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YaeJ タンパク質の変異体解析

ドキュメント内 Microsoft Word - 表紙.docx (ページ 38-77)

本章では,YaeJがリボソーム上でどのように機能しているのか,その分子メ カニズムを明らかにするために,YaeJに対し変異体解析行った。保存残基に着 目して様々な変異体を作製し,再構成型無細胞タンパク質合成系を用いたPTH 活性測定を行うと共に,YaeJ変異体のリボソームとの相互作用をショ糖密度勾 配遠心分離のウエスタンブロットによって解析をした。また,ヒト ICT1 との PTH活性の比較を行った。これらの結果から,PTH活性およびリボソームとの 結合部位に必要な部位を明らかにすることで,YaeJの機能の分子メカニズムに ついて考察を行った。

実験方法 菌体

使用した大腸菌株とプラスミドDNAはTable 1に示す。大腸菌全遺伝子プラ スミドクローンASKA library (Kitagawa et al., 2005)と網羅的Open-reading frame (ORF)欠損株ライブラリー Keio collection (Baba et al., 2006)は,

National BioResource Project(NIG,Japan)により提供された。また,ヒト ICT1のcDNA(IRAK027I21)はRIKEN BRCより供与された(Ota et al., 2004)。

大腸菌 K-12 BW25113 株を親株として欠損株が作られている Keio collection に関してはP1 形質導入法(本章の実験方法 参照)を用いてBL21株に目的遺 伝子の組み換えを行った。

38 培養

本実験においての培養は,全てLysogeny Broth培地(以下,LB培地) [1%

tryptone,0.5% yeast extract,1% NaCl] で行った。

大腸菌株にプラスミドを用いて形質転換するために,プラスミドの取り込み 効率が上がるように処理してコンピテントセルとした。大腸菌を5 mlのLB培 地で一晩培養(37℃)した。その後,菌溶液を250 μlとり,25 mlのSOB培 地 [(2% Bacto Tryptone,0.5% Yeast extract,10 mM NaCl,25 mM KCl)と

(1 M MgCl2・6H2O,1 M MgSO4・7H2O)を50:1の割合で混合] に植菌した。

このSOB培地を25℃でOD600が0.6 absになるまで培養した。その後,培養 液を氷上で10分間冷却し,遠心分離(3,000 rpm,15分,4℃)し菌体を回収,

上 澄 み を 除 い た 後 ,15 ml の 氷 冷 し た Transformation buffer [10 mM PIPES-KOH (pH 6.7),15 mM CaCl2・2H2O,250 mM KCl, 55 mM MnCl2・ 4H2O ]でタッピングにより懸濁させ10分間氷冷した。培養液を遠心分離(3,000 rpm,15 分,4℃)し菌体を回収,上澄みを除いた後,4 ml の氷冷した Transformation bufferで再懸濁した。また凍結時の細胞へのダメージを軽減さ せるためDMSO を最終濃度が7%になるように添加し,コンピテントセルとし た。

作製したコンピテントセル100 μlに3 μlの目的タンパク質をコードしたプラ スミドDNAを加え氷上で30分間静置した後,ヒートショック(45秒,42℃)

を行った。大腸菌の回復のため100 μlのLB培地を加え37℃,1時間培養し,

抗生物質を含む LB 寒天培地にコンラージ棒で均一に全量植菌し,37℃で一晩 培養した。抗生物質に関しては,アンピシリン,50 μl/ml;カナマイシン,10 μl/ml;クロラムフェニコール,34 μl/mlの最終濃度でそれぞれ使用した。

39 DNA操作

yaeJ 遺伝子および ICT1 遺伝子のクローニング

yaeJ遺伝子のクローニングには,yaeJがコードされているASKA libraryプ ラスミドを鋳型に用いた。また,ヒトict1のクローニングには,ヒトict1がコ ードされているcDNAを用いた。これらの遺伝子を鋳型にNdeIとXhoIの制限 酵素部位を付加させたプライマーでPCRを用いて増幅させた(Table 2)。ヒト ICT1遺伝子は,ミトコンドリア移行シグナル(1 – 29残基)を欠損させるよう にプライマーを設計した(Δ29 ICT1)。

増幅したPCR産物はエタノール沈殿を行った後に,制限酵素処理をした。制 限酵素処理したDNA断片は,C末端に6つのヒスチジン残基が連なったタグ(以 下,His-tag)をもつタンパク質発現プラスミド pET26b(Novagen)にライゲ ーション試薬Ligation high(Toyobo)を用いてクローニングをした。

形質転換

DH5αコンピテントセル 100 μlに対し,DNAを3 μl混ぜ,氷上で30 分間 静置した。その後,ヒートショック法によりプラスミドDNAを取り込ませ,氷 上で2 分間氷冷した。大腸菌のリカバリーに100 μlのLB培地を加えて37℃で 1 時間培養した後,抗生物質を含む寒天培地に培養液を全量を植菌し 37℃で一 晩培養した。

