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Advanced application of satellite remote sensing

Since the establishment of the “Aerospace Basic Act” in 2008, the major purpose of the national policy over the space development and utilization has changed from the stage of research and development to that of wide-range, practical utilization. Thus, it is absolutely needed for the environmental remote sensing community to establish the methodology of utilization of remote sensing for finding, understanding, and solving various problems on both scientific and social bases. In view of such background, this program (Program 3) aims at assigning important problems that must be solved on national and global levels, integrating the results of satellite and ground-based observations, and realizing the advanced application methodology of satellite remote-sensing data through the synergetic activities of scientists representing various fields of environmental monitoring.

Study on spatial information system that nurtures the disaster and environmental literacy.

[研究内容と平成30年度の成果]

◆1.3.1. 問題解決のためのリモートセンシング・GIS

◆1.3.1.1. インターネットによる社会基盤情報の提供(近藤昭彦)

この課題は第2期中期計画の「災害・環境リテラシーを醸成する空間情報システムに関する研究」を継続しつ つ、第3期の「リモートセンシングと GIS を用いた都市環境の把握、およびリモートセンシング手法による都市

スケールの災害把握の研究」に繋げ、対応するものである。災害・環境に関わるデータセンター機能として、国 土交通省国土政策局国土情報課の支援を頂き、国土調査成果図表のラスター画像をダウンロードできるサイトを 公開している。平成30年度まで継続して公開している項目は以下の通りである。

(1)国土調査成果図表

国土調査・土地分類基本調査の表層地質図、地形分類図、土壌図、土地利用現況図を画像データ(400DP) をダウン ロード。

(2)災害履歴図-20万分の1土地保全基本調査

日本の都道府県のうち、32都府県で作成されている災害履歴図の閲覧。

(3)利水現況図・調査書

一級水系(109水系)及びその周辺地域を対象に、流域内の水文、利水、治水に関する既存資料の収集整理、現地調査 等を行い、その結果を、主要水系調査書及び利水現況図にとりまとめたもの。

(4)50万分の1土地分類図

①北海道地方、②東北地方、③関東・中部地方、④中部・近畿地方、⑤中国・四国地方、⑥九州地方、の50万分の1 地形分類図、表層地質図、土壌図の Tiff 画像。

(5)地下水マップ

この課題は教育と関わり、2014年度からは千葉大学看護学研究科「災害看護グローバルリーダー養成プログ ラム」における「環境防災学」における空間情報の活用、「災害看護専門職連携演習」におけるシミュレーショ ン教材作成に活用した。また、2011年度から行われている静岡大学防災総合センター「災害科学的基礎を持っ た防災実務者の養成」(ふじのくに防災フェロー養成講座)」における「地理学演習」において教材として継続し て活用している。

災害は人と自然が分断したところで発生する。防災、減災は人が土地の性質を理解し、諒解を形成して営む暮 らしの中で達成される。ハザードを物理的に予測しなければ人は生き方を決められないわけではない。この課題 の重要性は近年の災害の多発によりようやく社会に浸透してきたように見える。平成30年度後半は国土交通省 から新たな情報の提供を受け、次年度に向けデータベースの改修作業を行っているところである。

◆1.3.1.2. 地域の環境変動に関する研究(近藤昭彦)

この課題は第2期中期計画達成目標の「中国における環境変動に関する研究」、「アジアにおける環境変動のモ ニタリングと要因解析」をさらに発展させ、第3期の研究課題を複合的に組み合わせ継続研究している。地球環 境変動はグローバルスケールで徐々に顕れるのではなく、特定地域において先行して出現する。環境問題はそれ がグローバルチェンジに関わるものであっても、問題としては地域における人と自然の関係性に関わる問題とし て出現する。地域の環境問題は、地域性(気候、地形、植生、等の地域の特徴、風土)と人間活動との関わりに 基づいて理解することが重要となり、それによってのみ正しい対策を講じることが可能になる。このような考え 方に基づき、平成30年度に達成した課題は下記の通りである。

都市近郊地域の園芸農業における耕地の抽出に関する研究

 ・ Eunice Nduati, Yuki Sofue, Akbar Matniyaz, Jong Geol Park, Wei Yang, and Akihiko Kondoh(2019):

Cropland Mapping Using Fusion of Multi-Sensor Data in a Complex Urban/Peri-Urban Area, Remote Sensing, 11(2), 207.

