が二つかさなった語形の語のこと、「畳語」のことである。

「alguns dos quais se formam verbos acrecentando à primeira palavra a particula, Mequi, u.(そ の(畳語)の中のあるものは初の語に助辞Mequi、uを添へて動詞をつくる)」とある。連用形が「-mequi」、 終止形が「-mequ」ということである。ここには、「Farafara(はらはら)」、「Batabata(ばたばた)」、

「bitabita(びたびた)」、「guaraguara(ぐゎらぐゎら)」の 4 語からの派生語として「Faramequ」、

「batamequ」、「bitamequ」、「garamequ22」があがっている23

22 畳語は「guaraguara」、そこからの派生語は「garamequ」となっている。日葡辞書を見ると、

「Garagarato」、「Garameqi」、「Guaraguarato」、「Guarameqi」のどれもが見出し語にある。

「guaraguara」からの派生語を「garamequ」としたのは、Rodriguez のあやまりかもしれない。

23 これら4語は、現代語では見ない。土井(1980)では見出し語「Farameqi、Batameqi、Bitameqi、Garameqi」

があり、その語義は以下のとおりである。「はらめく:やかましい音がする、または、響きが出る。また、た とえば、飯粒とか、胡麻入りの砂糖菓子とかなどが、よく煮えていないで、ぱらぱらとぱらつく」、「ばため く:鳥が飛ぶ時、または、翼が地面を打つ時、音が出る。また、物が叩かれたりして音が出る」、「びためく:

濡れた着物をびちゃびちゃさせて音を立てる、あるいは、揺れ動く、または、魚が水中で動く」、「がらめく:

5-5 畳語の副詞の語例

「Destes Adverbios porei aqui alguns mais correntes.(この種の副詞で最も普通のものを少しくこ こに示さう)」ということで、畳語が50語列挙されている。

Barabara ばらばら Baribari ばりばり Bicubicu びくびく

Batabata ばたばた Bichabicha びちゃびちゃ Taratara たらたら

Garagara がらがら Gasagasa がさがさ Gatagata がたがた

Soyosoyo そよそよ Gosogoso ごそごそ Sutasuta すたすた

Gotogoto ごとごと Bacubacu ばくばく Bitabita びたびた

Caxicaxi かしかし Dacudacu だくだく Cudacuda くだくだ

Farafara はらはら Xeuaxeua せわせわ Chicochico ちこちこ

Chicuchicu ちくちく Fixifixi ひしひし Chirichiri ちりちり

Gacugacu がくがく Zararizarari ざらりざらり Macumacu まくまく

Sauasaua さわさわ Sorosoro そろそろ Quanquan くゎんくゎん

Guetagueta げたげた

Farifari はりはり Xicoxico しこしこ Gajigaji がじがじ

Gojigoji ごじごじ

Caracarato varo からからと笑ふ Dzubudzubuto saxitouosu づぶづぶとさし通す

Iroiro いろいろ Samazama さまざま Toquitoqui ときとき

Ara ara あらあら Yoyo やうやう Machimachi まちまち

Benben べんべん(便々) Jenjen ぜんぜん(漸々) Yuyu ゆうゆう(悠々)

Momo まうまう(朦々) Jinjin じんじん(深々、深甚、甚深)

このうちの多くはオノマトペである。「Barabara、Baribari、Bicubicu、Batabata、Bichabicha、

Taratara、Garagara、Gasagasa、Gatagata、Soyosoyo、Gosogoso、Sutasuta、Gotogoto、Caracarato、 Dzubudzubuto」などは現在も同じ意味で使われているが、「Farifari、Xicoxico、Gajigaji、Gojigoji24」 などは一般的でない。

いくつかは、オノマトペでない。名詞の繰り返しの「Iroiro、Samazama、Toquitoqui25」、イ形容詞 の語幹の繰り返しの「Ara ara26」、読みが音の二字熟語「Benben、Jenjen、Jinjin27」などである。

「Caracara、Dzubudzubu」には「to」がついている。これは、CONSTRUIÇÃO第113葉裏の、よ みの畳語には「-to」がつくという記述と対応している。