DNA シークエンス解析

DH5αに形質導入したシングルコロニーを抗生物質入りLB 培地で37℃の条 件で一晩培養し,遠心分離によって集菌した。QIAprep Spin Miniprep Kit

(Qiagen)を用いてプラスミドDNAを精製した。DNAシークエンス解析はフ ァスマック社を利用した。

40 yaeJ遺伝子の変異導入

yaeJ遺伝子とict1遺伝子のアミノ酸残基の改変は,オーバーラップPCR法 (Higuchi et al., 1988)を基にしたQuickChange Site-Directed Mutagenesis Kit

(Stratagene)と,プラスミド DNA 全長を鋳型として逆方向に設定した 2 種 類のプライマーを用いて増幅を行う Inverse 法を用いて,変異導入を行った (Williams et al., 2007)。

変異箇所は,YaeJとICT1の生物種間のアミノ酸相同配列比較の結果(Fig. 3-2) から,GGQループ以外に高い保存性を示したアミノ酸(下記参照)をアラニン,

グルタミン,グルタミン酸,グリシン,リジン,アルギニンや欠損とそれぞれ 保存残基を改変した。

作製した変異体,および欠損したyaeJ,ict1のプラスミドはTable 1に示す。

PCR 法の反応組成

PCR と変異用のプライマーによって変異の入ったプラスミド DNAを作製す る事ができる。DNA ポリメラーゼには KOD plus Neo DNA ポリメラーゼ

(Toyobo)を使用した。その反応の組成は以下のように行った。

Template DNA 100 ng 10× reaction buffer 2.0 μl 10 μM Forward primer 1.0 μl 10 μM Reverse primer 1.0 μl 2 mM dNTP mix 2.0 μl

25mM MgSO4 1.2 μl

KOD plus Neo DNA polymerase(1 U/µl) 0.4 μl

41 to 20 μlに蒸留水でメスアップ

PCRの条件は前変性[94℃,120秒間],変性 [98℃,30秒間],アニーリング [55℃,

30秒間],伸長 [68℃,200秒間]を18サイクル行い,変異の入ったDNA断片 を増幅した。

使用したプライマー配列はTable 2に記した。

テンプレート DNA の消化反応

PCR反応終了後のサンプルにDpnI(10 U/μl)(Roche)を0.4 μl加え,37℃

で90分間培養し,テンプレートDNAを分解させた。また,Inverse法でのPCR 反応後のサンプルには,DpnIとT4 Polynucleotide Kinase(10 U/μl)(Takara)

を0.4 μlずつ加えて37℃で処理をした。テンプレート消化後にLabo Pass PCR clean kit(Hokkaido System Science)を使って,PCR産物を精製した。Inverse 法で増幅した変異PCR産物は,Ligation highを用いてライゲーションをおこ ない,DH5αに形質導入した。

YaeJとICT1の異生物間でのアミノ酸相同配列比較解析

配列解析にはCLUSTAL W programを使用した(Thompson et al., 1994)。一 部は,真正細菌型のミトコンドリアRF1とYaeJ/ICT1タンパク質の構造をもと に修正した。配列解析で使用したタンパク質のアミノ酸配列の Accession code は以下の通り: Escherichia coli str. K-12 YaeJ, AAC73302.1; Pseudomonas syringae pv. tomato str. DC3000 YaeJ, AAO55337.1; Vibrio harveyi YaeJ, ABU73293.1; Shewanella baltica YaeJ, ACK48274.1; Colwellia psychrerythraea YaeJ, YP_271049.1; Xanthomonas campestris pv.

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campestris str. ATCC 33913 YaeJ, AAM39546.1; Salmonella typhimuriuml T2 YaeJ, NP_459245.1; Pseudomonas aeruginosa PA01 YaeJ, NP_249559.1;

Chlorobium tepidum TLS YaeJ, NP_662859.1; Methylococcus capsulatus str.

Bath YaeJ, YP_112667.1; Streptomyces avermitilis MA-4680 YaeJ, NP_825123.1; Prochlorococcus marinus str. MIT 9313 YaeJ, NP_896036.1;

Homo sapiens ICT1, NP_001536.1; Mus musculus ICT1, NP_081005.1;

Monodelphis domestica ICT1, XP_001377961.1; Taeniopygia guttata ICT1, XP_002190739.2; Xenopus (Silurana) tropicalis ICT1, XP_002940027.1;

Danio rerio ICT1, XP_001922710.1; Drosophila melanogaster ICT1, NP_609416.1; Populus trichocarpa ICT1, XP_002329853.1; Saccharomyces cerevisiae ICT1, AAS56333.1; E. coli RF2, P07012; E. coli RF1, P0A7I1; H.

sapiens mtRF1L, NP_061914.3; S. cerevisiae mtRF1, P30775.