ベトナム、ドンナイ川流域における土地利用の変化が流況に与える影響─湿潤熱帯地域における事例─

 ・ Land Use and Land Cover Changes and Their Effect on the Flow Regime in the Upstream Dong Nai River Basin, Vietnam. Water 2018, 10, 1206; doi:10.3390/w10091206

中国華北平原における冬小麦の農事暦変化に関する研究

 ・ 兪 江、孫 玫、沈 彦俊、近藤昭彦(2018):中国華北平原における冬小麦の農事暦変化に関する研究.

水文・水資源学会誌、Vol.31, No.3, 152-165.

新潟県長岡平野における消雪用地下水利用が地下水流動系に与える影響

 ・ Hiroaki Abe, Changyuan Tang, Nozomu Takeuchi, Akihiko Kondoh(2018): Influence of Seasonal Pumping on Groundwater Sources and Flow System, Nagaoka Plain, Japan. Groundwater, 56(3),

470-481.

◆1.3.1.3. 印旛沼流域水循環健全化に関わる活動(継続:近藤昭彦・濱侃・堀江政樹)

この活動は重要な課題として捉え、第1期より継続して千葉県とも協働し、第3期の課題である「UAV

(Unmanned Aircraft Vehicle)としてマルチコプターや固定翼機を使った低高度の近接リモートセンシング技 術を確立させ、リモートセンシングを様々な課題に対応させるプロトコルを作成し、社会実装する」および、

「フィールドワーク、リモートセンシング、モデリングを通じて森林生態系や湖沼・河川の水質モニタリングを 行う」に対応し、実施している。

① UAV による特定外来生物「ナガエツルノゲイトウ」の生育モニタリング

この課題は第2期中期計画の「千葉県における健全な水循環と生物多様性の再生」、と関連している。2018 年度は昨年度に引き続き、行政・市民協働で実施した「ナガエツルノゲイトウ協働駆除作戦」のなかで、UAV を使った分布と生育のモニタリングを実施した。成果は印旛沼流域水循環健全化会議のホームページにリンク

(http://inba-numa.com/)するとともに、論文として取りまとめ中である。この活動はフューチャー・アース

(FE)計画におけるトランスディシプリナリティーの実現を目指した研究である。2018年度までに5年分の空 撮画像が得られ、駆除の成果が定量化されつつある。

②印旛沼流域における窒素循環に関する研究

この課題は第2期の「台地-低地系水循環の生態系サービス機能の評価」、と関連している。印旛沼をはじめ とする都市近郊の閉鎖性流域では富栄養化が解決すべき環境問題となっているが、この問題に二つの観点から取 り組んだ。ひとつは、印旛沼への窒素負荷量の正確な算出である。印旛沼湖沼水質保全計画では流域からの窒素 負荷量を計算するための原単位が更新されていないが、2016年度に最新の研究成果に基づいて算定された新し い原単位を用いて、印旛沼への窒素負荷量を再計算した。その結果、現行よりも大きな窒素負荷量が求められた が、2018年度は地表に付加された窒素と公共用水域の接続様式をモデルにより検討した。一方、現場において、

台地から河川に供給される窒素の輸送メカニズムを解明する必要がある。台地を刻む谷津に市民と協働で実験流 域を設置し、水循環・物質循環に関わる共同研究を継続して実施中である。地質、地形、水文、生態の専門家が 協働することにより、新たな窒素循環イメージが得られつつあり、シチズン・サイエンス、トランスディシプリ ナリー研究の成果として取りまとめ中であるが、成果は世界湖沼会議(2018年11月16日開催)、市民講座等で 公表し、議論を行った。

◆1.3.1.4. UAV リモートセンシングによる作物生育モニタリング(近藤昭彦・田中圭・濱侃)

