第 5 章 プラットフォームを用いたサービスの実現
5.2. Who 情報を活用したロボットサービス
ユーザの Who 情報を活用することで,個人に応じたロボットサービスが実現可能である.本節では 大阪市立科学館で行った写真配布サービスの実証実験を通してプラットフォームを用いた Who 情報を 活用したロボットサービス開発の実現性を検証する.
5.2.1. 写真配布サービスの概要
写真配布サービスのシステム構成をFigure 5-1に示す.このサービスは展示スペースに写真撮影エリ アと写真渡しエリアからなる.写真渡しエリアの様子をFigure 5-2に示す.このエリアには1台のコミ ュニケーションロボットと2台のスピーカーロボットおよび入館者が付近に来たことを認識するための アクティブ型RFIDリーダを配置した.
写真撮影エリアではサービスを希望した入館者にスタッフが静体ロボットとのツーショット記念撮 影を行い,写真渡しエリアではこの撮影タイミングで写真を予め出力しておく.入館者は引換券の代わ りとしてRFIDタグを受け取り館内の展示を見学する.出口付近に設置された写真エリアでは,RFIDタ グリーダで検出したタグの電波強度を用いて入館者が当該エリア近傍に来たことを認識し,コミュニケ ーションロボットやスピーカーロボットがタグIDをアナウンスして写真を渡すこととした.
Figure 5-1 Overview of experimental setup for photograph delivery service at Osaka Science Museum
Figure 5-2 Experimental setup at photograph delivery area Photograph-shooting area
Photograph delivery area RFID detection by RFID tag
reader and announce service execution by robots
Active type RFID-tag reader Communication robot
RFID-tag distribution
EXIT Speaking robots
Speaking robot
Active type RFID-tag reader
Communication robot (Robovie-R2)
NWR-PF server
RFID-tag
5.2.2. センサクラス
写真配布サービスで用いたセンサとセンサクラスをTable 5-1に記す.このサービスではアクティブ型 RFIDタグリーダをWho & Where & When センサクラスのセンサとして用いた.
Table 5-1 Sensor classes for photograph delivery service
No. Sensor class Who
info.
When info.
Where info.
What info.
Location
name Sensor name
1 Who & When sensor
class ○ -
-2 Where & When sensor
class - ○
-3 What & When sensor
class - - ○
4 Who & Where & When
sensor class ○ ○ - Photograph
delivery area
Active type RFID-tag reader
5 Who & What & When
sensor class ○ - ○
6 Where & What & When
sensor class - ○ ○
7 Who & Where & What &
When sensor class ○ ○ ○
○
5.2.3. プラットフォームのカスタマイズ
写真配布サービスではそれぞれの入館者に各ロボットが個別にタグ ID を呼びかけることを基本とし た.しかしながら,ロボットの数を上回る入館者に同時にサービスを提供しなければならない状況が容 易に予想され,そのような状況においてもサービスを維持することが重要である.そこで,同時にサー ビスを提供する対象者数がロボットの台数を下回る場合は個人毎にサービスを提供し,ロボットの台数 を上回る場合には複数の対象となる入館者を1つのグループとみなしてサービスを提供することとし た.具体的には,RFID タグリーダの接続ユニットでユーザ数をカウントし,同時検出したユーザ数が ロボット台数未満の場合にはWho情報をタグIDとした4W情報をエリア管理GWに送信し,ロボット 台数以上の場合にはWho情報をmany_userとした4W情報を送信することとした.そして,エリア管理 GWでは個人用とグループ用のサービスシナリオを用意し,4W1Hマッチングを用いて状況に応じたシ ナリオとロボットの選択を行うこととした.
5.2.4. プラットフォームのパラメータ設計
ユーザとサービスの関連付けの概要をTable 5-2に示す.User1はタグのIDに対応したユーザIDであ り,many_user はロボットの台数よりサービス対象の入館者が多く来た場合にグループとして対応する ために設けたユーザである.
サービスの設定概要を Table 5-3 に記す.サービスには ParentService 階層に個人用のサービスの
Announcement for individualとグループ用のサービスのAnnouncement for groupサービスを設定すること
とした.そして,それぞれに対してジェスチャや音声再生が可能な mplayable 機能を用いたサービスシ ナリオ(Announce_Visible/ Announce_Visible_Many)と,音声再生が可能なspeech機能を用いたサービ
スシナリオ(Announce_Unconscious/Announce_Unconscious_Many)を設定することとした.また,mplayable 機能で実現するシナリオのプライオリティを speech 機能で実現されるシナリオのそれに対して相対的 に高く設定することとした.各ロボットの設定をTable 5-4に記す.スピーカーロボット(Speaker A,B)
にはspeech機能を設定し,コミュニケーションロボット(Robovie A)にはmplayable機能を設定するこ
ととした.以上のような設定をデータベースに登録することで,ユーザの RFIDタグが検出された時点 で個人やグループに応じた適切なサービスシナリオとロボット選択を 4W1H マッチングで実現可能と なる.