P1形質導入を用いたBL21 yaeJ欠損体(ΔyaeJ)株の作製

P1 形質導入は,プレートライセート法で行った。P1 ファージは大腸菌遺伝 子の普遍形質導入を行うファージとして知られており,本実験ではP1ファージ を用いて大腸菌ゲノムの系統的な機能解析用のKeio collectionの標的遺伝子欠 損株(BW25113 ΔyaeJ;JW0187)からBL21株へ遺伝子の形質導入を行った。

BW25113 ΔyaeJ株(BW25113 yaeJ::FRT-Kmr-FRT)(ドナー)をLB培地

(10 mM MgSO4,2.5 mM CaCl2を含む)で対数増殖期まで培養した。大腸菌 培養液100 μLを,オートクレーブ後の0.7% LB軟寒天培地10 mlと混合し,

すばやく抗生物質耐性なしのLB寒天培地に注ぎ広げ,0.7% 軟寒天培地が固化 するまで静置した。その後,P1ファージ溶液を200 μLをその上に滴下し,シ

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ャーレを揺らすことで,P1ファージ液を全体的に行き渡らせ,37℃で一晩培養 を行った。一面の大腸菌層の上に,P1ファージの感染で大腸菌が溶菌されたプ ラークを確認できたら,プレートにLB培地2 mlを加えて,37℃で1時間培養 する。クロロホルムを数滴加えてこの上清をとり,遠心分離(3,000 rpm,15 分,4℃)によって細胞残渣とアガロース片を分離した。分離後の上清をφsize 0.2 μmのフィルターシリンジ(Millipore)で濾過した液をΔyaeJ P1ファージ液と した。

そして,BL21株(レシピエント)をLB培地5 mlで培養をおこない,対数 増殖期に大腸菌を遠心分離(3,000 rpm,10分,4℃)によって集菌した。集菌 した大腸菌を1 mlのLB培地(10 mM MgSO4,5 mM CaCl2を含む)で再懸 濁した。このBL21株再懸濁液100 μLとΔyaeJ P1ファージ液10 μLと混ぜ,

培養(30分,37℃)した後,コンラージ棒でカナマイシン耐性寒天培地に均一 になるように広げて37℃で一晩保温した。カナマイシン耐性寒天培地に,生え てきたコロニーをコロニーPCR およびゲノムシークエンスによって,BL21 株 のyaeJ遺伝子がカナマイシンに置き換わっていることを確認し,BL21 ΔyaeJ 株(以下,ΔyaeJ株)として実験に用いた。

大腸菌由来PUREsystemを用いたin vitro translationによるPTH活性測定 テンプレート DNA の作製

PUREsystemで使用するテンプレートDNAは2段階PCRによって作製した。

作製するテンプルレートは,翻訳停滞用とタンパク質合成用の 2 種類のテンプ レート DNA を作製した。翻訳停滞用テンプレート DNA は,cAMP receptor protein遺伝子(以下,crp)をコードするASKA libraryプラスミド(JW5702)

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を鋳型として, SD 配列を含んだ Forward primer と終止コドンを欠失した Reverse primerによってPCRによってSD配列を付加したcrp遺伝子の増幅を 行った。翻訳停滞用のみ終止コドンを欠失した primer を使用することで,

PUREsystem 中ではnonstop mRNA の合成ができる。また,タンパク質合成 用テンプレートDNAは,pET26bにクローニングしたyaeJおよび,yaeJ変異 体を基にPCRによって,His-tagを含まずyaeJ遺伝子にSD配列を付加した。

一次PCR産物は,アガロースゲル電気泳動によって目的分子量のバンドの増 幅を確認および,ゲルを切り出した。ゲル切片は,QIAquick Gel Extraction Kit

(QIAGEN)を用いてゲルから一次PCR産物を精製した。一次PCR産物を100 μlに希釈し,2段階目のPCRのテンプレートとして用いた。希釈した一次PCR 産物をテンプレートとして,T7 promoter配列を含んだuniversal primerと一 次PCRで用いたのと同じreverse primerを使用して,T7 promoter配列付加 および,増幅を行った。アガロースゲル電気泳動で単一バンドになっているこ とを確認し,Labo Pass PCR clean kitで二次PCR産物を精製した。そして,

精製したPCR産物に RNase不活性化試薬RNsecure(Life Technologies)処 理をおこない,PUREsystemのDNAテンプレートとして使用した。

PUREsystem を用いた YaeJ タンパク質および,変異体のタンパク質合成と合成量 の定量

in vitroの翻訳実験として,転写・翻訳に必要な因子をのみで再構築した大腸

菌由来の無細胞タンパク質合成系PUREsystem(PURExpress, New England Biolabs)(Shimizu and Ueda, 2004)を使用した。このシステムはT7プロモー ターとSD配列をもたせた直鎖上のDNAをテンプレートとして使用し,短時間 で転写かつ翻訳が同時に行う事ができる。そして,合成したタンパク質の検出 方法としてリジンに BODIPY で蛍光標識した tRNA(Lys-tRNALys)を含む

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