この課題は中期計画・重点課題の「ドローンを活用した近接リモートセンシング」と関わる。これまでに水稲 を中心に取り組んで来たが、2017年度以降は園芸作物の生育モニタリングを開始した。UAV リモートセンシン グとは UAV、ここではラジコン電動マルチコプター、にカメラ、センサーを搭載して行う低高度リモートセン シングである。これまで、水稲の生育モニタリングの成果として、①代掻き水平精度の確認、②生育むら、③追 肥時期の決定、④タンパク質含有量推定(食味診断)、⑤収量予測、⑥倒伏予測、等に利用できる技術を確立さ せた。この技術の現場への実装は、秋田県、新潟県、埼玉県、千葉県で行い、新潟県、埼玉県では UAV リモー

図1.3.1.3.  千葉県印旛沼流域、桑納川下流における河道周辺のオルソ空中写真。3年間の駆除実験により、ナガエ ツルノゲイトウの大きな群落葉消滅しており、駆除の効果が確認されつつある。

トセンシングによる生育モニタリングを行って生産した米に「天視の米(てんしのまい)」、「どろーん米」と名 付け、ブランド化を試みた。本課題の初期の成果である田中・近藤(2016)は日本リモートセンシング学会平 成30年度論文賞を受賞した。

◆1.3.2.1.  食料安全保障を目指した気候変動適応策としての農業保険における損害評価手法の構築と社会実装

(本郷千春)

本課題は、気候変動の適応策である農業保険制度の試行的取り組みを開始したインドネシアを対象として、保 険制度の中核となる損害評価を効率的に実施するための新しい損害評価手法を確立することを目的としている。

2018年度は、損害手法の構築・運用のための情報基盤の整備に係り、各種空間情報の取得・作成、水田マス クファイルの作成、衛星データを用いて水稲移植時期の把握を行った。さらに、2019年度より開始する空間情 報蓄積共有システムの構築のためのシステムの概略に関する討議を行った。新たな損害評価手法の構築に係り、

干ばつ害損害評価手法の構築、水害損害評価手法の構築、病虫害の損害評価手法の構築がプロジェクトサイトに おいてカウンターパートらとの合同現地調査を実施した。干ばつ害グループでは干ばつ害に関する圃場実験を行 い、ドローンによるデータ取得や群落表面温度計測を行った。水害グループでは、洪水前後の SAR データを使 用して後方散乱係数差およびテクスチャー解析による洪水検出を試みた。病虫害グループでは、リモートセンシ ングデータを用いて、BLB(Bacterial Leaf Blight;イネ白葉枯病)の発生確率の推定を行った。さらに、現地 のペストオブザーバー(損害評価員)が取得した被害程度データとリモートセンシングデータを用いて面的に BLB 被害率の評価を行った。新たな損害評価手法の社会実装に係り、インドネシアの農業保険制度の枠組み及 び運用を考慮して研究成果の社会実装を行うための体制の基礎作りを行なった。また、6月及び12月に Scientific Committee for Damage Assessment(損害評価委員会)を開催し、各グループの進捗状況の確認と 半年間の活動計画について討議を行った。キャパシティ・ディベロップメントに係り、損害評価手法に係る能力 開発及び農業保険運用に係る能力開発を目的とした各種研修や講義を実施した。具体的には、ボゴール農科大学 での講義、バンドンにおける西ジャワ州農業組織に属する行政職員に対する研修、日本において実施した Knowledge Co-Creation Program for Damage assessment process management on agricultural insurance などである。また、ボゴール農科大学の若手講師が2018年10月に千葉大学大学院博士課程に入学し、損害手法 構築のために研究を開始した。

アウトリーチ活動として、10月10日にインドネシア大学で開催された Indonesia Japan Joint Scientific Symposium 2018及び10月22日にウダヤナ大学主催の The International Conference on Science, Technology and Humanities 2018において、SATREPS セッションを設けて発表を行った。また、2018年5月にバンドン で開催した農業保険に関する研修に関する記事が、バンドン及びバリの新聞に掲載された。2019年2月にバン ド ン 及 び バ リ で 開 催 し た 3 国 間 ワ ー ク シ ョ ッ プ Workshop on Bridging New Damage Assessment to Implementation in Agricultural Insurance に関する記事が、バンドン及びバリの新聞に掲載された。

本研究は、H28年度 JST/JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)において実施さ れたものである。

図1.3.1.4.  日本リモートセンシング学会で田中・近藤(2016)が論文賞を受賞した。受賞の様子と、受賞対象となっ た圃場。

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