5-6 -to、-doでおわる副詞

ここでは、「Toに終るかDoに終るかする」副詞が取り上げられている。以下のとおりである。

24 Farifari「焙られる物や燃える物の立てる音」(土井(1955)、p.418)。xicoxico「場所がぬかるみになって いるさま、または、そこに足がはまり込みそうなさま」、「がじめく:生煮えの芋など、よく煮えていない物 が嚙み砕かれるとき出る音」、「ごじめく:生の物や固い物を嚙む時に音が出る」(以上、土井(1980))とあ る。「Gajigaji」、「Gojigoji」は、「歯で噛む音」のことをいう(土井(1955)、p.418)。

25 土井(1980)に見出しがあり、語義は「それぞれの時」となっている。

26 語義は、「片々に、大まかに、粗雑に」(土井(1955))。

Cororito ころりと Zararito ざらりと Quararito くゎらりと

Cururito くるりと Fararito はらりと Zororito ぞろりと

Cotto こっと Zatto ざっと Zuito ずいと

Zutto ずっと Quatto くゎっと Cutto くっと

Fatto はっと Quitto きっと Tçutto つっと

Fatato はたと Xicato しかと

Yoppodo よっぽど Chodo ちゃうど Zundo ずんど

Teido ていど

語末の形に着目するところは、Dionysiusの「ōsでおわる副詞」、Alvarezの「umでおわる副詞」、「o でおわる副詞」と同様の分類である。ここでも、伝統的なギリシア、ラテン語学の枠組みの影響をうけ ている。

これらの語の語構成をみると、「Cororito、Zararito」など「-rito」におわる語をはじめ、「-to」にお わる語の多くはオノマトペに引用の格助詞「と」がついたものである。一方、「-do」におわる4語のう ち、「Yoppodo」は、「Yoppo」に「-do」がつづいたのではなく、「よほど」の変化形である。また、「Chodo」

を日葡辞書で引くと、「Justamente, ou sem tirar nem por(かっちりと正確に、または、過不足なしに)」 と「Modo de dar pancada. Vt, Chodo vtçu.(打ちなぐるさま。例、丁ど打つ)」の二つの語義がある。

前者の意なら「Cho」に「-do」がついたものではない。オノマトペに「-to」が後接して副詞となる語 が多いところに、音韻的に近い「-do」をもってきて、「-do」におわる副詞をいくつか加えたということ か。

5-7 畳語+-toxite

「Outros Adverbios ha que acabam em, Toxite, muito usados, que comummente são duplicados(別

にToxiteに終る副詞があって、盛に用ゐられる。それは普通に畳語である)」とあり、以下の11語が例

としてあげられている(第74葉表)。

Benbento xite 便々として Quenquento xite 涓々として Yenyento xite 奄々として Yuyuto xite 悠々として Sacusacuto xite 嘖々として Satsatto xite 颯々として Rinrinto xite 凛々として Tototo xite 滔々として Momoto xite 朦々として Xeixeito xite 清々として Momo xeixeito xite 朦々清々として

これら11語のうち「Benben、Yuyu、Momo」の3語は5-5「畳語の副詞の語例」に、「Benbento xite、

Quenquento xite、Yenyento xite、Yuyuto xite、Satsatto xite、Rinrinto xite、Momoto xite、Xeixeito xite、Momo xeixeito xite」の9語はCONSTRUIÇÃOにおける畳語の副詞の記述(第131葉裏)にあ らわれている。ただ、後者において、「Bembento xite、Yenyeto xite、Mômôto xite、Mômô xeixeito xite」

の4語はつづりがちがっている。土井(1982)p.80によると、第94葉以前と95葉以後とで印刷面に 変化があり、作成が一時途切れたと考えられる。そもそもどちらのつづりでも当時は問題がなかったわ けで、版組みが一時中断することによる影響がこれらのつづりにあらわれたと考えられる。

ドキュメント内 João Rodriguez 『 ARTE GRANDE 』の成立と分析 (ページ 73-80)

関連したドキュメント