Table 5-2 Outline of registration of users for photograph delivery service
Table 5-3 Outline of registration of services for photograph delivery service
Table 5-4 Outline of registration of robots for photograph delivery service
User name Service name
User1 Announcement for indivisual
many_user Announcement for group
Service name Element name Value
service.what Enter
service.scenario name Announce Visible
service.where
service.scenario.how mplayable
service.scenario.priority 8
service.what Enter
service.scenario name Announce Unconssious service.where
service.scenario.how speech
service.scenario.priority 5
service.what Enter
service.scenario name Announce Visible_Many service.where
service.scenario.how mplayable
service.scenario.priority 8
service.what Enter
service.scenario name Announce Unconssious_Many service.where
service.scenario.how speech
service.scenario.priority 5
Announcement for individual
Announcement for group
Element name Value
robot.who Speaker A
robot.where
robot.how Speech
robot.who Speaker B
robot.where
robot.how Speech
robot.who Robovie A
robot.where
robot.how mplayable
5.2.5. 実験結果
構築したシステムを用いて,2005年5月27日~5月29日(11:00~16:00)に一般の来館者を対象 とした実証実験を大阪市立科学館で行った.1時間毎に実行されたシナリオのヒストグラムをFigure 5-3 に示す.コミュニケーションロボットによるサービス提供に比べて,スピーカーロボットによるサービ ス提供回数が多い.これは,コミュニケーションロボットによるサービスが,タグ ID のアナウンスに 加えて写真の手渡し動作も含んだ実行時間の長いものである一方で,スピーカーロボットによるサービ スはタグIDのアナウンスのみの短時間で終了するシナリオであることに起因する.
実際にサービスが提供された対象者数は3日間で300人程度であったが,サービス実行回数が対象者 数より多いことがFigure 5-3から読み取れる.これは,同一入館者を繰り返して検出しサービスを実行 したためであり,サービス起動処理の改善などで対応可能な範囲と考える.
実証実験では音声での入館者の呼び出しを行ったが,周囲の音にまぎれてしまい入館者への通知が困 難であることがあった.このような環境では音声だけでなくディスプレイでの表示などの視覚を用いた 情報提示や各個人が有する情報端末上のソフトウェア・エージェントを用いた通知などが有効と考えら れ,今後の検討課題と考える.
Figure 5-3 Histogram of execution number of four types of service flow
5.2.6. 考察
科学館のような公共施設でのユーザの年齢層は子供からお年寄りまで幅広い.そのようなユーザを対 象とした場合には,高齢者であればロボットが聞き取りやすい発話をするなど,サービスを受けるユー ザの個人特性を考慮することが重要となる.本プラットフォームではユーザに関する情報は4Wのみで あり,ユーザの年齢や性別などの個人属性までは管理しておらず,このようなサービスを実現すること は出来ない.しかしながら,NR-PFではユーザのグローバルIDをWho情報として管理しており,この Who情報を介してユーザ属性を管理する外部システムと連携することで,このような個人特性に応じた サービスを実現することが可能と考える.
様々なユーザ属性に関する情報を一つのプラットフォームで管理したアプローチも考えられるが,サ ービスで用いるユーザ属性は様々なものが考えられ,また,サービス毎に異なるため現実的ではない.
そのようなアプローチではなく,プラットフォームで管理する情報は外部システムと連携するためのキ ーとなる基本的な情報に留め,開発するサービスに応じて外部システムと連携してサービスの高度化を 図るアプローチが合理的で現実的なロボットサービス開発と考える.
本実証実験では共通機能の 4W1H マッチングを用いてユーザに対するロボットとサービスシナリオ を決定した.4W1Hマッチングでは独立に管理したユーザ情報,ロボット情報,サービス情報をサービ ス要求時に組み合わせることでサービスアロケーションを実現している.それゆえ,ユーザの追加やサ ービス提供するロボットの追加は,Table 5-2でのユーザ追加,Table 5-4でのロボット追加で容易に実現 可能であった.このようなユーザとロボットを簡易に増やせる枠組みはロボットサービス開発に大きな メリットになると考える.
また,4W1Hマッチングでは各シナリオにプライオリティを設定してその時点で適切なサービスシナ リオとロボットを選択する仕組みとした.ジェスチャを交えてユーザと対話する高度なコミュニケーシ ョンロボットを優先的にサービス実行主体のロボットとして決定することが考えられる.しかしながら,
情報提示の観点からは,一概にそのようなアプローチが有効とは言い難い.たとえば,ショッピングモ ールにおいて店舗の場所を案内するサービスでは音声やジェスチャのみでの案内だけでは不十分であ り,地図をディスプレイに表示するロボットを用いた情報提示が有効である.このように,情報サービ スでは提示するコンテンツに応じて提示手段を選択することが重要と考えられ,4W1Hマッチングのよ うにロボットの機能に着目したアプローチは合理的な方式であると考える.