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a. 6. 地史と陸生生物の動向−大陸島における生物の隔離と種分化

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1)第三紀中新世(約1500 万年前〜)

a.「琉球諸島」周辺の地形・気候等の状況45 b.陸生生物の動向

  ユーラシア大陸からアマミノクロウサギ、イボイモリ、マストドン象(化石動物)が琉 球弧へ侵入したと考えられる。南方からは、ケナガネズミやトゲネズミ、オキナワヤマタ カマイマイなどがフィリピンを経て陸地を北上してきたと考えられる。植物では、コケタ ンポポ、イソフサギ、イトスナヅルなどが琉球弧へ侵入したと考えられる。

2)第三紀鮮新世(約500 万年前〜)

a.「琉球諸島」周辺の地形・気候等の状況 b.陸生生物の動向

第三紀中新世中期に琉球弧へ侵入した生物、特に奄美諸島以南の生物は、海洋により大陸 や日本本土と隔離されたと考えられる。

3)第三紀鮮新世末期(約200 万年前〜)

a.「琉球諸島」周辺の地形・気候等の状況 b.陸生生物の動向

リュウキュウアユはこの時代に九州から南下してきたと考えられる。サワガニ類やテナガ エビ類どが、淡水湖群を伝って琉球弧に侵入したと考えられる。

4)第四紀更新世初期(約170 万年前〜)

a.「琉球諸島」周辺の地形・気候等の状況 b.陸生生物の動向

更新世前期(120万年前〜80万年前)頃から照葉樹林が成立したと考えられる。照葉樹 林の成立に伴い、そこを生息場所とする動物も琉球弧に侵入してきたと考えられる。

南方系のリュウキュウジカ、リュウキュウムカシキョン(化石動物)もこの頃に琉球弧 に侵入したと考えられる。キノボリトカゲ、ヤンバルテナガコガネ、モリバッタなどが、

早ければこの時代に琉球弧に侵入した可能性がある。リュウキュウアユのように北方から

44(編注)H17報告書の記述(木崎(1997).生物の来た道.In:沖縄の自然を知る.築地書館.

を元に作成)。最新の地学的、生物学的知見と合わなくなっており、地形−気候の動向と、陸生 生物の動向を対応させる構成で、最新の情報を踏まえてリバイス予定。(時間スケールに対して、

どのような地学的・気象的イベント、生物的なイベントが生じたかという書き方)。

※詳細は、参考資料1参照

45 (編注)記述する場合は、どの地理仮説に基づくか検討を要する。

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侵入した種は、トカラ構造海峡で隔離され、独自の進化が進み亜種となったと考えられる。

5)第四紀更新世後期(約 100 万年前〜) 

a.「琉球諸島」周辺の地形・気候等の状況 b.陸生生物の動向

  海面上昇に伴い、現在の標高が 200m以下の平坦な低島は海面下に水没したが、これよ り標高の高い高島は海面上に残っていた。そのため、現在、「高島」に分布する古い時代の 生物(現存する遺存固有種)はこの時に生き残り、低島では死滅したと考えられる。

6)第四紀更新世末期(約 40 万年前〜2 万年前頃) 

a.「琉球諸島」周辺の地形・気候等の状況 b.陸生生物の動向

  アーキディスコドン象(化石動物46)やノロジカ(化石動物)、ハタネズミなど北方系の 動物がこの時代に北から琉球弧に侵入したと考えられる。また、船を持たなかったといわ れる旧石器人である港川人も、この時代に渡来したと考えられる。イリオモテヤマネコは 近年の分子遺伝学や寄生虫学的研究から、ベンガルヤマネコに近いもので、従来考えられ ていたよりも新しい生物であるという研究が報告されており、この時代に侵入してきたと 考えられる。最終氷期には、卓越した乾燥気候により照葉樹林が衰退し、リュウキュウジ カ、リュウキュウムカシキョン(化石動物)などの哺乳類が絶滅したと考えられる(氏家・

中村, 1996)。

また、近年、爬虫類相から見て、宮古列島がきわめて重要であることが分かってきた。

宮古列島にはハブが生息せず、半沢正四郎(東北大)や高良鉄夫(琉球大)によって琉球 石灰岩に覆われた新しい島で、未だハブが侵入していないものと考えられてきた。しかし、

古生物も含めてきちんと調べると固有種がきわめて多いことが判明している。ミヤコカナ ヘビ、ミヤコヒバァ、ヒメヘビは固有種で、ミヤコカナヘビは近年になって記載された種 である。また、宮古島からは多くの化石資料が得られている。ノロジカやキョンに近縁な シカ類やオオヤマネコ、大型のイノシシ、現在は「琉球諸島」に見られないハタネズミ、

全長3〜4mはあったであろう巨大なハブ類やマダラヘビ、ムツアシガメに近縁なオオヤ マリクガメ、ケナガネズミに近縁と見られる大型のネズミ、クイナ類など、豊富な化石が 得られている。大型動物を含むこれだけ多様な生物が生息するためには、現在の宮古列島 の面積はあまりにも狭すぎるため、宮古列島は地質学的にごく最近、おそらく数万年前ま で少なくとも沖縄島に匹敵する大きい島であったこと、すなわち最終氷期の少し前までは 現在よりずっと大きな陸塊であって、それが沈降して、現在の小さい島になったと推測さ れている(太田、私信)。

46宮古島で化石が発見されている。

86 7)更新世末期〜完新世以降(約 2 万年前以降) 

a.「琉球諸島」周辺の地形・気候等の状況 b.陸生生物の動向

上記のような地形形成過程を経て、隔離の歴史が長く、他地域に生息・生育する姉妹群と の差異が大きく、系統群の上位分類群での多様性・固有性の高い生物相が成立した。

その結果、現在の「琉球諸島」では、多くの遺存固有種の事例が豊富に見られると同時 に、新固有の状態の種や島嶼間での亜種などの事例も豊富に見られる。

 

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